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夢か現か

見ていただきありがとうございます!

こちらは52部分を改稿してからの続きになるので、改稿前のものを読まれた方はご注意ください。

よろしくお願いいたします。

 「おはよう!」

 「おはようニーナ」


 教室に入りクラスメイトに挨拶をする。四日ぶりの学園は学園祭があった事を感じさせないくらい元通りに戻っていた。


 とは言っても学園祭の準備から一緒に頑張ってきたからか、クラスの雰囲気は更に良くなったような気がする。


 「おはよう」


 (あっウィルくんにエマちゃん)


 ここにも学園祭を機に結ばれた2人がいた。仲良く登校してきてて顔が緩んでしまう。


 「おはよう。ウィルくん熱下がってよかったね」

 「ニーナちゃん、迷惑かけてごめん」

 「大丈夫だよ。寧ろ私もあの後に迷惑をかけたので…」


 あれから責められはしなかったものの、皆から温かい目で見られているようで落ち着かない。


 「ああ、なんかニーナちゃんの奪還劇があったんだって?俺も見たかったな」

 「あっ私ももう一度見たい」

 「えーっと。もう一度とか無理かな」


 あんな大勢の観客の前であれをもう一度、なんて私の心臓は二度も持ちそうにない。


 それでも、学園祭が楽しかったと思えるほど充実した二日間だった。




 「ニーナおはよ」

 「おはようリリー」


 リリーにちょいちょいと手招きされる。色々聞かれる予感がして少し後ずさりしたくなったけれど、リリーの笑顔に釣られて傍へ行く。


 「後夜祭どうだった?」

 「リリー、何か期待してるでしょう」

 「うん。でもその様子だと何も無かったみたいね」


 ドキッと心臓が鼓動する。


 (…何も無かったはずよね……?)


 「あれ?やっぱり何かあった?」

 「………」


 (何かあったのか……無かったのか私も知りたい)


 「実は私間違えてお酒を飲んでしまって、酔ったみたいで……そこからの記憶が曖昧なんだ」

 「えっ何があったか覚えていないの?」

 「……所々覚えてるんだけど、()()が夢か現実か分からなくて」

 「()()ってどんな事?」


 問われてかあっと熱くなる。夢だったとしても現実だったとしても、思い出すだけで恥ずかしい。


 「口に出して言えない……」

 「ニーナ、前も同じような事あったね」


 以前のように本当に夢なのであれば自分だけの問題なのでまだマシだ。


 「リリー、もしも夢じゃなかったらどうしよう。私はなんて事を……ヴィンスに顔向けができない」

 「あっニーナが手を出しちゃった感じなんだ?」

 「う…」


 机に突っ伏して反省する。「よしよし」とリリーに頭を撫でられて少し顔を上げる。


 「でも、夢かもしれないよね?」

 「それは私には分からないけど」

 「……だよね」

 「ニーナの言う『手を出す』って可愛いものだと思うから、気にしなくて大丈夫だよ」


 フォローしてもらったけど溜息が出る。


 それだけでなく、後夜祭に誘っておきながら自分はお酒飲んで酔っ払って最後送ってもらって、多分また私を運んでもらって迷惑でしかなかっただろうなぁと。


 手を出したのが夢だったとしても無かったとしても反省すべき点はいっぱいだ。


 後夜祭の翌朝ふかふかのベッドで気持ち良く目覚めたと同時に、お酒を飲んだ後はどうなったのか記憶があやふやな自分に猛省した。肝心のヴィンスにまだお礼も謝罪も出来ていないのだ。


 正確には目覚めてすぐにお礼と謝罪の手紙を出したのだけれど、ヴィンスからの返信は『気にしないで』の一言以外は後夜祭については触れられていなかった。


 とにかく今日の剣術の時間に会うだろうから、その時も謝罪しようと心に決めた。




 そして剣術の時間。急いで支度を済ませてヴィンスが通るであろう通路の脇でヴィンスを待つ。のだけど今日は何故か顔見知り程度若しくは名前も知らない男子生徒達から次々と声をかけられる。


 「劇に出てた子だよね。歌良かったよ」

 「ありがとうございます」


 「君の歌声また聴きたいな」

 「また機会があれば是非お願いします」


 歌が好評だったようで皆通りすがりに褒めてくれる。社交辞令でも嬉しい。


 「ニーナ」


 ヴィンスが通るのを見逃さないようにしなくてはと思っているとヴィンスの方から声をかけてくれた。いつの間に近くに……


 「ヴィ…」

 「ニーナ、あまり一人で行動しないで」

 「…………はい」

 「……行こう」


 少し強めの口調で注意されてムッとしたものの、私の事を心配して言ってくれてるのだろうと思い言い返す事はしなかった。


 けど私の顔を見ず、表情が硬いヴィンスに怒りでなく不安がおし寄せる。


 (やっぱり後夜祭の時に迷惑をかけたから……)


 「ヴィンス怒ってる…よね?」


 私の言葉に、前を歩いていたヴィンスはやっと私の方を振り向く。きっと今の私の顔は眉が下がりきって情けない顔になっているだろう。


 「……ごめん。ちょっとヤキモチ妬いただけで怒ってないよ」

 「ヤキモチ?」

 「さっき男子に囲まれていたから」

 「えっ」


 (そっち?)


 声は掛けられていたけど囲まれてはいない。ヤキモチが過ぎるがそれは置いておいて……


 「後夜祭で迷惑かけてしまったから怒ってるのかと」


 そう言うとヴィンスの肩がピクッと動き、私に言いにくそうに口を開いた。


 「お酒を飲んだ後の事覚えてる?」

 「っ!」


 飲んだ後、酔いを覚ますために外へ行こうとヴィンスに抱きかかえられたまでは覚えている。


 その後にヴィンスの顔を眺めて抱きついて………キスをしたのは……………夢ですか?現実ですか?


 なんて聞けない…


 もしそれが夢だったとしたらなんて夢を見てるんだと思われる。地雷を踏んでしまう。


 「お、覚えていません」

 「………そっか」


 何となくヴィンスはほっとしたような残念そうな表情なのは気の所為だろうか。

 

 「あの後、家まで送ってくれてありがとう。折角の後夜祭だったのにすぐ帰る事になってごめんね」

 「いや、ニーナといられて楽しかったよ。また来年も再来年も一緒に出られるしね」


 ヴィンスの顔は笑顔になっていた。来年も再来年も私と、と思ってくれているヴィンスに私も笑顔になる。


 「でも」

 「でも?」

 「来年までにお酒に慣れておくか、もう飲まない方がいいな」

 「……善処します」


 本当に私もそう思う。またもや深く反省しながらヴィンスと共に廊下を歩いていると何も無いところでつまづいてしまった。


 「きゃっ」

 「ニーナ!」


 ヴィンスが咄嗟に支えてくれて転ぶことは免れた。


 (うう、色々と情けない)


 「……ありがとう」

 「気をつけて」


 お礼を言って不意に顔を上げると思った以上に近くにヴィンス顔があって、声にならない悲鳴と共にかあっと顔が熱くなった。


 (私はこんなになっているのにヴィンスは余裕なんだろうな)


 そう思ったのに、目の前には顔を赤くしているヴィンスがいて……私は驚きで固まってしまった。


 「ヴィンス?」

 「っ授業遅れるよ。行こう」


 ヴィンスに手を引かれて足早にグラウンドへ向かう。私はさっきのヴィンスの様子を思い出して、ドキドキと心臓をうるさくしていた。



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