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従者物語② 強欲の息子  作者: yuk1t0u256
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6話 タリスマンの秘密

「悪いが従者は俺だ。一番強い奴、腕のいい奴が勇者のパーティに入れる。そうだな?」

「う・・」

エルミーはしびれ薬の影響でまだ声も出せない。しかしキールの言うことを認めるしかなった。

勇者ケンジも勝った方を従者に、と言ったのだ。

「息子さんかわいそう・・」

「まあしょうがない。スカウト枠は1つだけだ。負けた方を仲間にはできないよ」

ケンジは口調こそ気さくだが冷徹だ。

「ああ、キール、フェリス。実は北の魔王は新しい勇者に任せようと思うんだ」

「なに、じゃあ俺たちはどうするんだ?」

「実はもっと面白い相手がいてね・・古き魔王というんだが」

「知っています。魔界の底に封じられているとか」

「そうそう。僕らはそっちを目指そうと思うんだ。どうかな?」

「そりゃ面白い、ぜひ行こう!」

「私達なら魔界の底にも行けるでしょうね」

キールもフェリスもやる気だ。

「そう言ってくれると思ったよ」


エルミーはようやく薬が切れはじめ、起き上がれるようになった。

そこへケンジが近づき、話始める。

「エルミー、君に頼みたい仕事がある。ボクが作った聖剣、かつて魔王を倒した武器だ。それを新しい勇者に届けて欲しい」

「おいおい、お前の武器はどうするんだ?」

「僕はもう剣を振るう力がない。力が無くても使える武器を用意してある」

「なるほど、準備がいいな」

「こんなこともあろうかと、って奴が好きでね。色々作ったんだ」

「かしこまりました、ケンジ様。聖剣はどこに?」

エルミーはまだ口が動きにくいが、失礼のないよう声を絞り出す。

「まだ動けないだろう。ちょっと待っていてくれ」

ケンジは家に戻り、やがて鞘に入った一振りの剣を持ってくる。

ケンジが鞘から剣を少し抜くと、鞘と剣の隙間から光が迸る。

「よし、大丈夫だ。これは異世界人専用の武器で、この世界の住人が使っても普通の剣と変わらない。新しい勇者は異世界に一人で心細いはずだ。これが力になれば僕も嬉しい。頼んだよ」

「必ずお渡しします」

エルミーは立ち上がり、剣を両手で受け取り頭を下げた。負けた自分に大仕事を頼んでくれたのだ。絶対に期待に応えてみせると固く誓った。

「じゃあな、エルミー。達者で暮らせよ」

キールは意趣返しか偶然か、エルミーがキールに掛けた決別と同じ言葉をかけた。


帰り道、エルミーは敗北感と屈辱でいっぱいだった。

自分は思いあがっていた。父親に手も足も出ず、勇者の前で無様な姿を晒してしまったのだ。

暗鬱な気持ちでギルドに戻ってきた。おそらくもう知っているだろうが、念のためゴトリーにギルドマスターたる父が旅に出ることを伝えなくてはならない。

エルミーに気づいたギルド職員が、すぐにゴトリーを呼ぶ。

「坊ちゃん、お帰りなさい。その様子では・・」

「ああ、父がケンジ様の従者になった。なぜか若返っていてな」

「キール様が若く・・? ひとまずこちらへどうぞ」

二人でギルド長室に入り、扉に鍵をかける。

「実はこんなものが」

ゴトリーが持ってきたのはガラクタと化した装飾品の欠片だ。

「これは・・親父のタリスマンか?」

「そうです。おそらく・・タリスマンの特別な力(スペシャルパワー)を使ったのでしょう」

「スペシャルパワー?」

「キール様が酔ったときに聞いたことがあります。タリスマンが壊れるのと引き換えに、一度だけ使える強力な力があると」

「それで若返ったのか? そういえば」

エルミーは思い当たった。もう一人のフェリスという女性やケンジと父の会話でも、使った、若返ったという単語があった。

「もう一人の従者も若返ったようだった。そうか、このタリスマンにそんな力が・・」

ケンジの言葉が脳裏によみがえる。こんなこともあろうかと・・。

「ユニークスキルが使えるときにこんな先のことまで考えていたのか。恐ろしいお人だ」

ゴトリーは手紙を差し出す。

「キール様よりお預かりしております」

エルミーは手紙を広げる。

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