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第一章⑸予期せぬ出会い、そして初恋。

一章簡潔です。全13章くらいあるので、一話の文量もう少し多めで行きたいと思います・・・

僕が音の正体に気が付くのと同時に彼女は、

「裕に聞いてた通りの人ね。」

と言った。その表情は、今までのどの微笑よりも優しく、どの笑顔より温かかった。そして僕は、心を壊されそうになる感覚の名前も知ってしまった。これは、嫉妬だ。そして、僕はこの二つの想いを無理やり体の奥底に押しやった。僕は分かっていたんだと思う。僕が恋に落ちたのは、「裕に恋をしている」彼女だ。

「あれ言い出したの君でしょ?」

「あれって?」

「とぼけちゃって。『大きなお友達』よ。」

「あぁ。うん。説明されてた朗読会とだいぶ違ったから。」

「『真面目で冷静な奴なのに、たまにとんでもないいたずらを思い付くやつ』。」

「え?」

「裕が君の事こう言ってたのよ。それから何度も『条件』の餌食にされてきたってね。」

僕のいないところで裕が彼女に何を話したのかは知らないけど、少なくとも僕が「条件」なんて言って裕で遊ぶのは、それに値する事をその前にされているからだ。


「僕は基本、ギブアンドテイクだからね。」

今回だってそうだ。僕は絵本の読み聞かせなんて興味なかったんだ。だから、興味のないものを少しでも楽しむための「条件」、だったはずなんだけど。

「今回は貰いすぎたかな。」

頭で言ったはずの独り言は、思ったより大きく、彼女にまで聞こえてしまった。

「え?」

「いや?なんでも、」

貰ったというより、気づかされてしまった。


絵本は嫌いだ。温かい思い出の共有を強いられている気分になる。読み聞かせはもっと嫌いだ。昔から、大人が大きな声で大袈裟に読むより自分で読むほうが好きだった。でも、彼女の読み聞かせは、何かが違う気がした。それがなんなのかは分からなかったし、「僕の贔屓目」があったのかもしれない。ただ、少なくとも、僕は彼女の読み聞かせが「苦」ではなかった。華やかささえ感じた。この、なぜとは明確に言い切れない理由を、人は恋と呼ぶのかもしれないとふと頭に浮かんだ。


 この日を境に、僕は彼女とも仲良くなった。そして、幼馴染の「彼女」だった柚は、僕の友達になり、初恋の人になった。そのまま一年半が過ぎ、柚は大学生になった。彼女は、第一志望だった国立大学の法学部へ進学した。僕はてっきり、柚は文学部に進むと思っていたから、合格したのが法学部で、しかも第一志望だと聞いた時は驚いた。

「弁護士になりたいんだってさ。」

合格の知らせを受けた時、裕は誇らしそうに話してくれた。それを聞いて、僕も誇らしい気持ちになった。もちろん友達として。僕は「初恋」をうまく思い出にできたと思う。

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