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なるべく金を掛けずに書籍化作家になるためにどうすればいいかをつらつらと書いてみた ~とりあえず有料コミュニティは今すぐやめろ~

作者: 虎戸リア


 このエッセイは、私こと、ラノベ作家三年目に突入した虎戸リアが、これまでの経験と実績を持ってお勧めする、【なるべく金を掛けずに書籍化作家になる方法】をつらつらと書いたものである。


 当たり前だが、書籍化作家になったからと言って売れっ子になれるとは限らない。むしろなれない者が殆どだ。

 それでもまずはスタートラインに、打席に立ちたいという人に向けて書いたものだ。


 というわけで本題に入る。


 以下が各項目なので順に読んでもいいし、気になるものから読んでもよし。

 

【1】創作論や素人意見に金払うな

【2】実績を信じろ。だが盲信するな

【3】ハリウッド式脚本術? んなもん読んでる暇あったら書きたいジャンルのヒット作品読め

【4】ランキング攻略? いらんそんなもん。ランキング上らなくても打診は来る

【5】本屋いけ


 これを全て読んだ頃には、きっと貴方は「うおおおおおおなんだか書籍化できる気がするぞおおおおお」となるに違いない。多分。


***


【1】創作論や素人意見に金払うな


 ああ……創作界隈にはアマチュア搾取があまりに多過ぎる。

 

 ・自称業界人で、出版社に作品を紹介するから金を寄こせと言ってくる奴

 ・自称業界人が、作品を読んで添削してくれるサービスを謳う有料コミュニティ


 はっきり言いますね。

 現役でない元業界人は基本的に、信用しない方がいいです。


 考えてみてください。


・有能な人間ならそもそも辞めていない

・理由あって辞めた有能が再就職もせずに、素人相手のビジネスなんてするわけがない


 ね? 急に元業界人が胡散臭く見えるでしょ? 


 独立した編集者がそういうコミュニティやビジネスをやっているケースがありますが、これのほとんどはプロ相手の仕事です。素人なんて基本的に相手しません。なので例外です。


 さらにもっと酷いパターンがあります。


・編集経験のない素人が編集者を名乗り、素人作品を添削して金を取る

・実績のない、あるいは自費出版しただけでプロを名乗り、有料サービスを提供する


 はっきり言って、これらにお金を払っている人は高確率でカモにされています。

 というかぶっちゃけ創作に向いていないので、書籍化は諦めた方がいいレベルです。


 いいですか、大事なのは彼らの言っていることが正しい/正しくない、という部分ではありません。

 もちろん正しい指摘もあるでしょう。ですがそれは本当に貴方の糧になっていますか? 相手の言いなりになっていませんか?


 創作論において正しい/正しくないを論じるのは、はっきり言って無駄です。なぜなら、創作は人それぞれだからです。Aさんに対しての指摘が、Bさんに対して有効とは限らないのが創作論。


 ですが、上記のコミュニティに入っている創作者は高確率で指摘を真に受けてしまいます。だってお金払って得た指摘だもの。人はお金を払って得たものは、正しいと思いがちなんです。そして言われた通りに書き続ける。お金を払いながら。


 それで結果は出ると思いますか? 私は思いません。


「いや、俺はそのおかげで書籍化できたぞ!」


 という人もまあ中には数人いるでしょう。でもそれは結果論なんですよ。多分、そういう人はそこじゃなくてもいつか書籍化していたでしょう。つまりお金払った分だけ無駄にしたわけです。


「書籍化したら、俺らのおかげ」「できなかったら、君の実力不足。もっと頑張ろう」


 これが彼らの言い分です。バカバカしいですよね。

 

 とにかく自分の作品を、故も知らぬ相手に委ねている時点で書籍化は無理です。

 貴方の作品を守れるのは貴方だけですよ?


 もう一度、それを委ねる相手について考えましょう。


 その人は一体、出版業界の何を知っているのですか? 

 出版経験は? 編集経験は? 


 ただし、作品を客観的に見てもらうこと自体は大変有効です。ですが、お金を払ってまですることではありません。Twitterで探せば、創作者同士で作ったコミュニティは沢山あります。中にはプロが交じっているものもあります。


 わざわざお金を払わなくても、似たような環境は作れるんです。合う/合わない、好き/嫌いはあるので色々試しで入るといいでしょう。


 もちろんプロに読んでもらったから安心――では決してありません。あくまでプロからの指摘という一つの指標として、それを受け止める分にはいいかと思います。実際、私もプロの先生やアマチュアの方に忌憚なき意見をもらって、作品を調整しています。とてもありがたい話です。


 もちろん――お金なんて払いませんし、自分がする側なら取りません。


 創作論、テクニック、脚本術――全て探せば無料で手に入る時代に、金払って意見を求めるのは愚の骨頂、情報弱者そのものです。


 なので、タイトルにも書きましたが、まずは有料コミュニティなんて今すぐやめましょう。

 それよりも貴方がすべきことは山ほどあります。


***


【2】実績を信じろ。だが盲信するな


 Twitter創作界隈もそうですが、プロやアマチュアの創作論が日々SNSで飛び交っています。私はこれ自体は非常に良いことだと思っています。とても参考になるテクニックや創作論がタダで取り込めるからです。


 もちろん上でも述べたように創作論に正しい/正しくない、はありません。


 あるのは、【自分の創作に使える/使えない】――これだけです。


 ここを軸に、次に見るべきは発信者の実績です。


 ランキング一位を取ったことのない人物の、【ランキング攻略術】

 書籍化したことのない人物の、【書籍化する方法】


 こんなのが平気で持てはやされるのがTwitter創作界隈。私は常々こういうの見て思っています。


「じゃあなんで、君はそれを実践して実績作らないの?」、と。


 実績は分かりやすい指標です。ランキング一位を取ったことのある人物のランキング攻略術は、自分に使えるか使えないかはともかく、一理の真実は含まれています。


 ただし、盲信してはいけません。


 例えば私は、


・ラノベ作家三年目

・なろうにてランキング総合一位

・4シリーズ書籍化

・十冊刊行

・全てコミカライズ化


 などの実績があります。ラノベ作家としては下の上ぐらいでしょうか。ですが、決して私の言う事が全て正しいと思ってはいけません。

 あくまで私のケースの場合、こうやったら上手くいったというだけなのです。


 名プレイヤーが名コーチたり得ないのと一緒です。

 じゃあ素人が名コーチになれるかというと.……怪しいですよね。


 大事なのはその中から、どれが自分にとって使えるかを考えること。

 さらに自分流にアレンジして使って結果を出せればもう一人前。


 書籍化なんて余裕でしょう。


 もし創作論やアドバイスを採用するかどうか迷ったらこう考えましょう――


 【その創作論、その人は実践して実績出してるの?】


 あとはそれをどう捉えるかは貴方次第。



***


【3】ハリウッド式脚本術? んなもん読んでる暇あったら書きたいジャンルのヒット作品読め

 

 出ましたね。

 みなさん、下記のワードを聞いた事あるでしょう。


 ・起承転結

 ・セイブ・ザ・キャット

 ・三幕構成


 いずれも古くから擦られ続けているストーリー術、あるいは脚本術です。

 よくいるんですよ、こういうのを読みまくって頭でっかちになっているパターン。


 当たり前ですが、小説と脚本は別物です。なのにドヤ顔で「セイブ・ザ・キャットが~三幕構成が~」とか本に書かれたことをまんま語る人がたまにいます。

 

 なんで映画の脚本術が小説でそのまま使えると思ってんの? といつも不思議に思います。

 

 もちろん読むなとは言いません。小説家という生き物はどんな些細な知識も無駄にはならないからです。ですが、書籍化を目指す貴方にそれが本当に必要かというと――はっきり言っていらないです。


「テクニックは知って損ないだろお!?」


 損ありますよ。上でも書いてますが人はお金を払って得たものを正しいと思いがち。創作論と似た話になりますが、そのテクニックが使えるか使えないかの判断がブレる可能性が高い。


 どうしても読みたいなら図書館で借りるなり、ウェブ上で解説してるサイトを見て回るぐらいでいいです。


 ちなみに私は上記のテクニックをある程度は知っていますが、そういう類いの本は読んだことはありません。でも自分なりにアレンジして使っています。


 じゃあそれをどうやるかって? めちゃくちゃシンプルな話ですが――それらを使っているであろうヒット作を読めばいいんです。


【自分が書籍化したいジャンルの、ヒット作を読みまくる】


 書籍化したい貴方がそんな本を読む前にすべきことがこれです。


 はっきり言ってここに全てが詰まっています。全ての答えがあります。


 Q:魅力的な主人公ってどうやって作るの!?

 A:ヒット作の主人公達の属性や構成要素、他キャラとの関係性を書き出してみよう! 共通点が見てきたらそれが答えだ。でも一番参考にするべきは、【自分が一番好きな主人公が誰で、なぜ好きなのかを言語化する】ことだぜ!


 Q:魅力的なストーリーってどう作るの!?

 A:ヒット作のストーリーを分析ry


 Q魅力的なヒロインってどうやry

 A:ヒット作のヒロインを分ry


 売れている作品なんだから、間違っていないという至極分かりやすいロジック。脚本術なんて読む暇あるならヒット作読め、分析しろ。そこに答えがある。


 なろう系ならWEB版でもいい。金も掛からない。


 ただし一応言っておくと――分析や換骨奪胎とパクリは全然違いますからね。ここ要注意。


***

 

【4】ランキング攻略? いらんそんなもん。ランキング上らなくても打診は来る


 ここを読んで、「おいおい何を言っているんだセニョール」と思った貴方。基本的に正しいです。

 ランキング上がれば編集者の目に留まり、打診が来る――これは間違っていません。むしろ正攻法です。


 でも問題もある。


 まず第一としてランキングを上がるには、そのサイトの流行りに乗る必要がある。もちろんたまに流行りではないのに上がる化物みたいな作品がありますが、あれは狙ってできません。諦めろ。


 このサイト上の流行りというのがまた厄介で、【サイトの流行り=市場の流行り】ではない、という部分です。


 そして当たり前ですが市場に出す前提の書籍を求める各レーベルの編集者は、後者を重視します。当たり前ですね。だって書籍化して売れなかったら損するんだから。


 つまり何が言いたいかというと――【市場で売れそうな作品であれば、ランキングに上がらなくても打診が来る】ということです


「ええ~、本当かよ~」と思う貴方に私が断言します。


 来ますよ。というか来たもん。


 なろうにおいて日間ランキング50位台、打診時の総合ポイントは1000pt程度。普通に考えたら打診なんて来ません。

 でも来ました。いわゆる低ポイント打診というやつです。


 ちなみにこれは偶然ではなく狙ってやったことなので、私からするとしめしめ……という感じです(と編集者さんと笑いながら話してました)


「でもまあ、たまたまでしょ」


 まあそう思いますよね。

 でも一回だけじゃないんですよ。だからこそ、実績としてこうして披露できるわけです。


 ランキング上がってないのに打診きた理由は明白。


【サイト上の流行りではなく、市場の流行りを意識したコンセプト、作品作りをしたから】


 いいですか。もうランキングなんて100位以内に入ったらそれだけでいいんです。編集者さん達は日間100位以内は大体目を通してます。凄い人だと、300位まで見ているそうです。すげえ。


 ただし、以下のものが必要です。


 ・バチバチに入れた市場でウケるキャラ、要素、展開、構成

 ・それを分かりやすく示したタイトル、あらすじ(当たり前ですが編集者は忙しい。100作品を毎日読めないので、ここで読むかどうか判断する)

 ・書籍化できるだけの文字数(十万字以上) 


 これがあればよほど文章が稚拙でない限り、どこからかは打診が来る可能性が高いです。ただし一点だけ不安があるとすれば――出版実績があるから、低ポイントでも打診が来たかもしれないという可能性。


 ただ私個人の考えでは、おそらく出版実績なくても上記ができていれば打診は来るかと思います。市場の流行りを分析、実践できているだけで、【使える作家】だと思わせられるからです。


 売れる作家になるのは難しい。でも【使える作家】にはなれます。


 私もそうなるべく日々精進しています。


 あと、ランキング攻略しなくていいと言いましたが――ランキング攻略は、分析力や流行りに対する感度を養えるのでトライしてみるのも良いと思います。


 ランキング上位になるほど、打診が増えるのは事実ですしね。

 

***


【5】本屋いけ


 なんで? と思うかもしれません。でも勘の良い読者なら、もう気付いているでしょう。

 そう。【4】で語った【市場の流行りの分析】をじゃあどうすればいいかという部分ですが、これが答えの一つです。


 本屋に行って、自分の書きたいジャンルの棚に行ってみましょう。

 そこには先駆者達の本がきら星の如く並んでいるでしょう。そこでまずは気になる本を数冊見付けてみましょう。


 そして考えるのです。


 ・なぜこれが気になったのか。イラスト? 置いてある位置? タイトル? 帯のアオリ?

 ・自分の作品がここに並んだ時に手に取るかどうか


 そこに並んでいる作品はいずれも、【各社が売れると思って出した作品】です。つまり貴方がこれから書くべきものの答えがそれなんです。


 変な話ですがそこに並んである本と同じキャラ、ストーリー、コンセプトを書けば打診は来るというわけです(パクリはダメ、絶対)


 盗作はもちろんアウトですが、分析して自作に活かすことは可能です。

 それを本屋に行くだけでできるのです。中身を読まなくても下記は行くだけで確認できます。


 ・表紙のキャラ

 ・タイトル

 ・あらすじ

 ・作品コンセプト


 共通点を探してみるのもいいかもしれない。そこに並んでいる作品にはどんな傾向がある?

 考えてみましょう。


 ほら、なんかアイディア湧いてきたでしょ? あと気になった作品はせっかくなので買いましょうね(このエッセイの主旨とは反するが、私も一応商業作家なので……)


***


 さてここまで読んだ貴方。

 きっと、色々と思うことはあるでしょう。それでいいんです。


 このエッセイ含め、創作に正解はありません。


 それでも有料コミュニティで頑張るというなら、それはそれでいいと思います。お金払っているんだから、上手く使ってやりましょう。


 いや、俺は上を実践するぜ! という方は要注意。

 なぜならここまで書いてきたことが全部嘘で、これ自体が創作であるかもしれないからです。


 何を信じ、何を取り入れ、何を排除すべきなのか。


 それぐらいは自分で判断しましょう――だって貴方は創作者なのだから。


 世界を創り、紡ぎ、物語にできるのは貴方だけ。


 これだけは真実です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後のオチお見事でした!
[一言] なるほど...。 勉強になりました。
[良い点] 今から脚本術についての本を読もうと思っていたのですが、危うく頭でっかちに成るところでした。 お金をかけることが1番楽で、1番何かした感覚になるなぁと思いました。 ヒントは書籍の中にあり!…
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