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10-31 パパと娘

 セナンゼル候がベルテセーヌ離宮に調査に入った。

 そんな話が耳に入ったのは、束の間のかつての友人達との邂逅にゆっくりと瞼を降ろし、再びヴァレンティンのリディアーヌとして離宮に立ち返って程なくした頃のことだった。

 突然何の前触れもなく、皇帝不在のこの皇宮で皇室の武門統括者が騎士を率いて議会での承認もなく一国の離宮に乗り込んだのだ。驚嘆してすぐに情報を求めたが、幸いにして調査というほどの仰々しいものではなく、襲撃があったという噂に対する情報収集の一環であったと、あちらに残してあるユリタス卿から連絡があった。

 だがその介入にここぞとばかりに教会の聖騎士が同行したというのは不審きわまりなく、ベルテセーヌ側がそれに忌避感を抱いてすげなく追い返したのと同時に、ユリタス卿の目にはセナンゼル候側もまた非協力的なベルテセーヌの態度を随分と(いぶか)しみ、ぞんざいな様子で出て行ったように映ったとのことだった。

 まったく、面倒ごとばかりで嫌になる。


 じっくりと目を通した書類を机において、何かマーサに甘いものでも頼もうかしらと目頭を揉み絆していたら、「失礼します」と声をかけてやって来たフィリックが追加の書類を机に置くついでに、「珍しくカラマーイ司教が離宮に来ていましたよ」と報告した。


「あら、うちの放蕩副教区長様が? 相変わらず神出鬼没ね」

「侍府に呼ばれたようでしたが」

「……顔でも見ておこうかしら」


 どうせ一休みしたかったところだ。椅子にかかっていた肩掛けをさらりと纏って席を立つと、フィリックには処理済みの書類を確認しておくよう頼んでふらりと部屋を出た。

 離宮は城と呼べる規模とはいえフォレ・ドゥネージュ城に比べるとはるかにこじんまりとしているから、本棟の階段を一つ下りればすぐにも人に行き交う。通りすがりの文官にカラマーイを見なかったかと問えば二階の応接間の方向で見たというから、なにともなしにそちらに足を向けてみた。

 そうすれば早々と話も済んだのか、廊下の先から相も変わらず飄々とした様子のカラマーイがやって来て、すぐにこちらに気が付いたように足を止めると「おやっ」と口端を吊り上げ、ぶんぶんと手を振った。

 まったく……相変わらずである。


「随分と久しぶりに顔を見るわね、カラマーイ司教。まったく、一体いつもどこで何をしているのかしら」

「知っての通り、大聖堂でお偉い様方に扱き使われておりますよ。ほら、見てください、この(すす)けた一張羅。三日後から始まる花祭りのために、他の司教達と総出で香木を燃やし続けて、()(あか)()の灰を大量生産していたんですよ」

「確かにすごいサントベロの匂いだけれど……そういえば花祭り。そんな季節だったわね」


 花祭りは正しくは(しゅん)(てん)の祭日といい、およそ春の盛りの月におこなわれる年中行事である。

 国によって内容も時期も違っているが、およそ夜よりも昼が長くなる夏気候に入る日を()()に、盛りとなった春の花を町中に飾って冬の終わりを祝うのだ。

 皇宮ではいつも初春の終わりの日から盛春の初めにかけて三日間の祝祭となると聞く。ヴァレンティンでは盛春の中日を前に一日だけ行うのだが、皇宮の方は時期も早くて期間も長い。春の遅いヴァレンティンと違い、二つの月が綺麗に輝くこの頃に行う国は多いらしい。そういえばベルテセーヌもそうだった気がする。


「せっかく綺麗に飾った春の花に、教会がたっぷりの灰を振りまいて汚してゆく行事よね」

「おっとっ、姫様。これはありがたぁい清めの灰であって、汚しているわけではありません」

「わざわざ直前まで余分に香木を燃やして祝祭用の灰を大量生産している聖職者に言われてもねぇ……」


 そう薄汚れた格好の司教様を上から下まで見下ろしたところで、カラマーイも実に愉快そうに大口を開けて笑い、「まっ、そうなんですが!」と悪びれもなく同意した。


「私のノルマまであと三百グラメリルありまして。明日も一日火鉢の前です」

「三百……」


 ちょっと想像がつかないのだが、栄えある大聖堂で司教様達がずらりと並び、陰鬱な顔をしながらだらだら香木を燃やしているところを想像すると笑えない。今頃アルセール先生も火鉢を突いているのだろうか。


「だったらこんなところに来ている暇はないのではなくて?」

「おっとっ、忘れてもらっては困りますよ、姫様。私はヴァレンティン教区の司教です。勿論、この離宮にある聖堂でも祭壇の花を供え灰をくべ、この離宮で最も高貴な女性に花冠を捧げますよ」

「あぁ」


 そういえば離宮の片隅にも小さな聖堂がある。今更それを思い出したところで、熱心なわけでもない聖職者に「やれやれ、公女殿下がそれでは困ります」なんてため息を吐かれたのだが、それにはすかさず「貴方にだけは言われたくないわよ」と突っ込んでおいた。

 今日の今日までヴァレンティンでの祭祀をすっぱり放り出して大聖堂でご奉仕していた司教様だ。今日だってうちの侍府から『うちの祭祀はどうするんですか?!』と言われてようやく思い出して帰ってきたにすぎないはずである。


 そんなどっちもどっちな会話をしていると、「リディ」と養父の所にいたはずのマクシミリアンの声がしたものだから、はたと振り返った。

 最早自宅のように寛ぎ切ったシャツとズボン、ひっかけただけのヴァレンティン織りの上着にふわふわと掻き乱した金の髪。もうちっともこのヴァレンティン風の意匠の廊下に溶け込み切っているものだから、これを見たカラマーイもいつになくカラカラと笑いながら、「いやぁ、溶け込んでおりますね、公子殿下」などと挨拶もなく愉快な声をあげた。


「そういう司教も相変わらずだね。その恰好、どうしたの? なんか黄ばんでない?」

「お恥ずかしいっ。ちょうど姫様にもそのお話をしておりました」

「花祭りのための灰を作るのに、()えある司教様方が連日ちまちま火鉢で香木を燃やしているそうよ」

「え……あれって御灯明の清らかな灰なんじゃなかったの?」

「まったく同じことを突っ込んだところね」

「いえいえ、公子様方。町中に大量に灰を振りかけて行くんですよ。毎日ほんの少ししかとれない御灯明の灰なんかで間に合うはずがないではありませんか」

「……知らなくていいことを知ったかもしれない」


 まったく同感である。


「それで? 私に何か用だった? ミリム」

「あぁ、そうそう。閣下が呼んでる。ちょっと相談事」

「すぐに行くわ」


 どうせ出会いがしらの挨拶もまともにしていないカラマーイ相手に、丁寧な別れの挨拶もいらない。


「じゃあカラマーイ司教。ほどほどに頑張って」

「頑張りますので、祝祭が終わったら是非とも私のために、新しい司教服を支給してくださいと、(くに)(もと)の教区長様にお願いしてください」

「ふふっ。ちゃんとうちの聖堂のお勤めも果たしてくれたなら、考えておきます」

「やる気が出ましたね」


 そう言いながら手を振るカラマーイに、奥の応接間から出てきた侍従が「あ、まだいてくださって良かった!」と、手に書類を持ちながら駆け寄って来た。どうやらあちらも大変そうである。

 公女様方に気が付いた侍従がぱっと頭を下げて丁寧に見送る中、こんな時でも丁寧にエスコートをしてくれるマクシミリアンの腕に手をかけて、一つ上の階の養父の執務室を目指す。

 長らく顔を見ない間、カラマーイへの不信感が募らなかったわけではないのだけれど、やはりあのお調子者の司教様は顔を見ると思わず絆されてしまいそうになる。悪戯なら沢山考えていそうだけれど、やはりどうにも悪事とは結び付きそうにない御仁だ。


「私、何でカラマーイ司教を疑っていたのかしら、なんていう気分にさせられるわ」

「あの人、本当に変な司教様だよね。ザクセオンではまず見たことのないタイプだよ」

「私もあんな愉快な聖職者、カラマーイ司教の他には知らないわ」


 思わず苦笑しながら養父の執務室の扉を叩いたところで、「入れ」と養父の声がする。


「何やら今、カラマーイとか聞こえた気がしたぞ」


 入ってすぐ養父がそう声をかけてきたので、「ええ、離宮に来てますよ」と答えながら、勧められるまでもなく客人用のソファに腰を下ろした。すぐに養父も席を立ち、目の前の席に腰を下ろす。


「今更あの放蕩司教が何事だ?」

「侍府が呼び出したようですよ。離宮の聖堂でも花祭りをしないといけないからって、今更大慌てで準備をしているようです」

「あ」


 ほらやっぱり。お養父様も忘れてた。私ばかりが責められたものではないではないか。


「そういえばあったな。ふむ……何の手配もしてないぞ?」

「優秀な侍府がきちんとやってくれているようです」

「愛娘に花冠を贈呈するという大事な仕事が待っているというのに。なんということだ」

「あぁ、ヴァレンティンではリディが花冠の乙女なんだ」


 そう問うたマクシミリアンに、「お養父様には姉妹も妃もいないからね」と答えた。

 花祭りでは花冠を授けられた乙女が開会を宣言して、祭壇に花を捧げる。これは乙女とは名ばかりで、普通は国主の妃や姉妹など、国でも特に位の高い女性が務めるのを常とするのだが、何しろヴァレンティンには傍系含め女子というものが少ないので、六歳で亡命し、七歳の時に初めてヴァレンティンの花祭りに参加した時から、一時期を除いてずっとリディアーヌが花冠の乙女役を務めてきた。

 さすがに七歳の女の子はどうなんだと今になっては思うのだが、周りもちっともそれに何も言わずに受け入れてくれていたのだから、当時から養父がどれほどリディアーヌを可愛がってくれていたのかが分かる。


「ザクセオンはトルゼリーデ様?」


 なんかちょっと、花冠が似合いそうなお妃様ではないのだが……なんて思いながら興味本位で問うてみたら、クスクスと肩を揺らしたマクシミリアンは、「想像通り、まったく似合わなくて笑えたよ」と言う。


「でもさすがにそろそろいい年齢だから、最近は見てないかな。結婚前まではアデレテッタ姉上とか、一昨年は従妹で、去年は異母妹のレーベッカだった」

「アデレテッタ様ならとってもよく似合いそうね」


 父親似のちょっと強面な長女ペトロネッラ様と違い、二番目の姉のアデレテッタとマクシミリアンは比較的母親似だという。そういえばマクシミリアンは女装も実に様になっていた。あれに花冠なんて付けさせたら、とても似合いそうだ。


「あと二年もすれば末の妹が十歳だから、役目を引き継がせるために姉上やレーベッカにやらせてたんじゃないかな。今年は上の妹のジードルーン辺りだと思う」

「末の妹って、トルゼリーデ様の御子?」

「そう。アルブレヒトの同母妹ね」


 そんな話をしている内に、パトリックがリディアーヌの前に書類を並べ終えたようで、「ご確認をお願いします」と促してきた。それをさっさと手に取り、自分が提出した書類の承認書類であるのを確認すると、「承りました」と査収した。とはいえどれも養父がわざわざ自分を直接呼び出すほどの内容ではない。


「本題はこっちだ」


 思った通り本題は別にあったようで、目の前に置かれたのはすでに封も切られた一通の招待状だった。

 封筒の封蝋は紫紺。紋は何度も目にした見慣れた青鹿。ザクセオン大公からの招待状だ。

 それには思わず手を伸ばすのにも躊躇したが、見ないというわけにもいかない。恐る恐る開いてみると、非常に簡潔に、『話したい事、話すべき事がある』といったことが綴られていた。


「これは……どう、判断したらいいのか」

「リディとミリム君宛てだ。まったく、この私を排除して娘を誘うとはけしからん。断ってくれてもいいぞ」


 養父はそう言ったけれど、生憎とその理由含め、断る理由は思いつかなかった。

 よもやザクセオン大公が自ら声をかけて来るとも思っていなかったのだが……だがマクシミリアンも呼ばれたということは、内容はそのことについてなのだろう。

 どうして今このタイミングで? とは思うが、今日の議会で、あくまでも暗黙の了解であったリディアーヌ公女と亡きクリストフ二世の関係性は確固たるものとして宣言されたも同然となった。その傍にザクセオンの公子がいることについて、大公もきちんとけじめをつけねばならないと判断したのかもしれない。


「ミリム……貴方がまだ時間を要するというのであれば、断っても構わないけれど……」

「いや、いい。リディに問題が無ければ、一緒に行って欲しい。そのつもりでリディを呼びに行ったんだ」

「……そう」


 なるほど。養父も気を効かせて、先にマクシミリアンに意見を問うた後だということだ。

 思いのほか養父がマクシミリアンを慮って身内扱いしているのが少しくすぐったい。


「リディ、君はたしか先だって、ベルテセーヌ王が皇帝に立たなくなっていったことと聖女の関係性について、聞きたがっていたな?」

「ええ、お養父様。そういえば聞きっぱなしになっていましたけれど。何かご存じなのですか?」

「……」


 何故か一度むっすりと口を引き結んだ養父は、やがて一つため息をつくと、かしかしと髪を掻き乱しながら「知らん」と投げやりな言葉を吐いた。


「いや、まぁ知らんというのも違うが……上手く説明しかねる」

「知ってはいるんですね」

「私は断じてクリストフ二世と仲など良くなかったが、あれでも義兄上だからな。ふんっ。まぁそれなりに、あれこれと……その、まぁなんだ。色々と聞いたとも」

「父からは、面倒くさがりで引きこもりなうちの大公様は、クリストフ陛下に首根っこ掴まれながら(とう)(とう)と覚えるべきことを叩き込まれたと聞いています」

「パトリック、黙れ」


 あぁ、うん。パトリックのおかげで何となく十五年前の状況を理解できた。


「あいつのせっきょ……ごほんっ。言っていたことなんざどうでもいいんだがな。だが一応、義兄上からは『娘には言ってくれるなよ』とおど……お……いや。そう、頼まれているんだ」


 うんうん。へぇ。ふぅん。


「別に大したことでもないが、客観的な意見というのもいいだろう。その上で……リディ、君の実父の口にしたままの言葉を知りたいと思ったなら、また私に聞きなさい。私は義兄上より愛娘のお願いごとを優先する良いパパだからな」

「……お養父様」


 養父はこれまで、母の話はたくさんしてくれた。でも父の話はほとんどしてくれなかった。

 理由を聞いたことはないし、幼い頃から何となく触れ難い話であるように思っていたから、あえて聞いてみたことも無かった。

 もしかしたらよほど仲が悪かったのかしらなんて思ったこともあったけれど、多分そうではない。養父は『大して仲なんて良くなかった』だなんていうけれど、本当は、ちっともそんなことなかったんじゃないかと思う。父の人柄をよく覚えているわけではないけれど、何となく、この義理の弟を随分と可愛がっていたんじゃないか、なんて……そう思うのは何故だろうか。

 それに首根っこを掴まれたとはいえ大人しく説教を受けたり脅されたりしたらしい養父とて、本気ならひょんと逃げ去って引きこもるくらい平気でできるのがヴァレンティン大公だ。なのにそうしていないのだから、養父の方も、姉を奪われた憎らしさだなんていいながら、相当懐いていたのではないだろうか。

 あぁ……その頃の様子を知らないことが、とっても残念だ。


「叔父様はお父様の話をちっともして下さらないから、てっきり仲が悪かったのかしらだなんて遠慮していたわ」

「むっ……」

「でもそうじゃなかったみたい」

「そんなことないぞ。天敵、それも竜以上の難敵だぞ。あの人のよさそうな顔に騙されたが最後、骨の髄までしゃぶりつくされ操られて……あぁ、そういえばあの人はミリム君に少し似ているな」

「え」


 いきなり恋人の実父に似ていると言われたマクシミリアンが困った顔をしたが、リディアーヌはそれ以上に困った顔になってしまった。

 そんなことを言われても、実父のことはよく覚えていないし、マクシミリアンと似ているだなんて思ったことも無かったのだが。


「ちなみに閣下、参考までに、どんなところが似てるんですか?」

微笑(ニコリ)(がお)が猛毒的で人たらしなところ」

「あー……」


 思わず声をあげたリディアーヌに、「えっと、それって誉め言葉ですか?」と困惑気なマクシミリアンには、部屋にいた古参の侍従も肩を揺らして笑った。彼らもクリストフ二世のことはよく知っているのかもしれない。多分、悪い意味の“人たらし”ではないはずだ。


「言った通り、人たらしだからな。ザクセオンのじじいが……先代の大公が馬鹿馬鹿しい死に方をしたことは、リディにも話したことがあるだろう?」

「……ええ」

「今に置き換えてみれば、その異様さも分かるだろう。最大対立派閥同士なのに、その無念の死を悼まれて自ら命を絶たせるほどに、義兄上というのは異様な人たらしだった。君らの世代にはピンとこないだろうがな。だがあの時は本当に……」


 そう言った切り養父はぐっと言葉を噤んでしまったけれど、何となく脳裏には昼間の議場でのヘイツブルグ大公の様子が思い浮かんだ。

 クリストフ二世の死――言葉にすれば簡単だが、それによってもたらされた空虚感と絶望感は、もしかしたらリディアーヌが思っているどころの物ではなかったのかもしれない。

 思えば今日の議場でも、選帝侯達は妙に静かだった。仕方がないことだと思っていたが、それにしたって、養父がほとんど反論もせずじっと黙っていることは少し異様だったかもしれない。

 だがそこに、言葉にはしがたいほどの忘れられないその人の面影が詰まっていたのだとしたら、それは望んで口を噤んだのではなく、噤まざるを得なかっただけなのかもしれない。


 そうやって養父は十五年もの間口を閉ざし続け、責めるのではなく守ることを選んだ。

 一度は白紙の投票用紙を破り捨ててまで歯向かいながら、けれどただ一人残されたリディアーヌを守るために、誰よりも憎い男に首を垂れ、自分の娘として王籍簿に刻んだ。

 その時、養父は一体どれほどの苦渋の思いをしたのだろうか。

 なんだかきゅうっと胸が切なくて、思わず席を立つと養父の傍らにしゃがみこんで、その手を握りしめた。


「お養父様……有難う御座います。大好きですわ」

「むっ……むむっっ?! むむむっっ?!」


 な、何、その反応。なんか恥ずか……。


「ミリム君ッ、見たまえ! うちの娘はパパが大好きだ!」

「……ははは……えぇ、そうですね」

「……」

「なんだ、これは! 今日は祭日か?! 大祝祭か?!」

「……お養父様……」


 なんか大盛り上がり過ぎて、自分の言葉を後悔しそうなんだが。


「えぇ、めでたいですね……ですが私は嫉妬で暴れ出しそうです」

「ふははっ、見たか! これがパパの力だ!」

「えぇえぇ、そうですね……」

「どうだっ、うちの娘は可愛いだろう?!」

「それは間違いなく」

「うむっ!」

「…………」


 うん。もう気にするのは止めよう。

 そそくさと傍を離れようとしたのに、一体うちの養父は娘をいくつだと思っているのか、後ろからぎゅうと抱きすくめられ膝に乗せられ、頭に頬ずりまでしてきた。

 今すぐマクシミリアンの頭を殴って記憶を消し飛ばして差し上げたいくらいの羞恥プレイである。


 もう二度と、他人の目の前でお養父様を甘やかさないことを誓おう。

 絶対に。

 絶っっっ対にだ。






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