二人だけの滝8
新学期、マナミが教室に入ると、ミホとショータの姿があったが、すでに気まずい空気が流れていた。
「いくらお姉さんといろいろあっても、中島さんが可哀想じゃない?」
ミホが叫んでいたので、何事かと近寄ると、マナミのことに気付いたショータは正面を向いて、話し出した。
「マナミ、ごめん。ユミに似てたから、気になっただけでオレ、やっぱ、ユミのことが好きみたい」
「いいよ、続き聞きたくない」
そう言うと、ショータは何も言えなくなった。
「川口君って最低な男」
ミホは吐き捨てた。
ショータが去った後、ミホは話をした。
「本当はいい知らせがあったの。私、夏祭りに行く人がいないって言ってたけど――」
「おはよう、ミホ」
タカシが登校してきて、挨拶した。
「中島さん、ごめんね」
ミホもタカシの方へ行ってしまった。
「マナミ、一緒に帰ろうか」
始業式が終わって、いつもと変わらぬ様子でショータは声をかけてきた。
「ユミねーちゃんと一緒に帰るんじゃないの?」
「三年生とは時間が合わないし、マナミが落ち込むといけないから、これからも友達でいてあげてってユミから言われてるんだ」
ユミのできる限りの優しさだったが、逆にマナミは辛くなるだけだった。
「よかったら、河野も」
ショータは近くにいたミホにも声をかけた。
「私はお断りよ。しばらく川口君の顔が見れない」
ミホはまだ怒っていて、目も合わせようとしなかった。
「河野が怒るのも無理ないか」
ショータは呟いた。
「前にいるのはミサトだ」
マナミは前を歩く小学生に気付いた。
「隣にいるのは?」
「リホちゃんだ」
そこでマナミは涙が出てきた。
「どうしたんだ?」
ショータは慌てた。そして、二人は思い出の滝に向かった。
「ごめん」
家に帰ってきたマナミにミサトが謝った。
「なんでミサトが謝るの?」
「帰りにオレ達の方を見て、泣いてたじゃん」
ミサトは気付いていたようだった。
「あれは違うのよ」
「なら、なんで?」
マナミはショータとユミのことを話すしかなかった。
「オレはマナミねーちゃんの味方だから」
「気持ちは嬉しいけど、ユミねーちゃんのこと、そんなに悪く言わないで」