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坊ちゃまのメイド 出会い編  作者: くまきち
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三十話 魔導士は魔王とさらに計画を立て直す

「貴様が勇者か!」

「ああっ、マズイヤツ!」

「なんて!?」


 ……というやり取りも当たり前になってきた頃。


 季節も二つ変わり、そろそろ冬に近付いてきたところで魔王の城にもかなり近付いて来てしまっていた。




「これさあ、やっぱりレインが途中で計画を立て直さなければもっと早く着いたんじゃない?」

「それはそうかもしれないがな、私はお前らと違って風呂なしベッドなし食事なしなんて耐えられないんだよっ」


 風呂は魔導士が魔法で出していく水を頭からかぶって終わり、ベッドなんて上等なものはないから地面の上に直接で、布団の代わりはマントやローブ。


 それ以上に魔導士が断固拒否している食事は今日も一人だけ別なものを食べているという徹底振り。


「いい加減、食べてみればいいのに」

「魔物は食べ物じゃねえから」

「トンコツ風ラーメン食べたくせに」

「言うな、黒歴史を!!」


 ゴブリンを食べたことを一生の不覚としている魔導士は頭をかきむしって記憶の彼方に飛ばそうと頑張っていた。


「トンコツ風って、ゴブリンのことですか?」

「言うなっ」


 今日も倒した魔物を美味しく食べている団長が勇者に尋ねていく。


「そうそれ。体格のわりに肉がちょびっとなのは納得いかないけど、イケるでしょ?」

「言うなっ」


 腹があんなに出ているなら肉を蓄えとけよと思うが、その代わりに骨で取った出汁は最高に美味しい。

 途中で倒して早速そのスープをいただいた団長は、勇者と同じことをうっとりとしながら呟いた。


「アレは確かに感動する美味しさでした。また食べたいなあ……」

「でしょー!あの骨は何度でもいい出汁が出るんだよ」

「……」


 早くまともな食事がしたいということと、ふかふかのベッドで寝たいということも願っているが。

 帰りたいということと同じくらいかそれ以上、この二人と早くパーティを解散したいと毎日のように魔導士は祈っていた。




「そういうわけなんで、次の街で食料を買い込んだら城へ飛ぼうかと思ってるんですけど」


 そろそろまた大きい街に行くからと、被害状況と魔物の出現率を魔王に確認していた魔導士がその後の予定の変更をさらっと提案していった。


【来るのが早いのも冬の前なのも助かるが、まだ出発して半年くらいしか経っていないだろう?早すぎるのはよくないと言っていたではないか】


 それでも度々街に降り立って評判を聞いている限り、暴虐の限りを尽くしている魔王を早くどうにかしてくれという流れにはなっているのだが。


 さらに勇者が向かっている先が魔王のいる城だということが周知されるにつれ、魔王を守ろうと各地に散らばっていた魔物が城へ向かって行ったことも良い方向へ向かっていた。


【勇者が強すぎると色々問題だとも話していただろう?】


 第二の魔王になる可能性や、強すぎる反動で権力争いに巻き込まれることもあるはずだと魔王にしてはまともなことを言っていく。


 対する魔導士は手を振って、あののんきすぎる勇者をそんな目で見るヤツも使おうと考えるヤツもいないと笑いながら否定していった。


「あはは、魔王も会ったらわかりますよ。あの勇者をそんなふうに担ごうとするアホなんて城にいる老害くらいです」


 そっちは自分が帰って王女様と結婚したら、問答無用で排除対象だから安心してくれとサラッと危ないことを言い放つ。




【……お前のほうが魔王のようだな】


「失礼ですよ」


 しかし各地が混乱しているのも魔導士が立てた計画を律儀に遂行していたからだし、大きい街を次々と混乱させたのも比較的安心な迷宮ダンジョンを上級者向けに変えたのも魔導士だ。


 それもこれも知っているのは魔王と勇者一行だけで、他は急に暴れだした魔王のせいってことになっている。

 ちょっと複雑な気持ちにもなるが倒されたいと思って勇者に声を掛け続けたのは自分なのだから仕方がない。


【……そう思われるように頼んだのはオレだしな】


「順調でしょう?今だったら封印されても魔物退治を生業にしている人たちからも文句は出ませんよ」


 じゃあと、今度は魔王が封印された後の魔物の処理の話をしていくことにするいつも通りの魔導士に呆れればいいのかどうすればいいのかわからない魔王だった。




 魔王を封印することも魔物を退治していくことも、魔導士は日々立てている計画と同じ扱いだった。


 つまりこれを変更することができるのは魔導士だけで、何人たりとも、それがたとえ魔王本人ですらもう変更は不可ということだ。


「魔物たちを魔王と一緒に封印するっていうのも一つの手なんですよね。勇者の家族くらいしかまだ魔物イコール食料とは見ていないんで」


【そもそも封印されたことがないし、どこから魔物が増えるのかもわかってないからなあ】


「じゃあ魔王だけの封印にして、魔物は別な次元に飛ばすか縮小してもらいましょうか?」


 今の暴れている状況がおかしいだけで、そもそもこの二百年近く、ずっと魔物が身近にいたことが普通だったのだ。


 それが魔王の封印とともにいなくなっては困る人も出てくるだろう。


 勇者万歳みたいな流れになったのに、数年後とかに「やっぱ魔王に支配されていたほうが良かったんじゃ……?」という可能性はなるべく排除しておきたい。


 それには王女様と結婚をする自分の今後の頑張り掛かっていることを魔導士はまだ気付いていない。




「最悪、魔物たちは全部まとめて勇者の実家近くに住んでもらうと助かるんですけどねぇ」


【そこだとすぐに全滅させられないか?】


「あー……ですねぇ」


 住むっていうより備蓄という扱いな気がする。

 だって魔物イコール食料という勇者一家だし。


 じゃあどうすっかなと、魔王と一緒に魔導士は魔物の処理を考えていくことにした。


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