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ルームメイト

入学式後は校内案内だった。

校舎はどこも白くて美しく、陽の光がたっぷりと注ぎ込んでいる中庭では花が咲き乱れていて

校内の雰囲気は入学のこの日に相応しい温かで、少し爽やかで清々しさを感じさせる。

教室はずっと続いているようにも思える廊下にそって大小様々な大きさのものがたくさんあった。

食堂もあった。今日の夕食はここにで行われるらしい。

食堂はかなり広くて木造の長机に木造長椅子を組み合わせていた。

校内案内の最後はレオン寮に案内された。

寮も校舎と同様に白い石造りの建物で、周りは森に囲まれているのだが森に立ち入るには教員からの許可がないと入ることはできないらしい。

少し珍しい動植物があるらしく、ルーカスはそのうち必ずここを訪れようと胸に誓ったのだった。

寮は二人部屋だった。

実のところルーカスは寮生活をかなり楽しみにしていた。

残念なことにルーカスにはこれまであまり友人がいなかったため、家に遊びに行ったり招いたり、お泊まり会のようなことをするなんていうのは夢のまた夢だった。

だからルーカスは初めての新鮮な体験に胸を躍らせているのである。

あらかじめ部屋に届けられてあった荷物を開封しつつ自分のルームメイトを待つ。

一体どんな人だろうか。明るい人か賢いインテリ系か。

なんにせよルーカスは楽しみだった。


がちゃり。音を立てて扉が開く。


開いた扉の向こうに見えたのは背の高い青年だった。

スラリと長い手足とさらりと流れる赤い髪。まだ少しあどけなさを残しているが整っている顔。

そして顔にはまったツァボライトを想起させる吊り目気味の二つの瞳。

思わずルーカスは見惚れてしまった。

しかしそんな思いは束の間のものとなった。


「おい、お前がルームメイトか。」


といってルーカスをじっと見つめる。

なんだこいつ。失礼なやつだと思いながらもルーカスは常識のある人間なのできちんと挨拶をかえす。


「やぁ初めまして、僕はルーカス・コロナだ。今日からよろしく。」


「そうか。」


そうかの一言だけ。

失礼にも程があるだろう。まだ名前すら知らない青年よ。


「えっと、君の名前を教えてくれるかい?この先名前がわからないようじゃ生活に支障をきたすかもしれないだろ?」


「あ?あぁ。俺の名前はフィリア・ルプスだ。」


「そうか。フィリアくんね。改めてよろしく。」


「ああ。」


ルーカスは先行きが不安になってきていた。


それからは二人とも無言で荷解きを進めた。

それからしばらくしてルーカスが持ってきた荷物の8割方が片付いた頃。

ドアを開ける音がしたので振り向くと、フィリアが部屋の外に出ようとしていた。


「あれ、どこか行くの?」


不思議に思ったルーカスは尋ねた。


「お前、教師の話を聞いてなかったのか。時計を見ろ。もう夕飯の時間だ。」


ルーカスは記憶を思い返してみた。

そういえば校内案内が終わった時先生が今日は全員夕飯は食堂で食べるから時間になったら食堂に行けといっていたような気がする。

まずい。すっかり失念していた。


「ごめん。すっかり忘れていたみたいだ。フィリアくんのおかげで助かったよ。」


「謝るくらいなら自分で時間を管理しろ。」


フィリアは口下手だった。本当は

”謝らなくていい。ただ作業に熱中しすぎて時間を忘れたら大変だから気をつけろよ。”

と言いたかっただけなのに。

己の不器用さが憎い。

せっかくルーカスはフレンドリーに接してくれているのに自分は相手を苛立たせることしか言えない。

ルーカスは不快感を覚えた。確かに時間を忘れて作業してしかも後の予定も忘れていた自分が全て悪い。

だがそんなに刺々しくいうことないではないか。

ルーカスにはこのルームメイトと一年やっていくことが地獄に思えた。

この先この無愛想で失礼な人間とうまくやっていけるのか。

失礼になるがフィリアという名前を改名したほうがいいだろう。

友好的ではないこの態度にそぐわない名前だ。

そんな思いを胸の中にしまってルーカスも部屋を後にした。




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