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Doppeler  作者: あゐる。
3/3

03 発覚

続きは明日以降、お願いします。

「え…私…?」



 今、目の前に広がる光景が、何も信じられなかった。



「私が…もう一人…」



 ポツリと呟くと、例の”私”が、まるで動く玩具を眺めて笑う子供のように笑った。



「何に驚いているんだい?君が呼び出したんだろう?」


「え…そんな覚えないんだけど…」


「アタシは君から放出されたドッペリウムに反応して発現する、ドッペリウムが放出される条件ってのは…」


「ちょっと、ちょっと待って」



 聞いたことがある単語が聞こえて慌てて彼女の話を遮る。



「ドッペリウムって…?」


「ドッペラーの身体の中で作り出される固有な物質のことさ」


「ドッペラーって…?」


「ドッペルゲンガーを発現させて自由に操れる存在のこと」


「私…ドッペラーなの?」


「勿論。アタシを呼び出せた時点でね」



 ドッペラー。ワタシハ、ドッペラー。

 嫌な記憶がフラッシュバックする。




「人体の構造が人間と大きく異なり…」



「馬鹿、死なねえよ。そもそもドッペラーは人間じゃねぇよ。人間の猿真似してるバケモンだろ?殺人罪にはならねぇよ」




 これらから導き出される結論。

ーー私は、人間では、ない?



 あまりにも、あまりにも。非現実的だ。私は、今まで普通に生きてきた。人間として。人として。その筈だ。私は、人間なんだ。人なんだ。ヒトなんだ。


 だって、だって。もし私がドッペラーなんかだったら、とっくに政府に捕らえられている筈だ。そして、あの動画のように、人体実験されるんだ。

 あんなふうに、なりたくはない。あの動画の中の被験者の様に。あの反応からすると、死なないにしても痛みを感じていたはずだ。死ぬに値する痛みを、何回も、何回も、何回も。そんなこと、想像しなくても分かる。地獄の方が100倍マシだ。


ーー痛いのは、嫌だ。



 あの動画の、グチャっとした、ドロドロとした内臓がまた脳裏に浮かんで、また吐きそうになる。胃酸が、喉のギリギリまで上がってくる。酸っぱい。痛い。涙が出てきた。辛い。辛いよ。



「大丈夫かい?吐きたいなら吐いちゃった方が楽だよ?」



 もう一人の私は、私の背中を擦りながら甘い声で囁く。


 その声に何故か安心してしまった。私は、全てを吐き出した。吐瀉物も、嫌悪感も、不信も、不安も、不快も。何もかも。そのお蔭で気分も幾分か楽になった。


 ドサッと、その場にもたれる。ドッペラーのことはいったん忘れて、まずは目の前のこのドッペルゲンガーを名乗る不審者をどうにかしようと思った。


 まずコイツは初対面のくせになんかスカしてる。それに、自分のほうが人生経験があります〜みたいな話し方するし。もしドッペルゲンガーなのであれば生きてる時間は同じなのではないのだろうか。

 どうやれば対等に話すことができるようになるのだろうか。私がタメ口で喋っちゃったのがよくなかったかな。こっちが最初から敬語なら、向こうも敬語使ってくれてたかも…



 そんな事を考えていると、背後で物音がした。



 物凄い速度で振り返ると、そこには、物音で起きてきた弟がいた。


 名前は颯。私に対しては少し尖ってて、世間では所謂ツンデレと形容される性格をしている。私にとっては、可愛い可愛い弟だ。その可愛い可愛い弟が、まるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。気分が落ちていた私も弟の可愛い顔を見たら、気分もだいぶ良くなった。



「姉さんが…二人いる…。」



 驚きと困惑の入り乱れたような表情で私たちを交互に眺めている。



「やぁ、自己紹介が遅れたね。アタシはこの双葉 楓さんのドッペルゲンガーだ。名前は主であるこの子に後々決めてもらうことになってるからまだ無いけど、名前が出来次第自由に呼んでよ」



 無言のまま動揺している颯を見て自分が不安の正体だと感づいたらしい彼女は、自己紹介をした。

 でも、ドッペルゲンガーさんや。その自己紹介だと、益々颯くんは困惑するんじゃないのかい?



「何言って…ドッペルゲンガー!?」


「何、颯知ってんの?」


「知ってるも何も、中学で昨日習ったばっかだよ」



 なんと。別の学校で同じ日に同じ内容の授業を受けるとは。この時期はドッペルゲンガーについて授業するって、教育委員会か何かで決まってるんだろうか。



「姉さん!」


「なに?」


「えっと…どっちが喋った?」


「こっちこっち」


「そっちか。…じゃなくて」



 颯は首を振る。



「姉さん逃げなきゃやべぇんじゃねぇの!?」



 やっぱり、予想してた答えが返って来た。そうだよね。常識的に考えて、ドッペラーだって判明した時点で政府から狙われるんだから、逃げない方が馬鹿だ。



 すると突然、インターフォンが鳴った。そして、閉まっていないドアから、アパートの近所の人が3〜4人ぞろぞろと入ってきた。


 そして、隣に住んでいるおばさんが、私たちを見るなり目ん玉をカッ開いて焦った様に携帯を取り出した。直ぐに何処かの番号を打って電話をしだす。



「警察ですか!?楓ちゃんのドッペルゲンガーが、人を殺しました!!…はい、住所は…」



 …え?けいさつ?



「あーあ。ま、頑張ってね。アタシはこれにて失礼するよ」



 ……えぇ?しつれいする?




「姉さん…」


「颯…」



 少しの間2人で見つめ合った後、同時に叫ぶ。



「「逃げるぞ!!」」



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