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久しぶりの学園

 ヴィンスは今の学園の状況も教えてくれた。

 悪事に関わっていた家の子息令嬢達は学園を去って、学園内は一時騒然となったそうだ。


 レイラは父親であるスカーレット伯爵が捕まる前に母親と共に保護され、今は母親の実家のある領地で過ごしているとの事。


 「ニーナにはいつか…直接会って今までした事を謝罪すると言っていたよ」

 「うん、その時は仲良くなれたらいいな」


 多分レイラはお父様の期待に応えようと一生懸命だったのだろう。私も新菜でいた時は両親に認めてほしくて、振り向いてほしくて必死だった。レイラが私にした嫌がらせは許せないけれど気持ちは少しだけ分かる。


 私の言葉にヴィンスもそうだね、と微笑んでくれた。


 私達のフリももう終わり。リリーには『ヴィンスと別れた』と言った事を撤回しなくてはいけないけれど、他の皆は噂で勝手にそう思っているだけだろうからそのまま放っておこうという事になった。


 そして、これから学園への行き帰りはヴィンスが送り迎えしてくれるという。心配してくれるのは嬉しいけど、ちょっと過保護過ぎる気もする。


 その宣言通り、あの事件から初登園の日にヴィンスは朝からフローレス家へ私を迎えに来た。


 「おはようニーナ」

 「うっ……」


 (朝から眩しすぎる………!)


 「おはようございます…」


 キラキラした笑顔に当てられる。前回同様、会えてなかった分のブランクがあるからかヴィンスへの免疫がまだ戻っていない。


 それでもなんとかエスコートされて馬車へと乗り込んだ。


 「久しぶりの学園に緊張してる?」

 「うん…少し緊張してるかも」


 学園へは10日ぶりだ。事後処理や熱を出した事で大分休んでしまった。学園の生徒には私の名前を伏せて事件があった事を説明しているらしいけど、また色んな噂が飛び交っていそうでそれを思うと気が重い。


 「大丈夫だよ。けど何かあったらすぐに言って」

 「ありがとうヴィンス」


 (そうよね、ヴィンスともまた前のように過ごせるんだから頑張らなきゃ)


 そんな事を考えていると、いつの間にか私を覗き込むようにヴィンスの顔が目の前にあって…唇同士が触れる。


 「…………」

 「…………」

 「………あ…」


 ぶあっと顔に熱が集まる。


 (次に会った時にするって言ったから……!?)


 「ははっ」


 ヴィンスがいたずらが成功した子供のように嬉しそうに笑うから私も自然と笑顔になった。ヴィンスはいつも私を明るい温かい気持ちにさせてくれる。


 (好きだなあ)




 学園へ着き、ヴィンスと並んで歩く。予想していた通り大体の人は私達を驚愕した顔で見ていく。


 別にヴィンスと一緒にいるのを見られて良くない噂を立てられる訳でもないのだ。堂々としていようと思っていると不意にヴィンスが立ち止まり、私の手を握った。


 「ヴィンス?」

 「どうせ見られるのなら見せつけてやろうと思って。学園内で手を繋ぐのは嫌?」

 「…ううん。見せつけちゃおう」


 2人で顔を見合わせて笑う。少し恥ずかしいけど、手を繋いだままヴィンスは私を教室まで送り届けてくれた。


 「じゃあまた放課後に」

 「うん、ありがとう」


 ヴィンスに別れを告げて教室へ入ると、リリーが駆け寄って来る。


 「ニーナ!」

 「リリーおはよう」

 「今ヴィンセントと来なかった!?」


 リリーは嬉しそうだ。リリーには心配かけてしまったから早く色々あった事を話したい。


 「うん一緒に来たよ。リリーに話したい事がいっぱいあるんだ。放課後時間ある?」

 「うんっうんっ!あっ体調は大丈夫?」

 「ふふっ、大丈夫だよ」


 その後もクラスメイト達に久しぶりと声をかけられる。ヴィンスと別れたという噂があった時もクラスの皆は噂に触れずにいつも通りにいてくれた。


 そんな仲の良いクラスも来週の試験が終われば2年に上がりクラス替えがある。


 (こっちに来てからもうそんなに経つんだ…)




―――――




 「――そんな事になってたんだ」


 放課後、ヴィンスもレオも交えて集まっている。リリーに今までの経緯を説明できてやっと胸のつかえが下りた。


 「言ってくれたらいいのに。って言えなかったんだよね」

 「ごめんねリリー」

 「ううん、ニーナ頑張ったね」


 ぎゅうっとリリーに抱きしめられる。


 「今日は朝2人が一緒に歩いていてヨリが戻ったんじゃないかっていう噂が回ってたわ」

 「また噂…」

 「いいんじゃない?これでニーナに告白する人も減るよね」

 「えっ知ってたの?」


 リリーは私に抱きついたままそんな事を言う。バレてないと思ってた。何となくヴィンスに知られるのは気まずい。


 「ヴィンセントも驚いてないって事は知ってたんじゃない?」

 「えっ!?」

 「ああ、知ってる。ニーナをそういう目で見てる奴全員学園から追い出したいな」

 「うわっ怖。リリーもそろそろ離れた方がいいかもな」

 「はーい。ヴィンセントもニーナと離れて辛かっただろうし今日は譲るよ」

 「そう?じゃあニーナ」

 「…えっ、え!?冗談だよね?」


 リリーから解放された私はヴィンスに手を引かれて抱きしめられそうになるけど、人前でぎゅっとされるのは無理だ。ヴィンスを手で制して私はプチパニックになる。


 「そういうのは2人になった時にするんじゃなかった?ニーナに嫌がられるぞ」

 「それは困る」


 レオの一言で助かった。普通は人前でイチャイチャしないと思うんだけど、ヴィンスといると普通が分からなくなる。


 「ははっ、まあでもよかったな」

 「うん。また皆でいられるようになって嬉しい」


 もしかしたらあの生活が2、3年はかかるかもしれなかったのだ。お兄様からヴィンスは下手したら逆に訴えられる様な事をして証拠を手に入れたと聞いた。無茶をしてほしくはないけど、ヴィンスの暗躍で一気に解決まで持ってこれたことに感謝しかない。


 「ずっとこのままでいたいな」

 「あーもうすぐ2年生だな」

 「その前に試験があるよ」

 「それが終わったら能力測定もあるね」

 「能力…測定」


 そういえば年に一度あるとお母様言っていた気がする。その測定で自分の使える魔法や得意とする魔法が分かるのだと。


 私は何が得意なのだろうと純粋に興味が湧いた。


 

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