オカルト撲滅部
初めて書いてみました、誤字脱字、あったらすみません。
序章 正義の味方
僕の名前は貝崎美彦。
この物語の…
「なにがんくれてんだてめぇ!」
「ひぃぃ!すみません!!」
あらら、まーたやってるよアイツら。
学校の廊下で、それもトイレの前で、入りにくいっての。
仕方ない、僕がビシッと言ってやるか
「なーにがすいませ〜んだ!おれはなんでこっちをジロジロ見てんだって聞いてんだぞ?」
「その辺にしときなよ君達」
僕は絡まれていた男子生徒を背に、立ちはだかる
「あん?、なんだ~てめぇー。」
「この、人怖がってるじゃないか」
「なんだこいつ」
ヤンキー達がくすくすと笑っている。
「おい巫!なんか変な奴きたぞ~。」
すると、トイレの中から一人の男が気怠そうに歩いて来た。
「あー?誰だよそいつ。」
この男、仲間達はかんなぎと呼んでいたが、何者だろう、オーラが他のヤンキーとは大分違う。
「おまえ、名前は?」
メンチを切りながら僕にそう聞いてくる。
「貝崎だよ、貝崎美彦」
微かに焦げ臭いニオイがした。
「ふーん、かいざきねー」
巫という男は凄い剣幕で僕を睨むと。
「お前さー、人助けがカッコいいとか思ってない?ラノベとかじゃそういう主人公はチョロインに惚れられたりするけど、これは現実、そんなこと起こんないんだよ?なのに人助けなんてしてなんの意味があるの?」
「人を助けるのに理由なんていらないよ。」
「かっこいいね~。」
彼は少し考えてから。
「まあいいや、とりあえず面貸せよ」
突然僕は喧嘩を申し込まれた。
僕は極真空手の黒帯を持っている、当然素人相手に負けるはずがない。
そう、思っていた。
結果は惨敗、手も足も出せなかった。
絡まれていた男子生徒は、結局僕の後に、ヤンキー達の中の誰かにやられてしまったそうだ。
僕は正義の味方にはなれなかった。
僕に焼きを入れた男、名を巫。
この男がいずれ世界を救う事になる。
この悪党が正義の味方なら、僕は何者何だろう。
僕の名前は貝崎美彦。
この物語の主人公に焼きを入れられた、ただの男子生徒である。
第1章 超絶美人の転校生!?
私立小山学園 1学期始業式
校舎裏
「なんでおれらって学校には来るんだろうなー、今日だって式に参加しねーならくる必要なかったよな。」
「寮にいても、することがない」
「まあーそうなんだけどさ、大河明日バイト?」
「いや、違うが」
「じゃーどっかいくか?」
「明日は部活がある、伊月が言っていた」
「あーそうだったそうだった、伊月、明日の内容は?」
「んーまぁいつもと同じような仕事だよ、鉈があれば十分かな。」
「りょーかい、大塚は?明日くるか?」
「おれはパス。わりーけどバイトなんだ」
「副部長が欠席かよ、やる気ねーなー。」
俺は冗談でそう言った。
「だがらごめんて~」
そこでチャイムが鳴る。
「ホームルームか」
俺達はそそくさと教室に戻って行った。
「よーしお前らよく聞け、今日はこのクラスに転入生が来ている、入っていいぞー」
ガラガラっと教室のドアが開き、一人の女生徒が入って来た。
「では、自己紹介をしろ」
「皆さん初めまして!私の名前は愛川 椿です!これから二年間、楽しい高校生活を送りたいので皆さんどんどん話しかけてくださいね!」
長い黒髪が綺麗だ。
めちゃくちゃかわいい。
「では、奥の空いている席に座ってくれ」
「はい!」
転校生愛川椿は俺の方へ向かって歩き出し隣の席に腰を落とした。
「お世話になります、お隣さん」
彼女はそう言うとニコッと笑った
「おう」
俺は照れくさくて冷たく彼女に当たった、それでも彼女はにこやかにこう言う
「学校のこと、いろいろ教えてくださいね」
俺は目も合わせず頬杖をついたまま言う。
「気が向いたらな」
「はい!、気が向いたらお願いします!」
元気がよくて何よりだ。
「えっとー、お名前を聞いてもいいですか?」
「巫」
「巫女さんの巫、でかんなぎさんですか?」
「そうだけど?なんか文句ある?」
「いえ、文句なんてとんでもない、いいお名前ですね」
彼女はまたニコッと笑う。
「そこ!挨拶はホームルームが終わった後にしろ!」
担任の柏木が注意してきた。
うるせーよババァ、だから三十路近くなっても結婚できねーんだよ。
「なんか行ったか?巫」
「なんでもねーよ」
「そうか、なら良いんだ、では続けるぞ」
心の声が口に出ていやがった。
そんなこんなでホームルームが終わり、帰る支度をしていると。
「一緒に帰りませんか?巫さん」
転校初日から彼女は男連れで帰るつもりらしい。
他の男子生徒ならいざ知らず、俺のような不人気な奴なら問題ないか。
「別にいいけど、方向一緒なのか?」
「実は今朝男子寮から出て来られた巫さんをお見かけしまして、私も隣の女子寮に住んでいるので、一緒です!」
こんなラブコメ展開があっていいのか、この学園に来て二年になるが、こんなこと一度もなかった。
「まあならいいけどさ」
「出来れば…二人きりで…」
マジか!?
「お前がその方がいいってんならそれでいいけどよ」
「ありがとうございます!では、早速行きましょう!」
そう言うと俺の手を引っ張り歩き始める、俺は慌てて鞄を取り教室を後にした。
小山学園の寮は学園からかなり遠くにある、普通は電車を使って通学するのだが…「巫さんとたくさんお喋りしたいので!」と万遍の笑みで言われたら歩くしかない。
辺りは暗くなり始め、街灯一つ無い田んぼ道二人は歩いていた。
途中まで会話はあったが、(と言っても愛川がマシンガントークしていただけだが。)流石に彼女も疲れたのだろう、今は二人共黙りこくっていた。
その時愛川のスマートフォンが鳴り出した。
「あっ、ごめなさい親から電話で、ちょっと先歩いててもらえますか?」
「ああ、わかった。」
「すみません」
そう言うと彼女は電話に出た、俺は言われた通り、少しペースを落とし気味に歩いた。
この調子だと特にラブコメっぽいことは起こりそうに無いなーと思ったその時、後ろから微かにカチカチと音がした。
その音の正体はすぐにわかることになる。
カッターナイフだった。
第2章 曇りの暗殺者
俺は首筋に刃物が近付いていることに気付きとっさに避けて、後ろを見た。
愛川が俺に向かって切りかかっていた。
俺の首元を狙った手を掴んで止めた。
彼女はそのままカッターの刃を伸ばし、喉仏すれすれのところで刃が出尽くした。
カッターを振り払おうとしたが、彼女の腕がびくともしない。
それどころか徐々に喉仏に近ずきつつある。
おかしい、力が強すぎる、とても17歳女子の腕力じゃない
「やっぱりな、おれにありきたりなラブコメ展開なんてありえないと思ってたよっ!」
なんとか彼女の腕を押し退ける事ができた。
この桁外れな腕力には覚えがある。
この臭いにも。
「お前、悪魔だな」
「あら、知ってたの、悪魔の事」
愛川は驚いたような顔をする。
「知ってるも何も、おれはそういう類のオカルトの撲滅を目指す部活で、部長をやってるんだ」
「そんな部活がこの世に存在するとは思えないけど」
「小山学園のオカルト撲滅部、有名だぞ?悪魔にしては情報不足だったな」
「私が悪魔だって気付いてから、随分喋るじゃない」
「美人転校生より、悪魔の方が話慣れてるからな」
「厳密には私、悪魔ではないんだけどね」
「あん?どうゆうことだ?」
愛川は俺の質問に答える気はないようだ。
カッターの斬撃が襲い掛かる。
「答える気はねーってか!」
だが避けるのは簡単だった、格闘に慣れている訳ではないようだ。
隙を見て手を取り、カッターを奪い愛川の腕を背中に回す
「詳しく聞かせてもらおうか、厳密には悪魔じゃないってどういう意味だ!」
フフっと彼女は笑みを浮かべた、目を見ると白目が無くなり吸い込まれるようなドス黒い黒目だけになっていた。
途端に彼女の腕力が跳ね上がり掴んでいた腕で俺を宙へ放り投げた。
「ぐはぁ!!」
地面に叩きつけられる。
「なんだよ、さっきまでのは手加減だったって訳かよ」
「手加減とは少し違うな」
愛川の口調が変わり、声色も少し変わったような気がする。
「てめぇー愛川じゃねーな、なにもんだ。」
「俺様の名はクラウディー」
クラウディーってあのウェザーの一人か?
だとしたら大物のお出ましだ、俺一人では厳しいか。
「愛川が、自分は悪魔じゃないって言ってたのはそういうことか」
愛川は、俺と同じだ。
「それで、天下のウェザーが一人、クラウディー様がおれに何の用だ。
「用か、貴様を殺せという指示があったから殺しにきた、ただそれだけだ。」
「誰の指示だ」
「知ってどうする、貴様はすぐに死ぬというのに」
「冥土の土産ってやつだよ、あっちで呪ってやるためにも、誰が主犯か知っとかなきゃな」
クラウディーが誰に指示されているかなんてどうでもいい、ただ時間を稼ぎたかった、あいつが起きるまで。
「ったくいつまで寝てんだよあいつは」
「なにか言ったか?」
「神に死ぬ前に懺悔してたのさ」
「それはいい事だな、ではもういいな、これ以上話しているのも面倒だ」
「おれは結構楽しいけどな」
間に合わねーか、やるしかねー!
「減らず口が!」
上空の雲が猛スピードでクラウディーに向かっていき手元に集まる、すると西洋の剣のような形に変わっていき、やがて色や艶が出て、本物の剣になった。
あれが魔剣クラウドってやつか、魔剣持ちの上級悪魔と一人でやりあおうなんて、無茶な話だ。
その時、体の中で声がした
ようやくお出ましか、相棒
待たせた、少し寝不足でな、許せ。
この状況を打開してくれたら、チャラにしてやるぜ?
そんなことで忘れてくれるのか、単純だなお前は、いいだろう、一旦身体を借りるぞ?
情けねーが、仕方ねー。
あーあとそいつは殺すなよ?
なぜだ?
あいつはおれ達と同じだ、人間の、愛川椿の意識はまだ残ってる。
つまりその小娘の身体は傷付けずに中の悪魔だけを殺せと?
そうできればそうしてもらいてーがそうも行かねーだろ?だからここは一旦引いて、部員連中に手伝ってもらって、悪魔封じに閉じ込めて悪魔祓いすれば、万事解決だ。
そう上手く行くとは思えんがな、まあいい、お前に従おう。
頼んだぜ。
ステラ。
第3章 ステラ・フィオレンティーナ
ステラ・フィオレンティーナは俺の身体に棲む悪魔の名前だ。
5歳の頃、いろいろあって取り憑いた。
世にも珍しい合意の上での憑依だった。
「まずは小手調べからだ」
ステラはそう言うと、クラウディーに突っ込んで行った。
「狂ったか人間!」
クラウディーは剣を振るった。
ステラは華麗にクラウディーの剣をかわして右側の首元に蹴りを食らわせる。
こいつおれが言ったこと忘れてねーか?愛川の体を傷付けるなっての。
肝心のクラウディーに効いてる様子はない、魔剣の斬撃がステラを襲う、がそれも簡単に避け、すかさず両足で頭をはさみぐるぐると回転してクラウディーを投げ飛ばした。
ヘッドシザースホイップである。
だから、愛川死ぬって。
「俺様を侮辱しているのか?小賢しい技を仕掛けおって。
そんなもので俺様にダメージを与えていると本気で思っているのか!!」
どうする、このままでは埒が明かんぞ、あれを使っても良いか?
だめに決まってんだろ!愛川が死んじまう!
お前やけにこの小娘を心配してるなあ、ひょっとして…
なんだよ…
惚れたか。
んな訳あるかー!!
「貴様!聞いているのか!どうも先程から上の空ではないか!」
「あー、すまんすまん、聞きそびれていた。何か言ったか?」
「小僧ぉ〜が、生意気な口を」
仕方ない、あれを出すぞ
だからだめだって言ってんだろステラ!
案ずるな、愛しの小娘には危害が及ばぬようにしてやる
ホントかよ…まじで気を付けろよ。
任せておけ。
「もういい、これで貴様を殺そう」
雲がクラウディーの真上に集まりだし一本の筋になって魔剣クラウドに集まっていく。
「Turbo!」
そう叫ぶと同時に剣に集まった雲が回転し竜巻のようになり飛んできた。
あれを食らったらヤバそうだぞ!
「分かっている!」
ステラは日本刀を鞘から抜く用な構えで。
「魔剣翡翠!」
そう叫ぶと、暗い青色の鞘に金色の鍔、白の柄巻、白い下緒がついた日本刀が現れる。
「ハァ!」
ステラが持つ魔剣、名刀翡翠は、クラウディーの魔剣が放った技を簡単に防いだ、そして防がれ弾けた雲がちょうど煙幕となり、俺達はまんまと逃げ果せた。
私立小山学園 オカルト撲滅部 部室
「危なかったな、なぜすぐに私を呼ばなかったのだ?」
「めちゃくちゃ呼んでたよ…」
ステラは今俺の身体から出てきている、理屈は分からないが、出入りは結構簡単らしい。
ステラの容姿は…見た目は二十歳かもう少し下くらい、けど実際は何千年と生きている超高齢者だ、髪はブロンドで肩くらいの長さだか普段はポニーテールにしている。
身長は185cm
俺よりかなり高い。
「にしても何故あのウェザーがこの町に来ている、お前を殺すためとは言っていたものの、それも怪しいものだ。」
「なんでそう言えんだよ。」
「お前を殺すためだけにウェザーを使うとは考えにくい、と言う事だ。」
「それに今魔界でウェザーを使役できるような上級悪魔は存在しないはずだ。」
「魔王はまだ行方不明だもんな。」
「ウェザー自体が動いているのか、クラウディーだけが単独行動しているのか。」
「まあとりあえず今はクラウディーをどうやって悪魔封じにはめるかを考えようぜ。」
そう言うと俺はポケットからタバコとライターを取り出して火を付けた。
「タバコやめたらどうだ、体に悪いぞ。」
「悪魔を憑依させてる方が体に悪いっての。」
がちゃ。ドアが空いた。
「おっす巫にステラちゃん」
「大塚かおつかれ、悪いなわざわざ呼び出しちまって。」
「大塚、私をちゃん付で呼ぶなと何度言わせるつもりだ。」
「いやーごめんごめん、ステラちゃん可愛いからつい呼んじゃうんだよ。」
「死ね」
「まあまあそうかっかしないで」
そう言うと大塚もタバコとライターを取り出し火をつけた。
部屋中に煙が蔓延する。
「全くお前たちは、煙たいからもう戻っていいか?」
「待て待て、ステラがいねーと話にならねーだろ、まだ面子揃ってねーからその間なら戻ってもいいけどよ、寝るなよ?」
「寝るものか、私は二度寝はしない。」
「分かったよ、じゃーはいってな」
「じゃあ後でな大塚」
「じゃあねーステラちゃーん」
ぶっ殺すと言っておけ
「ぶっ殺すってさ」
「おーう、怖い怖い。」
「それで何があったんだ?」
「まあ結果から言うとだな。」
「おう」
「転入生愛川椿は、悪魔に取り憑かれている。」
第4章オカルト撲滅部始動!!
「それはマジなのか、巫」
部室には部員全員が集まっていた。
部員の名前は…
部長 巫
副部長 大塚 誠
部員 大河
鹿嶋 伊月
茅ヶ崎 祐也
この5人でオカルト撲滅部は活動している。
「あー大マジだ、目が黒かったし、硫黄の匂いがプンプンしてた。」
「生徒の中に悪魔がいるなんて、初めてのパターンだね〜、しかも巫とおんなじタイプの悪魔とはね」
そう楽しそうに言うのは伊月。
「生徒に手を出すと、うちの学園長が黙っていないな。」
「大河の言うとおりだ、だから愛川椿は助けなきゃならねー」
「でもよー巫、どうやって愛川椿を助けるってんだよ、悪魔に取り憑かれた人間は、悪魔を祓っても精神が崩壊してるんだろー?」
「何を聞いてたんだよ茅ヶ崎、巫が言うには愛川は意識が残るタイプの憑依をされてんだろ?だったら祓っても問題ねーだろ」
「そういえば、そう言ってたなー」
「ステラちゃんの意見も聞きたいなー、さっきは全員集まったら出てくるって言ってたのに、あっもしかしておれと会うからおめかししてくれてるのかな?」
大塚が俺の方を見ながらそんなことを言っている。
コイツ、後でどんな目にあっても知らねーぞ。
案ずるな、殺しはしない、その寸前までは行くかもしれないがな。
そう言ってステラは俺の体から出てきた。
「やあステラちゃんあいたかっ…ぐゔぇぉ!」
きれいなボディーブローがレバーに決まっていた。
「ステラち…ステラさん…今日も…お美し、いで、す、ね…」
バタン!大塚は床に伸びていた。
「よし、ゴミも掃除できたところで、作戦会議と行こうか野郎共
!」
「オオー!!」
大塚以外の三人掛け声を上げた。
ステラが部長なのかもな、この部活。
「とは言ったものの、お前たちが私の考えた作戦を理解し実行出来るとは思えん。」
バカにしてんのかコイツは。
「そこでだ、猿でも分かる作戦をお前たちに授けよう、感謝するがいい。」
「ははぁ!」
大塚が頭を地面に擦り付けている。
「大方、ステラもその程度の作戦しか、思いつかなかったって、だけだろ。」
「ギグッ!」
「図星、か。」
「おい大河!ステラさんに失礼だろ!猿以下の知能しか無いおれたちのために、ステラさんがどれほど大変な思いでこの作戦を練ってくれたのか、感謝しろ!」
「まあ、たいがっちの言うとおりだと思うけどね〜、テラねぇ結構馬鹿だから〜」
「伊月貴様今私の事を馬鹿と言ったか?」
「いえいえとんでもありませんステラ姉様、私めはこの大塚と、ステラ姉様は今日もお美しいと言う話をしてただけでございます。」
「それは結構な事だ、疑ってすまなかったな、許せ。」
「やっぱ馬鹿じゃん」
伊月が小声でそう言っていたが、ステラは気付いていないようだ。
「ゴッホン!ステラ、そろそろ本題に入って来んねーかな?」
「そうだったな、では本題だ。」
「作戦名は名付けて、魔法陣地獄!」
作戦名の時点で嫌な予感しかしないが、聞いてみよう。
「作戦内容は、愛川椿の生活圏内に、とにかく悪魔封じを描きまくる!だ!」
……………?
「ステラお前…」
「やっぱり、ろくな作戦、思いつかなかったんだな。」
「ならお前たちも何か考えてみろ、ほら、どうした?出ないのか?」
うざい。
しかしまあ出ないのも確かだ、ムカつく事に。
「分かったよ、その作戦で行こう、それしかない。」
「まあ、仕方ない。」
「それしか無いよね〜」
「ステラさんが考えた作戦なら!間違いありません!」
「Zzz」
「スプレー缶買いに行くか~」
俺はそうつぶやきながら伸びをした後、たばこを灰皿に押し付けた。
第5章 殺す理由
「書いてきた。」
「いや~、マジで地獄だったよー」
作戦開始から五時間ほど経過し、深夜になっていた。
「ご苦労さん、わりーな手伝えなくて」
「まあステラねぇがいるから仕方ないでしょ~、身動き取れなくなられても困るし~」
「ああ、そうだな。」
がちゃ。ドアが開く。
「ういーす、書いてきたぞー。」
「まーじやばい、スプレー缶振りすぎて腕パンパンだー」
大塚と茅ヶ崎が腕や肩を揉みながら戻ってきた。
「おお、二人ともお疲れ~、助かったよ。」
「もちろん巫はおれたちが魔法陣を書いてるとき何か仕事をしてたんだ
よな?」
「あーすまん、ステラも途中で寝たからさー、おれも寝てた。」
俺は悪びれもせずそう言った。
「ちっ、腹立つなー」
「まあとりあえず今日はこれで解散だな」
「あ、おれが通れる道残しといたか?」
「ああ、完璧だ。」
「明日の朝、獲物が掛かっているか、楽しみだ。」
「掛かってても殺すんじゃねーぞ大河」
「分かっている。」
「是を以て!今日の部活動を終了とする!」
「締めだけはやるんだな、ステラ」
「お疲れ様です!ステラさん!」
翌朝、俺は部室にいた。
「寒いな。」
オカルト撲滅部の部室は、校舎の裏山にある、四月の上旬と言っても、朝は冷える。
「七時か。・・・」
「寝るか。」
二度寝を決め込もうとしたその時。
がちゃ、ドアが開いた。
俺は目をつぶったまま
「随分と早いなー、どうだ、愛川椿は掛かってたか?」
誰だかは分からなかったが、部員だろうと決めつけた。
まさか罠にかけようとしていた獲物だとは、夢にも思わなかった。
「おはよう、巫くん。」
「!?」
男だと思っていた人から、綺麗な女性の声が出てきたらかなり驚くだろう。
俺は文字通り飛び起きた。
そこにいたのは、私立小山学園高等部の制服を着た女子生徒、愛川椿だった。
「何故だ、どうしててめぇーがここにいる!」
「何故って、どこもかしこも魔法陣だらけだからよ、よくもまあ一晩であそこまで書けるものね。」
「その魔法陣をどうやってかわしてきたんだ?」
「簡単よ、巫くんが私と同じ悪魔なら、巫くん用に抜け道を用意しなくちゃならないでしょ?上手く隠してたつもりだろうけど、バレバレだったわよ?」
「うちの連中は小細工が苦手でね、大目にめてやってくれ」
「まあそのお陰でこうして罠に掛からずここまでこれたし、おまけに巫くん一人のところに出くわせたし、むしろ感謝しなくちゃね」
愛川はとても冷酷な顔でそう言った。
「じゃあ、そろそろ死んでもらうわよ。」
彼女はカッターを取り出しながらそう言った。
カチカチカチ、刃を半分ほど出す。
「なあ愛川、その前に一つ聞いていいか?」
「何かしら?」
「昨日教室で自己紹介してたお前と今のお前、どっちが本当のお前なんだ?」
「・・・」
愛川は黙る。
「俺はどっちも本物とは思えねー」
彼女はなにも言わない、俺は続ける。
「教室でのお前は、まあ間違いなく偽物だろう、おれも最初は騙されたけどな。」
「今のお前もなんだか嘘くさい。」
愛川は少し戸惑い
「何が言いたいの?」
不機嫌そうにそう言った。
「会って二日も経ってないのに、知ったような事を言わないで。」
「確かに、ごもっともだ。」
「言いたかったのはそれだけ?」
「あーすまん、後一つ」
「何よ」
「おれたちならクラウディーからお前を助けられるって言ったら、どうする?」
「そんな事、出来るわけ無いわ!あなたも見たでしょ?あいつの力を、こんな私でも突破できるような罠しか張れない素人じゃ、太刀打ちできるわけない!」
俺のすぐ傍まで来て愛川はどなった。
「そーでもねーぞ、少なくとも、お前を罠にはめる事には成功した」
「はぁ?何言って…!?」
愛川はふと、足元に目を落とす。
「魔法…陣…!?」
俺の足元の絨毯には悪魔封じが描かれている。
「まさかおれの足元に魔法陣があるとは思わなかっただろ」
「そりゃそうよ、自分から悪魔封じに入る悪魔なんていないわ!」
「そうでもしなきゃ、お前を罠にかけれなかったからな。」
「ついでに言っとくと、ここにたどり着いたのも俺たちの罠だ。」
「すべて計算通りだとでも言いたいの?」
「俺達が何年この部活をやってると思ってんだ。」
「そうね、まいったわ、けどこの状況、私にとっては好都合よ。」
冷酷な笑みを浮かべる愛川。
「この距離なら動けなくても、あなたを殺せる。」
「まあーまて、そこで提案だ」
「何よ、提案って。」
「俺と取引しろ。」
「俺はお前をクラウディーから解放する、お前は俺を殺さない。」
「簡単な取引だろ?」
「解放って、どうする気よ。」
愛川は呆れたように聞く。
「合意の上での憑依、面倒だから合依でいいな?、まあその合依をすると人間と悪魔の両方が意識を持つことになる、そのほうが器、つまり人間の体が長持ちするメリットがある、まあ自分から悪魔を入れる奴なんて滅多にいねーけどな。ここまではいいな?」
愛川が黙って頷く。
「その状態で人間側が憑依を拒否すれば、強制的に悪魔を体から追い出すことが出来るのさ。」
「そんなことが出来たのね。けどそれは無理ね。」
「だろうな、合依は大抵悪魔が人間の弱みを握っている事がほとんどだ、おれもそうだしな。」
こんな事を言ったらステラに怒られそうだ。
「まあ確かに私も弱みを握られているわ。」
やっぱりか。
「その弱み、教えてくれたりしないよな?」
「別にいいわよ?」
いいのかよ!
「いたって普通に、家族よ。よくある話でしょ?」
まあ、悪魔が握る弱みランキング1位だろう。
そもそも、悪魔に会うだけでよくある話ではないが。
「あなたはどうなの?、なぜ悪魔を中に入れたの?」
「大した理由じゃねーよ。ただ入れなきゃ死ぬってだけだ。」
「ふーん、よくある話、では無さそうね。」
「まあな。」
「それで?どうやって私をクラウディーから解放してくれるのかしら?」
「俺達、オカルト撲滅部に依頼しろ。悪魔退治を。」
「本当にあったのね、その部活。」
彼女は呆れたように言った。
「生徒会は認められて無いけどな。まあそれはいいとして、どうせ家族拉致られてクラウディーの手下共が見張ってるってパターンだよな?」
「ええ、その通りよ。」
「だったら俺達がその手下を片付けてやる、その後お前はクラウディーを追い出せばいい。これで万事解決だな。」
「そう上手くいくかしら、第一クラウディーに作戦が筒抜けてるけど?」
「魔法陣のなかじゃ出てこれねーから心配ねーよ」
「あらそう。」
彼女は少し悩んでから。
「わかったわ、あなた達に全て任せる。但し、家族が少しでも気付けられたら、殺すから。」
「ご依頼、承りました。」
俺はお辞儀をしながら言った。
「弟を、よろしくお願いします。」
愛川は深々とお辞儀をした。
床に涙がこぼれる。
「それで、私たちはいつまでこの中にいなきゃいけないのかしら?」
一頻りお辞儀をしてから彼女はいった。
「んー、クラウディーを外に出す訳には行かねーからなー。」
俺はブツブツ言いながら依頼達成に掛かる時間を割り出した。
「ざっと四時間だな、悪魔の数や強さにもよるがな。」
「・・・嘘でしょ?五時間もあんたとこの距離でいなきゃいけないの?」
「傷付くなおい。」
それから何十分かして他の部員が来て事情を説明した。
「なるほど。説得は、成功したんだな。」
「まあ何とか予定通りにな」
「監禁場所は分かってんのかー?」
大塚が愛川に聞く。
「知るわけ無いでしょ?、まあ実家の近くだとは思うけど」
「じゃあその周辺をしらみ潰しに探すしかねーか」
愛川は実家の住所を教え、大塚達は悪魔達のアジト探しに向かった。
当然授業は欠席だ。
「それで、何か見返りを要求するのかしら?私の体で良ければ好きに使っていいけど」
「んなもんいらねーよ!どんな貞操観念してんだおまえは!・・・けどまあ、見返りは確かにもらうよ」
「なによ、やっぱり体?」
「だから違うって!・・・そうだな、金輪際オカルトには関わるな、それが俺達への見返りだ」
「そんな事でいいの?」
「別に仕事でやってる訳じゃねーからな。これを仕事にしてるやつに頼めば何百万って取られるぜ?良心的だろ、俺達」
「悪魔って仕事になるほど沢山いるの?」
「俺達が相手にするのは悪魔だけじゃない。吸血鬼や狼人間、時には神様も、何でもござれだ」
「なんだか現実味がないわね、幽霊とかもいるの?」
「もちろん。まあ幽霊は基本的には無害だけどな。伝承や神話なんかに出てくる魑魅魍魎の類はすべて実在する」
「ありえない、と言いたいけど、この目で見てしまったらそうは言えないわね」
「みんな最初はそう言うよ」
「けど、なぜあんた達はこんな事してるの?普通に暮らしてたら存在すら知らない物と戦うなんて、正気じゃないわ」
「まあ、皆訳ありだよ、俺と大河以外は皆、家族を殺されてる、同じ悪魔にな。そいつを殺すために作られたのがこの部活さ、まあまだその悪魔の居場所すら分かってねーけどな」
「そんな事が…あまりあんた達の過去は詮索しない方がいいのかしら」
「本人達の前ではな。ああ見えて、まだ傷は癒えてねー。俺が入部する時もかなりやばかった、何せ悪魔を受け入れた人間だからな」
「あんたは後から入部したの?」
「俺と大河はな。お前と一緒で転入してきたんだ、中学三年の時に」
「それまではどこへ?」
「おしえな~い」
「あらそう、別に興味無いけど」
「お前は?ここに来る前何してた?」
「クラウディーに指示されて学校を転々としたわ。何人も殺した、指示されるがままに」
「つらかったな」
「ええ、誰にも相談できないし、悪魔が実在するって知ってるのは私だけだと思ってたから、とても心細かったわ」
愛川の目に少し涙が滲む。
「安心しろ、今はもう、一人じゃない、俺たちがいる」
「巫…」
俺は愛川を抱きしめた。
「ごふぇ!!」
みぞおちにワンパンもらった
「なにちょっといい雰囲気になったからって抱き締めてんのよ、そんなチョロい女じゃないわよ私」
「なんだよ!今のノリだったら落ちるとこだろうが!」
「なめんな」
全く、人生ラノベみたいには行かねーぜ。
それから五時間、くだらない掛け合いを続け、二人は少し、仲良くなった。
第6章 解放
五時間後…いや、六時間はたったか?
とにかく何時間か過ぎた頃、俺のスマートフォンに電話が掛かってきた。
「はい、もしもーし、お~大河かー、どしたー?」
電話の主は大河だった、まあいい知らせに決まってる。
「悪い知らせだ。」
「・・・え?」
「どうしたの?」
愛川が不安そうに聞く。
「なんだよ大河、悪い知らせって・・・」
「大塚がな…」
「…大塚が?」
「また生き残りやがった。」
「わー、それは、悪い知らせだなー」
俺は棒読みでそういってから。
「じゃねーよ!お前の前振りだと全然冗談って感じがしねーからマジでなんかあったのかと思うだろ!」
「すまん…あっ、大塚に替わるぞ」
「巫~、仕事は完了だ。今から愛川の弟を連れてそっちに戻るから、もう少し待っとけよー」
「英俊は、弟は無事なの?声を聞かせて!」
「大塚、弟に替わってやれ」
俺はそう言ってから、愛川にスマートフォンを渡した。
「英俊?英俊なの?…良かった、無事だったのね…」
愛川は泣きながら喜んだ。
何時間か前まで殺人鬼みたいな顔してたくせに、今はただのお姉ちゃんの顔だ。
それから何分か話して。
「うん、うん、じゃーさっきのお兄ちゃんに替わってくれる?………あの、大塚さん?その…弟を助けてくれて、ありがと」
そう言ってから、俺にスマホを渡した。
「もしもーし、巫?あと三時間くらいで着くから~」
「ほーい…って三時間!?なんでそんな掛かるんだよ!」
「じゃ、またな~」
ツー・ツー・ツー
「あの野郎、わざとだな」
「まあ暇だったら、今の私は機嫌がいいから、抱き締めてもいいわよ、今私かなりチョロい気持ちになってるから、落とせるかもね」
「みぞおち殴られるのは御免だ、遠慮しとくよ」
「あらそう、もったいないわね、こんなチャンス二度とないわよ」
「それより、聞きたいんだけど。家族は弟だけなのか?」
「ええ、そうよ、両親は私が十四の時に消えたわ」
「消えた?」
「そう、十四歳と二歳の子供を捨てて、二人とも消えた」
「そりゃあ、災難だったな」
「そうでもないわ。ろくでもない親だったし、消えてくれて清々したわよ」
「知ったような口利くなって思うだろうけど、親がいるってだけで、結構恵まれてんだぜ?」
「あなたにはいないの?親」
「そりゃどっかにいるだろうけど、顔も知らねーよ」
「そうなの…苗字が無いのもそのせい?」
「さあな。巫ってのが姓名なのか氏名なのかも、俺は知らないんだ」
「そんな人初めて見たわ」
「最初は皆そんな反応さ、けど別に、無くても苦労しねーよ。 あっ、でも免許取る時はめんどうだったな」
「どうして?」
「戸籍がなかったんだよ、だから当然住民表もなかった。学園長に頼んで作ってもらって、免許は無事取れたんだけどな」
「あなた、何者なのよ、それに戸籍を作ったっていう学園長も」
「あの人はすげぇー人だぞ、俺の恩人でもある」
「なんだかとんでもない学校に来てしまったみたいね、私」
「ようこそ。私立小山学園へ」
それから俺達は三時間、合計約八時間、お喋りに興じた。
八時間も至近距離で喋ってりゃ、嫌でも仲良くなる。
二人とも悪魔を体に住まわせているので、身体能力は人間のそれでは無い。
当然空腹や渇き、尿意や便意もなく、眠くもならないので、俺達はずっと、本当にずっと、喋り続けた。やけに趣味も合ったし。
「明日UEFAチャンピオンズリーグの準決勝よ?見る?」
「当然、ただソンフンミン累積で出場停止だからなー、おまけにケインもケガらしいし、絶好調アヤックスに勝てるかね~」
「あなたスパーズファンなの?」
「いや、俺バイエルンサポーター」
「あー、ベスト16で負けた弱いチームね」
「うるせー!リヴァプールが強すぎただけだっての!」
その時ドアががちゃりと開く。
「なーに騒いでんだよ。もしかして邪魔だったか?大河、出直そう」
そう言って部室から出ようとうする大塚達。
「待て待て全然邪魔じゃないからいい加減解放させてくれ!
「待って待って全然邪魔じゃ無いですからいい加減解放させてください!」
「息ピッタリじゃねーか。まあマジな話、解放するにはまず愛川ちゃんがクラウディーから解放されないとな」
「英俊に会わせて下さい、そしたら、何でもします」
「そりゃもちろん、おい坊主、お姉ちゃんがよんでるぜ」
「本当のおねーちゃん?お化けじゃない?」
大塚の後ろから小さな声がした。
「ああ、本当のお姉ちゃんだ。心配すんな!お化けはお兄ちゃんたちが全部退治したからよ」
「本当?」
「ああ、本当の本当だ」
しゃがみ込んで、ひでとくんの頭を撫でる大塚。
一頻り撫で終わると、愛川のところに行くよう、背中を押した。
「おねーちゃん?」
ひでと君が聞く。
「うん、お姉ちゃんだよ、正真正銘の、英俊の事が大好きなお姉ちゃん」
愛川が大きく腕を広げる
「おねーちゃん!」
その胸に英俊君は飛び込んでいった。
「英俊!!」
弟を強く抱きしめ、泣きじゃくる姉。
「もう、絶対離さないからね」
「うん、僕も離れない」
とても感動的なシーンだ、邪魔する訳には行かない。
俺達は再会を果たした姉弟を黙って見ていた。
「じゃー英俊、お姉ちゃんこのお兄ちゃん達とお話があるから、外で待ってられる?」
鼻をすすりながら、弟に席を外すように諭す。
「うん、わかった、後でね、おねーちゃん」
「うん、すぐ行くからね」
「大塚、ついててやれ」
俺は大塚に愛川弟の警護を頼んだ
「了解だ」
二人は部室の外へ。
「それで、どうしたらいいの?」
「ただクラウディーにこう言ってやればいい。出てけってな。そしたら大河が魔法陣を壊し、飛び出したクラウディーを俺達で殺す」
「わかった、やってみる」
愛川は目をつむる。
「う、うう、うううう、、、う、うあああああああああ!!!!」
愛川が奇声を上げ始める。
「今だ大河!」
「ふん!」
大河は思い切り床を蹴り、絨毯に穴を開けた、その瞬間枷が外れたように体がかるくなった。
成功したようだな
頭の中で声がした。
ステラか、なんだか久しぶりに聞いたぜその声
クラウディーが出てくるぞ、気を抜くな
分かってるよ!
部室が揺れている、こんな圧力(霊力?)は初めてだ、さすがはウェザーの悪魔。
「来るぞ」
身構える大河。
大河がいれば百人力だ、ステラは出なくていいぜ、翡翠だけ貸してくれ
それは心強いな、使え。
俺の手に魔剣翡翠が現れる。
さんきゅーステラ
気にするな
「うあああああああああああ!!!ゴフェ!ゲフォ!」
愛川の口から黒い液体が流れで出てくる。出し切った所で愛川は気を失い
流れ出た液体は一つの塊になりやがて形をかえ、黒い背広を着たガタイのいい外国人の姿になった。
「よークラウディー、また会ったな」
「なるほどな、突然身動きも取れず視界もなくなったので何事かと思ったが、この小娘、魔法陣なんぞに引っ掛かりおったのか。」
クラウディーは破かれた絨毯を足で広げながらそういった。
「小僧、貴様を殺すのはやはり俺様自身がやった方が早いようだ」
「憑依してない悪魔が、人間界で活動するのには限界がある、そんな状態で二人相手にするなんて、いくらウェザーでも厳しいだろ?」
「まあ、その通りだ、腹立たしいことにな」
「年貢の納め時だな、クラウディー!」
俺は刀を構え走り出した、そのすきに大河は愛川をクラウディーから離した。
「いや、そうでもないぞ」
おれは聞かずにクラウディーの懐まで近ずき、切りかかる、が、そこに奴の姿はなかった。
「逃げられたか」
「ああ、まあそう簡単には行かねーよな。相手はあのウェザーだ、死人が居ないだけでも良しとしよう。・・・愛川は無事か?」
「ああ、気を失ってるが、命に別状はないだろう」
「念のため市ヶ谷先生に見てもらおう」
市ヶ谷先生とは小山学園の養護教諭だ。
「お前が連れてけよ、あいつ、気味悪いから嫌いなんだ」
「そういうこと言っちゃダメだろ大河、あの人も俺達の恩人だろ?」
「それとこれとは別だ」
最終章 大団円
とにもかくにも、愛川椿の一件は、めでたく日の目を見た
クラウディーの行方や目的は分からず終いだが、まあ誰も死んでないからオッケーって事で。
ちなみに愛川は約束を無視してオカルト撲滅部に入部した、俺は反対したが他の連中は賛成しやがった、特にステラが大賛成、むさくるしい部活にようやく花が!とか言って大はしゃぎしてた。
その癖教育係を俺に押し付けるっていう。
全くこの部活の部長は俺だっての。
それと市ヶ谷先生によると、とくに愛川の体に異常はないそうだ、よかったよかった。
とまあ、随分長ったらく喋ったけど、そろそろお別れだ、もう会うこともないだろうけど
「おい、なにしめようとしてるんだ、巫くん」
「市ヶ谷先生、なんかようですか?自分もう疲れたんで寝たいんですが」
「保健室をサボりに使うのはやめなさい、そのせいで私、授業中に男子生徒を連れ込んでエッチなことしてるって職員室で噂されてるんだよ?」
「嫌われてるからそういう噂が立つんですよ。もっと自分を顧みて下さい。」
「・・・って!なんで生徒に説教されなくちゃならないのよ!、、、そうじゃなくて!なんでメインヒロインであるこの私が登場せずに話が終わろうとしてるのかって聞いてるのよ!これじゃ読者さんに愛川さんがメインヒロインだと勘違いされるじゃない!」
「…ん?勘違いじゃ無くね?」
「巫くんの隣にいるのは私だけでいいんですぅー!」
「わかった、わかりましたよ、もう一本書きますよ、そんなに言うなら、それでいいですか?」
「ホント?」
いい年こいたおばさんが上目遣いすんな。
「本当です」
「わかった、じゃあ締めていいよ」
というわけで、市ヶ谷先生の強い希望により、誰も望んでいない続編を書くことになりました。次回もよろしくお願い致します。