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1.



「ミルー貴方は優秀で可愛い私達の完璧な子よ」



「お前は私達の誇りだ。アイツとは比べ物にはならない特別な存在だ」



 そう言って父が冷たく視線を向ける先には、床に膝と両手をついて跪いている私とは比べ物にならないほど質素な服を着て薄汚れている私の姉がいた。



「本当になんでこんな子が生まれてしまったのかしら?妹のミルーはこんなにも完璧な子なのに…」



「全くだ。おい!グズ!!いつまで私達の前に姿を見せている気だ!!さっさと立ち去れ!!」



「…はい。申し訳ありません」



 父の言葉に姉は俯いたまま立ち上がり部屋をあとにする。父と母は私達の家族の仲の良さと私の優秀さを姉に見せつけるためだけにこうしていつも姉を部屋に呼びつける。



「さぁ、あいつもいなくなったことだしここからは本当の家族だけの時間だ。ゆっくり家族の時間を楽しもう」



「ええそうね!」



 父と母はさっきまで姉に見せていた侮蔑の表情から一変、穏やかで優しい顔つきになり笑顔で会話を始める。父にとって姉は家族ではない。母にとっても自分が腹を痛めて産んだ子であろうとも家族ではない。この家ではそれが当たり前。この家で姉が家族として認められることはない。



「そう言えばミルー。お前にルトレ伯爵家の次男から婚約の申し込みが来ていたぞ?」



「え?」



 いつものように姉に対する罵詈雑言と私を褒め称える言葉を聞いていると父が何気なしに私へと言った。



「あらまぁ!ルトレ伯爵様の次男と言えばカーバル様のことよね?土属性に魔力の量も豊富でとても優秀な方がミルーを?」



「………」



「ああ。何度かミルーに会う内にどうやらミルーに惹かれてしまったらしくてな。どうしてもミルーと結婚したいそうだ」



「流石私のミルーね!それでどうするお話を受ける?」



 母はまるで乙女のようにワクワクとした顔で私を見てくる。そんな母に微笑みながら少し考えさせて欲しいと伝える。



「えぇ?こんなにいいお話なんてないのに?」



「すぐに返事をしなくてもいいのか?」



「ええ。少し考えたいことがあるの。だから今日は部屋に戻るわ。ごめんなさいお母様、お父様」



 父と母はすぐに返事を返さない私に少し残念そうな表情をするもすぐに退席を許してくれる。



「気にしなくても大丈夫よ。急な話だものね。ゆっくり部屋で考える方がいいわ」



「だがあまり考えすぎて身体を壊さないようにな。お前は身体が弱いのだから」



「ええ。ありがとう」



ーー


 人の気配がほとんどない廊下を歩き自分の部屋を目指す。その時ふと窓の外を見ると嫌なものが目に映った。そこにいたのはある男女の2人。



「………ふん!」



 その光景に顔を歪ませるもそのまま自分の部屋に戻ってベッドに飛び込み一息つく。



 ーーそして叫ぶ



「ーーあ゛あぁぁ゛!!本当毎度毎度鬱陶しい!!」



 普通、家族の良さを見せつけるためだってわざわざ毎回お姉様を部屋に呼ぶ意味ってある!?しかも自分達が呼んだくせに目障りだどうして来たんだって詰って貶してお姉様の前で散々私を褒めちぎるだなんて面倒なことをして!!毎日毎日同じ状況で同じ言葉を聞かされる私の気持ちも考えて欲しいわ!!いい加減飽きないのかしら?もう私お父様達の言葉完璧に覚えてしまったのだけれど?毎度毎度やることがワンパターン過ぎるのよ!!



「しかもカーバル様ってお姉様の婚約者じゃない!!」



 怒りが収まらず自分の枕を殴りつける。



 「頭おかしいんじゃなくて!!」



 どうしてカーバル様から私への婚約の打診が来てお父様もお母様も疑問に思わないのかしら?…まさかお姉様の婚約者だってこと忘れていないわよね?お母様だってカーバル様のことはよく知っているでしょう?週に1回はお姉様に会いに屋敷に来ているのだから!!なのに何あの言葉?何が「あらまぁ!」っよ!何故そこで喜ぶのか理解に苦しむのだけれど?お姉様がいるのに私に粉かけてきている時点でいい加減な男だと言うことくらいわかるでしょ?それなのに「流石私のミルーね!」って何?私には平気で婚約者がいるのに別の女へと婚約の打診をするような浮気男がお似合いってこと?



 それにいくら土属性を持って魔力が豊富って言っても所詮は並よりちょっと多いくらいの男よ?しかも努力が大っ嫌いだから魔法も初級程度しか使えないし。



「…ほんといい加減にして欲しいわ」



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