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14.犯人探し

「どうやって捕まえる? とりあえず全校生徒教師のスケジュールからアリバイは大体割り出せるからそこから攻めようか?」

「手間だろ。正確さにも欠けるしな」


 廊下を歩きながら話す。


「もっと確実でめちゃ早な手を取ろう」


 進んでいくと他の生徒にも通りがかる。

 すると俺を見てはっと息を飲む。

 みんなビラを見たんだろう。

 俺の顔を知っているのはやっぱりエティサルをぶっ飛ばしたからか。


 ふと振り向くとベティアが同じような微妙な顔で俺とサリアンを見比べているのに気づいた。


「え、なに?」

「あんたたちって昨日からずっとこんな感じに話してたの?」

「こんな感じって?」

「なんか、こう……アレな感じ」


 少し考えてサリアンを半眼でにらむ。


「お前のキモさのせいでとばっちり食ったぞ」

「謝らないよ。僕の特技だもの」


 余計ベティアの視線にけったいな奴らめ感が増すけれど。

 とりあえず今はそれに構ってはいられなかった。

 角を曲がり、外に出て、校舎の裏手へと向かう。


「こっちに何かあるのかい?」

「さあ」


 特に何かあるとかは知らなかった。

 着いてみると、人気のない小さな庭になっていた。


「ふうむ」

「どうするの? 何もないみたいだけど」


 ベティアを振り向いて俺はにやりと笑って見せた。


「とりあえず人気がなければいいんだよ」

「?」


 ベティアはよく分からなかったようだけど。


「ミゼリア」

「はぁい」


 小声の呼びかけにミゼリアが応じて現れる。


「何か用?」

「ちょっといい感じの魔法を使いたいんだけど……あるか?」


 使用用途を伝えると、ミゼリアはにっこりとうなずいた。


「それなら四十二魔族がうちの一、疾風足の一角鬼を呼びなさい」

「サンキュ」


 意識をまとめて手をかざす。

 その手のひらに力が生じるのに合わせて、風がゆらりと集まってくる。

 初めは微風。それから次第に速く強く、渦を巻いて黒い塊へと変わっていく。


「……行け!」


 パン! と。

 俺が命令するのと同時にそれは内側から弾けた。

 中から一瞬、何か黒い影が飛び出していくのが見えた。


「今のは?」

「まあ見てなって」


 サリアンに適当に手を振る。

 多分少し時間はかかる。

 それまでは待たないといけない。

 暇だな。


「お前たち! そこで何をしている!」


 その時声がして、俺たちは振り向いた。

 そこにはポニーテールのすらりと背の高い女子がいる。

 ミーシャマール。あのクソ女だ。


「別に。何も」

「そんなわけあるか!」


 仏頂面の俺に、クソ女は構わず詰め寄ってくる。

 サリアンとベティアにはガン無視をくれて。

 例のビラを俺の眼前に突きつけてわめく。


「これはどういうことだ! お前、不正を行ったのか!?」

「アンタ誰が貼ったのかも分からないようなもん信じるのか?」

「お前は怪しい! それは事実だ!」


 ……ひどすぎじゃね?


「ミーシャマールさん。それはちょっと言い過ぎです」

「お前はこのバカの肩を持つのか?」


 間に入ったベティアをにらんでクソ女はうなるように言った。


「わたしに盾突くなら相応の覚悟をしてもらうぞ」

「そういうことを言ってるんじゃありません。ゼンの言ってることも一理あるでしょう」

「怪しい奴の言う怪しいことにどれほどの信憑性がある?」

「じゃあ卑怯なやり方で人を糾弾する輩が正しいっていうんですか!?」


 やり取りが次第にヒートアップしてくる。

 ベティアが俺をかばってくれたのはうれしい。

 でもさすがにこれマズいな、と思ったところでサリアンが不意に声を上げた。


「あ」


 同時。

 一陣の風が横切って、その後に空中からドサドサドサと何かが落ちてきた。


 折り重なって倒れているのは生徒だ。

 五人ほど。

 全員目を回している。


「……この人たちは?」

「ここを覗いてた奴らを召喚獣に集めてもらってた」


 多分ビラを貼って回った奴らは俺を監視してると思った。

 だから人気のない所に出ればあぶり出せると踏んだのだ。

 昨日今日で増えた魔法の中に便利なのがあったのは幸運だった。


「君、本当に頭悪いの?」


 サリアンが怪訝そうに訊ねてくる。


「暗記とかは苦手。でもイタズラは得意だぜ? 孤児院では馬鹿にしてる奴はいても直接手を出してくる奴はいなかった。俺の仕返しが怖いからな」

「威張ることじゃないでしょ」


 ベティアに頭をはたかれて舌を出す。

 驚いて目を丸くしているミーシャマールの横を通り過ぎ、倒れた生徒の一人にかがみこむ。


「誰がお前たちをここによこした?」

「な、何のことだか……」


 しらばっくれるか。

 まあそうだよな。


 俺はパチンと指を鳴らした。

 その瞬間、巨人――剛腕金剛族が姿を現す。

 狭い場所なので気持ちぎゅっと詰まるようにして、倒れているそいつらを見下ろす。


 多分めちゃくちゃ威圧感があったはずだ。

 見上げた五人は目に見えてぶるぶると震え出した。

 ミーシャマールもあんぐりと口を開けた。


「改めて聞くぞ。誰の差し金だ?」

「し、知らな――」

「五」

「へ?」

「四、三、二」


 俺が手で合図すると、巨人が拳を振りかぶる。


「いーち!」

「言う! 言うから!」


 巨人がすっと殺気を消す。

 生徒たちはへなへなと緊張を解き、そしてつぶやいた。


「……マコスタ先生」

「ん?」

「マコスタ先生が俺たちにこうしろって……」


 聞いたことのある名前に、俺たちは顔を見合わせた。

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