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魔法少女からは逃げられない。何処までも追ってきた魔法生物のマスコット【2】

「さあ、心を開くのだ」

「バカも休み休み言え」


役所にどどけ出た時の役員の対応は最悪だったがそれも仕方がない。

縦割り社会のお堅い役所の中に新設された魔法省の出先機関は、

何処の役所に行っても新設の部署だ。

それが妖魔と戦う魔法少女達のサポートをすると言う理由で、

特権が与えられ役所の中で自由に指示する権利を与えられているのだから、

他の部署に所属している人にはたまらない。

越権行為に前例のない対応。

それは言うまでもなく役所では嫌われる行為だ。

その嫌われまくっているのに指示する権力だけは持っている。

そりゃー好かれる訳が無い。

で、そんな窓口に魔法生物を届ければ対応が悪くなるのは明らかで…


「ああ魔法生物ですね。

ここでお預かりする事は出来ません。

今日は魔法少女が初めて《一人、素敵な変身》をしたらしくて、

その変身をこぞって見る為に魔法科の担当者は全員帰宅しましたよ。

ミーハーな事この上ないですね。

ハンディ―カムまで持って帰りましたから。

連絡が直ぐにでも取りたいなら非常用の電話番号をお教えしますので、

後は自分でどうにかしてください」


突き刺さるほどの塩対応で俺は心が折れそうになる。

ここまで遠回りして運んだ先で魔法生物は回収されず教えて貰えたのは、

電話番号だけという…

受付時間の終了と共に窓口は閉じられて魔法省の担当の人が、

戻ってくる事を待っている事も許してもらえなかった。

仕方がないので俺はいったん近くの公園へと移動してその担当者へと、

電話を掛けようとした。


が、


「ふむ、どうやら場所が解ったようだ。

君、私を連れて東へ向かってくれ」

「は?」

「いや、私の魔法少女がいる場所が解ったのだ。

案内するので連れて行ってくれればいい」


うぁあ…いよいよもってめんどくせえ事になるな。

もう電話番号聞いたのだ。

そんな事せずとも連絡とって迎えに来てもらえば良いじゃねえか。

そう考えた俺はこの魔法生物の意見を聞き流して…

電話を掛けようとする。

が…

繋がらない。

話し中の様で結局聞いた番号は使えなかった。

結構時間も押してきてて日が落ちて家に帰らないといけない時間も、

近付いて来ていた。

しかしこの魔法生物を家に連れてけることだけはしたくない。

仕方がないのでこいつの指示に従って…

その場所へ連れて行けば俺は解放されるだろうし。

もう少しの我慢だ。


「…解った。案内してくれ」

「うむ。では次は北の方角だ」

「せめて左右方向での指示で頼む」

「まかされよ」


そんな訳で俺はその指示に従って移動し続けた。

幸いにもその行き先は近い様で長時間歩く必要は無かったのだが。

それ以上に着いた先が…

まあ考えられない訳じゃない。

だってこの魔法生物は傷だらけで落ちていたんだから。

そりゃそのパートナーが無事な訳無いよねぇ。

着いた場所は大きな総合病院だったのだ。

嫌な予感しかしないのだが…

その総合病院の入口には魔法省の担当者?っぽい人が沢山いたのだ。

入口占拠して他の患者さんに迷惑だろうに。

が、俺には都合がいい。

つまりこの魔法生物を知っている人がいるって事だったから。


「あの…」

「君は、その子!」


どうやら話しかけた一人目から…

俺は正解を引けたみたいで…

その魔法生物をさっさと受け渡して俺は帰ろうとしていた。

もう俺はこの場所に用はない。


「拾ったんで、受け取ってもらえますか?」


素直な少年の俺は全力の笑顔を向けつつ、

その魔法生物を渡そうとしたのだ。

が、


「良かった。

もう反応が弱くなっていて場所が特定できなかったのよ。

ありがとう」

「いえいえ。一市民として立派に戦っている魔法少女達の、

助けになるなら本望ですよ」


そう言うと俺は魔法生物を渡そうとしたのだ。

しかしその魔法省の人は魔法生物を受け取ってくれない。

はて?何故だ?

と、想いながら…

俺はその場で待機していた。

が、


「そう、ね。ちょっと付いて来てくれるかしら?」

「は?いえ、俺はこの魔法生物を届けに来ただけなので…」

「それは解っているの。そしてその事も込みでお話がるのよ」


もはや嫌な予感を通り越して巻き込まれる予感しかなかった。

帰るべきなのだ。

ってか、俺を家に帰せ。


「すいません。親が心配しますので帰ろうかと思います」


もちろん俺は礼儀正しく、

お断りをして帰ろうとする。

てか帰る。

ヤバい予感しかしない。


「大丈夫。私達の方で連絡します」

「い、いやそういう事ではなくて…」

「時間も無いんでしょう?直ぐに済みますから」

「…はい」


完全に嵌められている様な気がするが、

俺はその指示に従って魔法生物を持ったまま、

ついて行く事になるのだった…

絶対に不味いって。

解っていても一市民として国家権力が後ろにいそうな、

魔法省の人に逆らうとか逃げるとかしたら、

えらく大変な目に合うんじゃね?と思い考えたら、

まあ、その先の空間から人間的に悪寒を感じる場所だったとしても、

行くしかないよなぁ…

そして俺は病院の区画分けされた、

重症患者の治療区画へと連れて来られた。

ここで魔法生物の治療をするのだろう。

その為に俺は運び屋として魔法生物を持っているだけ。

だよな?


が、その先にあったのは…

魔法少女の戦いの現実。

そりゃあこんな状態なら魔法生物を回収するのを後回しにして、

慌てふためくのもまあ頷ける。

そしてその姿は、絶対に一般人に見せて良い物じゃない!

二重扉の先治療室にいるのは、


全身に包帯をまかれベッドでに寝かされる傷ついた魔法少女。

うわごとの様に「痛いよぅ…痛いよぅ…」

と呻き続けている姿を見せられて…


「今日の妖魔は手ごわかったみたいでね…

何とか撃退出来たみたいだけれどほとんど相打ちの形で決着がついたの…

お陰で彼女は酷い深手を負う事になったのよ」


命を繋ぐために色々な機器を取り付けられて、

苦しいのか怖いのか…

眠っているらしいのだが目からは涙が零れ落ちている。


「彼女は立派に戦ったわ。

それでねアナタにお願いがあるの」


来た。

やっぱり来た。

わざわざ重傷で動けない魔法少女を見せるなんて、

罪悪感を煽ってお願いを聞かせる手段でしかない。

でしかないのだが…


「魔法少女の高度な戦いに、

俺の様な一般人が協力できることなんて、

何もありませんよ」

「いいえ。あなたにしか出来ないわ。

だってあの子を連れて来てくれたんだもの」


やはりダメなフラグは立っていた。

触るのもアウトだったかぁ…。


「それにさっき言ったでしょう?

魔法少女の助けになるなら本望だって」


意味が違う。

ただの社交辞令ですと叫びたいが、

叫んだらそれはそれでヤバそうな気がするのでぐっとこらえた。

何か楽しくて危険と解っている奉仕活動に協力しなきゃいかんのだ。


「アナタが言った事なのよ?」


絶対に協力させる事が決定しているみたいだった。

ここで駄々をこねても「善意の協力」として俺が頷くまで解放する気がない事は、

嫌でも解った。

解ってしまった。

俺は必死に笑顔を作りながら返事をする。


「自分で出来る事であれば協力しますよ」

「そう!ごめんね!無理矢理協力させたみたいで!

でもね。全然そんなこと思ってないのよ!

でも協力してくれるのなら。

頼んじゃおっかな!

その善意に甘えさせて貰おうかな?!」


パーフェクトだよこの魔法省の人は。

傷だらけで重症の魔法少女を見せて罪悪感を抱かせて「善意」で協力してと言って、

断ろうとすれば、社交辞令の挨拶を引き出して「失言」と言う形で、

お願いを聞かせる。

実にスムーズな会話の流れで俺は、お願いを聞く事になったのだった。


笑えねぇ…


「それでね…」


俺がお願いされた事はこの魔法生物を魔法少女が復活するまで、

預かってくれって話だったのだ。

なんでも今、魔法少女は必死に体を治すために魔力を使っているとか?なんとかで?

生きているのが不思議なくらい重症らしい。

さっきの眠りながらうわ言の様に戦闘を思い出して苦しんでいるらしくて?

たぶん悪夢を見ているんじゃないかという事だった。

が、それを差し引いてもこの魔法生物に魔力を回している余裕が無いのだとか。

そこで俺の出番て訳だ。

魔法少女が回復するまで代わりに魔法生物に魔力を分け与えてほしいと。

魔法少女が回復した時にパートナーがいなかったら心がきっと壊れてしまう。

「戦友を失いたいと思わないでしょ」

なんてミリタリーな事を言ってきたのだ。

まぁ預かる程度なら。

なんて思ったのが間違いで俺はそのお陰で、

エライ酷い話を魔法生物から聞く羽目になった。


結局その魔法生物に対する治療はすぐさま行われて俺は、

そいつを抱っこして帰る羽目になる。


「出来るだけ抱っこしてあげて頂戴。

そうすれば魔力の伝達も良くなって傷も早く治るから」

「解りました」


その後、俺は病院から家へと送って貰えたのだが…

もちろん家にも魔法省の人は来ていた。

そして俺が預かる魔法生物の説明と、

預けられる理由を事細かに母さんにに話していてくれたから、

母さんとしても困惑する事はなくて普通に家に魔法生物は受け入れられた。

しかし、母さんに対する魔法省の人態度はものすごく丁寧だった。

まぁしかたが無いよな。面倒そうな生物を預かる事になったんだから。

俺の部屋に魔法生物用のベッドが運び込まれて、

ただでさえ狭いマイスペースが更に圧迫された以外に、

俺が日常生活で生活を変えなければならない事はなかった。


しかし、だ。

アイドルしてる魔法少女は結構な数がいる。

カメラ越しに見える風景はカッコ可愛く戦う姿ばかり。

まさかあそこまでボロボロになるまで戦う魔法少女がいるとは思わなかった。

なんだかんだで、妖魔を倒していく姿は余裕感があって、

みんな楽勝な戦闘ばかりだろうと思っていたから。

意外な一面だねなんて思っていた。

ってか思っていたかった。

まあ一日が終わり…

ベッドで横になって眠ろうとしたのだが…


「さあ、心を開くのだ」

「バカも休み休み言え」


魔法生物は俺に語り掛けてくる。

そして俺はその言葉を無視して…

眠りにつく。

が、これがいけなかった。

たぶん返事をしたことで…

俺とこの魔法生物との繋がりがまた一段と強化された?

みたいだった。

意識を失って眠る俺。

が、そこで夢を見させられた。

FPSゲームの視点の様な形で映像を見続ける事になった俺。

魔法のステッキを持ち妖魔と戦う魔法少女の戦闘画面だった。

大迫力の映画を見ているような気分で映像を見続ける俺。

魔法少女は必死に戦って、けれど徐々に徐々に追い詰められていった。

次第に傷だらけになりそれでも逃げる事は許されない。

「怖いよぅ…どうすれば良いの…教えて…」

漏れ聞こえる微かな声…

「あきらめるな!頑張るんだ!きっと勝てる!」

等と言うだけの魔法生物。

いや戦闘アドバイスとかしてやれよと心の底から思う。

今この魔法少女に必要な事は励ましではなくて、

勝つ為の方法だろう?

直接戦えないサポートキャラなら応援じゃなくて、

アドバイスの一つでもしろよと俺は突っ込みたくなってしまう。

それでも魔法少女は打開策なく、

ただ敵に攻撃されて痛めつけられる。

愚直に「町のみんな」を守る為、被害が出ない様に自らを盾にしながら、

痛いのを我慢して戦い続けているのだ。


あーうん。

その戦いは美しいとは思うが…

敵との圧倒的な実力差が無ければやっちゃいけないんじゃないか?

なんて思いながら…

魔法少女が徐々に追い詰められていく映画を見続けた。

最後に敵の真正面に立って集中砲火を受けながら、

妖魔の核?みたいな物を叩き壊して戦闘は終わった。

もちろん彼女は傷だらけで足と腕が曲がらない方向に曲がっていた。

体はもうボロボロ。

酷い有様で…


その後、直ぐに魔法省の人に回収されるところで映像は終わった。

ひっでえ戦い方で…

けれど魔法少女らしい正々堂々とした「正義」の戦いだった。

こうして世界の平和は守られているのである。

感謝感謝だ。


だがそんな映像を見せられて気分が良い訳が無い。

俺は深夜に起きる事になる。

ぶっちゃけ悪夢だ。

だがそんな俺を見て魔法生物は言うのだ。


「君が魔法少女になって手助けをしてあげれば、

きっと彼女も喜ぶと思うのだ。

光の使い魔の正義の魔法少女になりなさい」

「なるわけねーだろ」


即答である。

映像で見るだけでも大迫力の戦闘シーンだ。

それを自分がやるなんて考えたくもない。

断るに決まっている。

アレは映像として見るから楽しめるのだ。

命を懸けて戦う事になったら楽しい所の問題じゃねーだろう。

「正義の心」なんて言葉で騙されるつもりもない。


「さぁ魔法少女になろう」


あの映像を見て何か言える事がある訳じゃない。

ただなんとなく。

なんとなくだが…

俺の中に罪悪感が芽生え始めていた。


さて主人公君は無事、魔法生物を預かる事になりそのせいで悪夢を、

見せられる事になりました。

主人公君は何時まで悪夢に耐えられるのでしょう?

そして魔法少女だけを戦わせてのうのうと、

一般市民として生きているという罪悪感に事実?の鱗片を、

知ってしまった主人公は耐えられるのでしょうか?


頑張れ主人公!

負けるな主人公!

魔法少女になったら、

黒髪ロングの可愛い女の子になってしまうぞ!

もちろん男の子には戻れないぞ!

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