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シャロン

【シャロン-3】テイル侯爵の戸惑い

作者:
掲載日:2026/02/22


「ミシェル様。さあ、お好きな子を選んでください」


 乳母のレーヌが、小鳥が数羽入った鳥かごを、ミシェルの前に置き、にこやかに言う。

 ミシェルはオレンジ色の小鳥を手の平に乗せて、そっと鳥かごから出した。


 小鳥は良く慣れていて、鳥かごから出ても逃げようとはしない。


 テイル侯爵は、その光景を見て微笑み、それから気持ちが沈むのを感じた。


 ほんの五日前に、我が家の天使、シャロンがテイル侯爵家の名を捨て、隣国に旅立って行ったばかりだ。どうしてこんなことになったのだろう。


 侯爵家の長女。

 美しくて優しい、天使のような娘。

 しかも皇太子殿下の婚約者となり、将来は王妃になると思われていた娘がだ。


 事の始まりは、何だったのか。

 私にはわからない。


 サムエル殿下の婚約者決めの園遊会で、シャロンにサムエル殿下が好意を示してくださった。はっきりと婚約が決まったわけではない。

 だけど、娘に王家の紋章を織り込んだリボンとウサギを手渡した。

 シャロンが私にそれらを見せた時の、あの笑顔。

 

 それに、殿下の態度だって、どう見てもシャロンに惹かれていた。シャロンを見るほとんどの人間が浮かべる、上ずったような表情を浮かべて娘を見ていたじゃないか。


 それなのに、留学から四年ぶりに帰国した殿下はシャロンに見向きもせず、王もシャロンを拒絶した。

 どう考えたらいいのだろう。


 その混乱した状態のまま、シャロンの、『ミシェルの為にも私はこの家と縁を切る』という言葉に、私は頷いてしまった。

 六歳の幼いミシェル。我が侯爵家を継ぐこの子を守るのが、現当主の私の第一責務だ。

 

 息子のミシェルがレーヌに向かって聞いた。


「お姉さまは、どこに行ったの?」


「隣国の叔母様の家に養女として入ったのです。馬車で六日くらい掛かる場所ですよ」


「そう、じゃあ、なかなか会えないね」


「そうですね」


 ミシェルは嬉しそうに笑った。

 私が二人に近寄って行くと、ピタッと笑いが消えた。


「小鳥と遊んでいるのかい? ミシェル」


「はい。お父様」


「私は今から王宮に行ってくるよ。王にシャロンの処遇について、報告しなければいけないんだ」


「はい」


「寂しくないか?」


「大丈夫です。僕はこの家を継ぐ者です。お姉さまから、そう言われました。泣いては駄目よって」

 

 うっと胸を突かれ、私は咳でそれをごまかした。

 レーヌにミシェルを任せ、私はその場を後にした。


 レーヌは冷静で、とても賢い。ミシェルの乳母として、私も屋敷の者たちも、全幅の信頼を寄せている。そして彼女はそれに、完璧に答えてくれている。


 

 王宮に向かう馬車の中で、私は自分の心をもてあましていた。


 シャロンを排斥した王家に対し、不信感と反発、そして敵意を抱いている。それは父親として当たり前の感情だろう。


 自慢の娘に、ひどい扱いを……扱い?

 

 悔しい事に、ここで怒りがしぼんでしまう。

 問題は、特に何かをされたわけではないってことだ。

 そうなんだ。


 王太子妃候補だと思い込んでいたら、違った。

 それに関しては、王家から何の打診も、通告もなかったので、こちらが文句を言える筋ではない。


 そして王に、社交デビューを拒否するような言葉を掛けられた。だが、私に耳打ちしただけで、他者の耳には入っていない。

 だから公式に発表するつもりだったかすらわからない。その前に、シャロンが離籍すると決めた。


 結局、表だっては何事も起こっていないわけだ。

 そして私は、どこに持って行きようもない、このいらだちを抱え込んだまま、こうして王宮に向かっている。


 王に対面して、顔をしかめてしまいかねないな、と自嘲気味に思う。

 だが、先ほどのミシェルの笑顔が私のお守りだ。

 あの笑顔を守る。シャロンとの約束でもあるからな。


 

 王宮に着くと、王の侍従に案内され、王の執務室に通された。


「やあ、テイル侯爵。そちらに座ってくれ」


 王はフランクな様子で、私に椅子を勧めた。

 娘の移籍先の報告だけなのだ。立ったまま、一言で終わると思っていたので意外だった。


「まずは、侯爵家の報告を聞こう」


 私は表情を変えないように力を込め、一気に報告した。


「事前に書面でお伝えしましたように、長女のシャロンは、隣国に嫁いだ妹の家に、旅立ちました。五日前に出ましたので、明日には到着するでしょう」


「そうか、ずいぶんと早かったな」


「認可が下りるのもずいぶんと早かったので、なるべく早く送り出しました」


 しまった!

 つい、嫌味を口にしてしまった。


 青くなって下を向いた私に、王は柔らかい声を掛けた。


「養女として入った先は、スール国のバイセン伯爵家だったな。裕福で財力もあるが、政治には距離を置いている家門だ。堅実な家風で、忠実な家臣団が付いている」


 満足気な声音が意外で、そろっと顔を上げた。

 

「はい。妹が嫁ぎましたが、子供に恵まれず、以前からシャロンを欲しがっておりました。シャロンに婿をとり、伯爵家を継がせたいと申しております」


「スール国は行き先としては良い選択だと思う。伯爵家の立ち位置も理想的だし、あの国の王太子には既に婚約者が決まっている。問題がなさそうだな」


「はっ?」と声に出してしまったた。王は一体何を言っているのだろう。


 王は私の顔をじいっと見つめ、「やはり、何も気付いていなかったのだな」と言った。

 苦笑いの表情だ。


 思いがけない対応に、私はパニックに陥りそうだった。

 

「君は、昔から単純で真っ正直でいい奴だったな。変わっていないようで、何よりだ。悪いが、シャロンがどんな娘なのか、私に教えて欲しい」


 いったい何を言いだすのだろう、この王は。

 これは公式の訪問で、公式の報告の場のはずなのに、王の態度は、若かった頃のジョフレ王子時代を思い出させるものだ。


「シャロンは、弟のミシェルが産まれた時に母を亡くした、不憫な娘です。それでも健気に弟をかわいがり、私を支え、家の者たち皆の心の拠り所でした。私たちにとっては、太陽のような存在です」


「そうか。それで、どんな性格の娘なんだ?」


「優しくて愛らしい性格で、とても朗らかです。彼女がいると、周囲が明るくなるような華やかさがあります。人には親切で、誰とでも仲良くなれる天使のような娘です」


 シャロンの事を詳細に話すにつれて、彼女がそこに姿を現しそうな気がする。

 そして、「お父様」と私に抱き付いてくるのだ。いつものように。

 情けない事に、私は少し涙ぐんでしまった。


「一年前に、彼女をめぐって諍いが起こり、バーチ伯爵家の子息ハリスが死亡。姉娘は修道院に入ってしまった。決闘相手のレイド伯爵家マ―カスは放逐された。そう報告を受けている。それに関してはどう考える?」


 そういう風にかいつまんで言われると、ぐっと言葉に詰まった。

 娘には関係ない、と言いたいが、そう言ったらあまりに無責任な気がする。

 

「娘の周囲には、娘を慕う子息方が、常時群れておりました。そういう軋轢が、年齢が上がるにつれ、本格化してしまったのは残念なことです」


「仲裁に入ったシャロン嬢が言った一言が、決闘の引き金になったことに関して、彼女を諫めたか?」


 そんなことは聞いていない。私には初耳だった。

 私が驚いて王を見つめると、王は傍らに積んである書類の中から、一枚を抜き出した。


「ええと、『二人共、争うのは止めて。エスコートはハリス様にお願いするわ。マーガレット嬢から頼まれたの』と言ったそうだな。仲裁を頼んだ姉のマーガレット嬢が不憫だな。シャロン嬢本人からは聞いていないのだな?」


 私は焦った。そんなことをシャロンが言うはずがない。そんな火に油を注ぐような事を? まさか!

 

「私はそんな話を、誰からも全く聞いておりません。何かの間違いか、悪意のある中傷だと思います」


 王は深いまなざしで私の目を見据えている。


「この資料は、王家の影の報告書だ。誇張も嘘も含まれない、客観的な報告書だ。読んでみたまえ」


 そう言って、王は私にその二枚の書類を手渡した。

 私は震える手で、それを受け取り、読み始めた。もめ事の最初からの様子が書き記されている。


 子息二人の、ごくたわいもない理由からの諍い。それが熱くなっていく様子。シャロンを呼びに行く女性たち。そこでの会話。


 シャロンが女性たちと一緒にやって来るのを見て、二人の子息は頭を冷やしたのか、諍いが止んでいた。

 そして問題のひと言で、全てが破滅に向かった。一瞬だった。

 その場の様子が克明に記されている。口を覆って、声にならない声を上げるマーガレット嬢。倒れたハリスに駆け寄る子息たち。呆然と立ち尽くすマーカスの様子。


 その時のシャロンの様子も書かれてた。

 読んでいて背筋が震える。

 シャロン嬢は、口元を扇子で隠して、じっとハリスとマーカスを見ていた。そして、少し下がって、全体の様子を眺めた。それから興味を失ったように、スッと立ち去った、と書かれている。


 あの日、帰宅したシャロンは泣いていた。目の前で急に二人が争い始めて、ハリスが刺されて倒れたと言っていた。目の前で知人が死ぬところを見るなんて、と娘の気持ちを私は心配していた。


 報告書は、その後の周辺の噂を拾っている。

 シャロンの言葉に対する批判はあるが、表立って吹聴されてはいない。口外禁止になっているようだと書かれている。

 バーチ伯爵家は、恨みを飲むしかなく、沈黙している様子。

 テイル侯爵家との交流は一切拒否。

 同系列の家門も、それに同調している、と締めくくられていた。


 今まで気にしていなかったが、いくつかの家門との交流が途絶えているという事か。帰宅したらすぐに、書記官や領地の家令に確認させなくては。


 書類を王にお返しし、呆然としてしまった。

 こんな状況になってるとは、考えてもいなかったのだ。



「侯爵。この書類の山は、全てシャロン嬢の動向についてのものだよ。婚約者決めの2回目の園遊会からだ」


「なぜ、そんなものが?」


「シャロン嬢は王太子妃候補に挙がっていたのだよ。だから影を付けて、様子を見た。他の候補者も同様にだ」


 私はぼんやりと王を見上げた。やはりシャロンは候補に上がっていたのだ。

 もっとも今は、衝撃を受け留めきれず、喜んでいいのかもわからない。


「始めの報告書を読んでみてくれ。二回目の園遊会での様子だ。その方がいいだろう」


 そう言って王が私に四枚の書類を差し出した。

 私はぼんやりとそれを受け取った。ここにはあの日のシャロンの様子が書かれている。ウサギとリボンを貰って、喜んでいたシャロンが。


 私は救われたような気になり、急いで、その書類を読み始めた。

 そこには私が良く知っているシャロンの姿が書かれていた。


 人々の輪の中心で、明るく輝くシャロン。サムエル殿下と一緒に遊ぶ無邪気な姿。

 これぞ、シャロンだ。


 ウサギを交換しようとシャロンが持ち掛けた?

 殿下から貰ったのではなかったのか。だが、そんな小さな勘違いは誰にだってあるさ。

 ところが、報告の内容が次第におかしくなっていく。

 ウサギを殿下たちの方へ追いやって、サムエル殿下とリネット嬢が話している所に割り込む?

 リネット嬢が貰ったリボンを自分も欲しいとねだる?


 その後の、リネット嬢と二人での会話には目を疑った。

 シャロンが勝手にリボンを奪い取っていった、だって!


「陛下、申し訳ございませんが、この報告は信用できるのでしょうか」


「出来るよ」


 簡潔に返され、続きを言うことが出来なくなった。私は真っ先にベルディ侯爵家を疑ったのだ。その息がかかった者が書いたと。

 だが、王の言い方だと、それはなさそうだ。


「ところで、サムエルがあげたと言うウサギを、どうしてつぶしたんだ。そこがずっと疑問だったのだよ」


 えっと目を瞠った。


「それは……サムエル殿下がウサギとリボンで何か作ってと仰ったから」


「この報告書には、そんな言葉は出てこないよ」


「はい……ありませんでした」


 それなら、シャロンがそう判断したと言うのか? 


「リスの首に巻いたリボンを、無理やりウサギの首に結んだというのには驚いた。リネット嬢が助け舟を出したようだが、シャロン嬢は小動物が嫌いなんだね」


「まさか、そんな事はありません。家でも小鳥や猫を飼っています。かわいがっています」


 私は必死で言った。

 シャロンは、シャロンは天使なんだ。そんなはずは無い。


 王は私から書類を取り上げ、その文面に目をやってから、ふっと息を吐いた。


「陛下、お伺いしてもよろしいですか」


「何だろう」


「ここまで分かっていて、なぜ何もおっしゃらなかったのですか。子供のした事とはいえ、王家の紋章のリボンです。何らかのお咎めがあってもおかしくない事です。それに我が家は、それをサムエル様からの贈り物だと思い込んでおりました。周囲もシャロンを王太子妃候補とみなしていたと思います。なぜ一言も何もおっしゃらなかったのですか?」


「我々も今の君と同じように驚いたんだ。だが、まだ十一歳の子供のことだし、この先の様子を見ようと思った。そのため、何もしないで、ただ見守ったんだ」


 ああ、そういう事だったのか。その間、私は全く何にも気付かず過ごし、シャロンは問題を起こしてしまった。


「今日、君に話をしているのは、彼女の様子を注視して欲しいからなんだ。この四年間、様子を見て来て、少し心配になってね。この先、スール国のバイセン伯爵家で大人しく過ごしてくれれば、それが一番だと思う。何事も起こらないことを願っている」


「それは、どういう……」


「何もなく、幸せに過ごしてくれれば、私も嬉しいということだよ。それ以上でも以下でもない。ただ何か我が国に影響の出るような事を彼女が起こそうとしたら、それは阻止したい。だから君がバイセン伯爵家の様子とシャロン嬢の様子をしっかり監視していて欲しい」


「まさか、そんなことは、有り得ません」


「この報告書を全部読むか?」


 王はしかめ面をして、こんもりした書類の山を私の方に押し出した。

 私はおずおずと、その山の中の一枚を抜いた。


 それは十四歳の時の報告書の一枚だった。


『取り巻き子息の一人が、レンブラン家の令嬢に気持ちを移したらしく、それを知ったシャロン嬢が、レンブラン家のコリアンヌ嬢に猟犬をけし掛けました。コリアンヌ嬢の足に何かを塗り付けたようです。令嬢は足首を噛まれました。放置することは出来なかったので、私が犬を引き離して、御付きの侍女に、令嬢を家に送り届けるよう言いました。今後は怪我をする前に阻止してもいいでしょうか。年齢が上がるにしたがい、行動が過激になってきたので、見かねております』


 その恐るべき報告に留められた紙は、後日の報告だった。


『コリアンヌ嬢の足首には、噛み跡が残った模様です。舟遊びの時に、令嬢の足が見えるよう細工をして、大げさに顔をしかめておりました。取り巻き子息は、シャロン嬢の方に戻った様子』


 私は泣きたくなった。

 これは一体誰のことだ?


 とても、私のシャロンの事とは思えない。

 だが、コリアンヌ令嬢の怪我については、実際にレンブラン伯爵から聞いていた。


 狩猟の催しの時に、頭のおかしくなった猟犬に、娘が襲われたと言っていた。

 たまたま近くにいた従者らしき人間が、犬を引き離してくれたからよかったが、そうでなければ、どうなっていたかと青ざめていた。


 その日、私もシャロンを伴って狩猟祭に行っていた。

 他人事とは思えず、それで済んだのが不幸中の幸いだった、と言う彼の言葉に大きく頷き、彼を慰めたのだった。



 王は優しい声で言う。


「君の気持は分かるよ。だが危険なのだよ、君の天使は。私が彼女を排斥しようとしたのは、リネット嬢が狙われるのを防ぐためだ」


 私はビクッとした。まさか、そこまで……と言いかけて、手にした報告書に目を落とした。

 もう、何も言えない。

 そして残りの報告書の山を見た。とんでもない量だ。


「これは、何らかの事件があった場合の報告書ですか?」


「ああ、毎日報告が入るが、問題のありそうな分のみ、残している」


 私は項垂れたまま、王に答えた。


「バイセン伯爵家とまめに連絡を取り合い、シャロンの動向を確認いたします」


「よろしく頼む。もし王太子の婚約者であるリネット嬢に手を出したりしたら、今度は見て見ぬふりは出来ない。これは、シャロン嬢の為でもあるんだよ」


「はい」



 帰りの馬車の中で私は放心していた。

 今のは全てうそだと、心の中で私が私に訴えかけてくる。だが、もう一人の私が、あれは嘘偽りではないと冷たく告げる。


 早く家に帰りたかった。


 屋敷に戻り、すぐに家令を呼び、バーチ伯爵家と、その係累の家門との交際状況について確認を命じた。


 家令はすぐに答えてくれた。


「バーチ伯爵家は領地に引き込みましたので、一年前から交流は途絶えています。その分家筋、婚姻関係のある家門とも、そういえば一年ほど前からやり取りがなくなっております。数家が、ぱったりとパーティーの誘いを断るようになり、少し気に掛かっておりました」


 なんてことだ。妻がいないため、社交界の情報に疎い事は分かっていた。それを補ってくれていたのがシャロンのはずだった。

 都合の悪い情報は、一切入って来ていないということか?


 家令に、領地の家令宛てに、同じことを尋ねるよう言い置いて、私はミシェルの部屋に向かった。


 あの可愛らしい微笑みが見たかった。

 部屋に入り、声のする方に向かった。

 

 ミシェルは窓辺の明るい部屋で、積み木をして遊んでいる。

 出掛ける前に来た時、自分の姿を見た途端に、二人の笑い声が止まったのをふと思い出し、姿を隠して近寄った。


 周囲に小鳥が放されていて、時々ミシェルの肩や頭に止まって、髪の毛を引っ張っている。


「いたた。痛いよお。やめて」


 そう言いながら、小鳥を軽く追い払って、髪の毛を振った。


「あらあら、困った小鳥さんたちですね。もうケージに仕舞いましょうか」


「ううん、いいよ。だって、もうお姉さまがいないから、食べられちゃうこともないでしょ。お姉さまがいなくなってよかったね」


 そう言いながら、指に止まった小鳥の羽を撫でる。


「本当に、ほっといたしました。もう、ミシェル様も安心です。良かったですね」


「うん。僕も食べられちゃうのかなって思ってた。ライオンに食べさせるって言ってたよね」


「ライオンはそこらにはいませんよ。それはシャロン様の冗談ですからね」


 そう言いながら、レーヌは小鳥を捕まえにこっちにやって来た。


 咄嗟に私は息を殺し、少し後ずさった。

 

 レーヌは一羽を捕まえて掌に乗せ、話し掛けた。


「よかったわね、お前も命拾いしたのよ。もう猫に食われる心配はないわ。シャロン様が王妃になったら、本当にミシェル様をライオンの前に放りだしたかもしれない。心の底からほっとした」


 レーヌはそう言って、小鳥を掌で包み込み、祈った。


「どうか神様お願いします。二度とこの国に、あの悪魔が帰ってきませんように」




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― 新着の感想 ―
は〜〜久々に読むと改めて、本当に、ほんっっとうに怖いですね、シャロン!! 父親が完全頭お花畑でむしろ哀れ…王様も最後の情けで教えてあげたのだろうなぁ…。これを何も知らないことの方が哀れだと思ったのだろ…
父親の目が節穴って、それ一番周りに被害が出るやつやん……
シャロンシリーズ三弾目、ありがとうございます! パパ視点を読むと、力がある(自分を排斥出来る)人間には本当に上手く取り繕ってたんだなとよくわかる。 シャロンは直接出てきてないのに、怖い。 乳母はミシェ…
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