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エンディング

 僕は永遠に裕には勝てない。でも、こんな僕を、背中を押されてばかりな僕を、君達は揃って「優しくて温かい人だ。」なんて言うんだ。十年前から変わらない温かい笑顔で…。僕はこの温かい笑顔を守りたいと思う自分をそろそろ信じてみようと思う。裕、君の予想は合ってるよ。だから、君の希望も、もしかしたら叶うのかもしれない。君は無茶ばかり言う人だけど、この無茶は僕も叶えたいんだ。悲しい微笑は、もう終わりにしたい。


 なんて言えば君に伝わるだろう。「恋」でも、「愛」でもないこの気持ちに名前を付けるなんてことは、僕にはできないから「真実」の白もつこの花を君に贈る。僕らのこの場所で。花を贈るには少し、いや、大分と不似合いな場所だけど。


 今思えば、このファミレスにはいい思い出の方が少ない。大事な親友の前で、無力な自分に嫌気がさした。彼女の最初の「激怒」もここで見た。そして、彼女が一番つらい時、僕は自分の無力さに今度こそ脱帽した。

 このファミレスにはいい思い出の方が少ないんだ。でも、あの日、裕が君を連れてきた日。その場所がここだった。ただそれだけで、あの日から、このファミレスは僕の「運命の場所」になったんだ。


やってきた君が息を上げながら僕の前に腰かけた。

「柚稀。」

そんな君の息が整うのを少し待って、僕は小さな白い花束を渡した。この十年間、色んな君を見てきたけど、僕に驚いた君を見るのは初めてだ。そういうのはいつだって裕の役目だったから。でも、この後は君が笑ってくれるといいな。

「一緒に居ないか。これからずっと。」

「ずっと一緒に居るって、どういうこと?」

「分からない。ただ、一緒に居たいんだ。そして、幸せを二人で分けるみたいな。どうかな?」

不思議な気持ちだ。緊張とも、期待とも違う。少し目を伏せた彼女の腕が伸び、アネモネの花束が彼女の胸に収まる。

「何それ。仕方ないなぁ…。幸せを倍にしてあげる。」

そう言って微笑よりも豪快に、けれど優しい顔で笑う彼女と、僕はこれからも春を生きていく。君のいない春を、僕らは強く生きていく。


ブラックコーヒーを飲めない僕は、彼女に恋をした。

カフェオレを飲む僕は、彼に何一つ敵わなかった。

オレンジジュースを飲む彼は、僕らを強くしてくれた。

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