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魔法のラケット

「もう日が暮れますよ?大丈夫ですか、アリサさん?」

「平気よ、様子見程度だから」


俺はアリサと呼ばれた幼女みたいな女に付いていって、ギルドに戻ってきた。ギルドでは俺に嫌がらせをしてきた女が、アリサに対応していた。

アリサは俺とギルドでパーティー申請をしてから、Dランクのホロホロ鳥の狩猟依頼を受けて、森に向かって歩く。


「ところであんた、ラ・・・、あー、何が出来るの?」

「俺はこれしか出来ないんだ」


俺はラケットのスキルを使って、右手にラケットを出した。


「っ!卓球?!え?うそでしょ?!」

「あっ、この世界にも卓球あるの?」


アリサはビクッとして、目をそらした。


「あー、あるわよ・・・たしか遠い東の方に・・・」

「そうなんだ」

「・・・、で、それで何が出来るのよ?」

「石とか打てば早く打ち出せるよ?ゴブリンを倒せるくらいには。あっ、ちょうどいい」


ちょうど森の入り口に到着したところで、ゴブリンが2匹街道に出ていた。ゴブリンはこちらに気付き、突撃してくる。

俺はゴルフボールぐらいの石を拾い、一匹のゴブリンの頭に向かってスマッシュした。


「グギッ!」


石はゴブリンの額を貫き、一撃で絶命した。

2匹目のゴブリンが、俺のみぞおちめがけて短剣を突き刺してくる。

俺は少し腰を落とし、短剣の切っ先をバックハンドで打ち返した。


「ゲギャー!」


ゴブリンは短剣を持ったまま、バックハンドの反動で10mぐらい吹き飛んだ。

俺は足元にあった拳大の石を拾い、ドライブスピンをかけてゴブリンの頭めがけて打つ。


高速に山なりに打ち出された石は、急にまっ逆さまに落ちるようにゴブリンの首に命中した。ゴブリンの頭は首からちぎれた。


「意外と俺も慣れたなー。もうゴブリンなら怖くないかも。どうですか?アリサさん」

「・・・・・・」


アリサは口をあんぐり開けて放心している。


「ど、どうかな?」

「・・・っ!ちょっとそれ見せなさいよ!」

「あ、どうぞ・・・」


アリサはしげしげとラケットを見る。

小石を拾って、自分でも打ったりしてみたが、コンと音がして普通に弾かれるだけだった。とても俺が打ったときとは違う。


(もしかしてこれ、俺しか有効じゃないのか?)


アリサはゴブリンの短剣を拾い上げて、ラケットを地面に置き、短剣で刺した。


「「あっ」」


短剣は易々とラバーを突き抜け、短剣の中腹までラケットに刺さっている。


「あっ、大丈夫だよ。こうやって・・・・・・、消して戻せばほら、元通り」

「・・・・・・」


アリサは目を見開いてラケットを見つめている。

数十秒ほどアリサは考えこむと、


「ちょっと実験したいんだけどいい?」

「あ、ああ、いいよ?」

「今から私がこれくらいの魔法のたまを打つわ。それをラケットで打ってみてくれない?」

「魔法か・・・・・・怖いな・・・」

「大丈夫よ、威力は押さえて撃つし、ミスしてもちょっとやけどする程度よ。大きさも3cmぐらいだから」


(3cmならピンポン玉ぐらいか。そこそこのスマッシュぐらいなら返せるし。スマッシュの速度が100km以上って言われてるから、そのくらいなら・・・)


「魔法はどのくらい速いのかな?」

「この程度よ?」


アリサは近くの木に向かって、ピンポン玉ぐらいの火球を無詠唱で放つ。

その速度はスマッシュより明らかに遅かった。


(あれなら、インターハイ選手のラリー程度だな)


「やってみますか。今のくらいでお願いしますよ?」

「わかったわ」


アリサは5mほど離れて、俺の右斜め前からピンポン火球を放つ。


「いくわよ?はい!」


アリサの指先から放たれた火球を、俺は難なく打ち返す。

ちょっと絶好球だったので、スマッシュで木に向かって打った。


シュバ!

ボウ!


「おわああ!・・・アリサさん!消して!山火事になるよ!」


俺の打ち返したピンポン火球は、ものすごい高速で木に当たり、木はさっきとはうってかわって、ボウ!と燃え上がった。


「・・・・・・」


アリサは驚愕の表情を浮かべ放心している。


「アリサさん!はやく消して!」

「・・・っ!ウ、ウォーターボール!」


アリサが撃った50cmぐらいの水球が、木を消火していく。

一発では足りずに、追加で3発うつと完全に消火された。


「ふぅ、アリサさんひどいな。火力は同じでって言ったのに。あれじゃ大火傷だったよ。でも魔法も打てるとは、やっぱり俺のラケットワンチャンあるな!」


俺が喜んでいると、なにやら考え込んでいたアリサが始動し出した。


「な、なんなのよそのチートラケット!あり得ないわ!」

「え、まあ、あんなに燃え上がる火の玉を打てるのはすごいよね」

「私は威力を変えてないわよ!!!あんたが変えたの!」

「え?」


状況が飲み込めない俺にアリサが説明する。


「いい?あんたのラケットってスキルはユニークスキルよ。ラケットを出したり消したりだけじゃない。あんたが手にした時だけラケット本体の硬度もあがるし、あんたが使った時だけ打ったものの速度や威力を増幅するのよ!!!」

「・・・・・・いや、まさか・・・」

「よく考えなさい、石が魔物の頭蓋骨を貫通するってどれほどの速度を持ってると思って?、ラケットのラバーはゴムよ?!何故火を打って全く溶けてないの?、それにあの燃焼能力、魔法を撃った私が変えてないと言ってるのよ?間違いないわ」

「・・・・・・」


(嘘・・・、これ、チートラケットなのかよ・・・ってあれ?)


「アリサさん、今ラケットってスキルと言いました?それにラバーって・・・」

「・・・あっ」

「それにほかにも何かおかしな言葉が・・・」


アリサはため息をつき、何かを諦めたように、


「わかったわ。ちゃんと説明するから。とりあえずは依頼を達成させて帰るわよ」

「あ、ああ・・・」


イマイチ納得出来ないけど説明してくれると言うので、それを信じて森に入った。


森ではアリサが氷魔法でホロホロ鳥を2羽、即効で仕留めてホロホロ鳥をどこかに消した。


「まさか、・・・アイテムボックス?」

「それも説明するわ。帰るわよ」



俺たちは森を後にして、街に帰った。



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