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17.しくじった

 素早く俺たちは分担を決めた。

 まずベティアは禍神を封印魔法で押さえつける役。

 アルハはダメージの入るベティアの体を回復魔法でサポート。

 サリアンは戦力としては弱いが、もし逃げられたときに知識で追いかけるために居残りだ。


 そして俺は……


「いくぜ!」


 疾風一角鬼の肩に乗り、空へふわりと浮き上がる。


「頑張って……無理しないでね!」


 ベティアの声に親指を立てる。

 大丈夫。心配しなくても負けないぜ!

 ベティアも頑張ってくれよ!


 みるみるうちに高度が上がる。

 上空の乱気流。

 魔法でキャンセルしてもその力の大きさだけは肌に感じる。


 時間はそんなにかからないしかからせない。

 すぐにマコスタの姿が見えてくる。


「来たか……」


 陰気な声は最後に聞いた時と変わらない。


「マコスタ先生」


 俺は一応と思って言葉をかける。


「なんでこんなことするんすか? 俺に恨み? それにしたって学園のみんなを巻き込むには馬鹿げてるし、そもそも俺らそんなに知り合いでもないでしょ」

「そうだな……」


 うなずき方まで暗く影を引きずるみたいにうなずく。

 目の奥に暗さを宿らせて、彼はつぶやくように続けた。


「だがやらねばならないことというのは、そういったこととは別にある……」

「わかんねっすよ!」


 俺は叫んで腕を掲げた。

 わかってたまるか。

 苦しんでいた女子生徒を思い出して胃のあたりがむかむかする。

 わかる日なんて来るはずもない!


「わかるさ……馬鹿馬鹿しい行動で言えば君に文句を言われる筋合いはない」


 うわ、ぷっちん来た。

 こいつ、俺がベティアを追うために呪いにかかったことを貶しやがった。

 後悔させんぞコラ!


 攻撃のための呪文を唱えようとした俺は――すぐにマズったと悟った。

 マコスタがさっと指を振る。


「くらえ……」


 つぶやきと一緒に俺とマコスタの間に暗闇が染み出した。

 一瞬ゆらりと揺らめいて黒い球状に固まり……こちらに向かって一気に衝撃波を噴き出す。


「ぐお……!」


 マコスタはああ見えて武闘派。

 その言葉が頭にこだまする。

 呪文はこちらが上ってくるまでにすでに完成してあったんだろう、生半可な防御じゃ防げない。

 特に、攻撃を出しかけていた体勢からじゃ……


「だが、なめんじゃねえよ!」


 こちとら未来の邪神様じゃい!

 頭に浮かんだ呪文を口早に唱える。


「金の鎧、銀の盾、歓喜に壁を銅に塗れ。遠く隔てし時空の狭間、突き立つ剣は欠け落ちる!」


 突き出した指の先に小さい光の盾が生まれる。

 あまり大きくもないけれど、それでもマコスタの攻撃をギリギリで分け逸らしていく。

 へっ、見たか!


 次第に弱まっていく攻撃の向こうで、マコスタが小さく息を飲むのが分かった。


「これは……なんとも……」


 黒い球体が消えて、攻撃が終わる。

 驚いたか? これが俺の力だぜ!


「これが邪神の力の一端……」


 ……ま、いいけどな。間違ってねえし。


「でも、そういえばなんであんたがそれを知ってるんだ?」

「それを言うと思うか……?」

「言うだろうよ。痛い目には遭いたくないだろ?」


 俺は下を気にしながら言った。

 そろそろベティアたちも負担が大きくなっているはずだ。


「悪いが、明かすわけにはいかない……しかし捕まって拷問、というのも嫌だな……」


 マコスタは小さく笑った。


「だからこうしよう……」


 俺ははっとした。


「待て!」


 マコスタが視界から消えた。

 視線を下に向けると猛スピードで落ちていく……というか急降下していくマコスタが目に映る。


 くっそ、逃げられた!

 そう思って追いかけ始めた。

 だけど、それはまだまだ考えが甘かったと思い知らされることになる。

 マコスタは、俺の追いかける先で地面に激突して鈍い音を立てた。


「な……!?」


 絶句する。

 校舎の前庭。彼はそこに赤い血の花を咲かせた。

 俺は慌てて地面に降りて駆け寄った。


「…………」


 駄目だ。死んでる……

 そして気づいた。

 すぐそばに石板が落ちていた。

 忍び寄る禍神の封印石板。

 ただし、真っ二つに割れた形で。

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