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坊ちゃまのメイド 出会い編  作者: くまきち
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十九話 勇者と魔導士の間柄

「それでな、その後に王女様がこう言ってくれて……」


 王女様と二人で話し合ったことで誤解が解けたらしく、二日後の凱旋パレードを終えたらそのまま旅に出る打ち合わせで集まったはずなのに、ちっともその話が出てこない。


 勇者は無視することにして黙々と夕食をいただいていくが、あたりにもひどいノロケっぷりに、あんぐりと口を開けたまま呆然としている団長は固まっていた。




「団長、冷めるよ」

「あ……はい」

「可愛らしいと思わないか!?」

「そーだねー」


 投げやりな相槌を打つだけの勇者だったが、そんなことはお構いなしにさらにペラペラと聞いてもいないことを話していく魔導士。


「そういうわけなんで、凱旋パレードの時に婚約を発表することにした」

「おめでとー」

「そ、そうですか。おめでとうございます」


 やっとこれで静かにご飯が食べれるなとホッとした勇者は、恐る恐る尋ねた団長の言葉に思いっきりむせた。


「王女様とご婚約なさるということは、レイン様は勇者様とデキているわけではないんですね?」

「ふぐっ!?」

「ぶふっ!!」


 「ゲホゴホ」と本気でむせてる二人を交互に見た団長は、「コイツらなんもねーわ」とやっとホッとした。


「なんでそんな話が出てくるんだよ!?」

「そうだよー失礼しちゃう」

「こっちの台詞だッ!」


 「やめてー」と本気で嫌がっている勇者に被り気味に突っ込む魔導士は息ピッタリな気もするけれど、ないわーということも同時にわかる。

 うん、この二人はない。




「レイン様がわざわざ家にまで迎えに行った、ということもありますけれど。勇者様は……その、小柄ではないですか」

「それが?」

「まだ十五歳ならこんなものだろう?」


 王女様と同じくボカした団長の言葉にまったく気付いていない二人は首を傾げる。

 仕方がないと息を整えて、王女様よりも直接的な言葉で言い放つことにした。


「王女様とのご婚約を隠れ蓑に、勇者とラブラブ二人旅に出たいための魔王の封印話なのではという噂があったのです」


「魔物を平気で食べるヤツとラブラブになれるかッ!」

「やめてーサブイボ出てきた」

「失礼だぞ、コラ」


 腕をさすって本気で嫌がっている勇者と、この前の大量の魔物が襲ってきたあとも断固として口にしなかった魔導士を思い出した団長は今度こそ確信した。


「ま、噂は噂ですから」

「じゃあ婚約発表もだけど、レインのこの調子が伝われば世紀の大誤解も解けるね」

「そうですね」


 きっと婚約を発表する時には、先ほどのノロケ全開の締まりのない顔も国民の前に晒してくれることだろう。

 そこで嫌でもわかるはずだ。この男が勇者とどうこうなる気はまったくないということが。




「でもこれも勇者様が男だからこの程度で済んだんですよ。戦っている時以外の勇者様は、どちらかというと女性のような柔らかい空気ですから」

「ふぅん?」


 自分がどう見られているかよくわからない勇者は首を傾げるだけだったが、団長の言い方からすると女だと疑っている人は複数人いるらしいことがわかった。

 疑っているというだけで、正体を暴こうと行動に移すくらいに腕の立つ者はどこにもいないから噂だけなのだけれど。


「これで女だったら旅は中止にさせられますし、何より勇者は男じゃないととうるさい人たちも納得しないでしょうね」

「それは一番困るな」


 そいつらは十代前半で国一番の大魔導士となった自分に、ことあるごとにチクチク言いにくる老害どもなのだ。


 とっとと引退すればいいのにとも思っているので、帰ってきて王女様と結婚したらサクッと首を切ろうと魔導士は帰還後のスケジュールに加えていった。




 少しだけ考えていた勇者が、団長に向き直って尋ねてみることにした。


「団長はわたしが女だったらどうなの?一緒に旅に出ない?」

「いいえ、そんなことはありませんよ。むしろ初めて女性に歯が立たなかったということになりますから、さらなる鍛練をしようと思うだけです」

「……団長って団長だねぇ」

「?」


 曇りのない瞳で尊敬の視線を向ける団長は相変わらずだとわかり、勇者は安堵もしたがちょっと呆れてしまった。


「……ん?団長には婚約者か奥さんはいなかったのか?」


 いたら最低でも二年は離ればなれだから困るなと魔導士が呟いたら、団長がとてもイイ笑顔で言い放った。


「婚約者も妻もおりませんよ。自分、女性に興味ないんで!」

「ぶふっ!!」

「あらぁ……」


 さらに「自分より強くてたくましい人が理想です」と追加で言っていく団長の瞳は相変わらず曇っていない。


「あ、お二人は好みと真逆ですから安心してください!」

「うん、ありがとぉー……」

「ゲホッゴホッ」


 こんなメンバーで大丈夫なのかと、魔導士が頭を抱えても他にいないんだから仕方がない。


 ついでにその性癖を知られたらまた王女様にいらん誤解をされそうだと気が付いたので、公言しないようにキツく言い含めた。




 勇者に勝ててはいないが、それなりに実績がある団長に勝ててたくましい男なんて……。


 それこそ魔物くらいしかいないんじゃないかと魔導士は気付いたが、すでに『魔物イコール美味い』という思考になっている団長だったと気付いて脇に置くことにした。


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