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第二の人生 ~女アバターで異世界ロールプレイ~  作者: 暗鬱な曇天
第一章 穢れた祭壇
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第十一話 見えざる一歩の遠く及ばず

「どうしたもんか……」


 街は既に寝静まり、世界を照らす光が空に浮かぶ二つの月のみとなる真夜中。

 帝都の片隅にある小さな家で、月明かりに晒した一枚の紙をぼんやりと眺める男がそう呟いた。


 彼の名前はローラン。質素な家の外見からもわかるように、何の変哲もない平民出の青年である。

 顔は整っており、やや筋肉質の肉体は引き締まっている。その容姿にはすれ違った女性の五人に一人は振り返るだろう。

 人間関係においては仕事仲間と彼自身が師と仰ぐ人物等は親しい人、それ以外は他人。という程度の認識を持っている。

 そして彼は自身の手の届く範囲にナイフなどの武器になる物を置いており、それは常に襲撃を想定している事の表れだろう。そこから彼の仕事がそう明るくないモノであると読み取れる。


 もう何度目かもわからない、手元の紙を眺める動作。既にその中身は頭に入れているが、未だにその内容に悩むローランは幾度となく読み返していた。

 彼の持つ紙はただの依頼書だ。本来ならそれほどに悩むこともない。ただし、それがローランのパーティーへ対しての指名依頼書でなければ。


 とある街の調査依頼と多額の報酬。

 依頼書に書かれた内容は以上。ちょっとした事をこなすだけで彼のパーティーは莫大な報酬を得られる。

 いつもの要人暗殺や、施設に対する破壊工作等と比べれば、比較するまでもなく簡単な仕事だ。

 怪しくはあるが、調査対象の街は特に異常もない普通の街である。それに加えてパーティーメンバーの了承も得られている以上、悩む必要などない。

 しかしある一点の事象のみが、彼の悩みの原因となっていた。


「師匠が来てくれないんだよな……」


 彼、ローランには絶対的に信頼できる師匠がいる。

 彼自身、師に恵まれたことにより人とかけ離れて強い。レベルは200を越えたあたり。

 かの聖騎士が守護する王国も半分は落とせると、そう自負する彼ですら自身の師に勝てる未来が見えぬほど。

 彼目線ではあるが、何でも出来ておそらく世界最強の師。そんな師が依頼への同行を拒否するのである。

 基本的には自身のパーティーのみで依頼を行っていたが、稀に師へ同行をお願いする時もあった。面倒そうな顔を浮かべるものの、師が同行を断った事など一度も無かったのだ。


 言ってしまえば、師が同行しない。たったそれだけのことではあるが、彼にとってそれは一考に値する事であった。


「……また明日頼んでみるか」


 ローランは小さく呟くと依頼書を筒状に丸めてナイフと共に枕元へと置き、ベッドへ潜り込んだ。






「だからよ、俺は行かねぇっての」


 朝早く、帝都が動き始める頃。日の光が一切届かない暗く複雑に入り組んだ路地裏を行った先にある、一般人は寄り付かないような酒場。

 ここは裏冒険者協会。文字通り、冒険者の裏側の仕事を斡旋する場所だ。

 冒険者が行う仕事には、街の防衛や危険なモンスターの討伐など。謂わば正義の味方のようなモノが多い。

 しかしそんな綺麗事ばかりでは世の中というものは回らない。

 表の面、明るい仕事をこなす冒険者に対して裏の面、暗殺や破壊工作等の仕事を行う彼ら。元々は別の名称だったらしいがそんな成り立ちからいつしか裏冒険者と呼ばれるようになった。


 所謂汚れ仕事であるため、全体的にどこか陰が差したような雰囲気を纏う場所である。

 しかし、そんな陰など微塵も感じさせないような和気藹々とした空気を放つ一画が存在する。皆一度はそちらに目を向けるものの、特に何を言うでもなく視線を戻す。

 そこにローランとその一行の姿はあった。

 人懐っこい笑みで師匠とやらに頼んでみたものの、バッサリと断られたようだ。


「あー……どうする? 俺はさ、この依頼断っても良いと思ってるんだけど……」


「報酬は魅力的だけど……。まあ、ローランが言うならアタシもナシの方がいいと思うわ」


「俺も同意だな。ローランがそう言った依頼は大抵ロクなものじゃなかった」


 リーダーであるローランの言葉に、弓使いのレイラ、剣士のレナードは概ね賛成の意を示している。

 そんな仲間達の反応にホッと胸を撫で下ろすローランであったが、約一名、やや不満そうな表情を浮かべる者がいた。


「リリ……」


 ローランにリリと呼ばれた少女、リリカ・ブリット・ド・ルベール。パーティーにおける役割は魔法使い。没落貴族の娘である。

 魔法の才能はかなりのもので、かの帝国魔法研究機関に在籍することも可能だろう。だが、貴族であった頃よりも更に金遣いの荒くなった両親のせいで彼女とその妹達は苦労しており、日々を生きる為に彼女はこのような仕事をしている。


 彼女はローランに見せられた今回の依頼書の内容を今一度思い出す。

 あれだけの報酬があれば両親の下を逃げ出し、自分を、いや自分達姉妹を取り巻く環境を変えられる。それは幼い妹達の為にもなる。しかし、ここで協調性に欠ける行動をしてはパーティーを追い出されてしまう。

 裏冒険者のパーティーは仲間との信頼関係が最も大切で、私情を挟むような人間を参加させる事は命取りとなる大きな要因のひとつだ。この道で一流パーティーと呼ばれるローラン達が初期からの仲間だからといってそれを容認するはずもない。


 そんな思いが彼女の中で渦巻き、導き出された答えが同調する事である。

 しかし言葉ではそれを絞り出せるものの、若い、いや幼いと言っても過言ではない彼女は目の前に放り出された希望の糸を見逃すという行為を看過できない。そして本人は気付かないが、それははっきりと表情に浮かび上がる。


「……私も、問題ない。うん」


 明らかに無理をしていると理解できるような、ひくひくと引き攣った顔でそう言ったリリカを見たローラン達はお互いの顔を数秒見合わせ頷くと、その場を立ち上がった。


「……皆の賛成も得られた事だし。この依頼、受けようか!」


 と、ローラン。


「今の内に出れば、昼頃には目的地へ着くだろう」


 そう言い壁に立て掛けていた身の丈ほどの鉄板、もとい、大剣を背負うレナード。


「場所の確認は大丈夫かしら? 馬車の手配もしないとね」


 と、レイラ。


「え、どうして……」


「付き合い長いんだから分かるだろ? 俺達に隠し事なんか無理だ、って」


 困惑する自分に対して被せるように言葉を放ったローランと、次々に出発の準備を進めていく仲間達の姿に何かがこみ上げてくるリリカ。


「リリ。いつも通りサポートは頼んだぞ。まあ今回は必要ないと思うが」


「ほら、リリカも立って立って! 早くしないと置いてっちゃうわよ!」


「あ──……。ぅ、うん……わかった。すぐ、行く」


 おそらく、自分の事情を仲間達は少なからず知っている。しかしあくまでもいつも通り共に歩もうとしてくれる彼らには、感謝の言葉を述べるのではなくいつも通りの返事をするべきだろう。

 そう考えたリリカは喉元に出かかっていた言葉を飲み込んだ。



「……それでは師匠。今回の依頼、俺達だけでも行くことにしましたんで。結果を楽しみにしててください!」


 正直な所、ローランは不安であった。

 こんな指名依頼来ないで欲しかった、それが本音である。

 しかし、行くと決断した以上撤回するわけにはいかない。それに大事な仲間のためでもあるので撤回する気もない。

 ローランはこれで最後になるかもしれない師への挨拶を終え、重い足を動かした。





「いいか、俺とローランが城に潜入する。レイラとリリカは街で情報収集。んで、レナードは周辺の地理を探索だ。何かわからないところはあるか?」


 昼下がり。アルティエタのとある路地裏にて、今回の作戦を練るローラン達の姿があった。


 あれから、共に来てくれることとなった師と共に今朝出た定期便の馬車に乗り、目的地であるアルティエタへと来たローラン達。

 師のシュージが来てくれるとの事で安心し、明るい雰囲気で馬車に揺られていたローラン達四人だった。が、アルティエタの門をくぐり抜けた瞬間からローランは重くのしかかるような圧力を感じていた。

 違和感を共有しようと軽く周囲を見渡したが、レナード達は気付いた様子がない。

 ならば、わざわざここで不安を煽るような事を言う必要もないとローランは口を閉ざしていた。


「ないみたいだな。次に出る帝国行きの便に間に合うよう集合は一時間後にここだ。んじゃ、作戦開始! 行くぞローラン」


 シュージのかけ声と共にそれぞれの目的へ向けて散る一行。ローランは師である彼に着いて行く形で城へ向かって走った。

 ローランにとって絶対的強者である師の指示に従っていれば間違いがない事は確かなのだが、それでもローランは不安を拭いきれずにいた。


「……あの、師匠」


「ん、ああ。ローラン、お前は気付いたんだろ?」


 そんな不安を打ち明けようか迷っていたローランに対し、先を読んだかのような言葉が師よりかけられた。

 はっ、と少しばかり驚くローランだが、師ならば当然かと納得し言葉に頷いて返す。


「まあお前が感じた通り、今回の相手はとんでもない怪物だ。俺でも足下にすら及ばない。だから絶対に俺の側を離れるなよ」


 そんな、師より告げられた衝撃の事実にローランは目を見開き驚愕の表情を浮かべる。

 もし、師の言葉が真実であれば自分に出来ることなど何一つない。ローランはそう考え、首を何度となく上下に振り頷いた。


「っと、そろそろ近いな。ローラン、幻影歩法シャドーウォークだ」


 ──歩法スキルLv5。

 ──発動、幻影歩法シャドーウォーク


 師の言葉と共にローランはスキルを発動させる。

 瞬く間にローランとシュージの姿は景色に溶け込み、周囲からは完全に見えなくなった。

 見回りをしているらしい騎士の隣を彼らが通っても気付いた様子の一つもない。


 このスキルは師より最初に伝授されたもので、修得した時より研鑽をかかさず技にはよりをかけているので師に追随するレベルには扱えるとローランは自負している。


「……腕を磨いたな。さて、ここからは時間との勝負だ。行くぞローラン! 俺に着いてこい!」


 シュージの言葉にローランは少し顔が綻ぶも、すぐに気を引き締めてその後へと追従する。

 見上げた城壁は、平原のど真ん中に堂々と建っている様を現すかのようにとても巨大な姿でローランの視界に入った。


 門の脇に立っている二人の騎士をすり抜けて城内へと侵入した二人を最初に襲ったのは、街に入ってから今までで感じていたものより更に濃厚な重圧だった。

 これは、その気を放っている主がこの城内に存在するということを示すものである。

 ローランは思わず膝を折りそうになったが、目の前にある師の背中を見てなんとか気を持ち直し、スキルを保った。


 すれ違うメイドや騎士達の姿を尻目に、ローランとその師シュージは一切の音を立てずに血のように赤いカーペットの上を素早く移動する。

 シュージの提案した「上を目指す」と言う言葉にローランは従い、彼と共に城を歩き回っていた。


 壁にかけられた絵画や、廊下の至るところに散りばめられた金や銀に宝石の数々。

 ここがダンジョンやただの貴族の屋敷であれば間違いなく懐に入れていたであろうそれらからは、この国、ひいてはこの城の主がどれだけの力を持つのかが読み取れる。

 もちろん、こんな所で財宝奪取トレジャーハントのような事をしていれば命が幾つあっても足りないので淡々と歩を進めるに限る。



「あー、そろそろあってもおかしくないんだがな」


 階段を何度か上がり、城の内装が更にグレードアップしてきた頃、シュージが呟いた。

 その背後を追従するローランが何の事かと問いかけると、書庫を探しているとの返答。

 なるほど、とローランが納得しているとふいにシュージに歩みを止められた。

 目の前に広がるのは大きな廊下が交差する、十字路のようになっている場所だ。似たような所はここに来るまでで何度も通っている。

 真っ直ぐに見て右側の壁に背をぴったりとつけ、気配を殺すシュージの姿にならい、ローランも同じく感覚を研ぎ澄ませる。


 背中を向けている側の廊下から楽しそうな女の子の声が聞こえる。足音から読み取るに、人数は三人。

 足音が近付くに連れて、感じる重圧がさらに濃く重くなっていく。

 ローランは、心臓を握られたかのような感覚に息苦しくなり、唾を大きく飲み込んだ。

 だらだらと湧き出てくる汗を拭うこともせず、静かに気配を消してただ通り過ぎるのを待つだけしか出来ない。


 壁の向こうから姿を現したのは奇妙な服を着た紫髪の天使。その脇に侍るように黒髪の少女と白みがかった金髪の少女。三人ともとてつもなく美しく見えるが、しかし並大抵ではない雰囲気を放つ為とても恐ろしくローランの目には映った。

 ゆっくりと、その三人が通り過ぎる瞬間はひどく長い時間に感じられた。ほんの数秒ではあるが、最高潮に達した重圧により瞬きも出来ぬほどに体が固まったローランにとってそれは永遠にも等しいものであった。


 こちらに背を向け去っていく三人の後ろ姿を、警戒しつつ見えなくなるまで身動きひとつせずローランとシュージは見送った。




 廊下を真っ直ぐに行った突き当たり、曲がり角に三人の姿が消えて行くその間際。

 ──黒髪の少女がこちらへ振り返った気がした。


 その瞬間に感じる、まるで世界を置き去りにするような感覚。

 見てみればローランは、シュージの脇に抱えられて音も届かないような速さで後方へと跳んでいた。

 ローランは師の技の精度や技術に改めて感嘆する。

 自身も師より伝授され、使えるようになった歩法スキルの究極形「見えざる一歩(ブラインド・ステップ)」ではあるが、やはり師のものと比べるとまだまだ未熟も良いところだ。


 ──歩法スキルLv10。

 ──見えざる一歩(ブラインド・ステップ)


 その歩みは音を、光を、世界を。全てを置き去りにし。誰にも止めることは──。



 気が付けばローランは、謎の浮遊感と共に先ほどの三人の内、紫髪の天使の前に連れてこられていた。

 目を覆い隠すように装着された黒い布のようなものにより、その目の行く先はわからないものの、確実に見られていることは理解できた。

 隣を見ると師であるシュージと、その首元を背後から掴んで天使へと見せるように差し出している黒髪の少女の姿。

 ゆっくりと振り返ると、ふわりと揺れる白みがかった金髪が見えた。


 ローランは現状を把握すると、顔を真っ直ぐへと向き直した。

 これはつまり、自身らの生殺与奪権を彼女達に握られたのである。まあ、そもそもこの街に足を踏み入れた時点で手のひらで弄ばれていたのと同義なのだろう。


『──────! ────、──! ──!』


 黒髪の少女が紫髪の天使へ向けておそらく、声を放った。

 ローランにとっては、あくまでもおそらくである。口をぱくぱくと動かし、話しているような素振りを見せているからそう判断してものの、ローランの耳は肝心なその声を聞き取る事ができなかったのだ。


「──お、お姉様。その、わたくしも捕まえたので。あの……」


 背後から、耳をくすぐるような少女の声。それと共に身体中を芯の底から凍りつかせてしまいそうな冷気が走り抜けた。

 ローランは身震いをするも、事のなり行きを見届けることしか出来ない。


「……ああ。よくやったお前達。だがまあ、放してやれ」


 紫髪の天使の一声により、ローラン達は解放され地面に崩れ落ちるもその時点では完全に解放されたわけでない事を理解している為、逃げる素振りもなく次を待つ。


「──お姉様。その、よろしいのですか? 必要とあればここで……」


「必要ない。大方、ただの盗賊かどこかの国からの諜報員かそこらだろう。この城から盗まれたところで、私は何も痛手を負わない。まあアイゼンのやつは慌てふためくだろうが、それもまた一興というものだ」


 紫髪の天使は二人の少女を撫でながら、微笑を浮かべながらそう言った。

 そしてそれに合わせるように左右の少女達も微笑み、そして三人はローラン達に背を向けた。


「……ああ、お前達。そのまま城の探索は続けていいぞ。書庫はそこで、宝物庫は地下だ。好きなものを持っていくが良い。私は止めない」


 去り際に紫髪の天使が思い出したかのように振り返り、それだけ言い残すと遂には去っていった。

 危機が過ぎた安心からか、ローランは脱力感と共にふかふかとした赤い絨毯が広がる廊下に身を預けた。


「……ローラン、生きてるか?」


「多分、生きてます……」


 二人は地面に倒れ伏したまま、言葉を交わす。


「……はは。多分、か」


「……へへ。多分、です」


 シュージが笑い始めると、ローランもそれに合わせるように笑う。

 ローランとシュージ以外に誰もいない、静かな廊下に二人の笑い声だけが小さく響いた。






「──すまない、皆。俺、この稼業辞めようと思う」


 帝都へ向かう馬車の中。依頼を達成し、明るい雰囲気で帰路についていた一行であったが、ローランの放った言葉に静まり返る。


「こんな仕事続けてたら、いつ死ぬかわからないしその覚悟はしていたつもりだった。でも、いざとなってそれを目の当たりにすると、わかったんだ。俺は覚悟なんか全然できてなかったんだって」


 ローランはつらつらと己の心中を語っていく。

 レナード、レイラ、リリカ。の三人は目を閉じ、時折頷いてローランの言葉を聞いていた。


「それに今回の依頼で大金も手に入るし、ちょうどキリも良いかなって……。すまない皆。勝手なのはわかっているけど、どうか抜けさせて欲しい」


 ローランは立ち上がり、レナード達三人に向けて頭を下げた。

 師のシュージからは「俺に話したってしょうがねぇだろ。抜ける抜けないはお前達四人の問題だ」との言葉を既にローランはもらっていた。


 頭を下げ続けるローランの姿を見ていたレナードは、レイラ達と目を合わせ頷くと、小さくため息をはいた。


「……ローラン、お前はホント勝手なやつだな」


「……すまない」


 レナードの言葉にもう一度、頭を下げるローラン。

 しかし、レナードは首を左右に振った。


「そうじゃない。……ああ、いや。リリカ、後は頼む」


「ぇ……」


「……はぁ。ローラン、頭を上げて。パーティーリーダーのアンタがそう決めたのならアタシ達はそれに着いて行くわ。他に何かするにしても、一人よりパーティーを組んだ方がいいでしょ?」


 レナードに話をふられたリリカはおろおろとするばかりで、助けを求めるような視線をレイラに送る。

 大方こうなることを見越していたのか、レイラは軽くため息をはいて立ち上がると言葉を並べていった。

 そして、それに同意するようにレナードとリリカはうんうんと頷く。


「ほんっと、アンタ達は口下手なんだから……」


「……俺達は、裏冒険者で一番のパーティーだ。やろうと思えば何だって出来る。そうだろう? ローラン」


「ぁ……。妹達、連れてきても……良い?」


 レイラの言葉を皮切りに、レナードとリリカも口々に話し始め、馬車の中は再びにぎやかな雰囲気になった。


「はぁ……、アンタ達ねぇ……。ほら、ローラン。まずはリリカの妹達救出任務よ。いつも通り作戦を立ててちょうだい」


「……ああ。じゃあ、帝都に着くまでに作戦を決めよう。到着と同時に作戦開始だ」


 そう言ったローランの顔は、どことなく普段よりも笑顔であった。

「リリカとその妹達をこんな酷い目に合わせるなんて……、許せないわね」


「ああ。皆、今回はいつもより派手に行こうか」


「フッ。俺の剣も暴れたいみたいだ」


「え……。ぁの……皆」


「ははは、楽しそうだな。……あー、お前達さえ良ければこれからは俺の家で過ごさないか? その、なんだ。俺にとってお前達は、子供みたいなモンだしな……」

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