表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちょうしん!!  作者: 08
14/14

159.0センチⅣ

いやぁ、やっと暇が

159.0センチⅣ


「俊はもうダメだ!小春!一旦戻ってこい!」


本当は俊も全然ダメージを受けてないし小春は一旦戻ってきて、すぐに敵陣地に歩き出す。俊はすぐに起き上がって次の仕掛けの準備を始めた。


ただ敵陣営(・・・)からは俊はぐったりして起き上がらず小春は自分の陣地の奥まで後退してじっとしているように見えているはずだ。


(方向指定がなければ無敵なんだろうけどなぁ、如何せん使いにくいというか…)

自分ができるわけでもないのにケチをつける高広。一方、術者である俊は小春に小声で指示を送っていた。

「もうちょい右、もうちょいもうちょいはい、そこ。背中向けてすぐ前にいるから気をつけてね。」

すぐに気をつけて聞いていないとわからないくらいの物音がして、そしてまた俊が喋り出す。

「今度は左、すぐそこ、もうちょいもうちょいもうちょいもうちょいあ、行き過ぎた。おっけ、そこそこ」

また物音。これで相手のメンバーはスイーパーの巌重とリーダーの明石だけである。


俊の能力はミラージュ。空間に超振動の『壁』を作ることで光の屈折率、色、はたまた速度までも変えるというもので敵に一種の幻覚を見せることができる。ある一瞬の光を引き延ばすことで同じ光景を見続けさせたり屈折率を変え本当にいる場所とは違う場所にいるように見せることもできる。何もないところにスクリーンを作るようなものだ。めちゃくちゃな性能ではあるが、壁のように展開するので一定の角度にしか効果を及ぼさないことと、一度に四枚までしか張ることができないことが欠点。また壁同士は干渉し合うのであまり近づけると瓦解する。


今回、高広は相手の能力『ディセピレンス』が認識阻害系で、俊のミラージュとは違い完全にどこからでも姿を見せなくし、なおかつ多数同時展開できること。また、それにともない仲間同士の連絡手段が限られること(余計な音、動きをすると一瞬で場所がバレるため)を見越した作戦を立てた。


まず俊は『壁』を使ってフィールドにスキャンをかけることで見えない敵の位置を探る。そして見つけた敵を『壁』を張った小春に音を立てず無力化してもらう。認識阻害系の能力の鉄則として、なるべく余計な動きをしないようにしている彼らを捉えるなんてちょちょいのちょいだ。


「高広、2人は気絶させたって。あとはリーダーとスイーパーだけだよ。」


「りょーかい、ご苦労であった。さあエマ、出番だぞ」

「なんであんたそんな偉そうなのよ。」


スイーパーは別として、明石は他2人と同じ方法では倒せないと高広は考えていた。これほどの能力を持つ彼なら、おそらくこの次元で自分から発せられる超振動がミラージュによって揺らぐことから小春の接近に気づくだろう。彼の『ディセピレンス』は対象から発する振動全てを婉曲し発散させることで不可視無音(ただし音に関しては空気の振動という大きなものなので、小さな音しか打ち消せない)を実現しているため、それすらさせないことが強力だ。が、あいにく俊には見つかってしまう。『ディセピレンス』が効果を及ぼせるのは3次元だけであり、別次元からアプローチができる俊はその影響を受けないから、と俊は分析している。ちなみに俊の能力では超振動のゆらぎはごまかせない。


「じゃあ合図したら『ミラージュ』を切ってくれ。エマ、準備…

をお願いしますお嬢様」

「...」

エマの無言の圧力に軽々屈する高広と呆れる俊。エマは満足そうな顔で手を前に出した。

「私はいつでもいいわよ」

「よーし行くぞ俊。3、2、1GO!」


音もなく壁が消え(たかどうかは高広にはわからなかったが)エマから振弾が打ち出される。と、その一瞬前に高広は


「まだ見えてないと思ったか?」


と自分は全く見えていない、しかし明石がいる方向に向かって声をかけた。そこでなにかが動く気配がしてその直後エマの振弾が爆発音とともに地面をえぐる。


不思議に思うかもしれないが声を掛けたのにはれっきとした理由がある。まず一つは、わざとエマの振弾を大きく避けさせることで砂煙に乗じてもう一度隠れられることがないため。エマも敵の場所を正確に把握していない以上、ギリギリで外す可能性もある。そしてもう一つはこちらには小春がいるからだ。幼い頃からの修行で彼女は一度敵を捕捉すれば、目をつぶっていても相手の行動を把握できる能力がある。空気の流れやら気の流れやらを読むらしいが高広達は何を言ってるか正直良くわかっていない。なんにしろ、敵が動いたことで小春は自力で明石の位置を知ることができるのだ。そして接近戦で小春に勝てる者などそうそういない。案の定、小春はすぐに距離を詰め、なにかを地面に叩きつける動作をした。

するとそこから、一発の振弾が飛来する。だが何をするでもなく、その振弾は高広の左の方に着弾した。

(旗の見える位置も一緒にずらさせといたのは正解だったな…今の止めれた自信がねぇ…)

情けないことを考えながら、高広はエマに合図を送る。

パチンッ


「オェ…きも」


高広のウインクに予想以上の反応を示したエマは青ざめた顔をしつつも特大の振弾を敵スイーパーに向かって放つ。それはこの試合での、いや、この学校に来てからの最大のもの。高広以外は見たことがない規模のものだった。


(それでも全力じゃないんだよなぁ、、)

高広がひとりごちている間に試合終了の合図のブザーが鳴った。どうやら敵のスイーパーはエマの振弾に耐えられなかったらしい。まぁあれを真っ正面から受け止められるやつなんてそうそういないだろう。ふぅと息を吐いた高広はみんなの方に歩き出す。


(またあんた全然働いてないじゃない!って怒られるんだろうなぁ…)


つくづく損な役回りである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ