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プロローグ

今は昔、20年前。

当時MMORPG創成期に、Everest(多くの)Quest(クエスト)、通称EQは誕生した。

当時初の3DMMOとして、全世界を騒がし、またEQにハマりすぎて仕事を止めたり離婚まで発展したりして、インターネット界隈では結構大きな騒ぎになった。


しかし、次々に台頭するMMORPGの勢いに負け、EQは廃れて行った。

一番大きな理由は、経験値稼ぎがマゾかったのだ。1レベルあげるのに一週間はざらで、また、序盤以外はソロプレイも難しく、クラスによる有利不利も大きかった。そのため不遇クラスは、ただの経験値稼ぎのパーティーでさえ、組むのに半日かかると言うのも大げさではなかったのが、廃れた要因の1つだろう。

その他にも、ある一定のクラス以外は、狩場まで移動するのに二時間かかったり、大陸の端から端の街に行くのにリアル時間で1日かかったり、マップ機能もなく夜になると真っ暗になり、光源を持ってても少し先までしか見えない。

とにかく今のゲームに当たり前にある親切機能が一切なかったのだ。

だが、世界観とリアルで緻密な戦闘システムは、今の時代でさえ一番じゃないかと言われるほどの完成度だった。


そんなゲームをこよなく愛し、どんなに廃れようが過疎になろうがやり続けた男がいる。近藤隆文、45歳、俺だ。


昔は6アカを駆使し、一人で1パーティーを作ったりしていたが、既にほぼ全キャラカンストし、装備もゲーム内最高の装備を手に入れた今は、1アカウントを除き凍結し、まだ手を付けてない唯一のクラスを育てるため、新キャラの為の装備を集めているところだ。


「流石に限界か?日本人はもういなそうだしな」


EQは全世界からアクセスできる。このゲームで英語も覚えたから、日本人が居なくても問題はないが何となく寂しい。


「こんなもんでいいか。これ以上は譲渡不能(ノードロップ)属性だしな」


当初のEQのレベルのカンストは50だったのだが、20年たった今では100になっている。当然レベル100のモンスターからドロップしたアイテムのが強いが、51以上のアイテムは譲渡不能なのだ。したがって新キャラに持たせることも出来ない。


「魔法は・・・・・・いいか。新キャラでバザーで買おう」


基本50レベルまでの魔法は店売りである。だが、一部のクラスは自分で作るかレアドロップで手にいれるしかない。

51以上は、全キャラがレアドロップか作成である。


俺は新キャラの為に揃えた装備と金を、友人のジョセフを呼び出してジョセフに預ける。そして新キャラにログインしなおして、ジョセフから装備と金を受け取り、キャラ専用バンクに入れる。

受け渡し作業が終わり、ジョセフにお礼を言ってからメインキャラに戻った。


英語『ヘイ、キャッスルミストモアに行こうぜ?』

『huh?お前も新キャラの為の装備か?』

『当然さ!』

『一人で行けるだろ?』

『つれないなブラザー?!二人のが速いじゃないか』

『・・・まあ、暇だから良いよ』

『WoooHoooo!これでタクシーとヒーラー確保だぜ!』


俺のメインキャラはDRUID(ドルイド)と言う。ドルイドとウィザードだけが世界各地にグループでワープすることが出来る。

更にドルイド、略称DRUは、ヒーラーよりの器用貧乏で一人で何でも出来るが専門職には勝てないクラスだ。

だが俺は初めて作ったキャラがDRUのこのキャラで、愛着がある。



俺と友人は、キャッスルミストモアに俺のワープで向かい、城内の敵を蹂躙していく。俺たち二人はレベル100で、キャッスルミストモアの推奨レベルは40~だ。余裕過ぎる。


『ヘイ、王と王妃だぜ?やっちまっていいか?』

『当たり前だろ、はやくしろ』


ジョセフの職業はSHD(シャドーナイト)だ。SHDはネクロマンサーと戦士のハイブリッドで、戦士なのにネクロマンサーの魔法が少しだけ使える。

ジョセフが、王と王妃を蹂躙してアイテムを拾う。


『オーマイガッ!外れだぜ!』

『リポップは六時間だな、また明日だな』


すると、王の間の玉座の位置に座っていた俺たちの反対側、王の間の入り口の所に何かがpopした。そいつは真っ黒な影の様だ、人の形も取ってない、有名アニメのカオ◯シの仮面なしのようなやつが、ぬぼーっと立っている。


『ん?』

『なんだありゃ・・・・・・ジョセフ待て!!!RtAだ!』


RtAとは、Ready to Attackの略で、敵が近レベルなら問答無用で襲ってくる。

敵のレベルがかなり低ければグレー表示で問題ないのだが、カ◯ナシは俺たちから見てレッド表示だ。それは俺たちより遥かに高いレベルだと言うことを意味する。カンストレベルの俺たちよりだ。


『ウアアァ』


ジョセフはカオナ◯に突っ込んでいき、お決まりの断末魔を上げて一撃で死んだ。


『バカ野郎が・・・、でもこんなモンスター聞いたことねーぞ?しかもキャッスルミストモアでレッド表示のモンスターなんて・・・・・・イベントか?』


俺は部屋の隅まで引き、◯オナシの様子を見る。すぐにワープで逃げればいいのだが、イベントモブならもったいないので試してみたいのだ。

だがこのゲームは、死ぬと死体が全アイテムごとこの場に残る。

回収が面倒なので簡単には死ねないのだ。


『ヘイ、奴はまだ居るのか?』


死んで街に戻ったジョセフから/tellが入る。


『ああ、迎えに行くか?』

『いや、こっちでレイドを組んで行く。そいつをぶっ殺そうぜ!』

『了解した。俺は見張っとくよ』



さて、あいつをぶっ殺すのは良いが、俺がここで死ぬわけにもいかない。どうしたものかと思ってると、黒い物体のカオ◯シもどきが話し出した。


『あまねく神々を屠る者よ、神の怒りを食らうがよい!全ての神に代わり、このナイアラホテップが天罰を与えてくれる!』


(・・・・・・そりゃ、神々を殺したけどよ・・・)


このゲームの醍醐味の1つはレイドコンテンツだ。そのレイドにはドラゴンや巨人も討伐対象にいるが、最後は何十種類もいる神々を倒すことだ。当然俺の装備も神々からドロップした装備だ。


(しかし、ナイアラホテップなんて神は聞いたことないぞ?・・・なにっ!!!)


ナイアラホテップは、真っ黒な体を王の間いっぱいになるほどにふくれあがり、津波のように俺に向かってきた。

俺は咄嗟にワープを詠唱しだすが、全く間に合わない。

ナイアラホテップは俺のキャラを、その漆黒の体で包み込んだ。


それと同時に、モニターの前の俺、近藤隆文も意識を失った。


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