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坊ちゃまのメイド 出会い編  作者: くまきち
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二十九話 魔導士は魔王と細かく計画を立て直す

 街を堪能した勇者一行で、魔導士以外は細かいものを買い足すくらいだった。

 それでも市場価格や魔物の被害などが確認できたので、そのまま宿にまっすぐ戻った。


「じゃあ予定通り、明日出発するな」

「はーい」

「かしこまりました」


 宿でたっぷりと休めた魔導士は機嫌が良かった。

 このままここにいたいくらいだが、それは無理なので明日出発すると自分に言い聞かせるように話して納得することにした。


 明日からの食事は魔物のフルコースと地面の上で眠ることを浮かべて、「もう一晩、いやもうちょっとここでゴロゴロしていたいなあ」と思いながら諦めきれない魔導士は溜息を吐いた。




「帰るのか?」

「街から出るだけで旅に戻ります」

「ふぅん」


 勇者にぼったくられたっぽいが、人のいい宿屋の主人は帰る計画を話していた勇者たちに食事を運びながら声を掛けた。


 出掛けて戻ってきたら荷物には触れずに部屋は整っているし、こうして三食美味しいご飯を出してくれる宿を気に入っていた魔導士が一番ガッカリした顔を浮かべているが仕方がない。


「このままここにいたい」

「それは城にも帰らないということになるけど」

「……そうだった」


 それはいかん。なんせ城には婚約者が待っているのだ。




「じゃあ買い忘れはないか確認したら出るか」


 そう決めたら早めに寝ようと立ち上がるが、勇者がちょっと手を挙げて出掛けてくると言ってとっとと宿から出ていってしまった。


「え、ちょっとアリア!?」


 団長が慌てて追いかけようとするけれど、魔導士が部屋に戻るのでどうしようかと迷っているうちに勇者は夜の街に消えてしまった。


「ジェイン!アリアはどこに行ったのかわかりますよね!?」

「知ってるけど邪魔する気はないから私は寝る」

「邪魔?」


 そうしてとっとと寝た魔導士は魔王と打ち合わせをし直すことにした。




【ようやく繋がったか】


「すみませんね、あれほど熟睡するとは思わなかったんで」


 昨夜の定期報告を怠ったことを詫びていくが、それより最後の夜だからしっかり寝ときたい魔導士はテキパキと今後の予定の修正箇所を話していった。


「そういうわけなんで、今後もこの街みたいな大きいところにも寄ります」


【わかった。ここはもう撤収したらしいが、近くの村の魔物は追い返したんだろう?】


「ええ、もちろん」


 勇者の宣伝もかねて、大きい街も寄ることにしたから適度に襲っといてと相変わらずひどいことをサラッと言っていく魔導士に真面目に頷く魔王。


 そのまま細々と計画を立て直し、より魔王の封印と勇者の存在を素早く認知させようというふうに動くことにした。




【ではな、大魔導士 レインよ】


「あ、一つ確認したいんですけど」


【なんだ?】


 勇者に魔法を掛けた人物が気になっていた魔導士は、自分よりも確実にすごい魔力を持っている存在に確認することにした。


「魔王ってそのまま城から出れたりします?」


 魔導士の探るような含んだ言い方が気になったが、魔王自身として(・・・・・・・)は出られない(・・・・・・)ので、魔導士への返事は簡潔だった。


【いや】


「……そうですか」


 今度こそ繋げていた通信を切った魔王は、こちらに向かってくる茶色の髪を揺らす少女に手を振った。




 納得していない魔導士は勇者の後を追おうと目を覚ました。


「ちょっと出てくる」

「杖を出せないのなら目立つことはできないでしょう。自分も行きますよ」


 それでも最後ならあんまり邪魔したくないと思っている魔導士は、比較的のんびりとした歩調で、さらにいくつかの路地を遠回りして勇者と合流することにした。


「……もしかしなくとも迷子ですか?」

「違うわ!」


 そんな余計な気を回していることは知らない団長に不名誉なことを言われてしまった魔導士は、とっとと勇者と合流しようと最短距離を使うことにした。




「あのね、わたしたち明日出発することになったの」


 魔導士たちがこちらへ向かっていることは知らない勇者は先日会った人にお別れを告げていた。


「ん?でもその先の街はオレも向かう予定だ」

「そうなの?じゃあ一ヶ月後くらいに会えるかもね」


 「それならまた一緒にご飯を食べようね」と約束して、離れることがちょっと寂しいなと思いながらも手を振って別れた。


「次に偵察に行こうと考えている街に寄る予定とは偶然だな」


 ちっとも疑わない魔王は次の街で美味しい店はどこだったかなと思いながら城へ戻っていった。




「あ、いたいた」

「あれ、どうしたの?」


 さっきでまだ二回しか会ってないのに、妙に印象に残る人だったなあと思いながら宿への道を歩いていたら、なぜか魔導士と団長がこちらに向かって歩いてきた。


「あいつと会っていたんじゃなかったのか?」

「うん。明日で帰るから挨拶しといたの」


 誰と会う気だったのかに気付いていた魔導士は、それでも気配を探るように勇者の来た道の先を睨んだが、すでに城へ戻った魔王は見つからなかった。


「今日は送ってもらわなかったんですか?」

「迎えが来るはずだから、この道をまっすぐ帰ればいいって言われたの」


 「無責任な!」と団長は怒るけど、すぐに魔導士たちと会えたからいいやと宿までの道を三人で歩いた。




 勇者にどんなヤツだったか聞けば早いのだが、先に魔法を見せられた魔導士はそれ以上は聞かなかった。


 そうしてそのまま城へ行って、魔王と対面した時に魔導士はもっと早くに聞いていれば、引き離していれば良かったと思うがもう遅い。


 すでに魔王と勇者はお互いをそれと知らずに愛し合い、さらにその先まで決めていた後だったからだ。


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