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【5-3】誇り高き竜魔族。ドランデッド

「……次は骸骨、今度は鬼か」


 最初こそ俺たちが押していたが、何度も繰り返しているうちにジグロスは慣れたのか、ガードや反撃の回数が多くなってきた。

 

 魔物たちも反撃を受け、動きが鈍くなってきている。俺も出血が酷く、何とか動けている状態だ。しかし、攻め切るなら今しかない。

 

 俺は三体の攻撃に合わせて再び突撃した。

 

「厄介な戦術だな。だが、それもこれまでだ。こいつらは偽物の可能性がある。でも、君は違う。レンマ君自身は絶対に本物だ」


 切りかかる骸骨の剣を見ることなく受け止め、奴は俺だけに注意を向けた。

 

「しまった!」


 気づいた時には遅かった。ジグロスの迷いのない正拳は、俺の腹に直撃した。


「うっ!」


 急激な吐き気に襲われて倒れそうになったが、歯を食いしばって何とか持ちこたえた。


「次は虎だ!」


 俺に注意が向いている隙に、後ろから攻撃しようと爪を振りかざした虎だったが、突如振り返ったジグロスの剣に阻まれて鍔迫り合いのような状態に陥った。


 右手を受け止められた虎は、前傾姿勢になって左腕を引き、指先を尖らせて力を集中させた。

 

「なるほど、そういうことだったのか」


「ドラァンデッドォォォースピアァァァー」


 ジグロスが呟いたのと同時に、虎は鎧の砕けた箇所を狙い、叫びながら貫手を放った。

 

 しかし狙いが読まれたのか、ジグロスは虎の貫手を右腕のガントレットで受け止め、そのまま外側に受け流した。

 

 自分の全体重を乗せた一撃を受け流されたことで、虎はバランスを崩して前に倒れ込む。

 ジグロスはその勢いを利用し、虎の腹に剣を突き刺した。


「グハッ!」


 虎がうめき声をあげ、やられたことに動揺したのか、ルーリアの幻覚魔法が弱まった。


「相変わらず凄まじい一撃だな。これではしばらく右腕は使えんか……。それにしても鬱陶しい幻覚だったな」


 三体の幻覚がゆらりと波打ちながら消え、剣に刺さった仲間が元の姿を現した。

 

「リュウ!」


「やはりそうか。幻覚の魔物でドラゴンゾンビを覆い隠し、私の死角で上手く切り替えて攻撃していたのだろう。幻覚だからと無視していたことが裏目に出たというわけだな」


 バレないように目線や会話に配慮していたが、遂に作戦を見破られてしまった。


 いくら強くて不死身なリュウとはいえ、何度も切りつけられ、さらにあの一撃だ。もう動く体力は残っていないだろう。

 

 リュウは剣が刺さっている腹の傷を手で押さえ、荒い呼吸で俯いている。

 

「リュウ待ってろ。今俺が、うぐっ――」


 一歩動くと腹はズキズキと痛み、体中の傷から血が流れ出して命の危険を知らせてくる。


 だが、剣に刺さる痛みに比べれば、俺の腹の痛みなんて大したことではない。そう自分に言い聞かせ、リュウの元に向かおうと足を動かした。

 

「…………」


 リュウはチラリとこちらに目線を向け、俺が近づいていることを確認すると、自分の背中に手を回し、腹に刺さって背中を貫通している剣先を力一杯折り曲げた。


「何? 聖剣を曲げただと!」


 ジグロスは咄嗟に剣を引き抜こうと力を入れたが、鉤型になった剣はリュウの腹に引っかかって一向に動かない。

 

「剣を離せっ!」


「ふんっ、残念じゃったのう。リュウは自分に刺さった武器はコレクションすると決めとる。じゃけえ、これはもうリュウの剣じゃ」


 口から血を流し、すでに限界だということは誰の目から見ても明白だった。それでもリュウは、いつも通りの口調で強がって笑った。


「こいつ! ならば、これならどうだ」


 リュウの言葉を聞いたジグロスは、剣を握った腕を思いっきり後ろに引いた。リュウは引き抜かれまいと両手で腹の剣を抑えて抵抗している。

 

 しかし、ジグロスの目的は剣を抜くことではなかった。

 自分の方にリュウを引き寄せて剣から手を放し、その勢いのまま彼女の顎に掌底を放った。

 

「ガハッ!」


 リュウは両手で剣を抑えていたためガードができず、掌底をまともに食らってその体は宙を舞った。

 

 ……リュウのことは心配だが、チャンスは今しかない!

 

 俺は、リュウに集中していたジグロスに近づいて全力で刀を叩き込んだ。

 

「グッ」


 俺の攻撃を受けたジグロスは、その衝撃でズズズーっと数センチ後ろに滑る体を踏ん張って制止させた後、ようやく膝をついた。

 

 そして、ドンッとリュウが地面に落ちた音が俺の耳に届いた。


 初めて会った時、リュウは自分のことを『誇り高き竜魔族』と言っていた。

 最後まで自分を貫き弱さを見せない彼女の姿は、まさに誇り高き種族の名に恥じないものだった。

 

 俺は弟子として彼女から特訓を受けていた。

 

 今思うと俺は、傍若無人で自由奔放だがどこか芯が一本通っていて、常に明るく俺の成長を考えてくれていた彼女に憧れていたのかもしれない。

 

 今、彼女にかけるべきは、心配の言葉ではなく師匠に対する感謝の言葉だと理解した。

 

「ありがとう。ドランデッド……」


 俺からの感謝を受けて、リュウは満足げに笑って目を閉じた。

 意識を失ったのかぐったりとしているが、決して刺さった剣は離さなかった。

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