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異世界の洗礼を受ける

街から2時間歩いた。

森に到着したが、またまた問題が発生だ。

リアカーは森の中まで引いていけない。

ここにオークを誘い出すか、ここまでオークを担いでくるしかないのだ。


(俺の思っていた異世界と違う・・・違いすぎる・・・異世界ってこう、便利なものがあってすぐに金持ちになって、女がよってくるもんじゃねーのかよ・・・)


身体能力があがったわけでもなし、便利なスキルもない。貴族もギルドも街行く女たちでさえ、塩対応というか、相手にもされてない。

金にも困り、今日生きることさえも危ない状態だ。


「くそっ!みんなして舐めやがって!俺はやる!絶対に成りあがってやる!」


唯一の武器、ラケットを手に持ち、石を拾ってポケットに詰め込み、森のなかに恐る恐る入っていく。


数分も進むと、正面の先がガサゴソしている。


「ゲギャアアアアア!」


ゴブリンがこっちに向かって走ってきた。


「俺は!成り上がるんだああああ!」


ポケットから石を出し、左手で駐日投げるとラケットで石を打つ。

一発目は外れたが、2,3,4発と打つとゴブリンに当たった。


「ゲギャ、ゲギャ、ギッ!」


ゴブリンは石に弾き飛ばされるように後ろに倒れた。

恐る恐る近づくと、石は肩と頭を貫通しており、ゴブリンは死んでいる。


「おお!やっぱりつえーじゃん。領主め、バカにしやがって。ラケットでやってけるっつうの」


俺はゴブリンの足を持ち、リアカーまで引っ張っていく。

リアカーについたときは、


「・・・・・・グロッ!」


頭から血だけでなく脳漿のよいたなものまで出ていた。

俺はゴブリンをリアカーに積むと、また森に入っていく。


同じ展開でゴブリンを更に三匹倒した。リアカーには合計4匹のゴブリンが乗っている。

今回の狙いはオークなので、また森に入る。


いくら狩りをしても、オークには出会えなかった。成果はゴブリンが7匹と、頭から角が生えたウサギが三匹だ。

オークに会えないものは仕方ない。それを全部積んで街まで帰る。


門番にギルドタグを見せて街に入ろうとすると、


「次からは血抜きをしてこい。血が道に滴って匂いも出るし、野犬や狼を呼ぶこともある。今日は許すが次からは追い返すぞ?」


昨日と違う門番だ。

俺はいきなり怒られて、また気分がブルーになる。


(なんなんだよ、この異世界は!何にも良いことがない!)


リアカーの角度を水平に保ち、血がなるべくこぼれないようにギルドに向かう。

俺はリアカーを受け取りした裏口に回り、リアカーを置くと、そこにいる職員に声をかける。


「すいません、魔物を持ってきたんですが・・・」

「よう、・・・あー、ゴブリンじゃねえか。ゴブリンは持ってきちゃダメだよ。食えねえし魔石も持ってない。討伐した証拠の耳だけ切ってきてくれよ」

「あ、すいません・・・」


(聞いてねーよ!)


「ホーンラビットは買い取るよ」


職員はスラスラと紙に何かを書き、俺に手渡して来た。


「これをもってカウンターに行きな」

「・・・はい、ありがとうございます」


裏口から正面に回り、カウンター口の列に並ぶ。

あのぶりっ子乳女はイライラするので、今度はブロンドの髪のなかなか可愛い女の前に並んだ。


「すいません、これをお願いします」

「はいはーい、じゃあギルドタグをお願いしますね」

「はい」


俺は紙とギルドタグを手渡した。

すると可愛い女は両方持って裏に行って、1分かからず戻ってきた。


「はい、報酬」

「・・・・・・・・・え?」


ギルドタグと一緒に戻ってきたのは、銀貨1枚、1000イエンだった。


「・・・えっと・・・少なくないですか?」

「ちゃんと計算したわよ?」

「・・・ど、どういう・・・」

「あー、じゃあ説明するわね。まずゴブリンはお金にならないわ、依頼を受けてないからね。ホーンラビットは依頼分はないけど、食材と毛皮が素材になるから買い取れるわ。首だけ落とした完全状態で一体5万イエンよ。でも毛皮はボロボロ、肉の損傷も酷いから一体15000イエンね。それとオークの依頼失敗の罰金が四万イエン、ゴブリンの死体の処理費用が3000イエン、リアカーの血の清掃代が1000イエン、差し引きすると1000イエンよ」

「・・・・・・・・・」


(なんだこれは・・・俺は詐欺に合ってるのか?ぼられてるのか?)


「失敗って・・・」

「あなたはEランクなのにその上の依頼を出来ると約束して受けた。そして依頼主はそれを待ってる。他の人が依頼を受けたら完了していたのに、あなたが受けちゃったために依頼主は、目的を達成出来なかった。それは理解できる?」

「・・・・・・」


俺はぐうの音も出なかった。言ってることは理解出来る。だけどあまりにも冷たくないか?と思った。


「・・・ならゴブリンの処理代って・・・」

「買い取りは出来ないから死体を処理するしかないわよね?それとももって帰る?」

「・・・もって帰るからリアカーを貸してください」

「ならまた1000イエン貰うわ。あとあのゴブリンの状態だとまたリアカーの清掃が必要になるから、更に1000イエンかかるわね。1000しか変わらないけどいいの?」

「・・・・・・」


(・・・これが異世界?・・・・・・ふざけるなよ?何でこんなにいじめられるんだよ!)


「俺は今日の宿代もないんです、いじめるのはやめてください!」


すると、可愛い女は、表情を曇らせた。次第に怒りの表情に変わる。


「ギルドは決まり通りにしているだけよ?宿代がない?それが私に関係あるの?いじめですって?あなたをいじめて何が得するのよ」

「ゴブリンが買い取れないのも、リアカーの清掃代も、ウサギの状態によって値段が変わるのも聞いてない!!そっちの説明不足じゃないか!!!」

「そう、なら説明がしてあることだけにしましょうか?」

「当たり前だ!はじめからそうしろよ!」

「・・・わかったわ。なら罰金の四万イエン、払ってちょうだい。罰金の金額と依頼の期日はちゃんと依頼書に書いてあるわよ」

「ウサギが一体五万なんだ!そこから払えるだろ!」

「ホーンラビットは事前に説明してないわ。だから買い取れないわよ」

「なっ!」

「当たり前よね?都合の良いことは説明が無くても有効、都合の悪いことは無効なんて言わないわよね?まさかそこまでバカなの?さあ、ホーンラビットは返すわ。今すぐ罰金の四万払いなさいよ」

「・・・・・・」


俺は怒りとやるせなさと孤立感から、涙が溢れてきた。


(なんだよ!もう日本に帰してくれよ!こんなの異世界じゃねーよ!)


「その辺にしてあげてよ、ターニャ」


俺の背中側から声がした。

振り向くと誰もいない。いや、身長140cmぐらい、黒目黒髪の女がいた。


「だってこの新人、バカなことばかり言うのよ」

「こいつ迷い人なのよ、許してあげて」

「だからって・・・・・・アリサさんの知り合い?」

「違うわ。バカは私が教えるからさ。許してあげて」

「・・・まあ、アリサさんがそう言うなら・・・」

「ほら、いい年した男が泣くんじゃないわよ。来なさい」


アリサと呼ばれた女は、カウンターから銀貨1枚の1000イエンを持って、俺の手を引きギルドから出た。


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