159.0センチ
あかん…短い
彼らが在籍する国立第三高校では、スーパーバイブレーティングに重きを置いた学習をしている。他の国立高校は2年の始めないし1年の3学期から対人戦闘が始まるのに対し、第三高校は夏休み前から実戦練習が行われる。その理由は、ひとえに前校長のオリバー・フィンダイゼンの存在だろう。彼は6年前からこの学校の校長に就任し、様々な改革をした。国立学校とは言え、比較的自由な自治が認められていることも幸いしたのだろう。同時にスーパーバイブレーティングのトップランカーでもあった彼はスーパーバイブレーティングに重点を置いた学習要領を組み上げた。それがそのまま受け継がれているのである。しかし4年前、彼は突如失踪し表舞台から姿を消した。
話を戻そう。ここは第三高校の第一運動場、7月の厳しい日差しが降り注ぐ中、9人の生徒が二つのチームに分かれて睨み合っていた。と言っても片方はリラックスしている様子、というよりやる気のなさがにじみ出ていた。対してもう片方のチームは緊張した面持ちで試合開始の合図を待っている。
「えーでは第3試合を始める。よーいはじめー」
「やっ」
心底だるそうな小日向の開始の合図の直後、どーんという音がして旗は砕け散っていた。見るまでもないが旗を砕いたのはエマの振弾で、旗もろとも吹き飛ばされたのはその相手チームだ。高広達のチームはエマの活躍…というよりエマだけでこの授業三連勝をあげていた。高広以外にエマの振弾をろくに止められる者がいないので、必然的に高広達はエマに任せるだけになるのである。
「なぁ俺たち全くもっていらなくね?俺が指示出すまでもないし。」
「うーんまぁね、でも僕たちがなんかしてもむしろ足手まといだと思うし…」
「…」
小声で話す二人とぼーっとしている小春。三人は完全に暇人と化していた。
「はぁ…やっぱりお前らの相手は一年じゃ荷が重いか…。
いや、そう言えば1組にも飛び抜けたのがいたな。今からちょっと連れてくるからそっちとやってみろ。その他は適当にやっとけー。怪我だけはすんなよ!」
ちなみに高広達は3組だ。授業中に連れてくるなんてできるのかはわからないがスーパーバイブレーティングが優先されるこの学校では大丈夫なんだろう。校舎に走っていく小日向の背中を眺めながら高広は例の1組のチームの噂を思い出していた。
(姿が見えない奴がいる、だったか?あとスイーパーのお手本みたいな奴がいるとかなんとか)
少し早く実戦の授業が始まった1組の情報が、ごく狭い高広の情報網に引っかかったのは単なる偶然か、それとも軍師としての意識が多少なりともあったのか、それは定かではないが、相手はどう考えても今までのクラスメイト達とは一味違いそうではある。
小春、俊の使い方も少しずつ頭で組み立てながら高広は小日向が帰ってくるのを待った。
平日は頑張ります