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【3-終】届かないこの手

 全部思い出した……。

 

 静まり返った洋館の中、這いつくばりながらも目を開いて顔をあげた。

 

 視線の先には、俺の記憶の中の姿からは少し成長した幼馴染の姿があった。

 

「ハルカ……」


「ようやく思い出してくれたのね。そう……私はハルカ。命を懸けて助けてもらった貴方の幼馴染よ」


 カルハ、いや、ハルカは優しい声で言った。

 それは、前の世界で俺を元気づけてくれていた時と何ら変わらない声だった。

 

 『助けてもらった』ってことは、あの後もハルカは無事だったのか? でも、それならハルカはどうしてこの世界にいるんだ? 

 

 疑問が次々と押し寄せ、混乱して思考が追い付かない。

 

 俺が何も言えずにいると、ハルカはおもむろに左手の手袋を外した。

 

 この世界で初めて会った時から彼女はずっと手袋をしており、今まで外しているところを見たことがない。

 

「ハルカ、その手……」


「……義手よ」

 手袋の下から現れたのは、機械的な作りの義手だった。

 

「何で、どういう……」


「この世界に召喚された私は、助けてほしくて貴方にもらった左腕を使って、死んだ貴方を能力で蘇生させたの。洋館前で会えた時は嬉しかった……。ああっ、私のヒーローがまた来てくれたんだって……本当に嬉しかった……」


 ハルカは震える右手で義手を擦りながら、俺の疑問に答えるように話してくれた。

 その声は徐々に涙ぐんでいったが、それを悟られまいと必死に隠そうとしている。

 

「だけど、貴方は私との記憶を失っていた。そんな状態でも、巨人から守ろうとしてくれた姿を見て思い知ったわ。私は貴方に頼り過ぎていた。……私が殺した貴方に……。ネクロマンサーの能力で生き返ったということは、つまり恨みを持っているということ。当然よね、私の不注意で死んだのだから。それなのに、また自分勝手に巻き込んで、私はすぐ貴方を頼ってしまう」


 俯いて自分を責めるように下唇を噛んだ後、ハルカは再び顔をあげた。

 ハルカは覚悟を決めた表情をしていた。しかし、それに似つかわしくないほど彼女の目は濁り、寂しげに俺を映していた。


「貴方はどんなに傷ついても私を助けようとするでしょう……。でも、これ以上傷ついてほしくない。それに、頼ってばかりじゃ私は変われない。以前話したでしょ? 『悪人は死後、自分の罪を責め続けられる』って。……私は貴方を殺した悪人。これは、貴方のいない世界を受け入れられず、身を投げて命を無駄にした弱い私への罰でもある。だから、一人で解決しないといけない問題なの。巻き込んでごめんなさい……。もう、大丈夫だから……。本当に勝手だけど、私のことは死んだと思って忘れて、この世界を堪能してね。……貴方がための、この異世界を」


「違っ! そんな……、俺は……」


 まくしたてるように言うハルカに何か声をかけたかった。

 それなのに、腹の痛みのせいかはわからないが続きの言葉を出せなかった。


「カルハ嬢、もう十分でしょう。そろそろ行きましょうか」


 しびれを切らしたのか、ジグロスが促し、ハルカはその声に頷いた。

 

「待って……くれ……」


 もう二度と彼女を失いたくなくて、縋るように手を伸ばした。

 しかし、俺の手が彼女に届くことはなかった。

 

「会えて嬉しかった。……今までありがとう……。レー君……、さようなら」


 涙を堪えながら、消え入りそうな顔でハルカは笑った。

 

 俺はずっと彼女の笑顔が見たかった。そのために命を懸けた。

 でも、俺が見たかったのはこんな笑顔なんかじゃない。

 

「ハル……カ……」


 今まで何とか意識を繋ぎ止めていたが、ここで俺の意識は再び途切れてしまった。

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