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6.



 何故ジージルが怒っているのか理解できない。それよりここまで姉のことが一切出てこないのだけれどジージルにとって気になるのはそこではないのか?本当にどうでもいいと思っているのか?



「はぁ?なんで怒ってる?当たり前ですよね?何ですか普通って?相手に愛されたいとか幸せになりたいとかってないんですか?」



「それは確かにあるけれど政略結婚となればそうも言っていられないでしょう?」



 それは私だって愛ある幸せな家庭に憧れる。うちのようにいつ壊れるかわからない家族や愛ではなく本当の家族の幸せというものを味わってみたいとは思う。だけど私は姉とは違ってここからは逃げられない。私はあの2人にとっては唯一の土属性を持つ子どもだから。必ず捕まえようと追ってくるはずだ。…いや、逃げようと思えば逃げることはできる。あんな両親に負けるとは思わないし。だけどジージルと一緒になれないのなら別にこのままここにいて誰と結婚することになってもいいかと思っているだけ。相手が誰であってもジージルではないのだったらみんな一緒。



「…政略結婚。…ミルー様は今の生活を捨てても子爵夫妻から逃げたいとは思わないのですか?」



「え?普通に思っているわよ?」



 あの両親よ?思うに決まっている。ただやらないだけ。両親のいない自由な生活というのにも憧れはあるけれど想像しても味気なく感じてしまう。これも理由はさっきと同じ。本当になんでこんな奴にここまでこだわってしまっているのだろう。一目惚れというのも馬鹿にはできない。



「…何だそれ」



「…ジージル?あなたさっきから何が言いたいの?怖いわよ?」



 遠い目をしているとジージルが大きなため息を吐いた後じっと私を見ながら近づいてくる。



「怖くて結構です。自分の好きな相手がただ義務を果たせればとか愛は求めないとか意味がわからないことを言っているんですよ?俺がどれだけミルー様をここから連れ出して一緒に逃げたいと思っているのを我慢していると思っているんですか?俺はミルー様には幸せになって欲しいんです。だからこそ今の生活をミルー様に捨てさせていいのか、あんな頭がおかしい奴等でもミルー様にとっては親ですしそれすらも捨てさせていいのか考えて考えてずーっと!!考えていたのにそんなキョトンとした顔で「思ってるわよ?」とか言わないでくれますか?本当に今の生活を捨ててもいいと思っているんですか?それじゃあミルー様を連れて逃げてもいいですか?誰でもいいんですよね?もしいいのなら全てを捨てて俺と一緒にここから逃げて俺と結婚して下さい。俺は絶対に暴力は振るわないし無駄遣いもしない。浮気なんて以ての外だし俺はミルー様を誰よりも愛している。ここから逃げ出した後のことなら何も気にしないでください。腕っぷしには自信があるのでここから逃げ出した後は冒険者として活動するか働き先を見つけるかしてミルー様を必ず支えます。それにちょくちょく隙をついて冒険者活動をしてお金を稼いでいたので貯金もある程度は貯まっているので当分の生活も安心していいです。あと逃げた後に住みつくのにちょうどいい隠れ家的な町の場所にも目星が付いているので住む場所も別に心配しないで下さい。もちろんそこに住まなくてもいいですし、ミルー様が旅をしたいというのなら一緒に旅をしても構いません。今までろくに外に出たこともありませんもんね。あ、それにもし子爵夫妻が俺達に追手を放つことがあったとしてもこの家にいる連中で俺に勝てる奴はいませんし、大抵の奴には勝てますのでそこも心配はいらないです。だからミルー様。今みたいな優雅な暮らしをさせてあげることはできないかもしれないし、苦労をかけてしまうこともあるかもしれませんが……俺と一緒になってくれませんか?」



「………」



 …だから姉は?



 それに長い長い長い。……って待って。今何を言われたの?そんなにいっぺんに喋られても理解が追いつかないわよ!え?私のことが好き?今まで我慢していた?しかもなんでもう逃げ先決まっているのよ!というかジージルってこんなに喋る人なの?さっきまでこっちを向けとは思っていたけれどそんなにじっと真剣に見つめられると照れてしまうでしょうがっ!!あれ?でも今私告白されたのよね?え?ジージルに!?



 …ダメだ言いたいことが多すぎて何も言葉が出てこない。額に手をおき上を向く。どうしてこうなったんだろう。



「ミルー様?」



 …はぁぁ本当に意味がわからないわ。でも…



 1つだけどうしても先に確認が必要なことがある。ジージルの方を向き直し少し不安気に尋ねる。



「……本当にジージルは私が好きなの?お姉様ではなくて?」



 ずっとジージルは姉のことが好きだと思っていた。それなのにいきなり私を好きだと言われてもすぐには信じられない。昔からジージルは姉を最優先にしていたし、幼い頃どれだけ父達に馬鹿にされても屋敷に来ていた理由が姉にあることぐらいわかっていた。私は姉と違って大人しい女じゃないしジージルが言っていたように高飛車な面もある…と思う。それに昔は両親と一緒になってジージルにだって酷いことを沢山していた。それなのに姉ではなく私を選んでくれるの?



「俺が愛しているのはミルー様だけだ。ルルー様のことは確かに好きなのは好きだけど種類が違う。ルルー様には家族に似たような愛情はあるけどミルー様に思っているような恋愛感情の好きはない。俺が一番大切で守りたいと思っているのはずっと昔からミルー様ただ1人だけだ」



「っ」



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