♣︎3
楽しんでください!!
「くっ…、」
倒した。呪いも消えている。
「リア。」
「えぇ。私たちのステータスが大幅に下がっていました。
こんな呪い、悪魔のボスがかけれるような呪いではありません。」
「あぁ。かけれたとしてすごく級の高い悪魔だ。」
「……。誰かが裏にいそうですね。」
「そうだな。こちらで調査は進める。迷惑かけてすまないな。」
「いえ。夏衣さんのことはいつでも助けますよ。」
「ありがとう。これから本部に帰るがリアはどうする?」
「私は今回のことをまとめておきます。」
「そうか。ありがとうな。リア。」
「いえ。では。」
「あぁ。じゃあな。」
そう言って夏衣は走って行った。
私は歩きながら少し考えてみる。
戦闘中に未来予測ができなくなるのはまだ力不足の現れ。
練習が足りない。どうすれば見れる?どうすれば効率が良い?
もし見れたとしても強敵の前で通用するか?
もっと早く見て対応しなければならない。
根本的に考えて呪い等の影響で使えない可能性だってある。
体力作りは毎日している。魔力が足りない、?
それとも扱いが下手なのか。それともやっぱり体力なのか…?
さっき呪いを多く解除した時も体力不足を感じた。
兄や姉、母や父。家族を殺されてから随分と長い時間が経っているような気がする。
あれは何年前だろう…。私が今以上に無力で、幼くて…。弱くて。
確か私が300歳くらいの時だったと思う。
私は人類と呼ばれる中のエルフと呼ばれている種族。
エルフは人類の中の約20%を占めていて、意外と多い。
寿命は短い者で3000年。長い者で5000年くらい。
そう。300歳なんてエルフからすれば人間の10年。
何の意味も持たないし成長が遅い私たちからすれば赤子と言っても過言ではない年齢だ。
その時兄、姉は450、400歳。そして私が300歳。
もう一度思い出してみようと思う。今ならきっと大丈夫。
〈回想録〉
サァァァァ…
「リア。」
「姉さん。」
確かあれは小雨が降っていて、涼しい秋の日のことだった。
今とは暦が違って、秋は7、8、9月が秋だった。
9月6日。その日は特に何の用事もなく、悪魔等も少なかった。
私が300歳の時は今よりも悪魔等の数がすごく少なく、平和だった。
「濡れてない?リアは。」
姉さんが私に傘をさしてくれている。
「うん。ありがとう。」
姉さんの名前はキア。兄さんの名前は夏衣と同じ。だけどカタカナでカイ。
姉さんは結界を張っているのだろう。雨が跳ね返っている。
「カイは?」
姉さんは周りを見ながら私に聞く。
「兄さん?見てないよ?」
そういえば朝から兄さんを見ていない。気配はしているけど。
「そう。」
「…………。」
誰かいる。家の門の前に。
「誰!」
姉さんが私を庇うようにその人の方へ向かう。
「キア。下がってろ。」
その姉さんを兄さんが庇っている。
「兄さん……。」
私はこの時から何か感じていたのかもしれない。
「っ…!?」
最初にその人に声をかけた姉さんが殺されて。
「……、っ…、」
それを見せないように私の目を隠していた兄の首が飛んで。
「…っ………、!!!?」
あぁ、これは夢なんだ。と。私はそこで意識を手放した。
あまりにも一瞬の出来事で。そこから一年間はずっと泣いてばっかりで過ごしていた。
父はその前の暗殺事件で死亡している。父とラバーズだった母もその時に死亡。
今までは兄や姉がいたから寂しくなかったんだと、いなくなって気づいた。
「当たり前にあるものの大切さは、なくなったときにきづく。」それが兄の口癖だった。
父と母が亡くなった時もそれを知った。でも兄と姉がいるから大丈夫だと。
でもそれは、私の願望に過ぎなくて。「未来が見えたら」なんて後悔して。
そうしてできたのが私の能力だったはず。
あぁ、思い出した。生まれつきじゃない。
ジョブはなれる中から選ぶことができて、人によって選べる数が違う。
私の場合は3つだった。研究者・理解者・巫女。
何のジョブのスキルなのか全く分からない。
もしかすると、ジョブは関係ないのかもしれない。
〈現実〉
「あ…。」
テレポートを使わずに5キロ歩いて帰ってきてしまった。
相当集中していたのかもしれない。
これからしばらく、未来予測は使わないようにしよう。
カチャン‥,
久しぶりに、家の鍵を開ける音を聞いた気がする。
ぽこん…
「✉️Name:夏衣
まとめたら送ってくれないか?」2:00
「✉️わかりました。」2:03
夏衣は紙の資料派だったはず。
だから今回の研究結果、戦闘結果をまとめた資料を魔法で夏衣まで送る。
「✉️届いたぞ。ありがとう。」2:06
「✉️えぇ。」2:08
最近の技術はすごいなと、つくづく思う。
少し力をこめるだけで遠くの相手にもメールを送れる。
そしてそれが全人類にまわっていると言っても過言ではない状況にある。
ピピッ~~
「っ?」
この音はS級戦闘士の緊急招集の音。
S級戦闘士とは、人外や恋愛系以外の役職持ちの中の
もっとも高い位に認証された者のこと。例外はあるけれど。
文科系の役職はダンジョンから少し離れた場所で待機だった気がする。
それが今なるということは、呪いの影響が酷くなっているということだろうか。
「(呼び出されるの、今日何回目だろう。)」なんて思いながら家を出る。
「……。」
家から今回の招集先までは6キロほど。空間移動…はだめだ。
「テレポート。」
声に出さなくても発動はできる。だが一瞬で着こうと思うなら出したほうがいいだろう。
久しぶりの戦闘士協会本部。
戦闘士協会はその名の通り戦闘士を管理する場所。
全世界に活動場所があり、各国に一つくらいはあった気がする。
本部というのもその名の通りで一番位の高い場所…だったはず。
「リア。」
「羅宇。朝ぶりだね。」
「おうよ。」
「私もいるぞ。」
「えぇ。今回の招集は誰が?」
「見てなかったのか。副会長だ。」
「そう。副会長が…。いつもは委員会の人たちなのに。」
「あぁ。私も驚いた。」
「…。相変わらず口調似てるわね。」
「そうか?」
「同時に言わないで。そういうところよ。」
「ははっ。俺らはまぁ幼馴染だしな。」
「そういえば、そうだった…。」
「あぁ。そろそろだな。」
「皆様お集まりいただき誠にありがとうございます。」
これは会長が招集をした時に毎回言う挨拶。
「今回は、西のS級ダンジョン。」
そう言われて、S級戦闘士たちは少しざわつき。
「S級ダンジョンって…。」
羅宇も少し驚いているようだ。
「皆様お気づきの通りテラーダンジョンでございます。
今回はS級戦闘士の皆様で協力してあのダンジョンを攻略していただきたい。
もちろん協会のS級戦闘士も協力いたします。今やらないとだめなのです。」
「全員か…。」
夏衣も驚いている。
私だって驚いている。驚き過ぎて声が出ない。
全員で行くとなると普通ならすごい戦闘力になる。
でも今回はS級ダンジョンで、呪いもかかっているであろう状況。
通常、S級ダンジョンはS級4人パーティーで十分なのだ。役職の相性にもよるだろうが。
「ダンジョン攻略にあたっては、4人パーティーを組んでいただきます。
そのパーティーごとに攻略してください。」
「それではダンジョンに向かいます。各自、確実な準備を願います。」
副会長がそう言って、戦闘士たちが動き出した。
「パーティー。組むか私らで。」
「えぇ。あと一人は…。」
「俺もそれを考えていた。」
「私たちは相性のいい職業ばかりですが…。3人ではだめなのでしょうか?」
「あなたたち。」
会長が私たちに話しかけている、?
「はい…、?」
「3人…なのよね?私もいいかしら。」
「あ……、」
「私の職業は、科学者と陰陽師。」
「なら私とバディです。研究者なので。」
「お前俺に嘘ついたな。」
「羅宇…。ごめん。」
「いいぞ。わかってたしな。」
「さすが、ありがとう。」
「ふふ。じゃあよろしくね。」
「えぇ。夏衣さんもいいですよね?」
「あぁ。もちろんだ。リアとバディなら安心だからな。」
「そうね。私も心強いわ。」
「ありがとうございます。会長。」
羅宇は礼儀正しい。やる時はやるタイプだ。
「敬語なんていらないわ。同じS級よ。やりやすい感じでいくのよ。」
「えぇ。」
「あぁ。」
「おう。」
「流石にフランク過ぎないかしら?」
「これくらいがいいの!リア。リラックス。」
「うん…。」
「会長。いいですか?」
「いいわね。いきましょう。」
会長がそう言うと、協会のとびらが開いた。
そして、全員が飛行魔法でテラーダンジョンへ向かい始めた。
「今魔力を消費して大丈夫なの?」
私は会長にそう聞いた。
「あなたの魔力なら問題ないわ。他のみんなも一緒でしょう。」
「リア。お前の魔力で無理だったらほどんど無理だ。」
「そう…。」
「安心しろ。お前だけは私が守る。」
「夏衣さん私のこと馬鹿にしてます?」
「してない。むしろ愛してる。」
「ありがとう。」
夏衣には時々こう言うところがある。
このキャラが面白くて、みんなに好かれて尊敬されているんだろう。
面白い。強い。やさしい。かっこいい。全てが詰まった人なのだから。
「残り半分でテラーにつくわ!」
少し話すだけでそんなに飛んでいる。
あと3キロ。全員が魔力を丁寧に練り始めている。
「リア。お前の魔力はすごく綺麗だな。」
「あぁ。俺もそう思う。」
「二人に言われたくないわ。嫌味?」
「私もそう思うわ。どうやって練っているのかしら?」
「こうやって。」
私は少し魔力全体を練り始める。
「なるほど。中心からゆっくりと。」
パーティー全員がやり始めた。
「わぁ…。」
魔力を可視化してみると、ここだけすごいことになっている。
一見するともう邪悪。人前ではやらないほうがいいかも…。
「あと1キロよ!準備はいいかしら!」
「はい!」
戦闘士全員がそう答えた。
もうテラーダンジョンは見えている。
ダンジョンからありえないほどの魔力を感じる…。
「すごい魔力ね。気合い入れていくわよ!!」
会長がそう言って、私たちはダンジョンへ飛び込んだ。
ありがとうございました!