旅立の日に
お知らせがあとがきにあります。
さて、家を出るにあたって問題になるのは持ち物である。
しかも、俺は旅らしい旅をしたことがない。
まあ、現実世界、というのかは謎だけど、とにかく地球の日本国で普通に暮らしている限り、ひとり旅など経験しないだろう。
なお、普通の定義は人それぞれです。
というわけで、人生初めての旅の出発点が森で、旅のお供がオオカミの大群でスライムで、女子を連れているという現状、俺は大変困っていた。
まず、最初に話した通り、持ち物である。
フレリアに聞いたら、
「私は必要なものは特にありませんよ?」
と言われた。
なんの助けにもならなかった。
まあ、とりあえず俺の持ちものは、全て持っていくことにした。
とはいっても、リュック(神様に落とされた場所に落ちてた)に入るくらいしか無い。
それ以外はボチボチと調達すればいいかな。
次に考えたのが、オオカミの大群である。
旅の途中で、必ず町に寄る必要が出てくる。
それは食料調達であり、稼ぎであり、寝床である。
特に、最後のは、俺はいいんだが、さすがに女子に野宿はさせられない。
さすがに、ね。
で、どこで待っていてもらうかなんだけど、これがまた大変だった。
「というわけで、どこで待ってたい?」
『我々はどこでも』
「いやいや、そういうわけにもいかないでしょ」
『我々は、野生ではみんな野宿です。どこでも寝れます』
「…………それなら──」
「だめですよ!」
急にフレリアが話に入ってきた。
近くでなんかやってたから聞いてないのかなと思ったけどちゃんと聞いてた。
「あなたたちはもうユータ様の配下でしょう? でしたら、ちゃんとしたところでお休みになってください!」
「いや、俺が聞いたら『ごろ寝で~』とかいってただろ」
なぜ俺が突っ込み役になっている?
……疲れる。
そんなわけで、準備中なわけだけど。
大事なことに気がついた。
俺、一文無しだった。
それどころか、こっちの世界の貨幣事情、まっっったく知らない。
これはヤバイ。
「フレリア、この世界のお金ってどんなの?」
「ああ、それでは説明しますね」
~フレリアの三分説明~
「まず、貨幣には白金貨、金貨、銀貨、銅貨があります。
その中で、普段使うのは銀貨と銅貨ですね。
それぞれ100枚で1つ上のランクの貨幣1枚の価値になります。
また、それぞれ10枚で大白金貨、大金貨、大銀貨、大銅貨に変えられます。
貨幣の価値としては、大銅貨一枚でパン1つ、というイメージです」
そう説明しながら、フレリアは実物を机に並べて説明している。
「……ちょっと待て。なぜそんなに持っている?」
一文無しだと嘆いていたのがまるでバカではないか。
あるならあると先に言ってくれればよかったのに。
「まあ、私は元王族ですから」
「お、おう、そうだったな……」
そんなこんなで出発の支度ができた俺たちは、最後に我が家を振り返った。
「なんだかもったいないですね」
「そんなことはない。また戻ってくるさ」
「……そうですね」
「じゃあいこうか。またな、相棒、すぐ帰ってくるさ、寂しがるな」
俺たちは別れを、旅立を惜しみながらマイホームに背を向けて歩きだした。
そうして、俺たちは旅に出た。
*************
「ところで、家に話しかけてどうしたんですか? ちょっと怖かったですよ?」
「ちょっ、おま、今いい感じの別れの雰囲気だっただろ!?」
「知りませんよ、家に話しかけるといい雰囲気になるんですか?」
『これはきれいに落ちましたな、我が主』
一応、ここで一章を終わりにしたいと思います。
ここまで続けてこられたのも、読んでくださった皆様のおかげです。ありがとうございます。
さて、次話は閑話として、少しおやすみをいただいてから2章に入りたいと思います。
とはいっても、これまでの話を改稿しているので、是非もう一度読んでみて下さい!(改稿が間に合ってなかったらゴメンナサイ)
ではでは。
2章でまた会いましょう。
そうそう。
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