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坊ちゃまのメイド 出会い編  作者: くまきち
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十二話 三人目の仲間

「……いま、とても物騒な話をしていませんでしたか?」


 なんか魔王に頼むとか、近々魔物が城を襲うとか。


 これから魔王を倒しにいく勇者と魔導士の会話とは思えない。


 稽古場に来ていた団長が顔を引きつらせながら魔導士に尋ねたら、キョトンとした顔をされた上に首を傾げられた。


「アレクが強くなるための特訓で、人間同士ではこれ以上の上達が見込めないと判断した結果だ」

「それでこの城を魔物に襲わせるとか何考えてんですか!?」


 団長に怒られながら詰め寄られても、とても合理的だとしか思っていない魔導士は眉根を寄せて怪訝な視線を向けるだけだ。


「魔物が城を襲うことにより、それを勇者が倒すことにより、さらに民衆は『打倒・魔王』の空気になるだろう。もうすぐ装備もできて旅に出るんだから、ここらへんでダメ押しの襲撃は私の計画にとても有効だ」


 「以上!」と言って締めくくる魔導士に、団長はなんとも言えない顔を向けることしかできなかった。


 ダメだこりゃ。




 城の中でも魔導士お手製、『魔王を封印する旅のしおり~勇者 アレクと大魔導士 レインの冒険~』は配られている。


 使えるものはなんでも使うが、決して魔導士の立てたスケジュールを延期させたりしてはいけない暗黙のルールがある。


 なんに対しても計画をキッチリと立てる魔導士は、勇者を連れてくるに当たっての予算の確保までしていたのだから。


「あれは私の見通しの甘さによって大幅に狂ったが、考えてみれば一人息子に国を守ってもらおうとするのだから少ないほうだったな」


 そう言って納得させ、さらに両親の護衛をするために騎士団の要請もした。


「……その騎士団員たちから、魔物が他の比ではないくらい出現して困っていると言われました」

「すでに五人以上が向かっているではないか。さらなる増員は城の守りが薄くなる。……こっちの魔物は減らすように頼んでおくか」


 勇者は城に来ているし、旅立ちの日も近い。


 勇者を強くするために魔物を特訓に使うのは、これからの旅の最中だけでいい。




「……誰に頼んだら魔物が少なくなるかは訊きませんけど、勇者の母親が『あんたたちじゃ何人いても役に立たないからアレクを返しな!』って言い始めてもいるんですよ」

「それは困ったな。早めに対処しよう」


 団長は初日の挨拶に行って一晩過ごしたが、あの母親でも十分倒せんじゃね?とか思うくらいに腕っぷしがいい。

 騎士団にスカウトしたくなったくらいだ。


 魔導士の横にいる小柄な勇者は、のほほんと「おかーさんてば相変わらずだねー」とのんきだけれどまったく隙がない。


 勇者と同じくのほほんとした見た目の父親もなかなかだったので、もしかしたらこの三人がいれば国を乗っ取れるんじゃないかと思ったことは秘密にしておく。


「そっちはすぐに対処するから、とりあえず稽古を始めてくれ」

「はーい」

「かしこまりました」


 魔法が全然使えない代わりに、勇者の剣の扱いは一級品だ。


 普段の稽古では使えないが、その剣は伝説と呼ばれている物で扱っているのは勇者とくれば、この時代に産まれて良かったなあとミーハーな団長はしみじみと感動していた。


 団長になって良かった……!




「ねえでもさあ、レインは回復魔法もちょちょいっと使えるんでしょ?」

「ん?ああ、まあな」


 自分が魔法を使えないからか、勇者は魔導士を尊敬した瞳で見つめている。


 悪い気はしないのか、ちょっとフフンと得意そうな顔で神妙に頷いて答えていく魔導士に向かって恐ろしいことを言い放った。


「じゃあさ、細切れにしても回復できるよね?」

「なんて!?」

「んー……そこまで細かいモノを元通りにしたことがないからなんとも言えないな」

「そっかー」


「……」


 なんか恐ろしいことを、こっちをチラチラ見ながら言われた気がする。


 「うん、気のせい!」と改めて剣に手を掛けた団長は次の言葉で固まった。


「一回やってみてもいいかなあ?生ぬるい稽古ばかりで腕がなまってきてる気がするんだよね」

「それは困るな。よし、一回試してみるか」

「はーい」


 そうして振り向いた勇者と魔導士にロックオンされた団長は、剣に手を掛けたままジリジリと後ろに下がった。




 視線を逸らしてはいけない。

 息をしてもいけない。


 それでも射程外の距離を保つように少しずつ下がっていく。




 そんな団長に勇者はニコリと微笑んだ。


「一瞬だから痛いとかも感じないと思うよ」


 その勇者の言葉に頷いた魔導士もニコニコと微笑んでいく。


「国一番の魔導士である私がいるのだ。まあ、大丈夫じゃね?」

「軽いなッ!?」


「一回だけだから優しくするね」

「元通りにならなかったら俺が死ぬんですけどっ!?」

「そうならないために私がいるんじゃないか」

「それ以上近付くなあぁぁっ!!」


 命の危機を感じた団長は、死に物狂いで勇者の剣をかわしていった。




「わぁー、初めてまともに打ち合いってことをしたかも!」


「ゼエ……ゼエ……」


 勇者を近付かせるどころか、ちっとも斬らせてくれなかった団長はそのまま三日三晩寝込んだ。




「団長を連れていってもいいんじゃない?」

「そうだな……やはり攻守ともにできる万能型は必要だな」


 団長が倒れている間に勇者と魔導士が勝手に決めて国王から了承をもらい、魔王にも仲間が増えたと伝えて目覚めた団長にも伝えたらまた倒れた。


「なんで倒れるんだろう?」

「勇者と伝説の剣で打ち合えることを誰よりも楽しみにしていた人だからな。嬉しすぎたんだろう」

「そっかー。旅の間に幻滅されないように気を付けなくちゃ」




 こうして三人目が倒れている間、勇者の装備もできて魔王にも連絡をしたことで、大量の魔物が城へ襲撃しにきた。


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