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坊ちゃまのメイド 出会い編  作者: くまきち
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二十話 勇者たちは出発した

 なんだか大丈夫かなというメンバーだけれど。

 魔王にもこの三人で向かうと言ってしまったし、何よりもう旅に出る当日だ。


 いつも以上に飾り立てた装飾を身に付けた魔導士は、深い溜息を吐いて絶対に最短で帰ってこようと決意した。




「今日はまた……あれだねぇ」

「あれとはなんだ、あれとは」


 シンプルながら最強の装備を身に付けた勇者を部屋に迎えに行ったら。


 扉を開けたと同時に「うわぁぁ……」という顔を勇者にされ、頭のてっぺんから足の先までたっぷりと見ていったと思ったら不思議なことを言われてしまった。


「必要なことだってわかってても鬱陶しい」

「鬱陶しい言うな」


 勇者の身に付けているものは、剣を振るうときに邪魔にならないようにと本当に最低限だった。


 左肩にかかるように胴体を守るものは軽いながらも最高品質のもので、さらに魔導士によって防御の魔法も掛かっている。


 武器といえば腰に差さっている二本の剣のみだが、こちらは勇者にしか扱えない『なんでも斬れる』という伝説の剣。


 長い髪は一つに縛り、結び目にはまっているものは三人共通の守りの魔法が掛かっている魔導具だ。


「うーむ。一番軽装に見えて、一番物騒なのはアレクだな」

「そっちは一番鈍くて一番頼りなさそうに見えて、そのまんまだよね」

「国一番の大魔導士をつかまえて頼りにならないとはなんだ!」


 「それを自分で言っちゃうとこだよ」と突っ込みたかったが面倒なのでやめることにした。




 お互いの装備と荷物を確認した勇者と魔導士は、そのままパレードの準備がされている門に向かって歩いていく。


「半分までならなんとかなったけど、細切れにしたものを元通りにするのは無理だったね」

「ああ。かなり魔力を使ったんだが蘇生には限界があるのだろう」


 城に魔物が襲ってきた時にこっそり実験をしてみた結果、半分くらいなら時間は掛かるが元に戻ることができたのだが、細切れはさすがに無理だったのだ。


「致命傷は負わないように気を付けようね」

「……そうだな」


 細切れにするような戦い方をするのは勇者なので、巻き込まれて斬られないようにしなければと鈍くさい魔導士は決意した。




 正装した団長と三人で並んだら、合図と共に門が開かれていく。


 門と言っても城下よりも高い位置にあるので、三人は下で歓声をあげる民衆たちに向かってにこやかに手を振っていった。


「わぁ、いっぱいいるねぇ」

「当たり前だ。私の立てた計画に必要な人数は集められている」

「え、サクラ?」

「違いますよ。今日から旅立ちますって知らせたんです」


 そんなのんきな会話をしているとは知らないみんなは、そのまま馬に乗って城から出てきた勇者たちに激励の言葉を送っていく。


 魔導士には王女様との婚約を喜ぶ声を、団長には騎士たちが応援の声をそれぞれ掛けていった。


 みんなに手を振って見送られた勇者たちは城下町から出る門の前でみんなに対してお礼を告げたら、一度も振り返らずに颯爽と旅立っていった。






「えーと……ここからとりあえず、あの山を目指すから」

「はーい」

「途中で魔物もコンスタントに出現するけど倒してよし」

「かしこまりました」


 馬の上でも関係なく三人は会話をして、魔導士が立てて頭に叩き込ませた魔王を封印するまでの道のりの確認をしていく。


「この計画通りにいけば、最短で一年以内に行って帰ってこれるところまで縮められたが……」


 スケジュールの鬼である魔導士が魔王に最短距離の行き方を訊いてルート変更を繰り返した結果、大幅な時間短縮ができそうだということがわかった。


「急すぎる反動は革命を起こされやすいんでしょ。それにさすがに二百年近く支配してきた魔王を、たった一年で封印するのはどうかと思う」


 国全体を混乱させていた原因を勇者だからとアッサリ倒しては逆に共謀を疑われかねないし、戻ってきた時に迫害される可能性もある。


「強すぎる者に服従するばかりの民衆ではありませんし、何より魔王を封印した実力が知られることで別な問題も出てくるでしょう」


 団長も頷いて、野心家に取り込まれたり両親を人質にされて独立国家を作ろうという計画に巻き込まれる可能性がないとは言い切れないと話していく。




「……あの親が大人しく捕まるはずがないから人質になることはあり得ないな」

「むしろ足元見てぼったくるだろうなあ……おかーさんのことだから」

「なんて!?」


 勇者の両親に一度だけしか会ったことのない団長は、次々と否定する二人の言葉に呆然としてしまった。

 しかしとても当たり前だとでもいうように、魔導士が真面目な顔を向けて言い放つ。


「……この勇者の両親だぞ?」

「あ、はい」


 どんな魔物でも食料にし、騎士団たちを顎でこき使う両親たちの話は定期報告書で知っていた。

 何より一度だけでも本人たちに接して、「この一家だけで国が盗れそうだな」ということも思い出した団長は素直に頷いた。


 勇者の実家近くで異常に出現するという魔物を減らすと魔導士は言っていたけど、減らしたらそれはそれであの母親は怒るんじゃないかなあ。だって貴重な肉だし。


 自分が旅に出てる間に騎士たちがどう変わったか楽しみだなと思いながら、団長も馬を走らせていった。


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