3番 歌おうよ
歌おうよ
「おはよ〜」
自転車が壊れたから今日は電車で来た不機嫌な山上太一。
そんな太一に明るく挨拶する木元大介。
「うるせ〜よ」
「機嫌ワリィな」
二人が話しながら廊下を歩いていると…
「太一!グループに入ってくれ」
いきなり毅史が教室から出て来た。
「うぉ!!入らないっすよ……
びっくりしたな…も〜」
不機嫌そうに太一は通り過ぎっていった。
「太一〜今の何?」
「わかんね」
二人は自分たちの教室に入って行った。
(キンコンカンコーン)
「疲れた〜」
「疲れたって寝てたじゃん」
起きた太一に言う木元。
「今なんの時間?」
「昼休みだよ」
「んじゃ〜行きますか〜」
「また屋上かよ…」
「いや…今日は図書室で寝る!!」
そう言い切った太一は、呆れてる木元を置いて教室を出た。
「ここなら邪魔されずに寝れるだろ」
太一は図書室で机に伏せて寝る。
いつもの5人がいないからグッスリ眠れると思っていた。
「あの〜図書室は寝るところじゃないんですよ」
爽やかな声に起こされる。
「え〜…うぉ!!」
「静かに」
太一はビックリした…
「お前は……なんで……」
「ボク図書委員なんで」
「屋上には?」
「今日は誰もいないと思いますよ?」
「マジで!!」
太一は立ち上がり図書室を出ようとした。
「太一君だっけ?」
太一は歩くのをやめて振り向いた。
「何?」
爽やかな男が太一に近付いてくる。
「ボク上久保直行って言いますヨロシク」
「おう……んじゃな」
太一は走って屋上に向かった。
「あっ……屋上に欄先輩いたっけ?」
そんな事は知らずに太一は屋上を目指した。
「ヨッシャ~!!
ついた~!!」
屋上に着き、叫ぶ。
「元気だね~」
ドアを開けた横に座ってる女の子がいた。
「あんたは……名前なんだっけ?」
「里中欄だよ」
「里中なんでここにいるの?」
太一の質問にキョトンとする欄。
「………いつもいたじゃん!あんたが寝てるときも」
「直行が今日はいないって言ったから」
「でもいるから」
太一は「まぁいっか」とつぶやきながら欄の隣に座った。
「なんで今日いつものやつらいないの?」
「みんな委員会とかあるしね」
「あんたは?」
この質問に欄は太一にピースしながら、
「私は何にもないからさ~楽だよね~」
「……あぁ」
「そうだ!え~とさ~太一君さ~一緒に歌おうよ」
「は?」
欄の突然の言葉に耳を疑った。
「だから歌おうよ」
「お前らがいつもやってるみたいにか?」
「まぁそうだね」
「……やだね……」
太一は低く小さい声で言った。
「え~そんなあっさり~
なんで嫌なの?」
欄が優しい声で聞いた。
太一は小さい声で、
「オレここで野球やる予定だったんだ」
「あ~野球強いもんね~」
「でも中学で頑張り過ぎて肘壊しちゃって…」
「………」
「もう野球は出来ないって……」
「大変だったね~」
「そんな言葉じゃ済まされねぇよ」
太一は立ってドアによっかかる。欄は悔しそうな目をしてる太一に言う。
「私もね本当はテニスやってたんだ…
でもね…ちょっとした失敗で腕ケガしちゃって…お医者さんは大丈夫って言うんだけど…怖くて出来なくて…
そのとき毅史ってやつがね歌おうよって誘ってくれたんだ」
太一は黙って欄の話聞いていた。
「それに他のメンバーも最初は他にやりたいものがあったけど、出来なくなって……
そんな時に毅史が優しくて誘ってた……
不思議な人なんだよな……
だからさ…放課後に一回でもいいからここに来て見てよ」
「わかった……」
太一は静かに頷いた。
「わかった……」
太一は静かに頷いた。