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1-03

「ちょっと、何するんだよ!」

「そう怒るなよ。友だちに悪気は無いんだ」


 夜の波止場に響く、女の悲鳴と男の声。

 これだけならば痴話喧嘩とも思われそうだが、実態は違う。


 『やどかりの寝床』の軒先。

 雨濡れが乾き切らない路上に、ベルスは尻もちをついていた。

 その傍らには――蝶番から外れて無残に地面へ落とされた、店の看板。


「第一、客に酒を出さない方がおかしいじゃないか」


 彼女の前に立つのは伊達か酔狂か、斜めに剣を背負った栗毛の冒険者だ。

 爽やかな好青年といった趣きだが、それを見るベルスの目つきは険しい。

 ……いや、彼女の視線は彼よりもさらに上へと伸びていた。

 伸びて、伸びて、伸びた先は二〇フィート(約六メートル)程であろうか。


「おうよ。何もオラだってぇ、別にタダで酒ェ飲もうってェわけじゃねェんだ」


 そこには禿頭の巨人の、にやにやとした愚鈍な笑みがあった。


「ただちィとばかしオラは飲むから、酒ェ全部買わせろってェ、言っただけだァ」


 隆々とした筋肉を誇示するかのように腕を振り、巨人は間延びした声で言う。

 真上から吐きつけられる酒臭い息に、ベルスは閉口して顔をしかめる。

 いちいち大きな彼の動きのせいで、彼女の店の看板は叩き壊されたのだが……。

 悪びれた様子は、まるで無い。


「だから、買い占めなんて困るんだよ。ウチはあんた達の為だけのお店じゃないんだ」

「おい、それは巨人には酒を売らないって事か?」

「そんな事は言ってないじゃないか……!」


 買いたい、売らない。本来はそれだけで終わるはずだった話だ。

 そこに横から栗毛の冒険者がしゃしゃり出てきた。

 『俺の友だちに酒を売らないとはどういう事だ。巨人だからか』と。

 ベルスとしても、そう言われては引くに引けない。

 彼女の店には、ありとあらゆる国から、ありとあらゆる人々が訪れる。

 もし客を選り好みしていると風評が立てば、四方世界の船乗り全てに広まるだろう。

 そうなると、もはや商売が立ち行かない。

 栗毛は、それをわかってて言っているのか、まったくの善意からなのか。


「売らないんじゃなくって、売れないんだよ。

 一杯、二杯、せめて酒樽一つ二つくらいならともかく……」

「オラを馬鹿にすんなァ。酒樽なんざ一口でペロリだァよ!」


 そう言って赤ら顔の巨人が地面を叩き、ベルスは怯えたように身を竦めた。

 大男総身に知恵が回りかね……とは言うものの、これは一種の偏見だ。

 なにも巨人種族だから愚鈍というわけではない。

 北方から旅をしてくる巨人達は、豪快で、気の良い人々なのをベルスは知っている。

 ただただ、この目前の巨人が、酒精のせいか生来か、頭の回転が鈍いのだ。

 何をしでかすかわからない。

 うっかり暴れられては、ベルスや、ベルスの店は一溜まりもない。


 いつしか物見高い野次馬たちが集まり、彼女たちを囲むように人垣ができていた。

 分が悪いのは――やはりベルスだ。

 『売ってやれば良いじゃないか』と、周囲からそう言われてしまえばお終いだ。

 成程、確かにそれでこの場は収まり、金銭が支払われれば問題ないかもしれない。

 だが今夜の客はどうだ。明日の客は、明後日の客は。

 注文して、品を用意してもらって、仕入れて、準備をして。一日二日では無理だ。

 次の酒を調達するまでの間、『やどかりの寝床』は客を持て成す事ができなくなる。


 ベルスは勇敢な圃人ではあったが、圃人は本来、臆病な性質の種族である。

 今にも飛んで逃げたくて震える脚を必死に踏ん張って、彼女は二人を睨みつけた。


「勘弁してよぉ……。無理だって言ってるじゃぁないか」


 しかし、それが精一杯。口にする声は力なく、震えている。


「ごめんなさい……! どいて、すみません……! 通してください……!」


 と、対照的に凛とした声。

 小さい体で懸命に人垣をかき分けて、ジゼーレ=グリジが飛び込んできた。

 鎧下姿に剣だけ帯びて、よほど急いできたのか汗の滲んだ額に髪が張り付いている。


「どうしたの、ベルス、これ――……」

「彼女が、俺の友達に酒を売ってくれないんだよ」


 応じたのは栗毛の冒険者であった。

 小柄な少女を与しやすいと思ったのか、彼は気安い口調だ。やはり、顔は赤い。


「なあ、騎士さん。君からもこの人に言ってあげてくれないかな」


 む、とジゼーレは眉をいからせ、しかつめらしい表情を顔に浮かべる。

 栗毛の男といい、巨人といい、見ない顔だ。流れてきた冒険者であろうか。

 こういった無頼の輩は、騎士を騎士とも思わぬ態度を取るのが常だ。

 法の外側に暮らす者に舐められないよう、ジゼーレは精一杯の威厳を持って言った。


「……騎士の前と分かっていて騒動を起こすのね。地下牢に放り込まれたいの?」

「騒動なんて、とんでもない。ただ俺たちは商談をしていただけだ」

「商談、これが?」


 呆れたように呟いたジゼーレは、二人からベルスを庇うように動き、立つ。

 月を背にした巨人の影がぐっと伸びて、彼女の姿を呑み込んだ。


「おうさァ……オラァ、酒ェ飲みたいだけだァ。この女がァ売れば文句は無ェ」

「まさか騎士ともあろう人が、問答無用で剣を抜くわけじゃあないだろうね」

 訳知り顔で栗毛の冒険者が続ける。

「それは……」


 確かに、そうだ。

 相手はまだ剣を抜いていない。侮辱も、暴力も、まだ何もしていない。

 にも関わらず抜剣して挑むのは、騎士として許されるべき行いではなかった。


 それに、抜けば血を見ることは避けられまい。

 此方が抜けば、相手も抜くのだ。それは自明の理である。

 抜き放ち、飛びかかり、斬り伏せる。

 たとえ巨人相手でも容易い事だ……とジゼーレは思う。

 脚の筋ひとつ断てば、それで終わりだ。


 ――――だが、彼らはそれほどの罪を犯したのか?


「俺は友だちに酒を飲ませてやりたいだけなんだよ。なあ?」

「おゥ。オラァ、こいつと酒を飲みたいってだけだァ」


 巨人が間抜けな仕草で頷き、じろりと小さな女騎士を見下ろす。


「邪魔ァするってこたぁ、ないよなァ?」


 ジゼーレは、震える手で腰の剣を握りしめた。

 震えは恐怖や、保身からではない。彼女はそんな事を考えたりはしない。

 剣ではなく、徒手空拳で挑めば、どうか。

 あの巨人はおろか、栗毛を抑えることすらできないだろう。

 もし自分が拘束をしくじれば、痛い目を見るのは自分ばかりではないのだ。

 ベルスにまで累が及ぶのは、目に見えて明らかだった。


 だが、このまま何もしないで眺めていては、どうだ。どうなる?


「く、ぅ……ッ」


 悔しさからジゼーレは血も滲むほどに唇を噛みしめた。

 衆人環視の中だというのに、昂ぶるのを堪え切れず、視界が涙で滲んで歪む。

 自分が騎士であろうとする限り、大切な友人さえ守る事ができない。

 そして自分が友人を守ろうとすれば、騎士としての名誉は地に落ちる。


 ――――何と情けないのだろう!


 御前試合からの選考漏れという挫折で、砕けた心。

 幼馴染の励ましで微かに元の形に戻らんとしていたそれは、再び千々に乱れた。


 どうすれば良い。父ならどうするだろう。どうしてこうなってしまうのか。

 単純だ。自分が弱いからだ。弱いせいだ。ベルスにまで迷惑をかけている。

 やはり騎士になどなるべきではなかったのか。御前試合に出れないのも当然だ。


 進退窮まったジゼーレは、呆然とその場に立ち尽くし――……


「え――……?」


 その肩に、ぽんと無骨な手が置かれた。

 ジゼーレの傍らへ、ぬっと誰かが歩み出る。


「あなた……」


 月明かりに黒髪を煌めかせた、異国の少年だった。


 呆然と見返すジゼーレに彼はにこりと微笑んで頷き、さらに一歩前へ。

 少年は巨人の体躯に驚いたように目を見張ったものの、ゆっくりと栗毛に向き直る。

 巨人の比ではないが、栗毛の冒険者も、彼より頭ひとつは背が高い。


 予想外の乱入者に、群衆がどよめき、ざわついた。

 あのチビは誰だ。知らぬ。『やどかり』の用心棒か? いや見たことが無い――……。


「なんだい、ちび助くん。俺達に文句があるのか?」


 意味が通じたわけではないだろう。だが、少年は難しい顔で頷いた。

 巨人を見て、ほんの少したじろいだようにもジゼルには見えた。

 無理もない、と思う

 だけれど彼は指先でジゼーレを、ベルスを、地に落ちた看板を示し、最後に親指を自分に向ける。


 相手になる。そう言わんとしている事は、明らかだった。


「面白い……!」


 栗毛がにやりと笑って、袖をまくり上げた。

 露わになるのはしなやかに筋肉の鍛えられた、日に焼けた腕だ。

 それをぐるりと回し、胸の前で渦を巻くようにして拳を構える。

 軽く踊るように足踏みをした栗毛は、次の瞬間目にも留まらぬ早さで拳を振るった。

 ヒュッと風切り音と共に繰り出された一撃は、積まれた樽の一つを容易く打ち抜く。


拳闘(ヴァーパケン)……」


 ジゼーレが呻くように呟く。

 古来より世に知られた、伝統的な格闘技である。

 かつては決闘に用いられ、どちらかが死ぬまで戦い続けるのが作法であったという。

 無論、見せ物としての試合が流行るようになってからは、そういう風潮も廃れた。

 拳闘(ヴァーパケン)が恐るべき、殺人的な武術であることに変わりはない。


「そうさ」


 拳についた酒精の雫を払いながら、栗毛はにこりと笑った。


「こう見えて、辺境の賭け試合じゃあ、少しは鳴らした腕前だ。

 そちらの異人くんが文句があるというのなら、男らしく拳で決めようじゃあないか」

「なァ、オラの問題だァよ。まずはオラから――……」

「いやいや、お前が相手じゃあ可愛そうだ。俺でも、そうかもしれないが」


 意味を介さず呆けた様子で会話を聞く少年を、彼らは嘲るように笑った。

 ジゼーレは慌てて、少年の袖口を掴んで引いた。


「ダメよ、やめなさい……! 病み上がりだし、それに、体格が違いすぎる……!」

「そ、そうだよ、あたしらの事には関係ないんだから――……」


 娘たちが口々に、彼の暴挙を止めようと言葉を紡ぐ。

 すると少年は微かに眉を潜めると、栗毛へと掌を突き出した。

 待て、と言わんばかりだ。


「おっと……拍子抜けだな。降参か?」


 栗毛がそう受け取って、首を傾げたのも無理は無い。

 ジゼーレがほっと安心し、観客達ががっかりと気落ちしたのも当然だろう。

 それだけ、冒険者達を相手取った少年の分は、悪くみえたのだ。


 だが、果たして――そうではなかった。


 彼はしゃがみこむと、慣れた手つきで靴を脱ぎ、靴下を放り捨てた。

 素足である。

 地へ直に足をつけて仁王立った彼は、ゆるく両手を広げ、天地に構える。

 おお、と群衆が声をあげ、どよめいた。

 世界各地を巡った船乗りでさえも、見たことも聞いたこともない構えだった。


「……なるほど」


 ニヤリと栗毛の冒険者は不敵な笑みを浮かべた。


「どうやら何かの心得があるらしい……」


 未知のものを恐れていては冒険者なぞ務まらない。

 彼はぐるぐると拳を回して渦を描きながら、爪先立ちで跳ねるように足を踏み変える。


「手出しは無用だ! こいつは喧嘩で――医者を呼ぶ準備をするんだな!」


 瞬間、栗毛が放たれた矢のように飛び出した。

 その左拳がぐんと鋭く伸びて、少年の顎先を狙う。

 素早く軽い牽制打。だが無論、当たれば脳が震え、立てなくもなろう。

 が、少年はさっと素早く飛び退き、難なくその拳をすり抜ける。


 ならばと栗毛は足を踏み変え、じぐざぐと稲妻めいた動きで距離を詰める。

 左、右、右、左、左、右。

 繰り出される拳撃は連弩の如し。

 栗毛の冒険者は、彼我の体格差を良く理解していた。

 一撃一撃が鋭く伸び、少年の体格では打ち返す事もままならない。

 少年が摺り足で飛び退る度に、栗毛の猛攻がそれを追い立てていく。

 見るからに、一方的だ。あの奇妙な構えも、子供騙しの虚仮威しだったのか。

 やがて少年は波止場の末端、文字通り水際まで追い詰められる。


「そら、どうした! もう後が無いぞ!」


 少年は答えない。ぐっと両足に力を込めながら、天地の構えを崩さない。

 軽く舌打ちをした栗毛の冒険者は、此処でとどめと一気に踏み込んだ。


「ああ……!」


 ジゼーレが悲鳴を漏らす。

 顎を目掛けて繰り出された鉄拳が伸び、少年が大きく仰け反り、後へ倒れる。

 誰もがやられた、と思った。ジゼーレでさえもそう見えた。


 だが、違う。


 少年の両腕がするりと栗毛の腕に絡み、その襟元を掴んでいる。


「ぬ、お……ッ!?」


 恐怖か、驚愕か。

 声をあげた栗毛の冒険者の肉体が、まるで“まじない”のように宙返った。

 蹴り上げられるようにして少年の頭上を超え、背中から海面へと叩き込まれる。


 水しぶきが盛大に上がる。

 観衆が、どよめいた。


 諸共に相手を投げ飛ばす、捨て身の技。

 そう理解できたのは、果たしてジゼーレ以外に何人いたろうか。


「良くも、オラの友だちをやったなァッ!」


 少なくとも、件の巨人にはわからなかったらしい。

 吠えるように叫んだ巨人が、足音を轟かせて少年へ飛びかかる。

 仰向けの少年へ、握りしめた拳を金槌か何かのように振り下ろしたのだ。

 観衆の誰かが危ないっ!と声を上げた。


 だが少年の動きは早い。

 彼は軽く路面を叩くと転げるような身のこなしで、さっと一撃を掻い潜る。


「ヌゥ、まるで蝿みてェな奴だァッ!」


 巨人は風車小屋の如く、腕を振りに振り回す。突風の抜ける音が響く。

 巻き込まれた酒樽が砕け、積まれていた木箱が崩れ、繋がれた船も揺れる。


「止めないと……ッ」


 しかし、ジゼーレにも踏み入る隙間が無い。

 無論彼女一人であれば、この猛攻の合間を縫う事は容易い。

 だが、彼を救うとなると話は別だった。

 下手に飛び込んで一歩間違えば、二人まとめて潰されてしまうだろう。

 それでは意味が無い。

 ではどうするか――――……。


 と、不意に巨人がぴたりと動きを止めた。

 拳を地面へと叩きつけた姿勢のまま、ぴくりともしない。


 その指先に、少年の姿があった。

 彼は巨人の指へと腕を回し、しっかと握りしめている。


 ジゼーレにも、そして巨人にも預かり知らぬ事だが。

 巨人は、その小指の関節を極められていた。

 微かに指を動かす度、関節から電流のような痛みが走る。

 押そうが引こうがびくともせず、こうなるともう、どうしようもない。


「な、こ、このチビめェ! オラに“まじない”なんぞ、かけやがってェッ!」


 振り払おうにも、少年の身体は根が生えたかのように微動だにしない。

 彼は巨人の指を極めたまま、ぐいと身体を捻りこむ。


「お、ォ!?」


 引き寄せられた巨人の身体が、大きくつんのめった。

 ちょうど身を屈めたような塩梅だ。爪先に体重がかかり、前に傾く。

 巨人の指を担ぎ上げるようにしながら、少年はその爪先を勢い良く足で払う。

 全身全霊を込めた呪言の如き、裂帛の気合が少年の口から迸った。


 ふわり、と。


 巨人の身体が宙に跳ね上がり、夜天の星を切り裂いて大きく弧を描く。

 瞬きする間もなく、その巨躯が黒々とした海面へ、吸い込まれるように落ちていく。


 ――――水柱。


 それはまさに、吹き荒ぶ山嵐(シュトゥルム)の如き荒業であった。


 浮かび上がる波紋を前に、少年はふと月を見上げ、立ち尽くしている。

 その超然とした佇まいを、人々は信じられない者を見るように眺めた。

 実際、目にしていたとしても、にわかに信じる事はできまい。

 わずか五フィート(約一五○センチ)ほどの小兵が、四倍はあろうかという――……。


「――……巨人を……投げ、た……?」


 ぽつりと、ジゼーレは呟いた。

 その言葉が呼び水となり、野次馬たちは顔を見合わせてざわざわと囁きだす。


「すごい……! すごいよ、ジゼーレ!」


 真っ先にベルスが、満面の笑みでジゼーレへと飛びついてきた。


「あんた、物凄い男を拾ったね!」


 先刻まで涙目だったのが嘘のよう――いや、ジゼーレも彼女のことは言えないが。


「別に、拾ったっていうわけじゃ……」

「なぁ、あんた! あんたら、あの人の知り合いなんだろ!?」


 と、二人の会話を聞きつけて、船乗りの一人が興味津々といった様子で声を上げた。


「なんてェんだい、あの御仁はよ!」


 ベルスが苦笑しながらひらりと手を振る。


「それが、わからないんだよ。異国の人だから」

「よせよせ、名無しの権兵衛(ヨハン=シュミット)じゃ格好がつかねぇよ」


 ――――名前。


 その時、ジゼーレの脳裏に閃くものがあった。

 目覚めたばかりの彼が口走った、聞きなれぬ言葉。


「……ジュドウ」


 舌の上に転がる異国の響きは、不思議と、彼の佇まいを想わせる。

 ぴたりと錠前に収まった鍵のように、その名がしっくり来るような気がした。


「彼は、ジュドウよ」


 ジゼーレは、自分の心臓が微かに跳ねるのを感じる。

 不思議な少年だと思った。

 剣も抜かず、巨大な相手を、殺さずに、場を収める。

 体格の差も、何もかもを、あっさりと覆して、見事な技で。

 彼女が悶々と悩んでいた全てを、彼は軽々と飛び越えていってしまった。

 ジゼーレは夜風になびく髪を押さえながら彼――ジュドウを見やる。


 ジュドウは空に浮かぶ赤と緑、双子の月を、呆然と見上げていた――……。



          第一幕『巨人投げジャイアント・スイング』――了





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