表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/43

【4-7】何もかも独りよがりな男

「な、殴りやがった。誰か今すぐ警備員を呼べ! 早く取り押さえないと、町にもっと被害が出るかもしれないぞ」


「警備員? 無幻の魔女とその仲間だぞ。王国の騎士を呼んだ方がいいんじゃないか?」


「医者も呼んでやれ! 殴られた兄ちゃん、白目剥いて完全にのびてるぞ」


 未だに魔女だとか言っている奴らが、恨みの込められた目で俺たちの方を見ながら警備を呼ぶかの相談をしている。


 俺はそいつらの方を向き、握った拳を見せつけた。


「泣いてるルーリアを見て、それでもまだ幻覚魔法をかけて嘲笑っている魔女だと思うんならそこに並べ! 俺がぶん殴って、その幻覚から目覚めさせて現実見せてやるよ」


 その言葉で、俺たちを貶して騒いでいた奴らは、視線を逸らして静かになった。


 リーゼント男は、『仲間だと思っているのはお前だけで、幻覚に騙されている』と言っていたが、それは違う。ルーリアは俺とハルカの気持ちを思って泣いてくれた。

 あの涙は幻覚なんかじゃなかった。


「レンマさん…………」


 いつの間にか耳を塞いでうずくまっていたルーリアが、顔をあげて俺を見ている。


 彼女の顔を見て、熱かった体が急激に冷めていき、握っていた拳も自然と緩んでいった。それと同時に、大きな罪悪感と後悔が押し寄せてくる。

 

 ……俺は……、また独りよがりに行動してしまった。

 

 町に来る前と同様に自責の念に苛まれていると、聞き覚えのある声が辺りに響いた。


「おーおー、腑抜けたと思っとったが、ルー子のために覚醒しよったか。流石はカルハが惚れ込んで連れてきた男じゃ。リュウも師として鼻が高いのう、見直したぞ我が弟子よ」


「あ、あれは、死霊の彷徨う洋館のゾンビ! 早く、早く騎士を呼んで来い」


 買い物帰りなのか、出入り禁止のリュウが姿を現したことで、町は一瞬でパニックに陥った。

 

 そんな中、誰かが呼んだであろう四人の警備の騎士がこちらに向かって来るのが見えた。

 

「ほう、警備の騎士団か。あがな奴らはリュウが受け持ってやる。じゃけえ、二人は先に帰っとれ。晩飯期待しとるぞ」


「すまん、ありがとう」

 お礼を言う俺にリュウは笑顔を向け、騎士を挑発してから走り去った。


 それを見て二人の騎士がリュウを追っていき、残りの二人は周囲の人たちに聞き込みを始めた。 

 

 この場を離れようとルーリアの方を見ると、彼女は青果店の店主と話していた。


「お嬢ちゃん、今までごめんね。お詫びと言ってはなんだけど、これを受け取ってちょうだい。……それと、また二人で仲良くお店にいらっしゃい。おばちゃん、待ってるよ」


「え! あ、ありがとうございます」


 店主はルーリアにリンゴを渡してから、事情聴取をする騎士の方へ歩いて行った。


 洋館に帰る際に聞こえた店主の話は、チンピラたちが因縁を付けて返り討ちにあっただけだというもので、騎士の俺たちに対する敵意を解いてくれているようだった。


 そして、周囲の何名かも店主の意見に同調し、俺とルーリアを庇うような供述をしているのが聞こえてきた。





「……またやっちまった……」


 洋館の自室に戻ってから、俺は再び後悔で頭を悩ませていた。


 俺がチンピラに殴りかかろうとした時、ルーリアは俺の腕にしがみついて『やめてください』と言っていた。


 あんなにハルカのことで反省したはずなのに、また本人が望んでいない独りよがりな行動を取って迷惑をかけてしまった。……馬鹿な俺は、いつになったら学習するんだろう。


 同じことを何度も繰り返すどうしようもない自分に嫌気が差していると、入り口をノックする音と共にルーリアが部屋に入ってきた。


「すまんルーリア。俺、また自分勝手に――」


「――ありがとうございました!」


 俺の声に被せるようにルーリアが頭を下げてお礼を言ってきた。


「お礼……。いや、俺はルーリアの制止を振り切って、独りよがりに……」


 彼女の思いもよらなかった反応に、どうしていいかわからず言葉に詰まった。


「独りよがりなんかじゃないです。レンマさんが私のためを思って怒ってくれたこと、本当に嬉しかったんですよ。町の人たちとも、これからは仲良くなれそうな気がします」


「……そうか……そうか」


 ルーリアの笑顔を見て、少しだけ心の中にあったもやが晴れたような気がした。

 しかし、優しい彼女のことだ、俺を気遣って良いように言ってくれているのかもしれない。

 

「……ちょっと、私に付いてきてくれますか?」


「お、おう」


 真剣な表情のルーリアに促されて、部屋を出る彼女の後に続いた。

 

 町に行く前とは違い、俺は自分の意思でこの部屋から出ることができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ