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ニーナが居た痕跡

 皆で休日も開放されているという学園の図書館へと来た。勉強スペースで各々教科書とノートを広げる。


 「歴史と魔法は暗記ばっかりだな」

 「頭に詰め込まなきゃ」


 レオとリリーが向かいの席に座る。


 「俺、ノート持って来るの忘れた」

 「歴史で良ければ私の貸すよ」

 「ありがとう、借りるね」


 隣に座ったヴィンスにノートを貸す。私は魔法の勉強から取り組む事にした。


 勉強を始めて暫く経ってからだった。


 「ニーナ、最初の方と最近で字体が変わったね」

 「えっ?」


 ヴィンスにそう言われて首を傾げる。最初の方……といえば、入れ替わる前だろうか。ノートには()()()の書いた文字が残っていた事を思い出す。


 (っ!()()()の字だ)


 ()()()が居たという痕跡が残っていた事を失念していた。


 「えーっと、私字を書くのが遅くて、少しでも早く書ける様にと思って変えてみたんだ」


 (苦しい言い訳……)


 「そうなんだ?どちらの字も見やすいよ」

 「よかった…」


 (よかった…深く突っ込まれなかった)


 「へぇ。どんな字?」

 「!」


 レオとリリーが気になった様で2人にもノートを見られる。まだこの話が終わらない事に焦ってしまう。


 「本当だ。最初の方が大人っぽい字体だな」

 「今は女の子っぽい字だよね」

 「そう、かな」


 (どうしよう…。あまりこの話を引っ張りたくない)


 「皆、喉渇かない?」

 「そうだね、一旦息抜きしようか」

 「1階で飲み物売ってたよ。私皆の分も買って来るね」


 この場を離れてこの話を終わらせる事を試みる。当事者が居なければ違う話になるだろう。


 「ニーナ、一緒に買いに行くよ」

 「ありがとう、ヴィンス」


 あの場を離れてほっとする。字の事まで頭が回らなかった。他にも何か見落としてないか気を付けなくてはいけない。


 (皆が変に思ってなければいいんだけど…)


 「勉強捗ってる?」

 「うん。魔法の勉強はヴィンスに博物館連れて行ってもらってから楽しくて、まあまあ点数取れるかなって」

 「よかった。また色々見に行こう」

 「うん!」


 少し気を張っていたが、ヴィンスの言葉に気持ちがほぐれる。


 「あっ、2人に何飲みたいか聞くの忘れたね」

 「うーん、リリーは紅茶で、レオはレモネードかな」

 「…よく知ってるね。妬けるな」


 そう言って、私の髪をさらっと触った。


 (〜〜なんで、髪触るの!?)


 「俺のも分かる?」

 「…ヴィンスは、いつもコーヒーよね」

 「正解。ニーナは紅茶だね」


 ふっと満足そうに笑って、私の頭をぽんぽんっと触る。


 (っ!)


 スキンシップが過多気味のヴィンスに叫びたいのを堪える。


 (覚えた事が全部飛んでいっちゃう)


 「そうだ、ニーナ」

 「……はい」


 そんな私の胸中を知らないヴィンスは普通に話し掛けてくる。誰か彼に『そんな風に女の子に接していると勘違いされる』という事を教えてあげて欲しい。


 「夏期休暇の予定って決まってる?」

 「えーっと、最終週以外は領地に行く予定だよ」


 夏期休暇は全部で一ヶ月程あり、その大半は避暑も兼ねて領地へと行く事になっている。中々贅沢なバケーションだ。


 「そっか。ニーナのとこの領地は避暑地でも有名だもんな。暫く会えないのは寂しいな」

 「うん…」


 始めての領地は楽しみだが、一ヶ月近くもヴィンスや皆と会えないのは寂しくもある。


 「最終週のどこか空けておいてくれる?大分先になるけど、約束してたデートしよう。一緒に行きたい場所があるんだ」

 「うん、最終週空けておくね。どこに行くの?」

 「それは…まだ言えないかな」

 「?じゃあ、お楽しみにとっておくね」

 「うん」


 ヴィンスと出掛ける約束をする。いつも彼とのお出掛けは楽しいので次回も楽しみだ。彼とのデートももう私の日常になりつつある。


 皆の元へ戻りお茶休憩をした後は、また勉強を頑張ってその日はお開きとなった。




―――――




 試験結果が掲示される日――この日は授業が無い為、好きな時間に見に来ていい決まりだ。私は朝から早速リリーと掲示場所へ見に来ている。


 「ニーナ。50位に名前あったよ!」

 「えっ本当?」


 急いで探すと『50位 ニーナ・フローレス 初級』とあった。


 「実習クラスも初級に上がってる!」

 「やったね、ニーナ!」


 (嬉しい!ギリギリだけど目標が叶った!)


 やはり筆記と読解の速度が遅くて、時間内に全問解く事が出来なかった。だけどそれでこの順位なら解答した部分の正答率は高い筈、とポジティブに捉える。


 実習クラスでは試験の際、火傷の時に居合わせた先生に『ニーナさんよくここまで頑張りましたね。』とお褒めの言葉を頂いたので、初級に上がる事を何となく予想はしていた。


 「私76位だった〜。実習は私も初級クラスになったよ!レオ先生にお礼言わなきゃ」

 「うん、本当だね」


 本当に、レオに魔法の練習を見てもらったお陰だ。放課後の貴重な時間を練習に付き合ってくれて感謝しかない。


 「ニーナ…1位と2位を見てみて」

 「うん?」


 リリーに言われて1位と2位の方を見る。


 「わあっ…」

 「ね!すごいね」


 驚きすぎて開いた口が塞がらない。

 『1位 レオナルド・ヴェルディ 上級』

 『2位 ヴィンセント・ランフォード 最上級』と掲示されていた。あの2人はどれだけハイスペックなのだろう。


 「すごいね…」

 「頭の中どうなってんだろう」

 「どうもなってないよ」

 「えっ?」


 リリーとの会話にレオの声が混ざる。


 「レオ!」

 「2人共見に来るの早いな」

 「レオもね。1位だね、びっくりしたよ」

 「だな。2人の驚く顔が見られて1位を取った甲斐があるな」


 レオは平然としているが、もし私が1位を取れたなら歓喜で泣いてしまいそうだ。


 「私もリリーも実習のクラスが初級に上がったよ。レオ、練習見てくれてありがとう」

 「ありがとね、レオ」

 「どういたしまして。頑張った成果が出てよかったな」


 自分の事よりもさらっと私達を褒めてくれるレオに、いつか彼が困った時は助けてあげようと誓う。


 「この後、ニーナと買い物してからランチするんだけど一緒にどう?」

 「いいね。ちょっと用があって…ヴィンセントと待ち合わせしてるからランチから合流させて。お昼にこの前皆で待ち合わせした所でいい?」

 「うん、じゃあ後でね」


 (ヴィンスと待ち合わせしてるんだ…)


 自分と仲の良い2人が仲が良くなるのは嬉しい。けど、何故かちょっと寂しくも感じるのを不思議に思いながら、リリーと学園を後にした。




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