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10-6 公子様、逃走す(1)

 ほどなく開かれた後期選帝議会開会前の前夜祭は、すでに何度も皇宮で開かれたものとあって、なんら問題が起きることもなく粛々と挙行された。

 およそ集まっている(めん)()も同じであるが、例えば司教試験を通過し身軽となったアルセール先生がエティエンヌ猊下に連れられて参加しているように、春の人事異動で多少顔の変わったところが見受けられた。また聖都経由で皇宮に向かったはずのマクシミリアンの動向が今まで聞こえてきておらず、無事に皇宮入りできたのだろうかとハラハラしていたのだが、生憎とこの前夜祭の日になっても彼の姿を確認することができなかった。

 ザクセオン大公とペトロネッラ様を視線で追いかけてみたのだが、探るように睨まれた以外に彼らの行動にもおかしな様子は見えず、ほどなくそんな視線に気が付いたらしいアルセール先生が養父に挨拶をする体裁でコソコソとリディアーヌに、「そういえば聖都でマクシミリアン殿下にお会いしましたよ」と囁いた。


「皇宮の港までは一緒だったので皇宮には来ていると思うのですが」

「そのわりに、姿が見えませんけれど……」


 前半戦の時のようにたださぼっているだけならいいが、もし離宮に軟禁状態などという話になると放っては置けない。

 ただその心配は方々にダンスの誘いをしていたマシェロン伯がそのノリでリディアーヌに声をかけダンスホールへと連れ出して下さったついでに、「こちらに着いたとの噂からこの方、一度も離宮には現れず城下に潜伏なさっています。大公閣下も公爵夫人も、年始の出奔をとっちめようと大捜索させておりますが、まだ捕まっておりません」などと苦笑した。

 面白い話として聞けば確かに面白いが、一体どんな大捜索をかけられているのかと考えるとぞっとしそうである。まだ助けを求める声は届いていないが、大丈夫なのだろうか。


「とはいえ明日は議会の開会。選帝侯議会棟には顔を出さねばならないでしょう?」

「さしずめ、今は最後の根回し中といったところです。実は明日にはアルブレヒト公子殿下がこちらにいらっしゃる予定なのです。そちらと合流して外堀を埋めてから仕掛ける予定なのでしょう。ただやり逃げる予定なので、逃走ルートは確保しておいてほしいとお願いされております」

「そもそも追われる前提なのね……」


 色男なだけあってとても滑らかなエスコートでクルリと回され、トントトンと軽やかにステップを踏む。案の定、ダンスも大層手馴れていらっしゃる。

 時折チラチラとこちらを睨むペトロネッラ様の視線が気にならないでもなかったけれど、うちの者達も熱心に動き回って、ザクセオン側の意識がこちらに向かないよう工作してくれている。それにマシェロン伯は先程から次々とありとあらゆる女性を誘いまくっているので、幸いにして密談の誤解は受けていないようである。

 しかし繋がりを懸念されない危険な密談ではあるので、極力表情は当たり障りないものを装い、曲が終わると同時に恭しく手を取り甲にキスをするパフォーマンスじみた所作を取ったマシェロン伯に対し、スッとわざとらしく手を引き抜いたリディアーヌは何も言わず背中を向けてツカツカと壁際に去っていった。こうすることで、好色なマシェロン伯がちょっとちょっかいを出してみただけに見えるだろう。


 ただリディアーヌが珍しくいつもの相手以外とダンスホールに出ていたことが目についてしまったのか、壁際に到達する前に「私とも踊っておくれ!」と飛んできたダグナブリク公に取っ捕まってしまった。相変わらず愉快な辺境公閣下である。

 途中、「そういえばザクセオンの公子が見当たらないが」と、世間話なのか探りを入れようとしたのか分からない言葉を囁かれはしたけれど、「どうして毎度毎度サボってばかりの公子よりうちのお養父様の方が不良扱いされるのか不思議でたまりません」などとはぐらかしたら、「確かに!」と大笑いしながら見逃して下さった。

 それが済んだかと思いきやカクトゥーラのリヴァイアン殿下が。かと思えば次はセトーナのアブラーン王子殿下まで。一体何が原因なのか知らないが、いつもなら養父の目を憚って声をかけてこない人達が次から次へと声をかけてきて、結果、今までにないほどに足がパンパンになるほど踊らされ続けるという大変な目に遭った。

 無論、こんな状況を見て「保護者の許可なく娘と踊るなんて許しません!」と飛んできたお養父様がそれから三曲ぶっ通しで娘を放してくれなかったのが一番の原因である。

 世間ではそんな情景に公女を憐れんでくれるわけでもなく、「あの大公閣下、踊れたんだな」「久しぶりに見た」などというお養父様の珍行動に対する噂ばかりが巻き起こっていたらしいことを、後にフィリックが報告してくれた。

 大変、不必要な報告であった。


  ***


 そんなくたくたな体を何とか起こし、マーサにたっぷりの香油と癒しのハーブを放り込んだ湯を用意してもらい疲れを癒したところで、翌日にはついに後期選帝議会の開会宣言となった。以前同様、禁事棟の鍵が開かれ、議会棟でも七王家五選帝侯家による開会の宣誓がある。

 禁事棟の方にはひょっこりと遅ればせながらマクシミリアンも顔を出したが、その顔を見るや否やザクセオン大公が今にも掴みかかりそうな顔をしていたのに対し、何かをヒソヒソと囁いたマクシミリアンに一瞬にして大公閣下が口を噤まされたのが印象的だった。一体何を囁いたのか。しかしその後の議会棟での開会では再びマクシミリアンの姿は見えなくなっており、どうやらペトロネッラ様を避けていることが想定された。

 さすがにこんな公子様の動きは周囲の目にも奇異に映ったのか、「一体ザクセオンはどうしたんだ?」という囁き声が方々から聞こえており、議会開始早々、空気は大変不穏なものとなっている。唯一ニヤニヤと期待に満ちた顔になっているのはダグナブリク公くらいなものであろうか。


 そしてそんな不穏な空気は翌日。リディアーヌが禁事棟でレヴェイヨン候とカクトゥーラの話題で相談を受けている時に、さっそく形となって飛び込んできた。

 ええ、その名の通り。まったくそのまま。何の先触れも予兆もなく、禁事棟三階のヴァレンティンの個室で、突然暖炉脇の隠し扉がバンと開かれ、飛び込んできた。

 そこに扉がある事を知っていたリディアーヌはまだしも、全くそんなことは予期もせずのほほんと公女と話し合いをしていたレヴェイヨン候の驚きは半端なく、ソファーから跳ね上がって警戒態勢を取ったのは致し方のない事だった。


「こ、これは、一体……どういうことですかっ? 公子殿下」


 隠し扉から転がり込んできたのは埃を纏ったローブに身を包んだ二人の男で、ケホケホと咳き込むその声に聞き覚えがあったのか、レヴェイヨン候も段々と胸を撫で下ろす。

 (ほこり)を散らしながらなんとか「突然すまない」と声を絞り出したのはマクシミリアンで、その隣で()せこんでいるのはおそらくマシェロン伯だろう。

 ただ少々タイミングが悪かった。部屋の中には個室付きのメイドであるリオがいて、外に立っていたはずの騎士も「何事ですか」と扉を叩く。これにはリディアーヌも「うぅんっ」と頭を抱えざるを得なかった。


「ミリム……さすがに突然隠し扉から飛び込んでくるのは予想外だったわよ」

「ごめん、リディ。これしかなくて。こほっっ、こほっっ」


 やれやれ、参った。どうやら前回と違い、慎重というよりはとにかく大急ぎでこちらに逃げ込んできたらしい様子である。


「レヴェイヨン候、申し訳ないけれど外の騎士達に『何でもない』とはぐらかしてもらえるかしら? それからリオ、奥から濡れタオルを二つお願い」


 察しよく「分かりました」とすぐに頷いたレヴェイヨン候に対し、リオはどうしたものかとしばらく躊躇う様子を見せたけれど、周りに誰も頼れる相手がいないものだから、ほどなく頷いて奥へ向かった。その間にリディアーヌも二人を表からは見えない奥の部屋へと誘導する。

 埃をかぶったローブを脱がせ、「取り敢えずお水でも」と差し出せば、「有難い」と言って二人ともいがつく喉を洗い流した。濡らしたタオルを手にやって来たリオがやってくると、彼女は一瞬、すす汚れたローブを脱いだ随分と見目麗しい貴公子達にぱっと頬を染め、自ら濡れたタオルでマクシミリアンの頬に手を伸ばそうとしたようだったが、それはリディアーヌが眉をしかめるよりも早く「結構だ」と言ってタオルを受け取ったマクシミリアンによって阻まれた。

 ふぅ。たかだかこんなことに嫉妬だなんて。いかんいかん。

 ひとまず二人が落ち着いたら事情を聞こうとかと思っていたが、しかしそれよりも早く、扉の外を叩く音に阻まれる。顔を出したのは騎士達をあしらってきてくれたレヴェイヨン候だ。


「姫様、外にラルカンジュ侯爵が。こちらに公子殿下がいらしていないか、と」


 チラと見やった先でドキリとマクシミリアンと肩をすくめるマシェロン伯を見て、どうやら二人がペトロネッラ様から逃げ禁事棟に逃げ込み、その旦那様に追いかけられていることを察した。

 追いかけてきたのがザクセオン大公ではなくお姉様の旦那様ということは、やはりペトロネッラ様が一番の難敵として立ちはだかったようである。


「今禁事棟を出たらどうなるかしら?」

「まず間違いなく、生きて離宮は出られない気がする」

「すでにペトロネッラ様には家出計画を知られた後なのね」

「少し予定と違う形でね。ライナーとクラウスが囮として逃げてくれたんだけど……ジャンがいなかったら私も危なかった」


 なんと……禁事棟に入れない二人も散り散りに逃亡中のようだ。


()(かが)致しますか? 姫様」

「レヴェイヨン候、悪いけれど適当に言い訳をして追い返していただける? それから少し間をおいて、東棟の議場にいるはずのパトリックを呼んでほしいわ。可能かしら?」

「ええ、()(やす)い事です。いやはや、姫様の周りでは騒ぎが絶えませんなぁ」

「まったくだわ」


 そう苦笑しながら見送ったところで、「レヴェイヨン候は派閥違いなのでは?」とマシェロン伯が心配そうに問うた。まぁ、普通なら協力を仰ぐ相手としては不適切だろう。だがヴァレンティンでは何ら問題ないのである。


「派閥違いでも大公家に忠実でいてくれるのがヴァレンティン貴族よ。レヴェイヨン候は信頼していいわ。ただ」


 チラリと見やった先で、部屋の片隅に小さくなっているリオを見たリディアーヌに、マシェロン伯も一つ頷いた。禁事棟付のメイドについてはそうとは言い切れないことを、彼も存じているのだろう。


「リオ、貴女は許可があるまでこの部屋を出ないように」

「は……はい」


 まぁこれだけ睨まれていれば早々身勝手は出来ないだろう。


「それで、ミリム、マシェロン伯。一体これは何事なのかしら?」


 ちょっと呆れた顔をしながら二人に椅子を勧め、リディアーヌは自ら壁際の茶器の前に立った。それを見てリオが手伝うべきかと動きかけたが、皆の視線が気になったのか、そのままじっと佇む。お茶を淹れるくらいはメイドとして手伝ってくれても良かったのだが、正直ほっとした。もしかしたら自分はリオに嫉妬しているのだろうか? いやいや。いやいやいや。そんなまさか。

 こほんと一つ咳払いし、簡易ランプに火をつけてポットの水を沸かし、茶器に今日持ち込んだばかりの茶葉を三人分注ぐ。まぁほら、自分で淹れた方が毒だなんだと心配しなくてもよいからね。それだけの理由だ。そうだとも。


「ひとまず驚かせて悪かったよ、リディ。こっちにリディがいない可能性と別の誰かがいる可能性もあってぎりぎりまで悩んだんだけど……とりあえず、いてくれてよかった。あと大公閣下がいらっしゃらなくて良かった」

「お養父様があの隠し扉を見たら、さぞかしお説教が止まなかったでしょうね」

「同じくらいの好奇心も爆発して、そればかりでは済まない気がする」

「あー……怒りに(わめ)きつつも嬉々として探検するお養父様が目に見えるようだわ」


 どうやら少しは落ち着いて息も整って来たらしい二人にホッとする。

 春とはいえまだ肌寒い今の季節、コポコポと少しずつお湯の沸いてゆく音が心地よい。


「随分と予定よりも慌ただしく逃げる羽目になったようだけれど」

「うちの弟が思いのほか兄想いで心配症で可愛かったんだよ……」

「はい?」


 思わずクルリと振り返ったところで、深いため息をついている二人を見た。

 ふむ。どうやらアルブレヒト公子の行動で、何やら予定が狂ったらしい。


「そういえばアルブレヒト公子は昨日、こちらにいらしたとか」

「ああ。城下町で落ち合って先に諸々打ち合わせる予定だったんだけど、あっちの同行者に裏切り者が紛れ込んでいて……あぁいや、裏切り者というか。()()を称する姉上の手下が潜り込んでいたみたいで、会えなかった。すぐに父上に知られて追手が来てしまってね。仕方がないから私もレヒトに会うために離宮に侵入したんだけど」


 何故公子様が自分のところの騎士を追手と称し、自分のところの離宮にコソコソと侵入する羽目になっているのか気になるのだが、どうやらマクシミリアンは本気で父や姉から逃げ回っていたようである。


「幸か不幸か、早くにレヒトがこっちに来たことで義母もちょっと調子に乗って馬鹿をやってね。父の方はそれを理由に丸め込めたが、その母親の一件も(あい)()ってうちの弟の“可愛い”が爆発してしまった……」


 まったく意味が通じない。なのでチラリとマシェロン伯を見やってみれば、「私は直接見ていたわけではないのですが」と前置きした上で、ざっくりと事情を話してくれた。いわく。


「離宮に着いてからこの方、異母の姉君の嫌悪の視線に(さら)され続けていたアルブレヒト公子殿下は、ご自分がこれなら兄君は一体どんな目に遭っているのかといたく安否を心配されていたようで、しかもこっちはこっちでご生母が兄君に馬鹿な嫌がらせを企んでいるものですから、離宮に忍んでいらした兄殿下にそれはもう血相を変えて『なんで来たんだよ馬鹿兄貴』と罵ったようです」

「本当はすぐに来て助けてほしかっただろうに、怒鳴りながら心配するとかっ、ツンデレかよっ! 可愛いすぎだろっ、うちの弟!」

「……」


 な、なるほど。でもその心配が高じての怒鳴り声にマクシミリアンは居場所がバレてしまい、ましてや異母の弟とベタベタしていたものだから、お姉様に花瓶を振りかぶられ追いかけまわされた……のかどうかは知らないが、まぁそうして逃げる羽目になったわけである。


「本当はレヒトと一緒に義母に接触して最終的な外堀を固めてから父を脅して了承をもぎ取ってしまう予定だったんだ。だが何をどう勘違いされたのか、トルゼリーデ妃にまで弟を害する侵入者扱いされて追いかけまわされて、酷い目に遭った」


 なんて災難な……。


「姉上も姉上で私がすでに義母と結託済みだと思ったのか、聞く耳も持たずに裏切り者扱いでね。ひとまずジャンの手を借りて禁事棟に逃げ込んだんだが、こんなにすぐに義兄上が寄越されるとは……もう逃げ場がここしか思い当たらない」

「まさか離宮からここまで、徒歩で逃げてきたの?」

「さすがにくたびれた」


 そりゃあそうだろう。一体どれほどの距離があると思っているのか。なんというご苦労なことであろう。いっそヴァレンティンの離宮に逃げ込んでくれたらよかったのに、さすがにそれは周囲の目にあからさますぎると遠慮をしたのだろうか。


「あぁ、そうだ……報告が遅くなったが、うちのトレファーノ司教とセトーナのアブラーン王子の関係をすれ違わせることに成功したことを報告する」

「今?」


 嬉しい話ではあるが、それは今しないといけない話だろうか。疲れすぎたせいで大分頭の回転が悪くなっているのではないかと思う。

 お湯を注いでほどよく蒸らした紅茶が中々良い具合に入ったので、やれやれとトレイに乗せて運び、二人の前に置く。勿論、たっぷりのお砂糖が入ったシュガーポットとミルクも忘れない。公女手ずから淹れた紅茶にマシェロン伯は一度恐縮そうに御礼を言ったけれど、「遠慮はしないで」とリディアーヌも自ら紅茶に手を伸ばすと、しばしほっと息を吐く小休止となった。少しは落ち着いただろうか。


「元の予定では、ペトロネッラ様も説得できる計画があったの? たしか、ショック療法がどうとか言っていなかったかしら?」

「いや、以前も言った通り、姉上の説得は諦めている。ただわざわざ真正面から喧嘩を売って逃げるような無謀をするつもりは無くて、動きを封じられるくらいに外堀は埋めておくつもりだったんだ。特に父上の。姉上だって大公の決定には異を唱えられないだろう? 少なくとも表立っては」

「そのための手駒が、閣下にとっての泣き所であるアルブレヒト公子なのね。そういえばレヒト公子は今年成人式よね?」

「あぁ。元々来月にはこっちに来る予定だったから、旅支度もさせやすかった。それを前乗りさせて、レヒトに義母との間を取り持たせる予定だった。義母とて、私がレヒトに家督を譲れば飛び跳ねて喜ぶだろうと思ったんだが……この辺の読みがちょっと甘かったらしい」

「逆に早々と弟を呼び寄せたことを、騙して害する計画だとでも疑われたのかしら?」

「私という弟を愛してやまない善良な人間を捕まえて、まったく、勘違い(はなは)だしいよね」


 リディアーヌの知るマクシミリアンは確かに本人の宣言通りの人物なのだが、これには思わず苦笑を浮かべて肩をすくめてしまった。

 確かにそうなのだろうが、あまりにも旨すぎる話にトルゼリーデ妃が疑心暗鬼になってしまった理由も分からないではない。マクシミリアンが人格者であるがゆえに、よもや彼が家督を放棄するような馬鹿な話があるわけがないと思ってしまったのだろう。皮肉なものである。


「父上の了承さえあれば姉上とて簡単には覆せないし、何ならそのままザクセオン内で勝手に派閥割れして揉めてくれればクロイツェン派の勢いを削ぐのにもいいかと思ったんだけど」

「いっそ公子様の突然の寝返りで、ベルテセーヌ派はザクセオンから公子様を奪った悪として恨まれるかもしれませんね」

「そうはさせない。そのためにも近い内にどこかで必ず父上には接触して合意を得る。どのみち家長の承認は得ておかないと、帝国には非常に厄介な“王籍簿”という存在があるからね。無視できない」


 そう言うくらいだから、ザクセオン大公の了承は得られる算段があるということだろう。

 まぁアルブレヒト公子も大公にとっては実の子であるし、大公妃がその後ろ盾として大手を振って振舞えば大公もぐぅと言わざるを得なくなるであろうことは想像に難くない。だがいずれにせよ、今頃大公様は報告を受けてさぞかし頭を抱えているのではないかと思う。

 リディアーヌも加害者なので、同情をするわけにはいかないが。


「つまりミリム、貴方は今現在、帰る家がないということね?」






※今年もよろしくお願いします<(_ _)>

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