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レオの熟考

 エリーが突然パッと顔を上げて俺と距離を取る。


 「ねえ、今物音が聞こえなかった?」

 「さあ、気の所為じゃない?」


 本当はヴィンセントとニーナがいたけど…。あの2人は言いふらすような事はしないだろうから直ぐに口止めしなくても大丈夫だろう。


 「そういえば、何で俺に母親の旧姓を名乗るように言ったんだ?」

 「……婚約でレオの自由を奪ってしまったから、せめて学園生活は楽しめるようにと思ったのよ。私の婚約者と知られたら自由に過ごせなくなるでしょう?」

 「そんな事気にしなくてもいいのに」


 俺のためだったのか。俺と関わりたくないのかと思ってた。色んな事がすれ違ってたんだと苦笑する。


 「……エリー、これからは思ってる事を自分の中で決めないで相談して欲しい」

 「分かったわ」

 「俺も伝えるようにするよ」

 「じゃあ、あの…」


 エリーが言いにくそうに目を逸らす。


 「ニーナの事は……」

 「ニーナ?」

 「っ今のはやっぱり無しでいいわ」

 「何で?不安に思っている事は言って」


 今まではここで追求しなかったからすれ違ったんだ。もう同じ間違いはしたくない。


 「……ニーナの事は……好きではないのよね?」


 おずおずと遠慮がちに問うエリーに驚愕する。エリーの言う『好き』というのは、友達としてで無く恋愛面においてだろう。


 ニーナとは一緒に行動する事が多いからか誤解される事もあるけど、エリーにもそう思われているとは思わなかった。


 エリーは俺が思っているよりも俺の事を見ていたのかと自惚れてしまう。


 「ニーナは友達だよ。ニーナの魔力がエリーに似ててそれがきっかけで友達になったんだ」

 「私の魔力に似てるの?」

 「ああ。前は、ね」


 前は似ていたから気になった。けど今は…


 「『前は』って今は違うみたいじゃない。おかしな事いうのね」

 「ああ…おかしいよな」


 そう、今は違う。魔力の性質は生涯変わる事が無いと言われているのに。


 考えれば考えるほど分からなくなる。放っておいていい問題なのかも分からず時間だけが過ぎていく。


 ただ、俺にも考えがあった。少し先になるけれどニーナが自ら話をしてくれる状況になる筈だ。


 「ねえレオ」

 「ん?」

 「これからは、前みたいに王宮に来て欲しいわ…駄目かしら?」

 「もちろん、会えなかった時間の分も会いにいくよ」


 そんな返事をするとエリーの顔がみるみる赤くなっていく。


 「レオ…貴方会わない間に変わったわね」

 「……思った事を口にしただけなんだけどな」


 ヴィンセントと一緒に行動するうちに影響されたのか。あいつはいつも率直に好意を告げていて凄いと思う。相手が不快に思わなければ有りだろう。


 「それで、エリーは後夜祭に出たいんだって?」

 「っ何故それを……」

 「出たい?出たくない?」

 「……出たいわ。でも、私もレオも本人と分からないように秘密裏に、なんて出来るかしら?」

 「お姫様の仰せのままに」


 にっと笑ってエリーを見るとエリーも嬉しそうに笑う。それは昔と変わらないもので、これからまたこの笑顔が見られるのだと思うと俺も嬉しくなった。




―――――




 「ふふっ楽しいわ。前に踊った時は私と同じくらいだったのに、随分背が高くなったのね」

 「そうだな。エリーが小さく感じるよ」


 演奏に合わせてダンスを楽しむ。昨日の朝までまさかエリーと後夜祭に出るなんて思ってもなかった。


 「バレないかしら」

 「この時間は人も多いから紛れるだろうし、長居しなければ大丈夫じゃないかな」


 2人共魔法で髪色を茶色に変え、正装で参加している。『バレたくないけど後夜祭に参加してみたい』というエリーの希望を叶えるべく、一曲だけ踊ったら早々にホールから出る予定だ。


 「レオが卒業するまでは秘密にしなくてはいけないわね」

 「俺は別にバレてもいいんだけど」

 「駄目よ。皆を混乱させてしまうし、レオだって困る筈よ。それに……秘密の恋なんてドキドキして楽しいわ」

 「エリーはエリーだな」


 堂々と人前に出られない状況を苦と思わず楽しめるのもエリーのいい所だと思う。


 そして一曲分はあっという間に踊り終えてしまった。


 「本当にもういいのか?」

 「ええ、充分よ。ありがとうレオ」


 少し物足りなくもあるけどエリーが充分なら俺も満足だ。


 「あら、あそこに騎士(ナイト)の姿があるわ。ニーナは何処にいるのかしら」

 「騎士?」


 エリーの向く方を見るとヴィンセントの姿があり、隣にはこの場に似つかわしくない中年の男性が居る。


 「騎士ってヴィンセントの事か」

 「一緒に居るのはスカーレット伯だわ」

 「あれがスカーレット伯。……厄介なのに捕まってるな」


 ニーナの姿は見えないから捕まる前に逃がしたというとこだろう。捕まっているヴィンセントは可哀想だがエリーもいてて助ける術がない。


 まあヴィンセントなら上手いことやり過ごすか、とホールを後にする。不意にエスコートしている方の手をエリーがギュッと握った。


 「どうした?」

 「……最近、嫌な噂を聞くのよ」

 「嫌な噂って?」

 「ランフォード侯爵がスカーレット伯爵と懇意にしていて、スカーレット伯爵令嬢と婚約を結び直すのでは…と」

 「……確かに嫌な噂だな。出所は?」

 「それが分からなくて、私にはわざと広めているようにしか思えないデタラメだと思いたいのだけれど……侯爵と伯爵が最近よく一緒にいるのは本当みたいなのよ」

 「それは嫌な感じがするな」


 エリーがそこまで知っているなら社交界ではかなり噂になっていそうだ。ヴィンセントの耳にも入っていそうだけど、あいつはどう思っているのだろう。


 「私、ニーナには笑顔でいてもらいたいわ。ただの噂であればいいのだけれど……」

 「ああ、そうだな」


 俺もエリーの意見に同感だ。噂なんて当てにならないし誰かが故意に広めたものだ。……そう思いたいのだけど胸騒ぎは収まらなかった。



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