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Doppeler  作者: あゐる。
1/3

01 日常

中学生が趣味で描いたのでガバガバ語彙力は勘弁

 退屈な授業だ。自分の席から窓の外の景色を眺めていると、不思議と心が落ち着いてくる。

 席ガチャで窓側の席を引けたのは本当にラッキーだった。私はこの学校の窓の景色が好きだ。授業中、しょっちゅう眺めてしまっている。



「えー今日はドッペルゲンガーについて説明をする。じゃあ大石。今の時点でドッペルゲンガーについて何か知っていることはあるか?」



 バーコード禿げと黒縁メガネの似合う小太りな生物の先生は、クラスで一番地味なメガネくんを当てた。



「えっと…自分と同じ見た目をした人間のことですよね」



 先生はまぁそう答えるのが妥当だな、とメガネ君を試していたかのように鼻で笑った。



「正確には違う。ドッペルゲンガーとは、ドッペラーが自由に呼び出し、操ることのできる分身体のことだ。

 ドッペラーとは、ドッペルゲンガーを呼び出す、いわゆるドッペル反応を意図的に起こすことができる生命体の総称だ。現在までに世界で48名、日本で4名のドッペラーが確認されている。人体の構造が人間と大きく異なり…」



 この先生は、毎回説明が長い。自分の好きな分野になると途端に立て板に水になるのだ。

 自分の好きな分野ならいいが、私は生物が苦手なのでこの時間は苦痛でしかない。



「…核という心臓のような部位が損傷するとドッペラーは死亡する。逆にそこ以外は損傷しても、ものの数秒で再生する。それはドッペラーの体内で生成されるドッペリウムという物質が大きく関わっていて…」



 もういい。この話を聞くのはやめだ。先生の饒舌スイッチが入ってしまっては、私はもうついていくことすらできない。私はこの授業は窓を眺めることに専念することにした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「今日の生物の授業も延々と長い話聞かされたよー」


「あら、そう。勉強になるんならいいんじゃない?」



 家族との食卓。今日で印象的だったのは生物の授業だったので、その話をすることにした。



「何もわかんなかったよ。どっぺらー?の生態についての授業だったんだけど」



 そう言った瞬間、母の私を見つめる目が少し左にズレた気がした。

 その時は特に気にならなかったので、そのまま話した。



「ドッペラーって、何者?」



 母の眉間にしわが寄る。



「すごく、いい人たちのことよ。

 悪い人もいるけどね」


「んー…つまり、ドッペラーって基本的にいい人ってこと?」


「…うん。そうよ。」



 どこか会話が稚拙だ。母からの返答の歯切れが悪いからだろうか。



「それで、ドッペラーって政府に見つかったらどうなる…」


「この話はもうやめにしましょう」



 食い気味で母は私の話を遮った。これ以上は何か母のタブーに触れると思ったのでこの話題にはもう触れることなく、そのまま食事を済ませて風呂に入った。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 風呂の中に携帯を持ち込み、色々とドッペラーについて調べてみる。



 えっと…「被験体No.3の人体実験の様子を政府がホームページで公開!ドッペラーの生態の本質に迫る!」


 これが一番最近の記事だ。人体実験やら被験体やら不穏な文字が見えたが、気にせずタップした。


 そのブログの頭には防衛省ホームページのある動画が転載されていて、その下の記事で動画から推測できる事を説明しているようだった。



 これを見ないと話にならないだろう。迷いなくその動画のリンクに飛んだ。


 中央の手術台のようなものに、一人の男が括り付けられていた。周りには手術衣を身に纏った男性二人がナイフや機関銃など物騒な物を持っている。


 この時点で被験体とやらに何をやるのかは大体の想像が付いたが、怖いもの見たさからそのまま動画は止めなかった。



「ほんとにやるのか…?」


「やるんだよ、そう言われたんだから」


「死なないんだよな?俺らが殺人したことにはならないんだよな?」


「馬鹿、死なねえよ。そもそもドッペラーは人間じゃねぇよ。人間の猿真似してるバケモンだろ?殺人罪にはならねぇよ」



 二人の男は互いに緊張と困惑の混ざった表情をしながらナイフを握りしめる。



「開始」



 片方の男が言うともう片方の男は被験体の男の右腕を勢いよく切り落とした。



「んんーーー!!!」



 被験体の男の口には口枷がつけられていて、何とも無様な悲鳴が手術室中に響く。私は咄嗟に目を背けたが、直ぐに視線をもとに戻した。恐怖心より好奇心が勝ってしまったのだ。


 すると、何ということだろう。切り落とされた腕からあふれる黒い液体が腕と胴体を繋いだ。ものの数秒の間に、傷跡すら見えなくなった。生物の先生が言っていたことは本当だった。



「次」



 そう告げられると男性は機関銃を取り出し、被験体の男に向けて乱射した。被験体の男の身体からは内臓が露出し、見るも無残な姿になっていた。

 私はそこで異様な吐き気に襲われ、携帯を床に叩きつけた後そのまま床に向けて激しく吐瀉としゃをした。薄茶色をした吐瀉物は、床の排水口に吸い込まれていった。



 その後私は、何も考えずに身体と頭を洗い、床についた。風呂から出たとき母に心配されたが、ドッペラーについての動画を見たなんて言えないので適当に誤魔化した。携帯の画面は割れていたが、使えるようだったので安心した。

 床についた後はあの動画のシーンが何度も頭の中で流れ続けて中々寝付けなかったが、いつの間にか眠りに落ちていた。




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