第二章⑷春の告白、そして夏。
二章完結です。三章以降もお願いします!
裕の余命宣告から半年以上経った七月、僕らは相変わらず一緒にいた。
「あーーーー!もう、嫌っ!!」
「仕方ないだろ。頑張れよ。」
「せっかく二人も受験勉強終わって、三人そろった初めての夏休みが目の前なのに…楽しい大学生活なのに…なんで勉強?なんでテスト?大学は人生の夏休みじゃないんですかーーー!」
「うるさい。俺たちよりテストもレポートも多いんだから真面目にやれよ。二年目の癖に、慣れてないのかよ。」
「はぁーー?やってもやっても終わらないんです!!慣れるかこんなもん。だいたい、なんで裕たちはそんなに少ないのよ。」
「僕らの学科はフィールドワークが多かったから、成績評価はそのレポートと後は平常点評価なんだ。」
「そんなのずるい。」
「ずるいってゆわれてもね。」
「私なんか、ほとんどテストで成績つくやつだし、だからって授業でないとテスト出来ないし、その上持ち込み許可物なしなんて。不公平よ!!」
「未来の弁護士、学部の不平等を訴えるの図だな。」
「裕!またバカにして、それに私、弁護士にはならないわ。」
「まぁ本来、勉強は僕らの本分だからね。」
「こういう時にまで正論言わないでよー。意地悪なのは一人で十分。」
「それ誰のことだよ。」
「さあね。」
彼女はどちらかというと勉強が苦手だ。一度は弁護士になりたいと法学部を目指したが、入学後のガイダンスで聞いた司法試験までの道のりに心が折れ、弁護士になるのを早々に諦めたらしい。
「俺は、やっぱり弁護士になってほしいよ。」
「弁護士目指してる私の苦労も見ずに死んじゃう人に言われたくないです。」
「すぐそういうこと言う。」
べーっと舌を出しておどける彼女の頭を裕がコツンと叩くと、いつも彼女は世界で一番幸せそうな顔をする。「このまま自分と付き合っていていいのか」という裕の不安。柚の答えは僕が想像した通りだった。彼らは、死を二人で受け入れることにしたように思えた。それからというもの、「先に死ぬ人に言われたくない。」は彼女の必殺技だ。僕は裕の親友として、裕の病気を正面から受け止める彼女を尊敬したし、心から感謝した。
そして、彼女のその想いと、僕の覚悟は、彼女への想いにさらに何重にも鍵をかけた。そして、深く心の底に落ちていった。