♣︎10
閲覧ありがとうございます!
今話で二章も終了。
次は三章に入ります。
一章5話で区切っているのでだいぶ多くなると思いますがこれからもおねがいします!
Google検索の怪雨だけで出てくるのがわかってモチベ上がりまくりです。
本当にありがとうございます!!
ドドドドドッドドドドドッ!!
今度は私から攻撃を仕掛ける。
彼の名前は「ルギ」。年齢は4572歳らしい。
私を二倍しても届かない。おそらく魔力の差が大きすぎる。
魔力を可視化すると、私の三倍ほど。生きている年数の違いでここまで変わる。
当たり前のことを実感した。二倍の年齢で三倍の魔力。
彼の魔力量が多すぎる。どういう修行をしているのだろうか?
カンッ…!
簡単に防がれる。それでも防ぐ瞬間には少しの隙が生まれる。
その隙を狙って攻撃しているはずなのに、当たらない。
もう攻撃パターンを把握された…、?
彼の反射神経は常識を超えている。
「刃桜の舞!」
最近攻撃の霊術はこればかり使っている。
花鳥風月の花の部類の中で一番強いと思う。
「ほう、」
当たって、血を出すことは出来た。
でもあまりダメージにはなっていなさそうだ。
彼に血という概念がないのかもしれない。
「天恵の光の象徴…!」
遠距離攻撃なら…まだダメージが入るかもしれない。
「運命は変えられない。お前はさっきそう言ったな?」
彼は私の攻撃なんてどうでもいいかのように私にそう話しかける。
私の攻撃には杖だったり槍だったりただの魔法陣だったりと、色々な方法がある。
魔力で杖を作ったりしている。少ないが魔力を消費することに変わりはない。
「……、えぇ。」
そう返事しながらも、魔法陣を展開して攻撃を続ける。
彼も私に合わせて魔法…、?いや物理攻撃を続けている。
私が遠距離で彼が近距離タイプ。間合に入られたら終わりだ。
彼が刀を振るときに弾幕のようなものが打ち出されている。
彼の攻撃は一回一回で魔力の消費が多いようだ。
「それは本当か?」
彼は弾幕を大量に出現させて私の周りを包囲する。
時が止まっているかのようにその弾幕は一度動きを止めた。
私たちは今上空で戦っている。どちらかが下に行った瞬間この勝負は終わるだろう。
「過言ではない。そう言っておく。」
未来予知をすると、私がやられてやり返してという風になっている。
どちらが勝つのか。今そこまで予知すると致命的な隙になる。
彼は時間を操れるのだろうか?弾幕が止まったり動いたりしている。
ゆっくりに、なったと思えば早くなる。回避が難しい。
時を操るのは魔法の中でも最高峰に当たる。
普通の魔法使い、魔導士なら扱うことはできないだろう。
でも私には巫女という味方がいる。勝つために使える手段は全部使う。
今攻撃を受けて致命傷になったとしてもおそらく私は死ねない。
だから勝って探し物を続けるしかない。
時間を操るなんて私にできるかどうかはわからない。
巫女という職業を持っていたとしても届かない領域かも知れない。
だけれど意味もなく試さないというのは逃げているということだ。
(逃げたらもっと後悔する。)
その言葉から逃げたくて、その言葉を信じたくなくて。
「お前の運命は、夢じゃない。だからもう逃げるな。」
そうナギに言われて思い出したのは、兄が昔よくしていた事だった。
それは
「……っ、」
私が夢で見た雨のように降りかかる「怪しい運命」から逃げられない。
逃れられない運命は、夢じゃない。そう、ナギから言われるとは思っていなかった。
彼は私のことをよく知っているみたいだ。
知っていることが当たり前かのように話している。
「運命は雨にように降りかかっている。」
当たり前だ。運命は勝手に決まるものだろう。
そしてきっと運命は変えられないんだから。
「だから…っ!?」
攻撃を防いで返して、それで持っての会話。
彼も意外と辛そうにしている。気配がそう言っている。
「お前からしたら、全ての運命がおかしい。怪雨となるんだ。」
怪雨…。私が見た夢の中の運命が全て怪雨だと仮定するのなら。
考えている途中で彼が叫んだ。
「お前が見ているのはいつだって現実だ。
お前は現実から逃げられない。絶対に俺が逃さない!!」
彼の顔には汗が滲んでいる。
叫ぶようにして彼が魔法を発動した時、パリンッと音がした。
彼が言った通り、「逃さない、殺す」という思いが表れているのだろうか?
私が体の周りに慎重に張っていた結界が割れた。
「くっ…、」
運命は変えられない。
コンティニューなんて、リトライなんてできないはず。
それは誰にでも言える事。例外はあるが。
カーーンッという金属音が繰り返し鳴り響いて私の目に閃光が走った。
今、防御魔法の展開が1秒でも遅かったら死んでいた。
彼の魔法が私の防御魔法を貫いて、反射的に後ろに下がった私の目の前を通った。
「惜しかったか。」
彼はまだ一回も技名を声に出していない。
まずまず、戦闘方法が違う。彼は戦闘に慣れ続けている。
敵が死ぬなんて当たり前で、自分が勝つのが基本。
負けるなんてありえないと思っているのだ。
それに比べて私は自分に自信なんて一ミリもないし、負けるのが普通だと思っている。
だからこそ、今は!今だけは自分自身を信じてみようと思う。
「龍の嘶き!」
雨降らし。雨は意外と好きだ。
雨は私のステータスを大幅に上げてくれる。そして何より、想像が膨らむ。
晴れていたならば、大雨だったならば、小雨ならばというように。
想像力というのは戦闘において意外と重要だ。もしものことを考えられるから。
もしものことを考えずに行動していた昔に比べては、私は成長している、?と思う。
よく考えたら、今までよく生きてこれたなと思う。
「雨…、?」
彼は雨が嫌いなのだろうか?
それとも何か効果があると思っているのだろうか。
この雨に、バフやデバフなどの効果はない。
ただ、雨天時に私のステータスが上がるだけ。
攻撃力や防御力、そういう基本的なところだけ。
少しの間彼を見てみると、さっきよりも魔力の練りが甘いような気がする。
雨天時にステータスが下がるタイプらしい。なら、今がチャンスっ…、
「今世の龍剣!」
また、遠距離攻撃。雨天時に効果が上がる技だ。
さっきの反応を思い出してみると、彼は遠距離の方が苦手としているみたいだったから。
「っ…、!!」
効いてる!ダメージになっている。
彼の顔はさっきより焦っているように見える。
「……」
攻撃を繰り返しながらも私は少し考え事をしていた。
私が言った運命というのは将来絶対に死ぬとか、そういう概念のようなものだ。
でも、彼が言った運命が〜になるとか、そういう未来のことを指しているのなら?
「闇世に浮かぶ月の化身よ…我に力を与えよ!」
私が考え事をしていた時、彼は目を瞑って詠唱を始める。
「っ……!?」
その瞬間、私の体は重力が強くなったかのように動かなくなった。
昔、これと同じようなものを受けてことがある。その時は重力だった。
「冷淡なり空の遠吠え。」
技名…。詠唱ありの技名しかないのだろうおそらく。
だから一つ一つがすごく強い。人類には到底理解できないほどに。
魔法は、原理がわかってこそ魔法と呼べる。
だから、原理がわからないものは呪いとして分類される。
霊術の中にも呪いはあるし、全てにおいて呪いの分類というのは存在する。
私たち理解者や呪いの使い手が使っている呪いも、原理は詳しくわかっていない。
理解者なら解ける呪いも、どういう原理で解いているのかはわからない。
「本霊の聖剣の雷」
技の展開数が多い。技名が聞き取れないほどに…
「ぐっ…」
痛い、普通に。
「約束された経歴の書」
何か聞いたことのある言葉だ。
私の技の詠唱のリズムと少し似ているような気がする。
「いっ…!」
結界もない。体が重くて魔法が展開できない。
そんな私に彼の攻撃が降りかかる。
「はっ、死ね。」
彼は笑いながら私にそう言って詠唱魔法と共に一般攻撃を繰り返す。
「……、動くな。」
自分でもよくわからない。目とは違う言い聞かせる魔法。
なら目はなに?魔法ではない?目は呪いなのか?
考えたけど結局わからない。
それよりも、魔力の消費が多い。魔力切れの危険がある。
「………。」
彼が動かなくなった。魔法なら効くみたいだ。
何回も使うわけにはいかない。本気で死ぬ!
「能力消去。」
指パッチンをした方がイメージは出来上がりやすい。
攻撃はイメージをすればするほど強くなる。
能力消去を使ったことによって展開された魔法が全て消える。
これこそが、圧倒的に優勢というやつだろうか?
「負けたな…」
そう言っていても、彼は攻撃を続けている。
能力消去は連続して使えない。
そろそろ彼の魔力も少なくなっているような気がする。
彼の首に、私は魔法を打ち込もうとする。
でも、なぜかそれは良くないような気がした。
だから、魔力で槍を作って彼の首に当てた。
さすが強かっただけある。体も丈夫で切りにくい。
「リア…」
彼は小声で私の名前を言った。
…そんなことはどうでもいい。殺すんだから。
彼は人類を殺しまくってきた人類の敵。
「ふっ…!、」
大ぶりにはなってしまうが、これが一番痛くない殺し方だろう。
そう信じて私は彼の首へ向けて槍を振るった。
出ている血が少ない。人間ならもっと出るはずなのに。
魔族の情報は結局ほとんど何もつかめなかった。
得たのは、魔族が人類を支配しようとしているということ。
「大主教様」という者がいて、リーダーだということ。
これだけじゃ対策も何もできない。呪いなら一瞬で消すのも難しい。
呪い以外でもわからないなら被害が大きくなる。
情報収集をしないといけない。
〈また〉、あんなことをさせるわけにはいかない…、!
私が知っている中で、あれほどに民間人が死んだ事件はない。
あれは絶対に事故なんかじゃない。意図的な部分があったはず。
だから…、私が「大主教様」を殺す。
殺すまでいかなくても、無力化する。絶対に。
二度とやらせない。好きにはさせない。
人類を支配する。それが何を指すのか。
事件が起こってから300年。3世紀経った今、覚えている人類は少ないだろう。
あの事件の時はギリギリで人類が逃げ切った。今回はおそらくそうはいかない。
未来予知をしてみると、燃えている都市が映る。そんな未来にはしたくない。
彼を殺した後も、私の頭の中には彼の言葉が巡っていた。
彼が言っていた、運命=怪雨。
私が夢で見た私の運命を怪雨とするなら、それはもう夢じゃない。
どうやっても決して、絶対に逃れられない現実だ。
そう。怪雨はもう夢じゃない。
夢にしたいと願っても、夢ならばどれほど良かったかと泣き叫んでも、
それは紛れもない現実で、受け止めなければならない。
受け止めないのは逃げで、諦めたらそこで人生なんて止まってしまう。
運命から逃げるのではなくて、運命が変わるようにして仕舞えばいい…?
夢じゃないのなら、それが現実で起こる前に、変えて仕舞えばいい!
そう。それこそが、私に与えられた能力だと思う。
未来予知。こういう状況の時のためとはわからなかった。
それでも、使いこなして変えて見せる。
「怪雨、夢じゃないようで。」
そう無意識に心に浮かんだ時、私は何か懐かしさを感じた。
もしかするとナギとは、ずっと前から知り合いだったのかもしれない。
もうこれ以上他に犠牲は生ませない。私が見える範囲は絶対に。
今話はタイトル回収をしました!
よければブクマ等よろしくお願いします!!
改めて、閲覧ありがとうございました!!