1話
朝ごはんは米派!!!!!!!!!!!!
朝が来た。それまで眠っていた世界がまた動き出す。
一筋の太陽の光をきっかけに全てが活動を始める。
ルーカスは早朝に見えるその光景が大好きだ。
それまでの静けさをたった一筋の光が切り裂く。
人々がその光に従って生活を営み始める様子はなんだか滑稽にも思えた。
ルーカスはたった一人、屋根に座ってこの光景を見ているという事実にまるで自分が神になったかのような高揚を感じていた。
そんな朝のひと時を過ごしていると、遥か下から声が聞こえた。
「ルーカス!そろそろ支度をしないと試験に遅れてしまうよ!」
ルーカスが下を見やると中年女性がこちらを見ていた。
ほんの少し面倒だと思いつつも返事をする。
「すみません!ありがとうございます、タルタさん。すっかり時間を忘れていたみたいです。すぐにそちらに行きますね!」
アルトス・タルタ。彼女は夫と一緒にパン屋を営んでいる。
普段からとても明るく、快活な人間だ。
そして身寄りのないルーカスを赤の他人であるのにも関わらず、居候させてくれるほど優しい。
ルーカスの両親は彼が8つの時に突然消えてしまった。
そうしていきなり路頭に迷ってしまった自分を暖かく自分の家に迎えてくれた彼女にルーカスは感謝している。
支度を終えたルーカスはボロボロの床を軋ませながらタルタのいる一階へ降りた。
階段のすぐそばに待ち構えていたタルタは呆れた顔をして言った。
「全く…もう15歳なんだから時間くらい自分で考えなさい。それはそうと、今日の試験に備えてお弁当を作ったから持って行って。朝ごはんを食べる余裕はあるかしら、ないなら試験会場についてから軽く食べられるおやつも用意するのだけれど…」
「お弁当、ありがとうございます。まだもう少し時間があるので簡単に朝食をとってから行くことにします。」
「そう?じゃあダイニングテーブルに置いてあるから食べて行きなさい。」
「はい。」
テーブルを見るとみずみずしいサラダとミニスープ、トーストが乗った皿が置かれていた。
スープからは湯気が立っていてほんのり良い匂いが漂っていて、程よく焼かれたトーストにジュワッととろけるバターはルーカスの食欲をそそった。
朝食はそれは良いものだった。野菜は新鮮でパンもさすがパン屋というべきかもっちりとしていて美味しかった。
英気を養ったところでルーカスは出発することにした。
「行ってきます!」
大きな声でそう言うと、ルーカスは試験会場であるリュケイオン神学園へと歩み出したのだった。