4話
試験の後、帰宅したルーカスはアルトス夫妻が腕によりをかけて作った大好物のパイシチューを食べた。
やはりこの夫婦が作る食事はとても美味しい。
ルーカスはその後、面接の日までのんびりと過ごした。
面接に向けて勉強する必要がなかったからだ。
面接の日時を記した手紙には面接の日付以外に以下のように書かれていた。
”尚、面接は貴方の知識や技能を問うものではなく、貴方の神力に対する意欲や考え方について話し合うものです。”
と。
そうしてのんびり過ごしているうちに面接当日となった。
前回とは打って変わって今回案内されたのは狭い空間にローテーブルと二つのソファが置いてあるだけの部屋だった。
どうやらまだイロアスは来ていないようで、ルーカスが座っている向かいのソファはまだ空であった。
耳障りな音を立てて扉が開くと高身長の青年が立っていた。
ルーカスはその人間を知っていた。
彼が幼い頃から憧れてやまなかった尊い人間。
現状7人いるイロアスのうち最年少であるのに最も強い力を持つ選ばれしもの。
その名をオリヴァー・ミノアという。
知略の神の力を持つ人間で、過去の功績は数知れず。
ルーカスも過去に彼に助けられた経験がある。
憧れの人間を前にしてルーカスの心臓は早鐘を打っていた。
「待たせてしまい、申し訳ありません。これより面接を開始します。」
こうして面接は始まった。
最初の方の質問はすごくどうでも良いことについてだった。
今日は歩いてきたか、それとも馬できたのか。
休日の過ごし方や趣味についても聞かれた。
ルーカスはどの質問にも特に答えに詰まることなく答えた。
この調子であれば面接も余裕だろうと考えた時、その質問はされた。
「なるほど…。では、貴方がこの学園に入る目的はなんですか。」
ルーカスはそれまで流れるように紡いでいた言葉を止めた。
そして少しの思考の後、答えた。
「私は貴方に憧れています。貴方のような正義感のあるイロアスを目指しているんです。
正義感を持って神々がお造りになったこの地の安寧を守りたい。
イロアスである貴方ならご存知のはずです。
数年前からイロアスですら解決できない行方不明事件が度々起きていると。
おそらく私の両親もその被害者です。
私はこの地の人間が外道の手によって神より与えられた運命を全うできないことに腹が煮え繰り返る思いをしているのと同時に、何もできない無力な自分がもどかしく、情けなくてならないんです。
だからこの学園で神からの教えを学び、より強くなりたいのです。」
「そうですか。多くの質問に回答いただきありがとうございます。面接はこれで以上ですので、気をつけてお帰りください。」
正直、ルーカスは面接で言ったことを後悔していた。
尊敬する人間の前で自分の厨二じみた理想を述べてしまったことが恥ずかしくてならない。
これは落ちたな。と思いながら帰路につくのだった。
推しの目の前で好きって言えないタイプなのよ。