魔法少女のお母さん。魔法省の人にガチギレする【4】
私の現役時代は一番魔法少女が苦しい時代の話だ。
まだ妖魔に対して明確な対抗策が確立しきっていない時期、
ともかく魔法少女達は人海戦術的に作戦を遂行しなければ行けなかった。
今よりもみすぼらしい装備で、
妖魔の撃ってくる砲撃から身を守る為のシールドもおもちゃの様に弱い。
魔力の使い方も解らずともかく実践をしながら命がけで勝ちを拾っていく。
そんな時期だった。
「ヴァルキュリア」はもともと私のチーム名ではなかった。
チーム名ウインディア。
攻撃をまともに受ける術がなかった時期、私達は風の様に早く動き妖魔を撃破する。
そういう想いと願いを胸に必死に戦っていた。
今より多人数の16人のチームを束ね戦闘をしているうちに、
私は総指揮官の様な立場に収まっていた。
皆を生きて帰らせる。
それを必死に考えてそして実行していた。
現に何とか誰も欠けることなく戦闘をする事は出来ていたのだ。
けれどその状況はスノー・プリンセスが加わってから狂って行った…
彼女を加え4人の増強が私達の部隊に行われた。
その事は純粋に嬉しかったのだ。
仲間同士で守り合えばそれだけ戦闘が楽になる。
そしてより安全に戦える。
常にギリギリの戦いをしていた私達ウインディア戦隊にとって、
増員はどれだけ望んでもなかなか行われない事だったから。
けれどその喜びは悪夢に切り替わった。
元々彼女スノー・プリンセスに前線で戦うだけの力はなかった。
けれど上からの指示だった。
なんでも美しく戦う勇敢な魔法少女になるのが夢で適性があったから、
魔法少女に志願したと。
けれど適正は防御型として盾となる事。
攻撃に参加せず当時はただ耐えるポジションだった。
けれどそれに彼女は納得しなかった。
テレビアニメで見た美しく戦う幻想の中の魔法少女になりたかった彼女は、
その権力を使って強引に攻撃を担うポジションを手に入れる。
もちろん私を中心とした部隊の全員がそれを拒否したのだがその命令は、
何故か覆せなかった。
それから数回の小規模な戦闘をえて妖魔の重要拠点を潰す事になった。
小規模の戦闘ならスノー・プリンセスの小隊は何とかこなす事が出来ていた。
彼女の取り巻きは確かに優秀で言っては何だけれど、
3人で4人分の仕事をこなすチームだった。
当時としては優秀過ぎた。
そして支援者から良い装備品を宛がわれた彼女の小隊は確かに、
ワンランク上の戦闘が出来ていたのだ。
余裕のある戦闘ならそれで良かった。
良かったのだ。
けれど毎回そううまくはいかない。
それどころか調子に乗ったスノー・プリンセスの支援者は、
今度は舞台に花がないと言ってスノーの親を絡めて権限を使って、
スノー・プリンセス部隊専用の制服を納入し始めたのだ。
大した防御力を持たない派手さだけが取り柄のその制服を着せられた部隊員は、
まともな防御を展開する事も出来ずにいたのだが優秀だった彼女達は、
その《プリンセス・スーツ》と名付けられた魔法少女の制服を着て戦う事になっていた。
何時から魔法少女の部隊はそんな我儘を受け入れられるほど、
余裕の戦闘が出来るようになったのかと問い質したくなっていた。
けれどスノー・プリンセスの部隊員は優秀過ぎた。
彼女のお願いを聞いても戦えるほどに。
もうその頃になったらスノー・プリンセスの部隊は完全に、
彼女とその親と支援者に私物化されていたのだ。
同じ部隊として行動こそ共にしていたけれどその扱いはお客さんであり、
私達と肩を並べて戦う気がない事だけは理解出来た。
私達は彼女達の引き立て役となればいい。
そういった考えが透けて見えるのだ。
けれどその事を誰も口にしない。
そして私達ウインディア戦隊とスノー・プリンセスの部隊は、
縦割りとなり作戦を遂行していく事になる。
そして…
運命の時が来た。
ウインディア戦隊はその妖魔の重要拠点攻略戦で最大級の失敗をする事になる。
ウインディア戦隊として最後の出撃で私はあの作戦を今でも忘れる事が出来ない。
作戦初期はうまくいっていたのだ。
予定通りの戦闘スケジュール。
そして問題なく妖魔を刈り取っていく。
けれどその順調ぶりがスノー・プリンセスを独断に走らせる事なった。
半包囲陣を敷きながら妖魔の活動領域を抑え込む作戦と最中彼女は突出する。
自分の小隊を率いて前線を一気に引き上げようとしたのだ。
けれどそれは無謀であり許されない事だった。
私達は前面にのみ強力なシールドを張って妖魔の投射攻撃をしのいでいた。
側面後方にシールドを展開したら投射攻撃を防ぎきれなくなる。
だから慎重に行動して妖魔を自分たちの後ろに行かせない様に丁寧に処理しながら、
戦闘を続けていたのだ。
それをよりにもよって中央で支えていた要に近い彼女の部隊が暴走したのだ。
もちろん作戦開始前に彼女の部隊は最右翼か左翼にしてその隣を、
防御が上手い魔法少女を配置する事も考えていた。
万が一今の様にスノー・プリンセスが暴走しても良い様に。
けれど司令官の一言で戦闘配置は変更される。
なんでも端では目立てないから。
記録映像を取るためにこの作戦にはメディアが映像を取る事を許可していた。
そのメディアに写りたいと考えた。
スノー・プリンセスの一言で支援者は動き配置は変更された。
そして目立つ為だけに彼女は作戦を無視して突撃してしまう。
確かに華々しく戦った。
けれどそう長続きはしない。
全周囲のシールドなんて慣れている防御型の魔法少女でも苦しいくらいなのだ。
案の定妖魔の集中砲火を浴びてしまい彼女達スノー・プリンセスの部隊は、
半包囲する陣形のはるか前で孤立してしまった。
もうその時点で彼女達に自力で脱出する術はない。
いや無理矢理着せられたあの《プリンセス・スーツ》でなければ、
戻って来られたかもしれない。
そこに来てスノー・プリンセスの攻撃役としての未熟さが彼女の前線からの、
脱出の足を阻み始めてしまった。
スノー・プリンセスの攻撃では火力不足で妖魔を仕留めきれない。
そこを突かれ彼女達の部隊は深いダメージを追う事になった。
足手まといと化した彼女がいなければ他の3人だけなら、
あの絶望的な集中砲火の中でも戻って来れたかもしれない。
もしくはあの与えられた《プリンセス・スーツ》さえ着ていなければ、
装備の性能差を生かして生きて戻れたかもしれない。
けれど護衛の3人は最後まで彼女の近くを離れなかった。
そして私達はその間中スノー・プリンセスの部隊が抜けた穴をふさぐべく、
じりじりと陣形を変更して立て直しへと奔走する。
必死に努力していた。
前線で集中砲火を受けているスノー・プリンセスの部隊を、
支援している余裕なんてない。
ともかく当初の予定通り部隊を立て直して前面にのみ、
強力なシールドを張って耐えるのだ私達の勝ち筋はそれしかない。
そうこうしているうちにもともと防御が得意であった彼女は自身の身だけ守り、
仲間を置いて包囲網を突破。
私達の方に逃げ帰ってくる。
残りの3人は前線に置き去りにされるという事態となった。
もう置き去りにされた3人に助かる術はなかった。
そのまま防御膜を削られ見るも無残な形になったのだ。
戦隊員はみな苦い顔をする。
けれど戦闘が終わっていない事も理解していた。
だからせめて残った仲間を見捨てない為に皆が皆互いを意識し合いカバーする。
私達ウインディア戦隊は持ちこたえる。
持ちこたえて反撃の時間を待ったのだ。
相手を撃ち減らしじりじりと戦線を上げていく。
そこには確かに勝機があった。
直ぐ後ろでは、
「助けて。助けてお父様。
もうこんな場所にいたくない!
早く助けをよこして!」
なんて叫び声をあげるスノー・プリンセスがいる。
増援で魔法少女を派遣してもらえばいい。
もう私達ウインディア戦隊に彼女を気遣う余裕のある者はいないのだ。
けれど司令官から信じられない指示が飛んでくるのだ。
やっと持ち直して戦闘を続ける戦隊に。
戦域情報は見れているだろうからどれだけ負担に耐えながら私達が、
戦線支えているのか理解しているはずなのに。
《スノー・プリンセスのみ後退を許可する》
《護衛として一時的に2名を引き抜き後退せよ》
《引き抜く2名は、――と――だ》
不避けるな。
指定してきたのは守備をメインとして今も要のポイントで耐え続けている魔法少女だ。
もちろん要の場所を任せただけあった。
防御には定評のある子でそんな子が2名引き抜かれたらこの半包囲は崩壊する。
《承服せよ》
その言葉に私はもちろん反応しないし出来る訳がない。
けれどその言葉は天の助けと言わんばかりにスノー・プリンセスは反応した。
「はい!承服します。直ちに2名を伴って、離脱します!」
彼女はその通信に割り込んできて勝手に承認してしまう。
ウインディア戦隊の実質的リーダーは決めていなかった。
私がその役割を果たす事が多かったが、
けれど承認されたリーダーと言う訳ではなかった。
だから小隊内での隊長の上下関係も曖昧だったのだ。
そして名目上はスノー・プリンセスは小隊長。
だから拡大解釈すればこのウインディア戦隊の、
リーダーとして振舞ってもおかしくはない。
おかしくはないか…
ギリギリであってもまだ安全な勝利が見えている私達戦隊員は撤退の2文字はない。
だって勝てるから。
いつも通りやれば勝てるから。
その状態を崩して泥沼に引きずり込む戦隊員の引き抜き命令なんて聞ける訳がない。
司令官を説得するべく私は反論しようとするが私の考えなんて関係ない。
この場から逃げられるスノー・プリンセスには天の助けの言葉だ。
直ぐに指定された子と連絡を取りその要の二人を引き連れて離脱を開始ようとする。
一瞬の出来事だった。
私の判断等ないに等しい。
けれどスノー・プリンセスは止まらない。
隣の戦線から指名された2名の魔法少女を引き連れて後退を開始する。
選ばれた子が運悪く小隊長じゃなかったから反論すら、
スノー・プリンセスは許さない。
一分一秒でも早く選んだ魔法少女を引き連れて包囲網の外へ。
妖魔の砲撃の範囲外に離れていく。
スノー・プリンセスは助かった。
けれどその代償は大きすぎる。
もう妖魔に対して包囲陣を維持できない。
このまま作戦失敗として全員離脱命令が出るのを私達は待つしかなかった。
もう。
勝ち目が見えない。
けれど次に来た命令は後退ではなかった。
《ウインディア・クイーンが全てを掌握し》
《戦線を回復し戦いに勝利せよ》
この時点で…
じりじりと後退した辺りで私が傘下に収めている16人のうち、
スノー・プリンセスが後退する時間を稼いだだけで5人が脱落している。
戦線を支えきれないのは解り切っていた。
その傷ついた彼女達も安全な後退が出来る内に離脱させた。
もう勝利する事は出来ない。
その道筋が無いのだ。
この状態で、
残り11人。
更に貴重な2名をスノー・プリンセスの無事な後退の為に取られた。
スノー・プリンセスの部隊はもとより期待していなかった。
けれどそこから2名引き抜かれた事が痛すぎる。
残り9名。
この時点で私が取れる作戦なんてもうほとんど残っていない。
無駄な作戦時間の延長で皆の魔力残量だって心もとない。
もう安全に後退する事すら出来なくされていた。
無茶な命令に隠された言葉。
私に対して決断しろと言って来る非情な判断。
―それは、私に命の選択をしろという、事だった―
部隊のリーダーとして誰かを切り捨て誰かを生かす。
その選択を「私」にしろと司令官は言ってきたのだ。
前線に残った攻撃役と防御役を使って突撃し強制的に戦線を押し上げて…
中核の妖魔を叩き殺すという選択肢しか、
私達が取れる勝利の手段は残っていなかった。
悩んでいる時間も最後の挨拶をする時間さえ与えてくれない。
糞ったれな命令を「私」が出さなければいけない。
一分一秒でも決断が遅れれば魔力が尽きて死者や重傷者が増える。
私の中で命の選別が行われた。
選ぶ道しか用意されていなかった。
恨んでくれていい。
呪ってくれていい。
全部私が決断した事だから。
「各員に告げる。これより、30秒後、突撃を掛ける。
ターゲットは中心核の妖魔の核。
それを叩き壊し一気に戦況を覆す…
突撃は第1波と2波に分ける。先制突撃するメンバーは…」
私はこんな状況に陥りながら作戦成功の可能性と、
生存できるメンバーが一番多くなるパターンを考え出した。
その瞬間それまでの人生の中で、
一番頭が早く回転して最適なパターンを作り出していた。
…いたと信じたい。
自分が知りうるすべての情報と選択肢を考慮して私情を抜きにして、
残された僅かな時間の中、決断出来ていたと思うのだ。
それ以外のパターンはなかったと。
作戦の成功と核を打ち砕けるメンバーに託して私はペアを組む魔法少女の一撃が、
妖魔に対する止めの一撃になると信じた。
そして私以外の4名の名前を読み上げる。
感情の高ぶりで涙を流していたかも知れない。
声が震えていたかも知れない。
第一波として突撃させるメンバーは道を作るだけで力尽きる事が解っていた。
妖魔の中心まで普通に進んでも届かない。
残った人数のうち半分を先行させて僅かな時間を稼ぎ出す。
その攻撃の圧をが減った瞬間を狙って第2陣の攻撃を妖魔の核へと届かせる。
魔力残量と手持ちの武器。
そして残っている自分の体。
すべてを使ってチャンスを作るしか無かった。
もはやーーーー
命令を無視しての安全圏への退避の道はない。
中心から広がる様に魔力弾を注がれ続け横移動を伴う形での仲間との合流は絶望的。
残り9名に減っている事から1人に対する攻撃の圧だって増える一方だ。
前進して合流できる可能性に掛けるしかなかった。
引き下がれば全滅。
前進は生存の可能性があるだけ。
けれどその生存の可能性だって第2陣の突撃側の魔力投射を続ける、
妖魔の核にたどり着ける可能性を秘めた4人のみ。
まだ生きている4人に対して私は、
「私と共に死ね。死んで、第2陣の道を作れ」と…命令しているのだ。
さっきまで一緒にいた仲間に。
今まで供に暮らして来た戦友に。
私はこんな命令しかする事が出来ない。
読み上げたメンバーから了解の返答が帰ってくる。
皆「了解」の一言と共に、
「勝利を!」
「あとは任せる!」
「大好きだよ!」
「またね!」
見えない音声通信だけなのに。
その返事を聞いた瞬間言葉と共に声の主の姿が頭をよぎるのだ。
同時に返してくる返答の声の明るさと私の最低の判断を、
信じ切っている様子も解ってしまう。
―それしか、ウインディア戦隊の「誰か」が助かる道はない―
そしてクイーンの私の判断に意を唱える人は誰もいず口論になる事すらなく、
話は進んで行く。
返答の言葉に澱み声はなく了承の言葉しか返してくれない。
そしてその中に恨みのこもった言葉はなかった。
ただ絶対に勝ってほしいとその願いだけを込められて…
止めを刺すために残される4名に言葉を残す。
部隊内の「誰か」が妖魔に止めを刺し「誰か」が生き残る可能性だけを信じて。
最後に作戦開始と号令を掛けようとした瞬間だった。
もちろん私自身が第一波の戦闘を切って突撃を仕掛ける。
けれど、
「ウインディア・クイーン。
アナタは第2陣の先頭よ。
この部隊の指揮官が先頭を切って突撃だなんて可笑しいわ。
だから第1陣の先陣を務めるのは私の役目よ。
だからアナタは待機なさい。
第一陣が道をつくるまで。
だから本体の討伐はお願いね…
アナタの実力ならきっと押し切れる」
そうして私のペアだった魔法少女が私との入れ替わりを宣言してしまう。
それはとっさの事で反応が遅れて出足がおくれてしまう。
同時に。
「良い判断ね」
「クイーンなら、余裕でしょ」
「私の方がかく乱できるし」
「火力はクイーンみたいに出ないしねぇ」
反論の一つもでず私の待機は決定してしまった。
その通信に皆沸き立ち笑い声さえ漏れて来ていた。
「さぁ!ウインディア戦隊に勝利を!
私に続け!」
そして最後の生存の希望を掛けた戦いが続く。
作戦開始と同時に第1陣として突撃した魔法少女達からの音声通信は、
彼女達の意志によって強制的に切断される。
誰も自分の断末魔を聞かせたくないと思う反射的な切断であることは明白だった。
ただ私の下には戦域情報と敵の数そして突撃した魔法少女の、
バイタルデータだけが送られてくる。
それを見続けるのも苦しかった。
一つ一つ生存を示す証拠が消えていき、
同時に中心に向かう道が作られていった。
そしてその彼女達の作った道を残った私達が使い妖魔の中心核に肉薄していく…
私が第2陣の突撃を宣言した時、怒りで自分の感情を整理できていなかった。
その後は他のメンバーに誘導されながら妖魔の中心核をぶち抜いた事だけは、
覚えている。
戦隊員の願い妖魔の撃滅だけはやり遂げた。
その後は押し寄せてくる後悔と悔しさで…
もう正気を保っていられなかった。
そしていつも後ろに控えてくれていた、
ペアの魔法少女いない事に気付きその事を理解した時、
私の覚えているなかで史上最悪の作戦と思える戦闘は終わりを告げた。
私はその時私のペアだった魔法少女を失った。
戦闘は一応予定通りの結果で終わったのだが…
大失敗の作戦となったのだ。
先に後退させた5名の魔法少女も魔術回路の損傷が激しく戦線復帰は絶望的。
引退となりもちろん残った9名のうち、
戦闘終了時生存していたのは私を含め5名。
そのうち継続して魔法少女を続けられそうなのは3人だけだった…
ほぼ壊滅状態でありながらメディアには大勝利と報じられた。
大勝利でなければいけない。
そうしなければ「誰か」が責任を取らされる事になり取らせるのであれば、
無能な指揮をした「私」という事になる。
けれど私だけが罰せられる事には出来なかった。
生き残った魔法少女達は真実を知っている、
そして各々の抱える魔法具の中には戦闘データが治められていた。
戦隊員だった魔法少女全員と部隊をバックアップしている後方支援組、
全員と私達は戦闘データを共有した。
生き残った子のデータを集めれば自ずと解ってしまう。
どうしてこんな作戦になったのか。
そして覆せない第3者機関のメディア映像。
結果責任の矛先を前面に受ける事になるのが誰なのか解り切った事だった。
もう誤魔化せる失敗じゃない。
けれど魔法省のメンツと援者の為にも隠す事しか許されなかった。
責任を取らなきゃいけないのがスノー・プリンセスになる事を恐れた上層部は、
この作戦はイレギュラーな出来事が起こりすぎて、
史上最高難易度の作戦という事になった。
スノー・プリンセスはその史上最高難易度の作戦の様子を後世に残すために、
やむなく他2名の魔法少女と共に戦線を離れ重要なデータを持ち帰るという、
重要な任務を遂行した。
そして残った魔法少女達の頑張りによって最深部の妖魔は無事倒され、
史上最高難易度の作戦は無事に完了した。
という事になったのだ。
簡単な作戦のはずだった。
20名の魔法少女も集っていたのだ。
ジリジリと緩やかに戦線を上げて妖魔をすり潰す。
何度も経験している作戦で途中まで全く問題なく侵攻していたのだ。
スノー・プリンセスが無茶な突出しなければ…
結果的に多数の魔法少女を引退に追い込んだ大惨事となっていたのだった。
そこで無傷で戦線を離れたスノー・プリンセスが作戦の後私に言った言葉が。
「戦場で仲間の命を天秤に掛けるなんて、戦場の生死の選別人、
ヴァルキュリアみたいねアナタ。改名したら良いのに」
ふざけるなっ!
お前さえいなければ…
お前を守るために大惨事になったんだぞ!
それを…
けれどそれからも彼女はスノー・プリンセスは変わらなかった。
そして最後には英雄的な彼女は次世代の教育者に相応しいと言われ戦隊を去る。
そして…
何時の間にか私は戦隊長という立場を任され部隊を率いる事になった。
そして誰の悪戯か部隊の名前がウインディア戦隊から、
ヴァルキュリア戦隊となっていた。
…私は絶対にスノー・プリンセスを許さない。
何が起ころうとも彼女と関わる事だけはしたくなかった。
もしも出会ったら殺したくなるから。
彼女の命一つ守るために魔法少女14人が犠牲となったのだ。
その代価を払わずにのうのうと生き続けている事すら許せない。
それが部隊名が彼女の置き土産なのかどうかは今更どうでも良い。
結局それから出会う事はなかったし。
たぶん上層部も少しは考えたのだろう。
それから数年後私も卒業する事になった。
ただその時魔法省の上層部と一つ契約を交わした。
私の大切なパートナーを置いて行く事と引き換えに、
今後スノー・プリンセスが私の人生に係る事を絶対に許さないという約束だった。
もしこの約束が反故にされたら、干渉してきたスノー・プリンセスの処遇は全て、
私に手渡す。
そして私が置いて行くパートナーを私に返し私がその時望むのなら、
魔法省に置いて好きなポシジョンを渡す。
という話だった。
代価はあの史上最高の作戦の真実を絶対に公表しないという事だった。
あの時の戦闘データと物証をメディアに流されれば魔法省の上層部は吹き飛ぶ。
地位を守りたい連中には最高の脅しとなっている。
そしてもう一つ。
私の使い魔はパートナーは次代の魔法生物の教育者として、
魔法生物が誕生するフィールドを形成する事に関して天才的な力を持っていた。
次代の魔法少女達の戦闘が楽になるのであればと考えて引退する時、
連れては来なかった。
パートナーも後輩を育てる事に協力的だったから。
魔法省に置いてきたのだが…
旦那から添付されて来る資料に少し目を通しただけで、
そのスノー・プリンセスの無能ぶりが浮き彫りになる。
結局スノー・プリンセスが大切な魔法少女達を使い潰していた。
多くのけが人を出しそれに対してメンテすらしてあげないで使いつぶしていた。
それは、許される事じゃない。
調べれば調べるほど酷い状態で…
好き放題だったスノー・プリンセス達の暴挙もこれ以上許すつもりはなかった。
私の命だけじゃなく私の息子…ではなくなってしまった娘の為に。
私はもう容赦しない。