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2-13 客と提案(2)

side アンジェリカ

「でもマリシアン……その方は、リディアーヌ王女を殺そうとした人の弟なんでしょう?」

「それは……」


 ぐっと口を引き結んで黙りこくったマリシアンが表情を濁すのを見て、アンジェリカも咄嗟に口を噤んだ。

 あぁ、嫌だ。嫌な予感がする。


 アンジェリカはもう、昔の純粋無垢で怖いもの知らずだった女学生ではない。リンテンでの短い数日の間に、ベルテセーヌ王室の闇とも言うべき部分に触れてしまった。他でもない、リディアーヌ王女というその人によって、知らされてしまった。

 兄の言葉。マリシアンの次兄の話。マリシアンのこの様子。セザールがいとも()(やす)くジュードの名を出した理由。そのすべてが、一つの答えを()()している。


「……まさか廃太子の事件も……“冤罪”なの?」

「アンジェリカ嬢ッ、滅多なことを言うな! クロード殿下は、その事件によって嫡出にっ、王太子になられたんだぞっ!」

「ッ」


 そうだ。その通りだ。だがもしもそれが冤罪なのだとしたら、一体じゃあ誰が廃太子にその罪を着せたのか。真犯人は、誰なのか?

 思わず頭をよぎった考えに、慌てて胸を押さえて、ぎゅっとすべての言葉を飲み込んだ。

 これは駄目だ。口に出したら絶対にダメな言葉だ。


「でも……でもそれじゃあ、ジュード殿下を頼ったりしたら、クロード様は?」

「だからこそセザール様も、最後の判断は俺とアンジェリカ嬢に任せると仰った」


 それはつまり、ジュードを表舞台に引き出せばクロードが困るということなのではないのか。


「そんな。危険じゃない」

「だがジュード殿下は元々、王位継承とは距離を置いて、武門の道を歩まれていた御方だ。事件の後も潔く王都を退いて、今は南西諸国方面軍で兵役についておられるとか」

「へ、へいえき?」


 なんで? 罪を科せられた元王子が、辺境の極貧兵団で、平民に混じって兵士をしているということか? は?


「あ、あの……ちょっと意味がよく」

「あぁ……そういう方なのだそうだ。だが国を思う気持ちは紛れもない王子であるから、助けを求めたら力を貸してくださるはずだと、セザール様が言っていた。それは、信じていいのではと感じた」

「……でも」


 まだあと一歩。どこかあと少し、踏み出せない。


「気持ちは分かる。だが思わず俺が納得してしまったのは、“何しろあの王女殿下がかつて唯一兄と呼んで親しんだ方だから”というセザール様の言葉だ」

「それは説得力大だわ……」


 くしくもジュードなる人物が評価が一瞬にして天元突破した。

 一体どんな人なのか、興味も湧く。


「正直、信じていいのかは分からない。だが一度、お会いしてみようと思うんだ。自分の目で見るのが一番早い」

「分かった。でもそれなら私も一緒に行くわ。私もこの目で見て確かめたいもの」

「アンジェリカ嬢っ。ジュード殿下をお呼びするのは、囮とする君の身を守ってもらうためなんだぞっ。なのに君が出向いたら意味がないだろう!」


 うっ……そう言われてみれば、そうなのだが。


「でも私だって、人柄も知らずに協力は頼めないわ。だってそれでクロード様が困ることになるかもしれないんでしょう? そうじゃないとちゃんと確かめてからじゃないと、私だって安心して守ってもらえないわ!」

「それはっ……そうだが……」


 困り切ったように頭を抱えるマリシアンは、しばらく考え込んだ後、「せめてエメローラ領で待っていてくれないか?」と提案してきた。


「でもできる事ならすぐにでも行動をっ」

「南西諸国方面は王都からは遠いとはいえ、長い道中だ。それをずっと守りながらジュード殿下を探すのは無理だ」

「それは……」


 確かに、その通りだ。アンジェリカは自分が戦力的に何の役にも立たないことは自覚しているし、そこで我儘を言って自ら危険に飛び込めるような性質でもない。


「……だったらマリシアン。ジュード殿下をここに。エメローラ領に連れてきてくれる?」

「分かった……だがそのためには、必要なものがある」

「何? 私にできること?」

「聖女の一筆が欲しい。多分ジュード殿下は俺を……“オリオール家”を信頼してはくれないだろうから、これが聖女からの要請であることと、聖女の名のもとに、罪人として遇されているジュード殿下の罪を免罪する、みたいな……こちらから殿下に信頼を示せるだけのものが欲しい。ただこれは国王陛下が下した処分にたてつくような危険な……」

「書くわ」

「アンジェリカ嬢っ。もっとよく考えてッ」

「そもそもジュード殿下の名を出したのはセザール様なんだから、何かあればセザール様に考えてもらえばいいじゃない。私はそれよりも、今この状況を早くどうにかしたいの。私の書いた書類一枚でそれができるなら、私は何だってやるわ」

「……分かった」


 アンジェリカの覚悟を見て取ったのだろう。神妙な顔つきで頷いたマリシアンは、「ただそれでも説得できるかは分からない」と付け足した。

 マリシアン自身もジュードという人のことは良く知らないのだろう。不安になるのは当然だ。

 はて。だったら、よく知る、説得できる人を行かせればいいだけではないのか?


「そうよ! だったらこういうのはどう? どうやらジュード殿下と面識があるらしい、私のお兄様を同行させるの」

「っ、ダリエル卿を?! この領地の領主代理を任されている方だぞ?!」


 それがどうしたのだろう? うーん。領主代理が領地を離れるのはそんなに変なことなのだろうか? 生憎と、アンジェリカにはよく分らなかった。


「お兄様なら剣も槍も使えるし、あ、そういえば乗馬もお好きよ。自分の身は自分で守れるわ。それにあぁみえて賢いらしいから、人探しにも向いてると思うわ」

「しかし領主を領地から連れ出すなどっ」

「お兄様はあくまでも領主代理なんだから。その不在中くらい、妹の私がどうにかするわよ。私はそれより、確実にそのジュード殿下を説得して欲しいの。お兄様は多分、それができる方なはずよ」

「……だが、ダリエル卿がそれに納得するとは……」

「取り合えず提案してみるだけしてみるのはどう?」

「……」


 マリシアンははっきりとは答えなかったけれど、否定の言葉もない。だったら、即行動である。

 ここぞとばかりに席を立ちバーンと扉を開け放つと、通りがかりのメイドを呼び止めて、「今すぐお兄様を呼んできてちょうだい」と命令した。

 勿論、こちらから出向きはしない。

 だってお義母様に見つかったら、多分ものすごくどやされ邪魔されるからね。

 お兄様の扱い方は少し分かったけれど、アンジェリカはまだあの義母の取り扱い方については不勉強なのである。


  ***


「……いい身分だな、アンジェリカ。忙しい俺を呼び付けて何事かと思いきや。は? はるばる南方まで、俺に伝書鳩の真似事をさせる気か?」


 今にも剣を抜きそうな権幕に、マリシアンがビクリと身を縮めてアンジェリカの背に身を寄せた。相手はお兄様……伯爵家の跡取りとはいえ、宰相を勤める侯爵家の三男が脅える必要はないと思うのだが。まぁ、お兄様は愛想が悪いから……仕方がない。


「わざわざ言葉を悪い意味に取らないでよ。セザール様のご提案で、ジュード様に協力を求めに行って欲しいの。でもマリシアンは顔を知らないでしょう? だから知っているお兄様に一緒に行って欲しいというお願いよ」

「余計な話をしたせいで、誤解したようだな。俺はただ顔を見知っているというだけで、国王陛下に反逆する気など毛頭ない」

「それは私がどうにかする、って言ってるじゃない! お兄様のケチ!」

「けっッ……」


 なんだと?! と目を瞬かせる兄は随分と機嫌を損ねているようだが、しかしだからといって今すぐ席を立って離れを出ていく様子はない。それだけでも、かなり兄としては心惹かれる内容だったのではないだろうか。


「大体お前たち、ジュード殿下をよく知りもしない癖になんという無謀な計画を……」

「ですが殿下をよくご存じのセザール様が、そう仰ったんです。この状況をどうにかしたいにしても、やるならジュード殿下を味方につけて、アンジェリカ嬢を守ってもらえと」

「都合が悪い時には罪を着せて爪はじきにして、都合がいい時だけ戻って来て助けてください、か? ましてやそれがうちの愚妹のためだと? ふざけるな。俺は殿下にそんな恥知らずなことは頼めない」

「それはっ……」


 言葉もない……確かに、兄の言う通りだ。でも別に、アンジェリカが爪はじきにしたわけじゃないし、そんなことを言われる筋合いもない。


「アンジェリカ、お前が止めなくてどうする。ジュード殿下が戻れば、クロード殿下などたちまち“潰される”ぞ」


 確かに、ジュードを頼ったなどと知ってクロードがどう思うのか。それを考えたら、安易にクロードの異母兄など頼るわけにはいかなくなってしまう。それは思わないでもない。


「でも、お兄様……ジュード殿下はずっと王位から身を引いてこられた方なんでしょう? 戻られたところでクロード様の地位を脅かすようなこと……それにそんなことにならないようにするのが、私の役目です。私が何とかっ」

「安楽的にも程がある」

「そんなこと無いわ! それにそれだけ名声のある方なら、いっそ協力してもらえばいいじゃない! クロード様を助けてくださるかもしれないのに、どうして“潰す”だなんて、決めつけるようなことっ」

「確かにジュード殿下は王位になんぞ興味のない方だ。だがだからといってクロード殿下に親しむような方でもない。もしもそんなものに利用されるくらいならいっそと国外に出て行きかねない方だぞ。我々は、国内に留まり辺境を守るというジュード殿下の“温情”をすでに受けているのだ。それを……」


 温情? 意味がよく分らない。兄は一体何を知っていて、何を言っているのだろう。

 でもそんなことはどうでもいい。王位に関する問題に利用されることを好まないような正確なら、尚更好都合ではないか。


「お兄様。そのジュード殿下という方が好んでご自分のお兄様やクロード様の周りを騒がせるような真似をされない方なのは、理解したわ」

「小さい頭でよく理解したな。じゃあ話はこれで……」

「でもっ!」


 待て待て。まだ行かせない!


「でもそんなジュード殿下は、今の王都での混乱を聞いて、そんなの知らないと背を向けてのうのうとしていらっしゃれるような、無責任な方なのっ?! セザール様いわく、ジュード殿下はあのリディアーヌ殿下に、唯一“お兄様”と呼ばれていた方だというじゃない!」

「……お前、どこでそんな話を……」


 やはりこの言葉は効果覿面だったようだ。もれなく頭を抱えた兄は、深いため息を吐いた。


「何を勘違いしているのか知らないが、王女殿下がジュード殿下を兄と呼んでいらしたのは、ただ王女殿下の兄君であらせられた先王子殿下が、リュシアン殿下とジュード殿下のお二人にだけご自分を名で呼ぶことを許していらっしゃったことの影響だ」

「つまりとっても仲良しってことね。リディアーヌ殿下ばかりかそのお兄様にまで認められているなんて、益々見所があるわ」

「お前は……はぁぁ」


 三度目のため息を吐かれたが、そんなことでめげるアンジェリカではない。ふてぶてしさには自信があるのだ。


「お兄様が仰ることも理解できるわ。確かに、セザール様が仰ったからといってクロード様にお伺いも立てずにジュード殿下に協力していただくなんてできない。でも王都で表立って助けてもらおうとしているわけじゃないわ。ただ国を騒がしている黒幕を捉えるのに協力して欲しいというだけなのよ? セザール様が頼りになさるほどの方で、お兄様が“温情を受けている”だなんて仰るような方なんでしょう? それさえ取り合ってくださらないような方なの?」

「……」

「あぁ、それともお兄様程度ではジュード殿下を説得できないからと、そう尻込みして……」

「言っておくが、俺はお前のド下手な挑発に構ってやるほど暇じゃないぞ」

「う……」


 もっとちょろい兄だと良かったのに。無駄に冷静で嫌になる。


「あぁもう、面倒くさいっ。いいから、言うこと聞いてよっ、お兄様!」

「面倒になったからといって投げ出すな、愚か者。はぁ……重ね重ね、お前なんぞを選んだクロード殿下に失望する」

「クロード様は関係ないでしょう?!」

「まぁ、オリオール候の娘などよりは幾分かマシかもしれないが」


 なんてことだ。まさか兄からそんな理解のある言葉が続くとは思っていなかったから、驚いて腰を浮かせてしまった。当然、兄には嫌な顔で見られたけれど。


「取り合えずお兄様がヴィオレット派じゃなかったのは、よかったわ……」

「今更だな」

「今更、だけど……」


 ふぅと息を吐いた兄は、それからしばらくトツトツと指先で腕を叩きながら何かを考えふけったかと思うと、おもむろに、「お前はそのせいで自分の身に起きるかもしれない危険性について、ちゃんと理解しているのか?」と問うた。

 何をそんな真剣な顔をしているのか。何度もそう説明したはずだ。

 たしかに囮にされると聞いて、怖くないはずがない。でもマリシアンだって無為にアンジェリカを犠牲にしようとしているわけではないし、そもそもそのために兄にもジュードに協力を取り付けるようお願いして欲しいと言っているのだ。危険な目に遭うかもしれない事なんて、とっくに覚悟の上だ。

 だからそのことをはっきりと伝えたなら、しばらくじぃっとアンジェリカを見つめた兄は、やがて深い吐息をこぼした。


「ヴィオレット派とやらの騒動には、地方も迷惑を(こうむ)っている。今はまだエメローラ領に目立った被害は出ていないが、ここは仮にもお前の実家だ。今後どんな誹謗中傷の影響が出るとも知れない。まったく、いい迷惑だ」

「すみませんねッ」


 もうっ。なんでこの人、いつも一言多いんだろう!


「よりにもよってうちに面倒な“餌”まで転がり込んできて……国王陛下とクロード殿下にはそうなる前に始末をつけてもらいたかったが」

「可愛い妹が大変な目に合うかもしれないんだから、もっと気遣ってよ!」

「それがどうした」


 この男っ……。


「だというのに国王陛下は王都での暴動の鎮圧にすら手こずっている。そうしている内にも噂はどんどんと広がって、このままでは国を挙げた内乱にもなりかねない。そうなってしまえば、いざ鎮圧したところで領主連中はまとめて(ない)(らん)(ほう)(じょ)か統治不行き届きの罪に問われ、責任を取らされるだろう。くそっ、くだらない……」


 兄はその後の言葉を飲み込んだようだったが、とりあえず王都すらも掌握できない国王に対する苦言が溜まっているらしい。


「あの、お兄様……だから、つまり?」

「正直言って、今更ジュード殿下を取り込もうなんざ片腹痛いと思っているし、お前らの案は愚策だと思っている。だがお前は現状、唯一王家側で現状の打破のために何かしようとした人間ということになる。内容はあまりにも()(さん)な上に計画性に乏しいが……」


 だから一言多いんだよっ。


「だが……お前がジュード殿下の罪を免罪する覚悟があるというのであれば、それ自体に反対する理由は無い」

「もう、もったいぶっちゃってっ。お兄様ったら、いけず~!」


 きゃっ、とはしゃいで見せたら、もれなく絶対零度の冷たい眼差しを向けられてしまった。

 反省する……お兄様にこの手はまったく逆効果なんだった。


「言っておくが、お前のためなどでは微塵もないからな。俺はただこの機会に殿下を見つけ、お前達の策に協力をするだけだ。それでお前がどうなるのかは、精々自分でよく考えろ。結果、ジュード殿下が国を出て行く選択をしたとしても俺は止めないし、引き止める協力もしない。そう殿下が決められたなら、それを手伝う」

「手伝うことはなくない?!」

「それが嫌なら、他を当たれ」


 うぐっ……果たしてこの兄を信用していいものか。下手したら、探すふりして先に接触してジュードを逃がしたり……うぅん、無くもなさそうだ。

 だがそう悶々と考え込んでいたら、隣でマリシアンが「卿に協力を求める」とはっきり口にしたものだから、驚いて顔をあげた。


「マリシアン……」

「少なくとも俺だけでは、ジュード殿下を探すだけで無意味に時間をかけてしまう。だがダリエル卿は殿下が何処にいらっしゃるのかを知っているようだ」

「え……?」


 そういえば、なんだか兄の口ぶりが先ほどから、ジュードの居場所は見つかって当然みたいな物言いな気がする。

 まさかこの人……思っている以上に、ジュードという人について詳しいんじゃないか?


「それに……なんだかんだ言って、卿は妹を大事にするように思う」


 いや、それはないと思う。

 思わず胸の内でそう即答したのだが、侯爵令息の言葉に嫌そうに顔を歪めながらも不躾な否定の言葉は口にできなかったらしい兄の表情が大変いい気分だったので、否定はしないで置いた。

 兄には睨まれたけれど。


「分かったわ。お願い、お兄様。マリシアンとジュード殿下の所まで行って、殿下を連れて戻っていらして。それ以上の迷惑はかけないわ」

「対価は?」

「……」

「……」

「はぁぁ? お兄様、ちょっと行ってちょっと帰って来るだけの妹の頼み事に、対価まで求めるわけぇ?!」

「当たり前だろう、愚か者。領主代理が妹の我儘で領地を空けるなど、前代未聞だぞ。この損失をお前はどうやって埋めるんだ」


 前代未聞は言いすぎだと思う!


「わ、分ったわよっ。だったら無事に成功した暁には、聖女の名のもとにエメローラ領にすっごい観光名所を誘致してあげるわよっ」

「いらん」


 なんだとぉぉ?!


「じ、じゃあ王太子殿下のお出ましとかっ」

「ジュード殿下をお招きした領地にクロード殿下を呼べだと? この領地を政争の舞台にする気か」


 それは言いすぎだと思う!


「そうじゃなくてっ。もっと平和に、クロード様だけをっ」

「余計にくだらん。接待なんぞ面倒臭いことをさせる気なら、お前ごと家から追い出す」

「はぁっ?! じゃ、じゃあ、じゃあ……」


 どうしよう。兄が望むものがちっとも分からない。

 兄が好きなもの……うぅん。う、馬? いやいや。えっと、ジュード殿下? いや、アンジェリカがまだ会ったこともないジュード殿下関連の何かをどうこうできるはずもないし。

 あと兄が関心を寄せたものとなると……。


「もうっ。じゃあいっそ、リディアーヌ公女殿下のサインなんてどうよ?!」

「っ……」


 え、うそっ。投げやりに口にしただけの突発的な発言だったのにっ。反応した?!


「うちのお兄様はすごい。頼りになる、ってお手紙を書いて差し上げるわよ。もしかしたらお兄様宛てにお返事があるかも!」

「っ、っ……」

「そういえば私、公女に借りたハンカチを持ってるんだった。これも譲ってあげるわよ?!」

「ふむ……やぶさかではないな」


 な、なんてことっ?!

 エメローラ家の娘になり、ダリエルの妹になって早四年。今更知った驚愕の事実。今ほどに、この人と血が繋がっていることを実感したことは無い。


 まさかお兄様が“ミーハー”だったなんてっ。

 私とお兄様は顔だけじゃなくて、性格まで似ていただなんて!

 ショックである。






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