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そして、綺麗な顔と同時に左頬の痛々しい傷も姿を現した。左頬の傷は火傷のようで、赤く爛れた肌だった。
「綺麗な顔をしていらっしゃるのね。年はお幾つで?。」
そう言って首を傾げると、ノルヴァ様は目を見開いた。マーサもそうだった。
「18。今年で18だ。」
ノルヴァ様はそう答えた。
「私の2つ上ね。やっぱり敬語の方が良いかしら・・・?。」
「いや、大丈夫だ。そっちの方が身分が上だしな。」
ノルヴァ様はそう言った。
ノルヴァ様とは対等な関係を築けそうね・・・。あれ、待って私・・・家族と召し使い以外の男の方と話したことなかった・・・?。もしかしてこれが初めて・・・?。いや、まさかそんな筈は・・・。
あれ、なんか顔が赤い?。やっぱり男の方と話すの初めてなんだわ。
「アルティナ様?。」
「いえ、なんともないわ。」
スン、と我ながら見事な真顔をした。
「なんともなくないですよ。」
マーサに腕を引っ張られる。私は馬車の中でうずくまる形となった。
その途端に私は現実に引き戻される。賊の荒々しい声が響いている。その声に私は縮こまる。震えていた。体が。
「賊だな。大丈夫だ、俺が行ってくる。」
そう私の背中を撫でて言ったノルヴァ様は立ち上がった。そのままノルヴァ様は馬車のドアを開けようとした。
・・・不意に私は、母が死んだ時のことを思い出した。「行ってくる。」そう言って帰ってこなかった母の最期の笑顔が脳裏に浮かんだ。私はノルヴァ様の腕を引っ張る。
「ノルヴァ様。怪我などには気をつけて下さい。」
心から、そう想っていた。
私の必死な姿にノルヴァ様は驚いた様子だったが、ああ、と応えて行ってしまった。
だいぶ遅れてすみません。