三十八話 こうして魔王は封印された
なんとか転生魔法の段取りを思い出した魔導士によって、今度は城の外にいる魔物に今後の計画を説明し出した。
「えーとつまり、俺らはどうすればいいんだ?」
「だからー!食料として人間に狩られるとお互い困るだろ?この城を守ることに集中すれば、そのうち関心も薄れるはずだ」
パンッとこれからの計画を書いた紙を叩きながら、魔物たちに今後の身の振り方を指示していく魔導士。
【オレはちょっと休まないといけなくなったんだ。その間、国をまとめる役は人間に託すことにした】
「えー魔王様、そりゃないよー」
共存とかは無理だろうけど、命令通りに各地に散らばって人間たちにちょっかいをかけてきたというのに。
「だーかーらー!魔王が休むための芝居だって説明しただろ!?二百年も支配していた魔王がただ休むから王族に支配を任せるって言っても納得するヤツはいないんだよ」
パンパンと紙を叩きながら、ブチブチと文句を言う魔物たちに怒鳴っていく魔導士。
相手が魔王だろうと自分の立てた計画通りにこなしてもらっていた魔導士は、魔物相手にもいつも通りに説明をしていった。
「では魔王様が復活されるまで、我々に待機をしていろとおっしゃるのですか?」
比較的冷静に、よく城を任されていた副将っぽい魔物が手を挙げて確認するように発言をした。
「そうだ。それが何年……何百年後かはわからないが魔王からの依頼だ。魔王のためにと今までやってきたお前たちなら、この計画の意味もわかってくれるだろう」
魔王としてではなく、次に生まれ変わるなら普通の家の普通の子供としてなのだが、そんなことは面倒くさいので魔導士も魔王も言わない。
だって転生したくなった理由は勇者と一緒になるためなのだから。
「……わかりました。最近の魔王様の命令は以前とは違うものでしたから、何か理由があるのかと思っておりました。これで納得いたしました」
副将っぽい魔物も賛同したことで、ざわついていた周りも納得していった。
「じゃあこの城に人間が近付かないようにだけ頼む」
「お受けいたしましょう」
元より魔王のいる部屋には誰も入ったことがなかったのだからと、そこで転生の魔法を掛けることにした魔導士は、そちらにも近付かないようにと厳重管理を魔物たちに頼んでいった。
「アイツのおかげで魔物たちの説得がスムーズにいったな」
【アレはオレに色々と教えてくれた親代わりのようなヤツだからな】
先代の魔王にでも頼まれたんじゃないかと、自分の出生の秘密もよくわかっていない魔王はそう呟いた。
「でもこれで新しい魔王も現れないでしょう。たぶん魔王が死んだら次の魔王が産まれて、魔物たちを操っていたんじゃないですか?」
そこら辺は古い魔導書にも載っていない事柄なので誰も知らない。
【そうかもな】
だから魔導士の言葉に【その可能性もあるだろう】と魔王は頷いていった。
「話し合い、うまくいったの?」
何が起こるかわからないからと城の中で団長と待機していた勇者が、声のした廊下に向かって顔を出した。
「ああ、当然だ」
魔物たちの間でも魔導士が立てた計画の邪魔をしたらどうなるか、旅に出る前にすでに身をもって知らしめておいたことが役に立ったらしい。
もちろん旅の合間も、仲間が何人も魔導士によって骨まで燃やし尽くされたことを知っている魔物たちは大人しく従った。
だから「今後のお前たちの処遇について話す」と計画表を向けながら言い放った魔導士に、愚痴を言うものはいたが手を出すバカはいなかった。
「八つ当たりで消し炭にしてたのが、こんなところで役に立つとはねえ」
「八つ当たりと言うな。野宿も十日続けば飽きるだろうが」
それに途中で腕をなまらせるのはよくないという、もっともらしい理由も言っていく魔導士に突っ込む人はいない。
だって面倒くさいから。
「両親への手紙も書いたし、剣は一緒に保護してもらうことになったし」
「勇者にしか扱えない剣なんて、他の者が手にしても意味がないからな」
指を折りながら着々と転生までの道のりを確認していく勇者は、今も腰に差している二本の剣を抱えながら眠ることになっている。
「あ、そうそう。王女様の侍女さんには本当のことを伝えてくれる?」
「侍女さん?」
勇者が女だとすぐに見破り、いい人が見つかるようにと願ってくれた人でもあるのだ。
その人にはちゃんと言っておきたいと魔導士に頼んだら、少し渋い顔をしたが了承してくれた。
「じゃあそっちにも手紙を書いておいてくれ。くれぐれも他言しないようにと、読み終わったら破棄するようにってのも付け加えて」
「わかったー」
表向きは魔王を復活させないために、勇者も一緒に封印されたということにするので城へ戻るのは魔導士と団長だけだ。
城へ帰ったら勇者と魔王の顛末を報告して、すぐさま勇者の両親の元へと飛んで説明をしてから今度こそ城で事後処理をすることになっている。
「前から思ってましたけど、そういう処理をする魔導士って他にはいませんよね」
「秘書か部下の仕事じゃね?」とは思ったが、機密事項と意味がわからない処理が多すぎて、説明するほうが面倒だと団長は気付いた。
「それに私の性格上、最初に手をつけたなら最後まで締めないと気持ち悪いんだ」
「難儀な性格ですねぇ」
そのおかげで転生後も何かと勇者と魔王の事後処理を押し付けられるのだが、それはまだかなり先のお話。
「じゃあ、そろそろいいかー」
「はーい」
【ああ、いつでもいいぞ】
こうして魔導士は表向き、しぶとい魔王を己の力で封印し続けることになった勇者にも杖を向けて詠唱を唱えていった。
【同じ種族になったら嫁になれよ、アリア】
「うん」
見た目は眠っているだけのようだが、生まれ変わるその時まで誰も近付けない防御の魔法も掛けた魔導士はいつものようにぶっ倒れた。
「じゃあ自分はレイン様と城へ帰りますね。お疲れさまでしたー」
計画通りに魔導士を抱えた団長は魔王の城を後にした。
バタン




