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8-47 カクトゥーラの内情

 フィリックが検分してきたところによると、食材の入搬出に関わる文官はすでに拘束されていたが、本人はリヴァイアン殿下に近しい間柄で、必死に無罪を訴えていたらしい。代わりに数名の侍従が拘束されたが、そちらは証拠があるからという理由ではなく、元々派閥的に怪しいと言われていた者達であったそうだ。

 入搬出の確認は文官がきちんと行っていたはずであるから、使用してはならないはずの食材が紛れ込んだことは調理場に直接出入りできる身内の犯行以外に有り得ない、というのがフィリックの見解で、実際に確認中にやって来たリヴァイアン殿下の文官が、その怪しいと思われる侍従達を拘束させたらしい。


「つまり、リヴァイアン殿下の側近にあれこれ調べているのを見られたと?」

「まぁ、驚いた顔はしていましたが、(とが)めは受けていませんね。姫様が司教様への執り成しを行ってくださったので、その見返りと思って見逃して下さったのでしょう。むしろ殿下側の差配を見せつけられて、殿下の無罪を証明する証人として利用された感じでしょうか」

「それでいいと思ったから、貴方も呑気にじっくりゆっくり検分してきたのよね?」

「はい。リヴァイアン殿下は中々話の分かる方のようです」


 それは同感であるが、いささかリヴァイアン殿下に不義理をしてしまったような後味の悪さが残る。ここは開き直って、こちらがあれこれ調べようとしていたのも殿下のためですよ、というスタンスで振舞うべきだろう。


「中々話が分かるというより、中々侮れない方だわ」

「ダグナブリク公家と血縁があるというお話ですが、それ以外にも、カクトゥーラの(おう)(しゅう)でありながら王の養子となった殿下を(うと)む一派がいる理由は分かる気がいたします」

「厄介払いに皇帝候補として出してみたけれど、思いのほか社交上手で他の家門と強い結びつきを得てしまい困っている、だなんて考え無しなおバカさん達がお国にいらっしゃるのかしら」

「そういうことでしょう」


 つまり今回の件は思った通り、皇帝戦というよりカクトゥーラ国内の王位継承問題にかかわる事件だったようだ。そこに聖職者を利用してくるあたり、カクトゥーラはやはり元々ベザの系譜とは関係の薄い、信仰の深くない国なのだと思わされる。

 カクトゥーラは元々独自の竜信仰の方が篤く、一応ベザリウス教国となっているものの、おそらくシャリンナに次いで信仰の薄い国だ。教会もあり司教達も赴任しているが、雪深く竜の多い独特の国の事情もあって、ベザリウスの教えよりも竜と共に生きてきた在来の信仰形態の方があっているのだろう。


「カーシアン女伯の関与はありそうかしら?」

「はっきりとは出てきておりません。ただ確かに女伯とリヴァイアン殿下の関係は良くないようですね。その辺は一緒に検分にあたっていた文官が聞いてもいないのにペラペラと教えてくれました。姫様、カーシアン女伯の生い立ちなどはご存じでしょうか」

「いえ、あまり。先代ダグナブリク公の姉で、カーシアン女伯として臣籍に下って、ハーパイユ伯爵家の次男を婿に取った、というくらいね。それから妹の子を養子にしているんだったかしら」

「降嫁を拒んで自ら臣下として叙爵を望んだという女傑ですが、夫との関係は冷え切っており、夫には妾との間に子供が。当然カーシアン家の継承権は与えていません。また後に妹のロヴィーサ公女殿下がエーリッキ候に見初められて結婚し、その長女はハンネス公子殿下に嫁ぐなど、妹に身分的にも幸福度的にも負け、みじめな思いをしたようです」

「ハンネス公子って今のダグナブリク公の亡くなったお兄様よね?」

「はい。残念ながらハンネス公子殿下と妃殿下、そのご長男は馬車事故で皆様」


 そして唯一生き残った次男のハドリックは、兄の死により辺境公位を継ぐことになった現ダグナブリク公の養子となっている。

 フィリックによると、このダグナブリク家の元公女が嫁いだエーリッキ家はこの事故で嫁に行った長女を失ったものの、跡取りの長男には孫もおり、一方で次女のエリーシアは子供のいないカーシアン女伯に強く求められて養女として入っているらしい。


「そのカーシアン女伯の姪であり養女であるエリーシア嬢は、ハーパイユ家から婿を、つまり女伯の夫の兄の子であるエンリッヒ卿を婿に取り、家督の継承人としています。ハーパイユ家が女伯の後ろ盾として随分と国内で勢力を誇っているようですね」

「そのエンリッヒ卿というのは選議卿になっている方ね。身内だとは聞いていたけれど……なるほど、女伯の勢力の隆盛ぶりが垣間見えるわ」


 女伯の傍にはもう一人、ヘイケネン子爵といういつも女伯の後ろをついて回っている選議卿がいる。これだけダグナブリクの選議卿に女伯の派閥が入っているということ自体、女伯の国内での影響力を物語っている。


「複雑でこんがらがって来たわ……つまり女伯は夫との関係は冷え切っているけれど、夫の実家の義兄にとは婿を取るくらい良好な関係なわけね。ついでに妹から娘を養女にしたとなると、プライド的な確執はあっても妹との関係は良好なのかしら?」

「一応妹君は姉を気遣っているそうですが、夫のエーリッキ候は随分と女伯達を嫌煙なさっているそうですよ。あくまでも他国の侍従の他愛のない噂話による情報ですが、先のハンネス公子とメリッシア妃らの馬車事故も、女伯が企てた謀り事だなどと言っていました」


 真偽はともかく、そう言われるような関係性なわけだ。

 ダグナブリク公もどうしてまたあんな我のきつそうな身内を選帝伯にしたのかと思っていたが、元々跡を継ぐはずでもなく腹心の少ない現辺境公にとって、昔から自力で強力な地盤を築いてきたカーシアン女伯はどうにかしたくてもできない相手なのかもしれない。

 女伯の立ち位置はなんだかベルテセーヌのかつてのブランディーヌ夫人のようで、聞いているだけで頭が痛くなってくる。


「ダグナブリク公にはチェーザル公のようなよくできた弟君もいらっしゃるし、みたところロイタネン伯などまともな味方もいるように見えるわ。けれど思いのほか地盤は盤石ではないのかしら」

「どうでしょう。女伯とハーパイユ家の勢いに対し、公の外戚であるロイタネン伯派も根強いと思います。しかし(くに)(もと)にはかつてハンネス公子が亡くなった後、後継として名乗り出た同母の弟などもいるようですし」

「ダグナブリク家は意外と安穏とできない情勢のようね……それでもあのヘラヘラとなさっているはずの閣下が四年間家督を揺るがすことなく守っていらしたのだから、あの方はやっぱり見てくれのままの御方ではないのかもしれないわ」

「ダグナブリク公は私から見てもつかみどころのない方です。それが身を守る術なのか、それともただの素なのか」


 フィリックにもそう言わせるとは、さすがはダグナブリク公である。得体の知れなさは今皇宮に集まっているどこの誰よりも群を抜いている。


「それで、女伯がリヴァイアン殿下を追い詰めるのに加担する理由はあるのかしら?」

「そこははっきりとしませんでした。リヴァイアン殿下は現カクトゥーラ国王陛下の姉君ヴィサンドラ殿下の一人息子で、父君の前ブロムダール候には前妻との子がおり、そちらがブロムダール家を継いでいます」

「それは聞いたことがあるわ。その前ブロムダール候のご生母がダグナブリク家の縁者なのだったかしら」

「先々代ダグナブリク辺境公閣下の姉だか妹だかに当たるそうです。なのでリヴァイアン殿下と異母兄の現ブロムダール候は、ダグナブリク公のハトコということになりますね」

「意外と近い身内なのね」

「それに現ブロムダール候はダグナブリクのハーヴィスト侯爵家からやはり公の縁戚となる夫人を娶っており、今もダグナブリクと縁が深いようです。ハーヴィスト候自身も現ダグナブリク公の異母妹を妻としている方です」

「嫌な構図が見えたわ。つまりダグナブリク公は後ろ盾にハーヴィスト候と、ハーヴィスト侯から連なるカクトゥーラ貴族の縁も持っているのね。そしてリヴァイアン殿下もその派閥の中にある。もしかしてダグナブリク公はリヴァイアン殿下を皇帝候補に推す以前に、リヴァイアン殿下のカクトゥーラにおける王位継承の後ろ盾にもなっているのかしら?」

「辺境公閣下の思惑は知りませんが、少なくともそう見られる立場にはありそうです」


 なるほど、繋がってきた。リヴァイアン殿下はあくまでも現国王の甥であり養子であるから、王位継承的には王の実子のヴァルテール王子が第一王位継承者だ。国王の妾妃所生の王子と位なら()(けん)するかもしれないが、少なくとも第一王子と称しながら王位継承者とはみなされていない。

 だが思えばヴァレンティンのレヴェイヨン候もダリュッセル候も、すでに王国の政務を手伝っていると聞くヴァルテール王子ではなくリヴァイアン王子を皇帝候補として挙げた。あれは皇帝位に関心のないカクトゥーラでは王太子が皇帝候補にならないのが普通だからなのかと思っていたが、もしかするとレヴェイヨン候達も、今一つ血筋に文句の着くリヴァイアン殿下に皇帝戦経験と多くの既知を作らせることで、王位継承権への後ろ盾を作ろうとしているのではあるまいか。はなから目的は、リヴァイアン殿下だったのでは。


「セトーナのアブラーン王子は、王に野心を疑われたせいで自ら政界を退いていたところを、教会家門に担ぎ上げられて皇帝候補になったと聞くわ。リヴァイアン王子もそのタイプかと思っていたけれど、とんだ目論見違いだったようね」

「ええ。おそらくリヴァイアン王子は、カクトゥーラの王座を狙っています。皇帝戦への参入はその足掛かりでしょう」

「はぁぁ」


 道理で……いつぞやの夜会でリヴァイアン殿下が冗談がてらとはいえリディアーヌを口説く様な物言いをした時、レヴェイヨン候は静止する言葉の一つも付かず、ただ笑顔を振りまいていた。今になって思えば、レヴェイヨン候が真にヴァレンティンにカクトゥーラ王室と縁を築いて欲しいなら、国王の実子であり跡継ぎであるはずのヴァルテール王子を差し置いて、養子でしかないリヴァイアン王子と公女の縁にニコニコしていられるはずがなかったのだ。

 つまり、リディアーヌや養父がカクトゥーラにさして目も向けていない内から、知らず知らずに、“ヴァレンティン”はリヴァイアン王子派になっているということだ。


「やってくれたわね、レヴェイヨン候……」

「レヴェイヨン候は良識ある人物です。意味もなく傍流からリヴァイアン殿下を推しているというわけではないと思いますが、一度きちんと話をするべきかもしれませんね」

「同感だわ。ついでに今回の一件でヴァレンティンが全く疑われず、殿下に清めの手配を任された理由も分かったわね」

「リヴァイアン殿下に、ヴァレンティンは味方だと思われていると」

「そういうことだわ」


 まいった。あまり他国の王位継承問題には介入したくないが、完全にリヴァイアン王子には味方判定されている。そう巻き込んだのがダグナブリク公であったこと思えば、公も一応はリヴァイアン王子継承派なのだろう。まんまと利用された。


「リヴァイアン殿下は少なくとも今まで害のある相手ではなかったわ。レヴェイヨン候達を(たしな)めるのか放置するのかは、うちの大公様の判断に任せましょう」


 あとはお養父様に要相談、と結論付けたところで、ここまでの話の内容を図式化してくれていたらしいシュルトが報告書を出してくれた。おかげで関係性と派閥が整理できた。

 カーシアン女伯は積極的にカクトゥーラ王室の問題に関わっているわけではないけれど、気に入らない甥ダグナブリク公とは()さぬ仲であり、それが実質ダグナブリク公が縁を得ているリヴァイアン殿下への敵対心にも繋がっている可能性があるわけだ。

 ただ直接的に女伯がリヴァイアン殿下を攻撃したところで、さほど女伯に益はないように思う。だから今回の件はやはり女伯よりも、カクトゥーラのヴァルテール王子派の誰かが主犯であろう。そこに女伯が後援した可能性は無くはないが、カクトゥーラ内部からの手引きなくして今回の一件は引き起こせなかったはずだ。


「内部の問題なら、こちらからどうこうすることも無いわね。どう主犯を暴き、どう処分するのかはリヴァイアン殿下の腕の見せ所でしかないわ」

「今回の件で既知を得た文官から、今後も様子を窺うように致します」

「そうね。皇帝戦とは別の理由で、少し注視しておきましょう」


 そう結論付けて、ひとまずこの問題を終わりとしたところで、マクスが「お手紙が届いております」と入室してきた。

 どうやら早々と、サンチェーリ司教がお礼状を送って下さったようだった。


「サンチェーリ司教はシリアート司教と並んでドレンツィン大司教閣下の両腕でしょう? いかに既知のフィレンツが付いているからといって、こちらに引き込むのは無理かと諦めていたのだけれど……」

「今回の一件は渡りに船でしたね。先程の姫様の報告を聞く限り、ヴィオレット妃が手も足も出せぬ上に失言まで重ねたところを、上手くアンジェリカ様を用いて恩を売れたようです。その証拠が、この礼状でしょう」


 開いた手紙の内容は簡潔だったけれど、心から感謝し、安堵をしていること。そしてリディアーヌが指導するアンジェリカが思いのほかしっかりと務めを果たしていたことに目を見張った、という事が書かれていた。

 今まではアンジェリカのことになんて目も向けたことが無かっただろうに、あえてそう書いて寄越したのだから、今回の件でリディアーヌに対して譲歩を見せたと言っても過言ではなかろう。

 まだこれだけで取り込めたとは言い切れないが、アルトゥールともリディアーヌとも既知であるフィレンツィオも今回はリディアーヌから恩を受ける形になったし、アルトゥールの傍にいるヴィオレットに不信感を抱く切っ掛けにもなったと思う。まぁ元々フィレンツィオは他の友人たち同様ヴィオレットには懐疑的であったけれど、今回の件でそれに拍車がかかったのではないかと思う。

 生憎とドレンツィン大司教の心を動かせたかどうかにはまったく自信を持てないが、サンチェーリ司教はこの機会にぐっとこちらに引き寄せたい所だ。


「返事は私ではなくアンジェリカから出してもらうようにしましょう。文面のメモと私のサインだけを(つづ)った便箋を用意するから、マクス、アンジェリカの元に送って、内容を確認してから送るようにしてちょうだい」

「かしこまりました」


 すぐにマーサが用意してくれた教会向けの清楚で美しい箔押しの便箋と封筒を用意し、程よい場所に自分の名前だけを綴ったものを用意した。それとは別紙に、礼状に対する返事も書いておく。便箋にはアンジェリカの()で清書してもらえばいいだろう。


 そうしてマクスを送り出したところで、養父の方から「手が空いた」との連絡が来たので、フィリックと部屋を移って引き続きカクトゥーラとダグナブリクの件についてを話し合った。

 途中、養父によってレヴェイヨン候が呼び出され、本人から「確かに私はリヴァイアン殿下派に属しております」との(げん)()も取れた。

 勝手なことをと養父はこってりと候を叱ったけれど、レヴェイヨン候いわく、現国王の実子である王子は北方諸国などでは噂に聞こえた“害悪”らしい。妾妃腹に十二歳になる王子もいるが、こちらの方がまだかなりマシなくらいで、しかし母親の身分が悪い。

 一方でダグナブリク家や名門ブロムダール家の当主を異母兄に持つリヴァイアン殿下は、そもそも有能という聞こえがあって国王の養子になったくらいであるから、元々推戴する者も多く、少なくともヴァルテール王子が生まれるまでは臣下達の多くがその気だったという。


「むしろそのヴァルテール王子が害悪に育ったことに、リヴァイアン殿下は無関係なのかしら? 年は七つだか八つだか、離れているのでしょう?」


 年の離れたよくできる従兄であり義兄。そんな者が上にいて、しかも周りの臣下達に慕われていたとなると、ヴァルテール王子がひねくれものに育ったとしてもおかしくない。リヴァイアン殿下ほどの切れ者であれば、最初から王位を狙って義弟をチヤホヤと立てるふりをしながら、(わが)(まま)な暴君に育てたなんてこともできるのではないかという気がする。

 そんなリディアーヌの見解に、レヴェイヨン候はただ口元だけでニコリと微笑んで見せただけだったが、それが何とも、『まぁそうなんですが』と言っているように見えてしまった。

 やれやれ。もっと北にも目を配っておくべきだったか。

 ただレヴェイヨン候はそれからも言葉巧みにリヴァイアン殿下派であるべき理由をとくと説いて見せたので、養父も多少なりとも今回の件にはリヴァイアン殿下派に理解を示したようだった。

 ひとまずヴァレンティン大公家が表立ってカクトゥーラの王位継承に介入する気は毛頭ないし、今後は多少距離を置く方針とすることをリディアーヌにも大公の名のもとに命じたが、レヴェイヨン候らについては特に抑止はしない、と結論付けた。

 養父としても、今後どう育つともしれないヴァルテール王子より、今ここで既知を得たリヴァイアン殿下に王位を継いでもらった方が今後の帝国議会でも楽ができると思ったのかもしれない。ここで恩を売っておくのは悪くはない。


 そんな話をしながら、結局夜遅くまで話し合いは続き、夕飯もいい加減に疲れてきた胃をいたわるための軽食で済ませた。

 明日は最も何が出てくるかわからない未知の国、シャリンナの昼餐会だ。考えただけでも気が重い。


 結局今日もまた疲れの取れぬままに夜を明かし、翌朝、昨日と打って変わって強い雪となる中、フィレンツィオからの急ぎの手紙が届いた。

 どうやら早朝、クロイツェンからサンチェーリ司教に宛ててヴィオレットから聖水が届いたらしい。

 相変わらず対処が早いのは、アルトゥールの差配か。

 だがいつ消えるともしれない四代目の鍵を一晩も使って聖水を作ったのだとしたら、ヴィオレットにはかなりの負担と不安であったのではないかと思う。そもそもサンチェーリ司教にはすでにアンジェリカの作った聖水を三日分渡してある。今更後出しされたところでこちらとしては痛くもかゆくもないし、正直鍵の使い損だ。

 ただしフィレンツィオいわく、ヴィオレットの聖水はサンチェーリ司教よりもドレンツィン大司教が「実に結構なことである」と大層なお喜びようだったという。

 ドレンツィン大司教は多分クロイツェン派なのだろうなとは思っていたが、これではっきりとした。やはりそう簡単にアルトゥールは貴重な教会票を手放してはくれないか。

 これからは益々、教会票の奪い合いが激化することだろう。

 ベルテセーヌの離宮に向けて、アンジェリカにもくれぐれも身辺に気を付けるようにと伝えておいた。






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