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聖剣悪女  作者: 河田 真臣
第六章 憤怒の弓
122/164

122話 いと罪深き朝 3

「正直、将軍が出なくてほっとしているよ」

 ヨーゼフ・ヒルトマンが語りかけると、僅かな光りを頼りに床に座っているキケが返事をした。


「……暗殺未遂もあったことですしねえ」


 ヨーゼフが持つランプが、床に薄暗い光を放っていた。

 粗い床の上に積まれたメモ書きが、わずかに揺れる炎の影を映し出している。


「しかし、優勝して魔法学科との交渉権を得られるのに、どれほどの価値があるんだ?」

 アレクサンドラが腕を組みながら天井を見上げ、深々と息を吐いた。


「ちょっとちょっと。第一師団長殿。研究成果をなんの協力もしていない組織と交渉する権利ですよ? しかも、魔法学科がある程度折れることが前提の交渉です」

 ヨーゼフがアレクサンドラを見て、呆れて言った。


「――つまり?」


「手柄を、どこの誰だかわからない人間に横取りされるのと同じです」

「は?! 大事(おおごと)ではないか!!」


 アレクサンドラが勢いよく立ち上がり、その拍子に床の紙束がずれ落ちる。


「首都大学と懇意にして、協力も惜しまない我が騎士団や天鳳ならともかく、白街と教会だけにべったりの王宮騎士団と亜獣騎士団がしゃしゃり出て来たのです。そりゃレイ大権威も激怒しますよ」


 苦々しい口調で吐き捨てるように言う彼女の目には、怒りと苛立ちが混じっていた。


「ふうん。しかし、失敗したな」

「なにがです?」


「勇者候補だよ。学生に毛の生えたような青瓢箪しかいないではないか。王宮騎士団の精鋭を出してくるものとばかり思っていたが……我らを舐めすぎだ」


「おっと。元王宮騎士団のお前には耳が痛い話だったか?」

「とんでもない。あの傲岸不遜な男が、聖騎士長におさまっている現状に我慢ならず、竜騎士団に来たんですから。歳を取って丸くなるどころか、もはや完全な害悪と成り果てました。最悪ですよ」


「できました!」

 近衛騎士団から三番隊、隊長キケ・ミラモンテスがメモをまとめ終えて、簡易的な地図を完成させた。


「解けましたか?」

「ええ。こういうのは得意なんです」

 キケが迷宮の簡易地図を広げ、指差しながら説明を始める。


「冒険者経験がないと、迷宮は厳しいですね」

「うむ。キケがいてくれて助かったな。しかし、こういうのは魔工機人でできないもんなのか?」

 アレクサンドラが、ヴァルヴァラ・バザロフことヴァル六号を横目で見て訊ねた。


「ゴル七号より音声機能は上だそうですが、どうも操作方法がわからないんですよね」とキケが言う。


「下手に弄って壊したら、とんでもない雷が落ちるぞ」

 ヨーゼフも困惑しながら、眼鏡を上げた。


「ヴァルだかゴルだか、役に立つのかね? 人形が」

「お役に立ちます」

 アレクサンドラが愚痴った直後に、ヴァル六号が喋りだした。


「うおおお!?」

 アレクサンドラが飛び上がるほど驚いて、飛び退く。


「我々の、コミュニケーション能力向上は著しい。雷街最高。雷街最高。わかりましたか?」

 ヴァル六号がぎこちなくVサインを作り、口角を上げた。


 しかし、無機質な目元はそのままのため、不気味さが際立っていた。


「喋らない方が良かったのでは?」

 キケが恐る恐る言った。


「性能を疑うわけではないですが、戦闘特化しすぎかもしれませんね」

 ヨーゼフが言うと、アレクサンドラも怖々応じた。


「まあ、喋るだけマシだと思っておこう」


 ☆☆☆


「なあなあ、知ってるか?  コレ」

 カイ・クルマラが黒街オリジナル・ブレスレットを見せびらかしながら、アレンカ・ヤルミルに自慢していた。


 アレンカは全身タトゥーとピアスだらけの少女で、地魔法研究員だというが、どう見ても魔界人そのもの。


 高レベルの地魔法に、石化の邪眼、さらにはガーゴイルの姿も見せている。

 戦闘能力は高く、油断していい相手ではない。

 しかし不思議なことに、カイはどういうわけかアレンカに懐かれていた。


「これ、持ってるだけでよ。メシが食えるんだぜ?」


 カイはブレスレットを指さしながら得意げに言う。

 ポイントや現金がこの中に入っているという説明がいまいち理解できないままだったが、食堂での食事代を稼げるという点だけでもカイには十分に有用だった。


「へ、へえ。すご~い!  かっこいい~!」

 アレンカが手を叩き、嬉しそうにカイの腕に抱きついた。


 その時、ゴル七号が機械的な声で話し始める。

「アレンカ・ヤルミルの嘘を検知しました」


 アレンカは間髪入れず、ゴル七号に蹴りを入れて黙らせた。


「嘘だと?」

「壊れてんじゃないの?  この機人。私、全然知らなかった。本当だよ?」

 アレンカは必殺の上目遣いでカイを見上げ、さらにアピールする。


「はあん?  本当かあ?  まあ、いいや。メシ代稼ぎに行くかあ」

 カイは少し面倒くさそうに肩をすくめると、三人は歩き出した。

 三人に緊張感は微塵もない。


 すでに大迷宮の二階層に到着していた。

「ブギーマン、改良したって言ってたけど、弱くなってたな。近距離は怖いが、遠距離攻撃で一発だ」

「ねえ、機動性なくなって攻撃し放題じゃん。適当にやっても勝てるし」


「アンタもそう思うだろ?」

「なんだ。バカヤロウ、この野郎――ジジッ! ……おい。スパナ持ってこい。スパナ」


「コイツの音声に職人の声しか入ってないんだけど。どうすりゃイイんだ?」

「本当、バカだよね」


「俺も喋るのは苦手だけどよ」

「……超カワイイ。私、ずっとそう思ってた」

 アレンカが微笑みながらカイを見上げる。


「でも、コレ、私が貰って良かったわけ?」

 アレンカが指にはめたのは、第一階層主ブギーマンを倒した際に出現した指輪だった。


「使い方がわからん。持っていてくれ」

「はいは~い」

 アレンカは軽く返事をすると、指輪を大事そうに手に取った。


 その直後、迷宮の曲がり角からブラッドハウル・バーサーカーが飛び出して来た。


 ごく自然に、カイが平剣で魔物の動線を流す。

 アレンカが石礫で貫き、ゴル七号が雷魔法で焼き払った。


 ブラッドハウル・バーサーカーを消し炭にして三人は振り向きもしない。

 まるで何事もないかのようにのんびりと歩いて行く。


 通り過ぎた跡には無数のゾンビが倒れ、天井にはナイトウィング・ビーストが石礫で打ち抜かれ、ダークウィスプ・ヴァンパイアはゴル七号によって炭と化していた。


「ねえ。デートする約束は?」

 アレンカがカイに尋ねると、カイは少し考えた後に答えた。


「約束だあ?  今、してるだろ。今だ、今」

「え~。もっと、綺麗な景色とか観に行こうよ!」

「ああ。メシでも食えたらなあ。美味そうなモン来ねえかな?」


「え? 来ねえかなって、魔獣とか食べるつもり?」

「ああ。ウメえぞ」


 アレンカはカイの腕を放し、少し考えた様子で言った。

「むう。キャンプデートだと、思えなくもないか……」


 その瞬間、耳元からレイの声が響く。

 ――キャンプ禁止ですからね!


「ちょっと!  盗み聞き止めてよ!  プライベートなんだから!」

 アレンカが天井に向かって抗議する。


 ――全然プライベート空間じゃないでしょうが!  真面目にやりなさい!


「おう。なんだ?  誰と話してる?」

「ゴメーン。嫉妬に狂った女って怖~い」


 ――なんですって?!


 アレンカはレイの声を完全に無視して、再びカイの腕を取った。

「まあ、いいか。楽しんでるし。デートだ。デート」


 アレンカは自分に暗示を掛けることにした。


 ☆☆☆


「あの……会話聞えちゃいましたね」

 アナがラルフに言った。


「いや。まあ。ブギーマン改の弱点がわかって良かったですよ」

 ラルフは自嘲気味に言って、無理に笑った。


「私もあなたの案を聞いた時は、イケると思ったんだけどね。まあ、落ち込むことはないわ。そんな弱点を瞬時に見抜ける者なんて本当に限られているから」


「先生……」

 レイの言葉にラルフは感嘆の声を出した。


「とはいえ、負けたままでイイわけないでしょ。改善案は来週中に提出しなさい」

「――ですよね」


 ☆☆☆


「さあ! 気を取り直しまして、大迷宮三~四階層は火街担当区域となります! 三階層は元火魔法大権威ゾーエ先生の担当のようです!」


「今のところトップで三階層主と対峙しております天鳳騎士団パーティ! どうなっているのでしょうか!」


 室内に充満している紫煙が立ち込める中、ドーピング・コカトリスが咆哮を上げた。

 巨大な体躯が揺れるたび、石造りの地面が鈍い音を立てて振動する。

 金色の瞳がギラリと光り、尾から生えた蛇たちが鎌首をもたげて威嚇している。


 竹熊が金棒を構えたその瞬間、コカトリスが驚異的な速さで突進してきた。

 コカトリスの太い前脚が、竹熊の一撃を完全に受け止め、びくともしない。


「嘘だろ?! 竹さんのぶん回し、受け止める生き物がいるの?」

 祐馬が叫ぶも、声は混乱と轟音の中に掻き消される。


 三方から仕掛けようにも、尾から伸びた無数の蛇が襲いかかり、接近を許さない。

 右近の右腕はすでに蛇の一撃で石化していた。


「ちょっと大丈夫かよ?」

「呪傷なんかは、その魔物の肉を食えと親父から言われたことがあるが……」

 竹熊が金棒を振るいながら呟いた。


「蛇の方? 鶏の方? 竹さん、料理できる?」

「鍋と串焼き、どっちがいい? 蛇なら開いて蒲焼きにでもするか?」


「うひい。最高! 全部やろうぜ!」

「まじめにやれ!」


 尾の蛇が祐馬の横を掠めたが、さほど気にする様子もなく呟く。

「――でも、その腕じゃ“霧島”は使えないな」

「脇差しなら使えるが……」


「じゃ僕でいいね。まあ、剛剣“霧島”なんか使われたら、肉も骨も消し飛ばされて、もったいないと思ってたんだよね」

「ああ。儂もじゃ」

「だから、真面目にやれ!」


 コカトリスは狂暴に暴れまわり、床を抉り、天井から粉塵を降らせている。

 その恐ろしさに、普通なら足が竦むところだ。


 だが、竹熊は笑みを浮かべながら仲間たちを見渡した。

「竹さんと一緒だと、メシが美味いからいいよなあ。二人は鍋の用意でもしといてよ。竹さんのことだから、野菜や米も用意してるんでしょ?」

「おう。ようわかったな」

「へっへっへ」


 ☆☆☆


 祐馬は腰に差した二刀を一度に抜き放ち、構えた。

 長い方の打刀を本差、短い方の短刀を脇差と呼ぶ。


 本差は“猿翁(えんおう)”。

 脇差は“弄火(ろうび)”。


 いずれの刀にも、大妖が封じられている。

 常人が触れれば、それだけで気が触れるという禍々しい妖刀だ。


 ――ウヒヒヒヒヒ。抜いたぞ。抜いたア!


 猿翁から、不気味な笑い声が響いた。

 刃から漏れ出すようにして空間に満ちる声は、聞く者の背筋を凍らせるほどに異様だ。

 刀身に封じられた魍魎(もうりょう)が、目覚めた喜びを噛みしめるかのように嗤っている。


 ――おう。久しぶりのシャバだぜ。

 今度は弄火から、低く濁った声が漏れる。声の主は炎童子(ほむらどうじ)

 そのドスの効いた調子には、荒々しさと邪気が混ざっていた。


「心を読めと言っても、相手は獣だ。猿翁、コカトリスに幻惑は効くか?」


 ――わけはない。


 猿翁に宿る魍魎が、短くも威圧的に答えた。

 その声は、異界の存在が祐馬を嘲笑うかのようで、冷たいものが体を這うような感覚を呼び起こす。


「弄火。内側から燃やしたい。これは無理だろ?」


 ――誰に言ってる? やってやるさ。


 弄火の炎童子が、短気ながらもどこか頼りになる声で返事をした。

 その言葉に、炎が刀身の奥で暴れ出す気配が感じられる。

 祐馬は思わず笑みを浮かべた。


「では。よろしゅう頼む」


 祐馬は二刀を上下に構え、戦いの準備を整えながら、余裕を見せるようにニンマリと笑った。


 その姿は、対峙するコカトリスからすれば、ただの人間ではなく、二本の妖刀と共に歩む魔そのもののように見えたことだろう。


 一方、祐馬の背後では、竹熊と右近が気楽な調子で会話を交わしていた。


「おい。そろそろ鍋の火を起こしていいか?」

「ああ。野菜はどうする?」

「まあ、ある分だけでいいだろう」


 戦場に満ちる紫煙と剣戟の緊張感の中、鍋の準備をする呑気な声が響いていた。


 ☆☆☆


 祐馬は猿翁を正眼に構え、弄火を逆手に持ったまま、じりじりとコカトリスとの距離を詰めていく。


 目の前でコカトリスが恐るべき力で暴れるたび、紫煙が渦を巻いて視界を覆う。

 巨大な鶏の頭部と蛇の尾が一体となり、四肢の筋肉が膨張している異形は、荒々しい叫び声をあげて迫り来ていた。


 祐馬が短く息を吐いた瞬間、コカトリスはその巨体とは裏腹に俊敏な動きで跳びかかってきた。


 まずは猿翁を振るう。

 祐馬の斬撃は音を立てるほど鋭く、空気を裂いて迫るコカトリスの巨体に狙いを定めた。


 しかし、打撃を受けたはずの獣の動きは止まらない。

 鋼のような皮膚が刀を受け流し、返すように尾の蛇が突き出してきた。


「硬ぇな」

 祐馬は体を反らして蛇の一撃をかわす。


 石化の邪眼を真正面から受けるが、祐馬は何事もなかったかのように瞬きする。

 それで終わりだった。


 わけがわからない顔で驚くドーピング・コカトリスは、余計に地団駄を踏んだ。


 次の瞬間、祐馬の目が妖刀・猿翁の刃先を見据えて念じる。


 ――幻惑だな。やってやる。

 猿翁に封じられた魍魎の声が、耳元で低く囁く。


 祐馬が刃を一閃すると、鈍い光がコカトリスの視界を覆うように広がった。

 突如として目の前に現れた無数の祐馬の幻影に、獣は一瞬動きを鈍らせる。


 その隙を逃さず、祐馬は弄火を構え直す。

 短刀の刃先に、灼熱の炎が生じた。


 ――内から焦がす。祐馬、行けい。

 弄火の炎童子が低い声で、祐馬に告げる。


 祐馬は躊躇なくコカトリスの腹部に潜り込んで、刃を深く突き立てる。

 瞬間、炎がコカトリスの内部に流れ込むように広がり、獣はたまらず咆哮をあげた。


 鶏と蛇の口から業火が飛び出し、たちまち濛々(もうもう)とした煙がたちこめていく。

 下準備は万端だ。


「……よし。メシの時間だ」


 祐馬が二刀の血震いをして、納刀する。

 後方では、竹熊がのんびり鍋の野菜を刻んでいた。


 ☆☆☆


 ルイスたちがワープして来ると、そこには(もや)が漂っていた。

 その向こうには――


 豪華な食卓を囲んで盛大にパーティを開いている猛者たちの姿があった。

 温かな光が灯る中、賑やかな笑い声と共に、料理の香りが漂っている。


「え? なんで??」

 ルイスは目を見開きながら、顎を突き出し、驚きの声をあげた。


 アレクサンドラは肉を豪快に頬張りながら、満面の笑みで手を上げた。

「おう。お前らも食え」


 グツグツと音を立てる鍋の中には、新鮮な鶏肉。

 焚き火の上の網の上では、蒲焼きにされた毒蛇が黄金色に輝き、香ばしい匂いを放っていた。


 焼き目がついた皮がパリパリと音を発てている。

 煙が立ち上る鍋の近くで、ルイスはその香りを嗅ぎながら、思わず喉を鳴らした。


 シルビアとベルナルドも、目を輝かせてその料理をじっと見つめている。

 シルビアは指を舐めるように唇を舐め、ベルナルドは顔を真っ赤にして息を呑んだ。


 ルイスはゆっくりと鍋のそばに近づき、鍋からあふれる香りに引き寄せられるように一歩を踏み出し、手を伸ばす。


 その手が鍋の縁に触れると、アレクサンドラが豪快に肉を取り分けて、さっと手渡してくれる。


 三パーティが無言で食事を囲み、笑顔が広がる中、食事会が始まった。

 どんどん食材が皿に並び、肉が裂ける音、野菜の音が食事を彩り、会話の合間には笑い声が響いた。


 ☆☆☆


 大迷宮の三階層、薄暗い洞窟の中に広がる小さな空間で、彼らは賑やかに食事を愉しんでいた。


 暖かい火が跳ねる焚き火の周りに集まり、満足そうに頬を膨らませ、会話も弾む。

 肉の焼ける音、食器が重なる音、そして何よりも愉快な会話が響き渡っていた。


 シルビアとベルナルドもニコニコしながら、焼けた肉を受け取り、口に運ぶ。

 何もかもが楽しげで、大迷宮の中にいることを忘れたかのように、彼らの表情は陽気である。


「いや、忘れてどうすんのよ!」

 レイが中継を見て叫ぶ。


 スクリーンに映し出された映像に、ルイスたちが楽しげに食事をしている様子が映っていた。


「……我々はなにを観せられているのでしょうか」

 ラルフが空きっ腹を抱えて、解説している。


「なんかギルドの食堂が混み始めているんですが……」

「いやいや、なんで食事会になっているのよ!」

 レイが再び叫んだ。


 その時、スクリーンに再び映像が切り替わり、ゾーエが中継で通信してきた。


 ――レイ、いい加減にしなさい。真面目すぎるわよ、あなた。


「先生、ですがあの状況は!」

 レイが叫びそうになった瞬間、ゾーエの冷静な声が続く。


 ――ケンカになりそうなパーティは、余所の地点に飛ばすように工夫したわ。心配しないで。


「え? 今、作業したんですか?」

 レイは驚きの声をあげる。


 ――簡易魔方陣を使って、場所を変えているわ。まあ二時間も保てばいいほうだけど、充分でしょ。


「でも、先生。あんな密閉空間で煮炊きとか危険では?」

 レイは声を落ち着けて言った。


 ――ここまで勝ち上がってきた騎士たちがそんなことで死にゃしないわよ。あれだけの猛者たちが、言うことなんて聞くもんですか。


 その一言に、レイは力が抜けた。

 どうやら、高難度エリアで一番気を張っていたのが自分だと、レイはやっと気が付いたのだ。


「私たちも食事に行きましょう」

「え? ええ?」


 アナが驚き、ラルフと目配せしている。

「翌朝まで保たないわよ?」


「それでは一旦、休憩いたします! 失敬!」

 ラルフは嬉しそうに解説席を離れ、先に行った二人を追いかけて行った。

 お読みいただきありがとうございました。

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 カクヨムでも書いております。宜しくどうぞ。

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