ハント
俺はその時をじっと待った。
体に襲いかかるであろう衝撃の心構えをし、雀の涙ばかりの抵抗として右腕を胸の前にクロスした。
バランスを崩して倒れゆく体はまるで三人称に感じられる。
時間がゆっくり速度を落とす中、俺は運命を受け入れた。
いや、諦めたんだ。
見たこともない生物が見たこともないスピードで自分目掛けて突進してくる。
こんなのまるでゲームの初見殺しじゃないか。
たった一発、光線を外しただけなのに。みんなが俺より少しだけ早く放光しただけなのに。
いや、そうだよな。
その一瞬こそが戦場では命取りになるのだ。
畢竟、俺はその一瞬の取り合いに敗れたのだ。
尻餅をつくが先か体が吹っ飛ばされるが先か。
接近する脅威の形相に耐えきれず、俺はそっとそれから目を背けた。
グラァァァ!!
ギュウワアアァァ!!!!
その時、激しい咆哮が耳を劈いた。
風が俺の鼻先を掠める。
それは貫くように真っ直ぐ吹き掛かるのではなく、俺の鼻を左から右へと撫でるように靡いた。
グルルルゥゥ…
そう呻き声が聞こえたかと思ったら、俺の腰がドスンと音を立てて地面についた。良かった、尻餅の方が先だったのか…。
目を薄く開けると、そこにいたはずのギョロ目はもういない。
風の通った先に目を向けると、そこには見たことのない巨大な猛獣の後ろ姿がそこにあり、その下には先のギョロ目が下敷きになって呻いていた。
「シャンティ!!」
気がつくと俺のすぐ隣にはサハが駆け寄ってきていた。
いつの間にここまで来ていたんだ。
「大丈夫か、怪我ないか!?」
幸い、怪我は何処にもない…はずだ。
目まぐるしく変動する状況をなんとか理解することに精一杯で、脳内のリソースを身体に注ぐ余裕がない。
もはや痛みどころかどうやって体を動かすのかも忘れ、その場から立ち上がることさえ困難だった。
足が震えて力が入らない。腰が抜けて体幹が保てない。
背の低い草本生い茂る中、俺はただ呆然と座っていることしかできなかった。
「おい無事か!?無事なら早く立て直せ!!!まだ終わってねぇぞ!!」
ちょうど大型の獣の反対側にいるアシュが呑気にほうけているシャンティに向かって叫んだ。
とはいえアシュもシャンティの状況を理解している。
シャンティはほんの数秒前、命を落としかけたんだ。
直面した今際から現実に戻るというのはそう簡単ではない。アシュはそれを重々承知していた。
故に彼は思考を巡らせる。
今目の前にどしんと鎮座するその獣を。
彼らの間に大胆に居座る巨獣。
それは先程までの脅威であった生命体を見るも無惨に捕食していた。
それはシャンティ達の方からでは後ろ姿しか見えていない。
アシュのみがその捕食現場を正面から観察できる位置にいた。
故に、彼はその危険性を誰よりも早く目の当たりにした。
「(こいつ…何処から来やがった…?シャンティがあのキモ鹿に襲われた時、済んでのところで突然現れた…。そしてあのクソ敏捷な鹿を、偏差でしっかり捕らえやがった…)」
アシュは、目の前の猛獣が例のクマであろうと察した。
明らかにデカいその図体は人間の体格を雄に超越し、その巨体にはぎっしりと筋肉が詰まっている様子だ。
その生物を見てまず目が行くのがその手足だろう。その生き物は計六本の肢を備えていた。
六本のうち四本は足であり、クマやカバのそれに近い。体躯の下面に等間隔に生えたそれは現在、捕食対象を下敷きにし踏み倒している。そして残り二本、頭部と言うべきか胸部と言うべきか、首の付け根あたりから生えるそれはまさに両腕であり、足元に横たう屍を掴み上げては地に振り下ろし、それをガンガンと叩き潰しているようだった。
「(なんだありゃ…骨を砕いてるのか…?デカい図体に腕まである。さっきシャンティから鹿を横取りした時も、その両腕で鹿の体をガッシリ掴んでるように見えたが…。
いや、深く考えるのは後だ。なんにせよ、こいつはやばい。こいつに獲物認定されれば、今度こそ生きて帰れはしないだろう。シャンティ…しっかりしてくれよ…!)」
その獣を挟んだ反対側、サハの手伝いもありようやっと地面から立ち上がったシャンティは次第に現状を冷静視できていた。
この刹那の間に一体何が起きたのか、今が一体どんな状況なのか、少しずつ理解が現実に追いついてきたのだ。
「(なんだこの巨獣…あのギョロ目を食ってるのか…?俺は助けられたのか、こいつに…?いや、違うな。こいつはこいつの獲物を捉えただけだ。あのギョロ目が、俺たちに気を取られすぎて野生の捕食者への警戒を怠ったんだ。)」
その場で鳴り響くはゴリゴリと骨が砕ける音とビシャビシャと乱雑に血肉を貪る咀嚼音。
今やその怪物は四足のうち二足を巧みに使い、体重を乗せて足踏みすることで獲物の粉骨機として機能していた。空いた両手はミンチになった鹿肉を乱雑に胴から千切り取り、採れたて新鮮な血肉を口に運んでいる。解体と食事を同時並行で行う素晴らしい効率的作業だ。
「(この状況を見るにこいつが肉食であることは明白…、ならばあれの処理が終わったらきっと次は俺らだ。どうする?逃げる?それとも狩る?…いや、あの小柄な動物にすら俺はトドメを刺しきれなかったんだ。ここは逃げの一択しかない…。でも何処に、どうやって…?こいつは何処まで早く、強く、凶暴なんだ…?)」
すると隣でシャンティに手を貸していたサハはシャンティの耳に口を近づけ、静かに耳打ちした。
「俺が行く。瞬時に懐に潜り込んで光銃を使う。首筋、あるいは急所になりうる場所を狙うが、できればお前らの援護も欲しい。」
「は…?おい、サハ何考え…」
俺の質問に答える間もなくサハ手が俺から離れた。
サハはそのまま最小限の動きで前傾姿勢になり、右手には光銃が当たっている。
その瞬間、彼は最大出力のスラスターを発射させた。
目にも止まらぬ速さでサハの体躯は巨獣へと打ち出され、視線が彼の軌跡を追う頃にはすでに彼の一撃目が放たれていた。
グアオオオォォォ
その一撃は首からは少しズレ、その代わり肉をもつ片腕が宙に飛んだ。
その切断面は瞬時に光で焼かれ、滴る血もなく焦げた肉の匂いが香る。
サハはそれから2、3本光銃を重ねたように見えた。
そのどれも奴の首を刎ねるには至らなかったが、胴を貫き首を裂き頭部を貫通するその光線は致命傷というには十分であり、その奇襲が大成功であることは一目瞭然であった。
巨獣は突然の被弾によろけバランスを崩し、同時に襲いかかる痛覚にもはや理性など保てずビクビクと鹿を地面にのたうち回る。
暴れ狂うそれにもう一本、一段と太い光線がその首目掛けて接近し、見事に獣の首を一刀両断した。
それはシャンティの銃だった。
彼は一度獲物を至近距離で外している。だから今度こそ、不規則にのたうち回るその首を正確に刎ねのけようと魂の一撃だった。
「おい…お前らマジかよ…」
アシュは一人唖然としていた。
彼はサハの小声の相談を受けていない。
まさかあの巨獣を狩るとは思ってもいなかったため、突然動き出したサハに反応できなかった。
一人出遅れた彼は今、呆然と二人の功労者を傍観している。
「おいサハ、怪我はないか…!?」
「あぁ…大丈夫だ…と思う。」
すぐにサハの元へ駆けつけるシャンティ。先ほどとは真逆の立場となり、ひととき前のサハの感情が分かった気がした。
サハの体は小刻みに震えていた。それは溢れ出すドーパミン故か、強張った筋肉が弛緩しきっていないのか。彼の声は上擦っていて、はぁはぁと息を切らしている。
サハの真横に横たうズタズタな獣。
まだピクピクと動いているように見えるが、それはきっと死後硬直の類だろう。
少し距離を置いたところに転がる頭部は眼球が飛び出ており、開いた口からは舌がだらしなく飛び出ていた。
ダクダクと流れる奴の体液は馴染みの深い赤黒色で、下に引く鹿の血と混ざって淀んだ鈍い色をしている。
シャンティは地に溜まる血の池を躊躇いなく踏み渡り、脱力するサハに手を貸すと同時に重なる死骸の状態を確認しようとした。
その場を唖然と傍観していたアシュも我に帰り、サハの方に駆け寄ろうと一歩を踏み出したその時。
ガサガサ…
シャンティは音の鳴る方へ振り向いた。
そこにはこちらに駆け寄ろうとするアシュと、その後ろに聳える巨大な影。
「アシュ…!!伏せろーーー!!!!!」
その瞬間、アシュの視界は夜になった。
巨大な影が突然現れ、太陽光が遮断される。
シャンティの声に反応し後ろを振り返ると、もう一頭。
巨大な爪を突き立てて的確に俺の頭部へ目掛けて振りかぶる。
「リタ…ごめん…」
シャキン……‼︎
グアオオオォォォ…!!
「いや〜、軽いってのも難儀なもんだね〜。ちょっと高く飛びすぎちゃったよ〜」
その時、アシュの顔に振りかぶられた両腕は美しく宙に舞い、重力に従って力なく地に落ちた。
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一方その頃、アスヤーと女子テント組は周辺の探索と安全な食材集めを着々とこなしていた。
「あ!これは食べられますよ!パラと言って、基本酸っぱいですけどたまに甘いものもあるんです!」
「なるほど、見た目はベリーのようですね…。これはもしかすると料理にも使えるんじゃないでしょうか、アティーテさん?」
「まぁ確かに使えるだろうね〜。色も綺麗な赤だし、煮込んだら酸味も飛ばせるかも。とは言っても、これをちゃんと食材として使う場合こんな少量じゃ話になんないけどね〜。」
すると、一枚の紅葉が目を輝かせて目一杯叫んだ。
「パーパ、それいーっぱい持ってる!いっぱいあるとこ知ってる!」
「パーパちゃん、それ本当?」
「うん!パーパ、案内する!着いてきて!!」
相変わらずルシャの肩に乗っかっていたパーパはそこからぴょこんと地面に降り立ち、そそくさと足早に森の中に突っ走り始めてしまった。
「ちょっと待って、パーパちゃーん!!」
「パーパ、また一人で先走らないでよー!!」
ルシャとアスヤーが呼びかけるも興奮したパーパは足を止めない。
小さな体を自在な腕を使ってグングンと緑の深い方へ進んでしまう。
「ちょ、こんな所突っ切るの!?うちらの荷物じゃキツくない!?」
パーパが突っ込んだ先は人が通るには勇気がいる背の高い雑草の奥。
かれこれ小一時間ほど採集をしていた彼らの背中には今にもはち切れそうなリュックがあった。
「わ、私、パーパちゃん追いかけるので皆さんは先に戻っていてください!後でお会いしましょう…!」
そうしてルシャは急いで雑草の中に駆け込む。
「ちょっとルシャ、一人じゃ危ないんじゃ…」
「私も後を追いかけましょうか…?このリュック、誰か頼めますかね…」
そうルシャを追いかけようとするニルだったが、彼が背負うリュックは皆の中で一番大きい。
ニルを除けばその場に残るは女の子一人と子供二人。ニルが背負う巨大なリュックは彼らにとって、いくら重力が弱いイルシャーにいると言えど体格差的に無理のある体積比をしていた。
「パーパ…また一人先走って…。あの…でも、安全面に関しては多分大丈夫だと思います。パットラ族って、ああ見えてすごく強いんです。ご飯は太陽光なので彼らから手を出したりはしないんですけど、向こうから襲いかかってきたら手加減なくバラバラにしちゃうんです。ちなみに、だから僕たちの拠点周りの広場には野蛮な野生動物が近寄らないんです。」
アスヤーはそう言って皆を落ち着かせた。
彼にとって、パーパがルシャにここまで懐くというのは嬉しいことだった。
いつも元気なパーパがとりわけやる気のある姿を見て、微笑ましく思っていたのだ。
「なんと、そうでしたか!」
「バラバラ…って冗談じゃないわ…。私なんかあいつらに変なことしたかしら…」
「でもじゃあ、ルシャさんはきっと大丈夫だよね…?」
「はい、特にパーパは今いるパットラの中でもとりわけ優秀なので、あーいった少し行動に手を焼く部分を除けば大いに頼っていい存在です!」
「そうですか…それならおそらく大丈夫でしょう。我々も一応護身用のナイフと光銃を装備してますし、何かあった際はエマージェンシー通信も可能です。お互いの位置もスーツ間で共有できるので、遭難することもありませんでしょうし。」
「まぁ…なら大丈夫か〜。あの子もバカじゃないし、何かあったらすぐに呼んでくれるよね。」
「では、私たちはどうしましょう?ルシャさんの仰るように一度拠点に戻りますか…?」
「ねぇねぇ、じゃあさ、ルシャさんがパラ…だっけ?を取ってきてくれる間に、僕たちは料理し始めようよ!僕、一個試してみたいことがあるの!」
「そういえばリタ、さっきっからずーっとそれ言ってるよね〜。まぁでもいいんじゃん?もう結構な素材集まってるわけだし、私たちは一旦拠点戻ろっか。」
「そうですね。きっと、その方がルシャさんも帰って来やすいでしょう。それなら私も、拠点に着いたらお二人の料理の手伝いをさせて頂こうかと思います。」
そうして、彼らはルシャを除いて来た道を戻った。
目の前が草木に覆われてよく見えない。
自分が動いているせいで周囲の茂みが自分の方に迫ってくるかのような錯覚を起こす。
その中唯一色の異なる一枚を見失わないよう、私は必死に草藪を漕ぎ分けた。
「パーパちゃん、ちょっと待ってーー!!」
「ウシャ、こっち!こっちにパラ、いっぱいある!!」
そのまま繁茂を蛇行すること数分、私の景色は急に晴れた。
「わぁ…!なにこれ…綺麗…。」
そこには足首ほどの高さの茎から鉛直に垂れるパラの群生地が広がっていた。
終わりが見えないほど遠くまで引き詰められたそれは目に映る色を赤一色に染め上げ、視界の端に映る新緑とのコントラストに思わず目を奪われる。
「ここ!ね、いっぱいあるでしょ?!」
「うん、本当に沢山ある…。パーパちゃん、教えてくれてありがとう。私、この景色すごく好き…。」
私はあまり自然で遊んでこなかったから、この星に来てから驚くことがいっぱいあった。
その中でもこの景色はとりわけ美しくて、心の中が透き通るような感じがした。
「ほら、いっぱい持って帰ろ!みんなで食べよ!」
「そうだね、沢山摘んで帰ろうか。」
先程まで足元すらよく見えない雑草の中を走っていただけあり、この場所はすごく歩きやすかった。
近くにあるパラだけを適当に取りすぎると折角のこの景観が台無しになってしまうから、私はなるべく茎を折らないように注意しながら満遍なくその地帯を周り、いろんな箇所から偏りなくパラを集めた。
手元のカバンいっぱいにパラが集まり、そろそろ帰ろうかと考えていた時。
ふと足元に振動を感じた気がした。
「なんだろ…?」
すぐに右足を上げると、その下には蜂のような比較的大きな羽虫が横たわっていた。
左の羽が大きく損傷している。私が踏んづけてしまったのだ。
よく見ると、私の足裏は潰れたパラで赤く着色されている。
どんなに注意して避けようとしても、地に落ちてしまった物や虫が落として行ったものなど、パラを完全に避けることはできなかったんだ。
ブブブブブブブブブ
そんなことを考えていたら、嫌な音が私の耳元を掠った。
顔を反射的に上げた時、私は頭が真っ白になった。
ブブブブブブブブブ
一体どこから現れたのか、そこにはその数の見当もつかないほど無数の有翅虫が飛んでいた。
それはおよそ私が踏んづけてしまったものと同種であり、それはすなわち彼らの敵意を察するに十分な証拠であった。
「ちょ…ご…ごめん……ごめんなさ…」
無数に蠢くそれはまるで巨大な蛇のように統率された動きをなし、殺意を持って私に襲いかかってきた。
光銃の存在が頭によぎるもそれを行動に起こすには遅すぎて、足元の配慮もなく後ろに後ずさって頭を抱えた、その時だった。
シュババババババ
目の前に旋風が現れたのかと思った。
素早く空を切るその音はソニックブームを彷彿とさせ、それに当たれば命はないだろうことは明瞭だった。
うすら目で顔を上げると、目にすら映らないほど尋常なスピードで空を切り裂くそれは一瞬の間に蛇の頭部を吹き飛ばした。
ブーー-ン〜
残った奴らも形相を変えたように進行方向を180度変え、空中に四方八方に分かれて撤退した。
気がつくとすでに旋風は止んでおり、そこには犠牲となった蜂類虫の雨がただゆっくりとパラの海に降り注いでいた。
私は一瞬、なにが起きたのか理解できなかった。
呆然としている私に対して、
「ウシャ、大丈夫…?アイツら、ウシャをチクチクしようとしてた…。」
「今の…パーパちゃんがやってくれたの…?」
「うん!腕をね、ブンブン!って振り回すの!」
可愛い声で天真爛漫に説明するそれは実際に起きたことの凄惨さを欠いている。
きっと掠っただけであろう羽虫たちもその薄い羽は豪風で飛び散り、揺れる大気に軽い脳震盪を起こして今も絶えず地に降り注いでいるんだ。
正直、怖く感じてしまった。
この子にとって、この力は当たり前のことなんだ。
そして、この子に対して私は信じられないくらい非力で無力なのだ。
けれど直ぐに、この子は私のために奴らを撃退してくれたのだということを思い出した。
「ありがとう、パーパちゃん。私、危ない所だった…。」
「パーパえらい?やった、やった!」
「うん、パーパちゃん、すごいよ。すっごくすごい…。」
「うん!ウシャも、すごい!ウシャもすごい!」
「え…私はすごくないよ…今だってパーパちゃんがいなかったら一人であの虫に襲われてた…。こんな私を助けてくれてありがとね。」
「ん?ウシャもすごいよ!いっぱい集めてる!パラ、いっぱい!」
「あ、うん、そうかも…ね…。」
私たちはそのまま拠点に帰ることにした。
私はその帰り道、久しぶりに思い出していた。
封印していた、あの頃のことを。
「すごいよ、ルシャ!この調子!」
「どうして…どうしてできないの……」
「すごいじゃん、ルシャ!」
「なんで、なんで、なんで!!」
「ルシャ、お前は本当に偉いな〜」
「何が嫌なの…私の何が憎いの…」
頭の中に懐かしい音がする。
忘れようとした、懐かしい音。
記憶は心を呼び起こす。その時の感情を。その時の心情を。
「(あぁ…久々に来たな…これ)」
きっと、最近は一人になることが少なかったから。
優しいみんなに囲まれて可も不可もない生活を送っていたから。
一人になると、いつも思い出してしまう。
何かをすると、いつも思い出してしまう。
自分を見つめると、いつも思い出してしまう。
私は、なんの変哲もない幸せな家庭に生まれた。
〜イルシャー豆知識その4〜
彼らがクマと呼ぶ動物はバルサルパと言い、クマのような体にティラノサウルスみたいな両腕がついているぞ!
頭部はライオンのように鬣があり、背中にかけてその毛は短く薄くなっている。
大きな両腕は獲物を捉えるために重要な器官で、しっかりと研がれた4本の爪で捕食対象を掴んで離さないぞ!
大きな体格柄攻撃手段は突進がメインで、それ故器用にも静かに獲物に接近する能力を持っているんだ!
狩りは複数個体でやることも多いが、その大半は他のバルサルパが捕まえ損ねた獲物を漁夫の利することを狙っているぞ!案外いやらしい戦略を取るのだ!




